団結街道

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(0969号01面06)(2017/06/12)


団結街道


 幕末の疲弊した農村の復興に取り組んだ指導者である二宮尊徳と大原幽学。前者は幕府・明治政府に取り入れられ、後者は弾圧を受ける。武士出身ながら勘当され、各地を漂泊した後、房総の長部村の農民らに迎え入れられた幽学とは▼世界初の農業協同組合と評される先祖株組合。組合員が5両分の田畑を出し合い共同管理、その積み立てを困ったときに融通し合う。さらに耕地整理を行い、2戸ごとに住居を農地の近くに分散移転させ作業効率を高めた。共同購入、自給肥料、正条植、鍬の改良、農事予定表の作成▼実に様々な改革を行った幽学が最も重視したのが人間教育だった。4100人もの友人を持つ幽学は、理屈の前に人との信頼関係を重視した。自ら酒を断ち生活改善を指導。離婚する権利もない時代に女子教育を奨励し、1〜2年かけて一人の子どもを数軒で育てる換子教育というユニークな実践も行った。女性、子どもに対する誠実な態度は当時としては類例を見ない▼改心楼という教導所を建設し、多くの道友(門人)が集まったことが、治安維持を目的に作られた移動警察である関東取締出役の目にとまり、乱入事件をでっち上げられた。6年にわたる裁判を経て長部村に帰り、「捨て難きは義なり」と自刻した短刀で切腹する▼封建的身分制と闘ったわけではないが魅力ある人物だ。佐藤雅美の小説『吾、器に過ぎたるか』を読まれたい。

このエントリーをはてなブックマークに追加