〝操縦士が集まらない〟 LCCの大量欠航相次ぐ

週刊『三里塚』02頁(0896号02面02)(2014/05/26)


〝操縦士が集まらない〟
 LCCの大量欠航相次ぐ

(写真 LCCによる相次ぐ欠航を報じる新聞各紙【5月17日付】)

 格安航空=LCCの大量欠航が相次いでいる。「ピーチ・アビエーション」では5月19日から10月までに、最大2000便超を欠航する。「52人の機長のうち8人が病気などで長期欠勤し、新規採用や副操縦士の昇格も予定通り進まなかった」というのだ。
 さらに5月20日、機長2人が退職したとして、8月に予定していた沖縄と台北を結ぶ56便の中止を明らかにした。また、成田空港を拠点とする「バニラ・エア」も来月欠航の方針を決めている。退職者が見込みを上回り、補充採用も間に合わなかったとして全体の2割に当たる154便を欠航する。
 パイロットの獲得競争や引き抜きの競争も激化しているが、人件費を徹底的に削減するLCCには機長が集まらないのだ。いかに無謀なギリギリの体制で運航していたか、という現実が明らかになった。
 だが、機長不足の問題はこれにとどまらない。国内航空会社が抱える「2030年問題」だ。
ベテラン機長が大量退職する2030年ごろには、国内航空業界全体で約8500人のパイロットを確保する必要があるといわれる。アジア・太平洋地域では、2030年に現在の約4・5倍のパイロットが必要とされ、年間約9000人のパイロット不足が見込まれるという。
 これ自体、ICAO(国際民間航空機関)の荒唐無稽な推計にもとづくデタラメな話(注)だが問題は、この得手勝手な推計を利用して機長訓練の規制緩和が次つぎとなされようとしていることである。
 例えば、パイロットの乗務時間の上限を緩和し、1人のパイロットが乗れる便数を増やそうとしている。60〜65歳未満のパイロットの乗務は2人のうち1人しか認められていなかったが、これを2人乗務ができるようにした。副操縦士となるために必要な旅客機の免許をシミュレーターによる訓練・審査のみに簡略化できる制度も導入された。さらにこの春からは、自衛隊のパイロットの民間航空会社への転出も実施される。
 「機長問題」はまさに空の安全崩壊を示すものだ。ひとたび事故が起きれば大惨事に直結する。先週号で報じたが、ピーチ航空では墜落事故寸前の重大インシデント(事故)がついに起きた。事故を起こした機体は運航を中止することもせずに、そのまま次のフライトを続行した。
 ぎりぎりの少ない機体の使い回しで成り立っているLCCだから、こういう無謀な行為もなされる。コスト削減に基づくLCCなる経営方式が成り立たなくなっているのだ。何よりも「安全が第一」であり、危険極まりない新自由主義政策を許してはならない。
 破綻したLCCの誘致に延命の道を探る成田空港の危機も明らかだ。  5月13日に、東京税関が発表したデータで、連休中の出入国者数が前年比4・1%減だったことが分かった。「羽田国際線拡大の影響」と分析した。三里塚48年の闘いが、国交省・NAAを射抜いている。

(注)ICAOは、世界的な航空需要の増加に伴い、航空機の数が約6・2万機(2010年)から約15・2万機(2030年)に増加するとしているが、夢物語だ。
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