高瀬裁判長の早期結審策動許すな 7・17請求異議裁判・デモへ

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週刊『三里塚』02頁(0995号01面01)(2018/07/09)


高瀬裁判長の早期結審策動許すな
 7・17請求異議裁判・デモへ

(写真 反対同盟は強制執行阻止の決意も固く千葉地裁に向けデモ【6月28日】)

(写真 裁判報告集会で発言する葉山岳夫弁護士)

6・28請求異議裁判
 市東さん、萩原さんが証言
 「農地強奪強制執行認めるな」

 6月28日、千葉地裁民事第5部(高瀬順久裁判長)で請求異議裁判が開かれ、萩原富夫さんの証人尋問と市東孝雄さんの本人尋問が行われた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・農民・学生・市民175人は市東さんの農地を守りぬく決意を一層固めてこの日を闘いぬいた。高瀬裁判長は顧問弁護団が要求する証人採用を拒否し、次回で結審しようとしている。安倍政権による改憲・(核)戦争に向けた反戦闘争つぶしの一貫であり断じて許すことはできない。次回7月17日、「強制収用反対」署名を持ち寄り千葉地裁包囲デモに結集しよう!
 開廷を前に正午過ぎ、千葉市中央公園で太郎良陽一さんの司会で決起集会が開かれた。最初に萩原さんが発言に立ち、「成田空港会社(NAA)による住民無視の空港機能強化策を許さず、今の政治を正す」と決意を表した。
 動労千葉の田中康宏委員長は、三里塚と連帯して安倍政権の改憲・戦争、働き方改革攻撃を打ち破る気概を示した。
 さらに関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、市東さんの農地を守る沖縄の会が連帯発言を行った。
 意気高くシュプレヒコールを上げ、反対同盟を先頭にデモに出発。宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが、農地強奪攻撃に対し闘うアピールを市街に響かせた。デモは長蛇の列となって地裁に迫り、結審策動を阻止する強い決意を示した。
 60を超える傍聴席を埋めて午後2時に開廷。弁護団の質問に答え、萩原さんの証言が始まった。(要旨別掲)

底地買収は違法

 萩原さんは市東さんとともに取り組んでいる有機農業・産直運動の歴史と現状について丹念に説明し、「NAAという一会社のために農業が犠牲にされてはならない」と語気を強めた。
 そして自らが住む東峰部落では飛行機が毎日民家の頭上40㍍を飛び、事故が続発していることを怒りを込めて弾劾し、「まず飛行機を止めろ!これは犯罪だ。市東さんの農地取り上げを絶対に許さない。ヒラメ裁判官になるな」と裁判長をにらみすえた。
 続いて市東さんが証言台に立った。
 自らの生い立ちを述べ、父・東市さんが99年に亡くなったことで農家を継ぎ、現在まで有機農業を営んでいることを誇り高く語った。
 NAA=空港公団による底地買収は、前例のない違法で卑劣なやり口だ。市東さんは「農地を取られることは農民にとって命を取られることと同じ。強制執行は権利の濫用(らんよう)だ。もし許可したら裁判所の自殺行為だ」と裁判長に鋭く迫った。
 二人の証言は傍聴者全員の胸を打ち、大きな拍手がわいた。NAAの代理人弁護士は反対尋問を一切放棄した。
 弁護団は続いて、専門家証人を採用するよう30分にわたって裁判長に強く翻意を迫った。高瀬裁判長はその場で結論を出せず、進行協議を持つことを確認し閉廷した。次回期日は7月17日。

証人採用せよ!

 近くの会場で、伊藤信晴さんが司会を務めて報告集会が開かれた。
 最初に市東さんが、「もっと怒りを表したかった。これからも闘いは続く」とあいさつし、続いて萩原さんも「怒りをたたきつけることができた」とあいさつして傍聴のお礼を述べた。
 葉山岳夫弁護士を始め弁護団一人ひとりが、計3時間に及ぶ証言の手応えを実感しながらあいさつし、さらに専門家証人採用をかちとる展望を語った。
 北原健一さんが「6・3星野集会で高松に行き、今日も裁判に参加し、私たちの50年を超す闘いの正しさを改めて確信している。市東さん、萩原さんとともに反対同盟として闘う」と決意を述べ、大きな拍手を受けた。
 さらに動労水戸の辻川慎一副委員長、福島の椎名千恵子さん、全国農民会議共同代表の小川浩さんが連帯のあいさつを述べた。
 最後に伊藤さんが、「市東東市さんがかつて〝代執行来るなら来い〟と表した覚悟を、私たちも固める時が来ている」と一同に奮起を促し、一日の闘いを締めくくった。

