明日も耕す 農業問題の今 アメリカ農政破綻の現状 「金もうけ第一」に異議

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週刊『三里塚』02頁(0999号02面05)(2018/09/10)


明日も耕す 農業問題の今
 アメリカ農政破綻の現状
 「金もうけ第一」に異議


 自民党総裁選に向けた出馬の決意として、安倍は8月26日、「大切な農林水産業を必ず私たちは守り抜いていく」と記者団に語った。いったい何から「守る」というのか。アメリカ農政の動きを紹介したい。

 アメリカでは今、中間選挙を控えた動きが活発化している。農業をめぐっては、秋に改定をめざす「農業法」をめぐる議論が熱を帯びているという。ここで、金もうけ第一のアメリカ農業政策に異を唱える動きがあることを8月21日付の日本農業新聞のコラムが取り上げている。
 かいつまんで紹介すると、米国農業は年間2兆円近い172億ドルの農業補助金(1戸あたり平均200万円)が支払われているが、この補助金の額を増やすべきか、減らすべきかを1000人に尋ねる調査が行われた。
 結果は46%の人が、中小規模の農家に補助金を「増やしてもよい」と答え、「中小農家向けを減らせ」という声は1割にとどまった。
 他方、大規模農家への補助金を「増やしてもよい」と回答したのは16%にすぎなかったという。
 「農業法」をめぐる議論というのは、現在は生産量の多い大規模農家に補助金の多くが支払われている中で、1経営体当たりの補助金額に厳しい上限を設けるかどうかが焦点となっているのだ。
 コラムは調査結果について「米国民が自分たちの税金を払ってでも支援したいのは、家族農業ということだ」と結論づけている。
 アメリカの農業をめぐっては、さらに1冊の本を紹介したい。

GM食品拒絶

 『本当はダメなアメリカ農業』(菅正治著)という本で、宣伝帯では〝「自由化したら日本農業は壊滅」なんて大ウソ!〟と安倍農政推進をあおっている。だが、内容は堤未果氏の『貧困大国アメリカ』の農業版といったもので、アメリカの金もうけ農業がいかに破綻しているか、様々な事例が記されている。
 たとえば、ここ数年、消費者の間で遺伝子組み換え(GM)作物を拒絶する動きが猛烈な勢いで広がっていたり、環境汚染を引き起こし「奴隷労働」を強要する食肉工場への反対運動が全米で起きているという。
 その一方で農家の平均年齢は58歳と高齢化し、後継者不足は深刻になっている。また、種子・農薬企業による支配が進み、薬物依存と自殺が増えているという。

労農必ず立つ

 著者はアメリカ農業について「ことさら脅威を喧伝する必要は全くない」と、貿易競争の観点から破綻を紹介しているが、この本の事例から見て取れることは、アメリカ農業の破綻の中で、労働者、農民の決起は不可避であり、すでに始まっているということではないかと思う。
 9月には再度の日米貿易交渉が行われる。あおられるであろう「対立」「競争」の向こう側に、金もうけの新自由主義農業と闘い、トランプを打倒して立ち上がろうとするアメリカの労働者・農民がいることをはっきりさせよう。
 われわれが「守る」べきは、彼らとの国境を越えた連帯・団結だ。
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