明日も耕す 農業問題の今 「自家採種」の権利奪うな 農水省が「禁止」検討へ

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(0992号02面04)(2018/05/28)


明日も耕す 農業問題の今
 「自家採種」の権利奪うな
 農水省が「禁止」検討へ


 5月18日、TPP11の承認案がろくな審議もなしに、衆議院本会議で強行可決された。事実上の国会承認で断じて許せない! そして今、このTPP承認と歩調を合わせ種子の自家採取が禁止されようとしている。
 これまで種子の自家採種(自分で種を採る)は基本的にOKで、禁止されるケースは例外だった。ところがこれを逆にして、原則禁止に変える方向で農水省が検討に入ったというのだ。とんでもないことだ!

採種は原則自由

 そもそも農家の自家採種は原則自由だ。と言うより当たり前の行為だった。地域で育まれた種を守り受け継ぐことで、連綿と農業は続いてきたのだ。
 しかし、F1という一代限りの種を種苗会社から買わざるをえなくなる中、種苗法のもとで種を改良・生産する育種権者(大半が大企業)が保護され、自家採種の制約が拡大していった。
 種苗法の21条は、1項2項で、自由な自家採種と交換・販売・加工を認めている。ところが3項では、農水省の省令だけで自家採種を禁止できると規定しているのだ。
 TPPを批准してから、自家採種の禁止は一気に拡大した。種苗法施行規則が改定され(2017年3月)、禁止リストが82種から289種に増えた。その中にはトマトやナス、キュウリ、スイカ、ダイコン、ニンジンも追加されている。
 例えばトマトの挿し芽繁殖は、その品種が品種登録されているなら営利栽培ではやってはいけないことになったのだ。
 登録された品種について自家採種・増殖したら10年以下の懲役、1千万円以下の罰金が科され、共謀罪の対象にもなる(種苗法67条)。

企業の種子支配

 このように、これまでは種苗法で自家採種を「原則容認」し、例外的に禁止する作物を省令で増やしてきた。それを今、自家採種を「原則禁止」にし、例外的に容認する方向で法改正を検討するというのだ。
 農水省は「原則禁止は国際的な流れ」と言いなす。背景にあるのは1961年に成立しているUPOV条約(植物の新品種に関する国際条約)だ。自家採種を原則禁じる条約で、種苗会社などが独占的に種苗を利用できる「育成者権」を保護するためだという。
 種苗法はこのUPOV条約に準拠する形で作られ、条約に合わせて改定を重ねてきたのだ。UPOV条約は1991年に改定され、全植物種の細胞ひとつにまで権利や特許を認めた。
 これはTPPの知的財産権保護にも通じ、種の支配に道を開くとんでもない条約だ。
 農水省が策動する自家採種の禁止は、企業による種子の完全支配に道を開く。金もうけの農業以外、生き残れなくなる。農業破壊の最たるものだ。
 絶対に譲るわけにはいかない。簡単に禁止できないまでに、自家採種を押し広げよう。そして、世界の労働者・農民と連帯して、新自由主義による種の強奪をうち破ろう。
このエントリーをはてなブックマークに追加