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飛行機を止めろ
 東峰 萩原富夫さん

 私は1988年、学生のときに支援者の一人として三里塚を訪れました。その後03年に萩原家に婿(むこ)に入り、農業をやっています。
 反対同盟は農地死守の基本方針を半世紀以上貫いて闘っていますが、その背景にあったのはベトナム反戦運動との連帯です。現在の反対同盟の最大の闘争課題は、市東さんの農地取り上げを阻止する闘いです。市東さんが親から農業を受け継ぎ農地を守る姿に心打たれ、ともに闘っています。
 萩原家は戦後まもなく入植しました。88年から今日まで市東さんとともに「三里塚産直の会」として化学肥料、除草剤などを一切使わない有機農業の産直運動に取り組んできました。会員約400軒に年間60種類もの安全でおいしい野菜を届けています。
 市東さんが二つの裁判で全耕作面積の73%もの農地を取られたら、農業を続けられず、産直も続かなくなります。NAAは市東さんを追い出し、見せしめにすることしか考えていない。NAAという一会社のために農業が犠牲になるなど、あってはならない。
 東峰部落では、成田空港のやり方に全員が怒っています。02年に2180㍍のB暫定滑走路の供用を開始し、人が住んでいる頭上40㍍にジェット機を飛ばしました。03年にはオーバーラン事故が起き、飛行機が東峰神社の手前でやっと止まりました。01年には東峰神社の神社林を伐採、07年には東側誘導路建設によって東峰の森が破壊されました。
 天神峰の市東さんに対しても13年の第3誘導路の供用開始、10年の団結街道の封鎖などが行われました。
 現にそこに人間が住んでいるのに、飛行機を飛ばすことで出て行くと思っている。ふざけるんじゃない。まず飛行機を止めろ! 空港公団=NAAは小作者である市東さんに無断で、底地を買収し、06年に千葉県知事に解約許可を申請した。こんなデタラメも成田だから許されるというのか。これは犯罪だ。裁判官は泥棒に味方するのか。上の意向ばかり気にするヒラメ裁判官として悪名を残したいのか。無理やり市東さんの農地を取り上げようとすれば怒りの火に油を注ぐだけだ。私は絶対に許しません。

農地は農民の命
 天神峰 市東孝雄さん

 祖父・市太郎が1912年天神峰の今の場所に雑貨・飲食などの店を出し、21年ごろに農業を始めました。3代100年近く耕作を続けています。父・東市は14年に生まれ、20歳のときに徴兵され、中国東北部の長春に赴き、その後南方に移動し45年の敗戦で英軍の捕虜としてマンダレーの収容所に入れられ、47年に帰国しました。計8年間兵隊にとられ、帰ってきたときは32歳。地主から借りていた農地は、農地解放でうちの所有地になって当然だったのに、復員が遅れたことで残存小作地になりました。
 NAAが明け渡しを求めている土地は、この民事5部で7284平方㍍、2部の耕作権裁判で5723平方㍍、合わせて1万3千以上、耕作面積の73%。もし取られたら致命的打撃です。
 私は中学卒業後、外へ出て飲食店で働き、おやじが亡くなって天神峰に戻り農業を継ぎました。反対同盟主催のおやじの追悼集会で、「故人が好きだった〝闘魂ますます盛んなり〟の言葉を胸に、農地と家族を守る」と発言しました。
 国策で戦争に行かされ、再び国策で農地を取られることに強い怒りを持っていたおやじは、小作権を絶対に売り渡すなと遺言しており、「同意書」「境界確認書」に署名・捺印するはずがありません。天の上で激怒していると思います。
 03年に、私の小作地の底地の所有権がNAAに買収されたと新聞記事が出て驚きました。翌日に職員がポケットに手を突っ込む横柄な態度で「話し合い」を求めてきたが追い返しました。
 それまで地主は何も語らず、こちらが持参した地代をそのまま受け取っていました。小作権者に黙って地主が第三者に土地を売るなど、前例がないと成田市農業委員会の事務局長も明言しており、違法・無効です。
 農業を始めて一番苦労したのは土作りです。表土をもっていけば別の場所でも同じ野菜が作れるというものではない。土壌は生き物です。
 有機農業、産直運動で一番肝心なのは、うそをつかないことです。露地栽培を基本とし、化学肥料・農薬は一切使わず、堆肥は鶏糞、豚糞などを発酵させてつくり、旬の野菜を届け、会員の健康に責任をもちます。これこそ自分の生きる道だと強く確信しています。
 今成田空港は、朝6時から深夜11時まで騒音を撒き散らしています。新たに第3滑走路をつくり周辺住民に騒音を浴びせることは絶対反対です。
 国とNAAは私のことを「騒音を承知で帰ってきた」などと言いますが、B滑走路ができたのは私が戻ったあとです。親が亡くなり、帰ってきて農業をやることのどこが悪いのか!
 NAAは自分で「強制手段をとらない」と公約しておいて、それを踏みにじって強制執行するのは誰が見たって違法ですよ。もし許可するなら裁判所の自殺行為です。裁判長は正義を貫いていただきたい。
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三里塚闘争裁判日程
◎請求異議裁判・千葉市内デモ
 7月17日(火)
 正午 千葉市中央公園集合
 午後2時開廷 千葉地裁
◎第3誘導路裁判 千葉地裁
 8月3日(金) 午前10時30分開廷

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