「空港機能強化案」白紙撤回へ 深夜騒音・生活破壊にNOを 空港労働者も反対の声上げよう

週刊『三里塚』02頁(0981号01面01)(2017/12/11)


「空港機能強化案」白紙撤回へ
 深夜騒音・生活破壊にNOを
 空港労働者も反対の声上げよう


 成田空港周辺にお住まいのみなさん! 空港機能強化案を白紙撤回させましょう。空港の未来と私たちの未来はまったく別です。私たちにとって必要なのは経済発展や国際競争に勝つことではなく、地域に住み働く労働者や農民が人間らしく生きられる社会の実現です。その力は、国や企業にあるのではなく、私たちの団結した行動の中にあります。安倍政権は米トランプ政権と共に成田を軍事拠点にしようとしています。「軍事空港反対・農地死守」を貫く三里塚芝山連合空港反対同盟と共に、地域の未来、人間が人間らしく生きられる社会を取り戻しましょう! 

Q なぜ「機能強化案」に反対しているの?

A 平穏に安心して暮らしたいという住民の当たり前の思いを踏みにじるものだからです。
 第3滑走路は芝山町北部の広大な地域に3500㍍の巨大な滑走路を新たに建設するものです。農地、山林、水系が大規模に破壊され、敷地に直接かかる200戸と騒音被害で400戸、計600戸の住民が移転を迫られるのです。B滑走路の1千㍍の延長と合わせると、南北10㌔、つまり1万メートルもの滑走路ができ、その影響は、房総半島の真ん中から外房九十九里の海にまで及ぶでしょう。
 住民説明会では、「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を定めた憲法25条に違反しているという声が上がっています。一企業のもうけとそれに群がる政治家などの私利私欲のために、住民の生活を奪うことは許されません。
 また、機能強化案は朝鮮半島における戦争の準備という本質があります。安倍政権は民間空港の軍事利用のための法律を作り、米政府も米兵50万人の兵站(へいたん)拠点として位置付けています。戦争になれば巨大空港は必ず軍事空港として利用されます。「機能強化案」は白紙撤回以外にありません。

Q 多少の騒音はがまんするほかないのでは?

A 騒音による被害は「生活の迷惑」というレベルにとどまりません。騒音による睡眠障害は、心筋梗塞や高血圧が2倍になるなど、ダイオキシンなどの化学物質よりもはるかに有害であることが実証されています。欧州WHO(世界保健機関)は、航空機騒音の危険性を指摘し、最低8時間の飛行禁止が必要だとしています。
 成田と同じ内陸空港である伊丹空港の運用時間は午前7時~午後9時、福岡空港は午前7時~午後10時となっており、9~10時間の平穏が確保されています。しかし、成田空港では、午前6時から深夜11時まで発着が続き、「平穏」はわずか7時間。しかも「緊急」の名目でそれもたびたび破られています。これ以上深夜早朝の騒音を拡大することなど絶対に認められません。
 NAA(成田空港会社)のホームページでは「機能強化を図っていくためには午前4時~午前2時を運航時間とすることが理想的」とあり、飛ばないのは2時間だけ。これが本音なのです。

Q 経済発展のためには機能強化が必要なのでは?

A そもそも経済発展のために私たちの生活と命を脅かすことは認められません。何のための経済発展でしょうか。国民を飢えさせず、戦争に巻き込まないことが国や企業の本来あるべき姿のはずです。
 しかし、やられていることは生涯非正規の労働者を増やし続け、格差を拡大、貧困を強いている現実です。
 また、でたらめな経済成長予測に基づき、ありもしない航空需要を見込んだ開発がひとたび破たんすれば、つけを払うのは地元住民です。2011年の原発事故の際には、空港関連労働者4万8千人のうち1万人が解雇されています。空港が地元にもたらしたものは「発展」ではなく、空港に依存してしかやっていけない現実です。

Q 空港で働く人は機能強化でどうなるの?

A 空港機能強化によって空港で働く労働者は、これまでは休みだった深夜早朝にも働かなければならなくなります。また、これまで以上にLCC(格安航空会社)を増やすことで過密なダイヤを組むことになり、時間当たりの労働も強化されます。すでに保安検査員への過重労働の実態(手取り20万円程度で長時間拘束されるため1年で約3割が離職)や、航空整備士の不足が指摘されています。その航空整備士が原因となる安全上のトラブルは3年連続で過去最高。その結果、11年度から16年度で落下物は約7倍に激増しています。
 機能強化は労働条件と安全を一層破壊します。国と空港会社の野放図な拡大計画によって真っ先に犠牲にされるのは、そこで働く労働者です。空港で働く労働者のためにも機能強化は撤回以外にありません。
 かつて、沖縄の米軍基地で働く労働者が「死すべきは基地であり、労働者は死んではならない」というスローガンを掲げて基地撤去のストライキに立ち上がりました。今再び基地労働者が立ち上がり始めています。また、原発で働く労働者のためにも、被曝が不可避の原発はなくさなくてはなりません。労働者として団結し、働く者の誇りをとり戻すことこそが今必要なことです。実際に社会の生産を担っているのは労働者や農民です。政治家や企業の転倒した物言いにだまされるわけにはいきません。

Q 国策だけど白紙撤回はできるの?

A 機能強化案はまだ案でしかありません。
 また、半世紀以上に及ぶ空港反対運動は、機動隊の暴力で農地を奪い進められてきた国の空港建設を社会的に告発してきました。その結果、空港建設のための事業認定は失効し、強制的な土地取り上げを認める土地収用法の適用は永久にできなくなりました。国策を打ち破ることができたのです。国やNAAは、「地元住民の同意なしにやらない」と言わざるを得なくなりました。今なら撤回は十分に可能です。
 見返りを求める条件闘争では命を守ることはできません。「補償金」「対策」などと引きかえにこれ以上、私たちの生活の破壊を許すことはできません。白紙撤回・絶対反対の立場で私たちの未来を守りましょう。

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「空港機能強化案」とは

 成田空港・羽田空港一体の航空機の発着回数を増やすための国の方策のことを指す。
 羽田では2020年までに首都圏上空の飛行経路の制限を緩和し、都心上空の超低空飛行を可能にする。
 成田では、①第3滑走路の供用までの当面、A滑走路の1時間延長・便数制限の撤廃(運航可能時間は朝6時から夜12時30分まで)、②B滑走路の北側への1千㍍延長、③第3滑走路建設。第3滑走路供用後は、滑走路を「AとB」、「AとC」の2グループにわけ、「朝5時から23時の早番」と「朝6時30分から24時30分の遅番」を作り、両者を定期的に入れ替える。運航可能時間は朝5時から午前1時になる。
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