大地の響き 投稿コーナー

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1028号02面09)(2019/11/25)


大地の響き 投稿コーナー

映画「棘」に見た反骨
 千葉 水野長春

 11月12日、東京・日比谷で開かれたドキュメンタリー映画『棘 TOGE〜ひとの痛みは己の痛み・武建一〜』(杉浦弘子監督)の上映会に参加した。この映画は、国家権力の喉元に突き刺さる「棘」のごとく闘い続け、現在獄中に捕らわれている関西生コン支部の武建一委員長の半生を追い、奪還するためにつくられた。未完であり続編も計画されている。
 生まれ故郷の徳之島を19歳の春に飛び出し、政治や労働運動に興味はなかった青年が、仲間の解雇攻撃と闘い労組を結成。若干23歳で委員長に就任して以来、国家権力、資本、やくざと真正面から闘って仲間を増やし、90分で固まる生コンの特性を逆手に取って「会社はつぶれても労働組合はつぶれない」画期的な産業別組合として成長させた。大槻文平日経連会長(当時)に「関西の生コン闘争は資本主義の根幹を揺るがす運動だ。絶対に箱根の山を越えさせるな」と言わせた闘いの原点を垣間見ることができる。
 家庭用のビデオカメラで撮られた映像はやや荒く、大阪地裁前での「労働組合の名をかたった暴力集団!」とヘイトスピーチを繰り返す男性とのやりとりを臨場感をもって切りとる。他方で、春闘で「辺野古基地新設反対」「TPP反対」「安倍政権打倒!」などの政治スローガンが書かれた生コン・ミキサー車のパレードと歓迎する沿道の人たちも印象的だ。
 「世の中を変えるまでやる」「やくざに拉致され命の危険を感じたことは少なくとも5回ある。しかし、こんなやつに負けるはずがない、運動に対する誇りがある」と語る武さんの反骨の炎の原点を探しに徳之島へ。
 過酷な労働から解放される農閑期のささやかな娯楽である闘牛を愛し、大相撲や大月みやこを徳之島に呼び地元の人を招待するなど故郷への強い思い。「ひとの痛みは己の痛み」を信条とする武さんの「反骨の炎」は地元で育まれた温かい炎だ。日本資本主義の喉元の棘を刃に変え、その命脈を断つ武器に必ずや転化する、そんなことを感じさせる映画だった。

拡張計画は破綻必至
 東京 香川照実

 10月27日に成田空港のA滑走路の運用時間が延長され、さらに11月に入ってから国土交通省が空港の基本計画を改定して第3滑走路建設を盛り込むなど、安倍政権とNAAは空港拡張へ突進している。
 しかし、現在の成田では発着枠を使い切らない状況が続いており、年間約30万回の発着枠に対して2018年の実際の発着回数は約25万7千回だ。特に早朝と深夜は発着が少ない。国交省やNAAが早朝・深夜の便に一定の需要があると主張し、さらなる運用時間の拡大を図っているにもかかわらずだ。NAAは発着枠の空いている時間帯を「活用」しようと躍起になっており、今年4月には「朝発ボーナス」と称する施策を開始した。これは、新規路線を開設する際に出発時間を早朝に設定した場合、最大で3年間着陸料を無料にするというものだ。裏を返せば、それだけNAA自身が強烈な危機感を抱いているということである。
 NAAが危機感を持つのも無理はない。来年羽田空港の発着枠が拡大されることに伴い、これまで成田に多数の路線を持っていたデルタ航空が、成田から撤退して羽田へ移動することを表明したのは記憶に新しい。羽田のような主要空港だけでなく、地方空港と海外を直接結ぶ路線もますます増えており、海外からの旅行客が成田を経由せずに直接日本の各地方へ向かう選択肢が増えている。もはや成田が「日本の玄関口」という地位から転落したことは明白となった。
 このような中で政府・NAAが成田の拡張へ突き進む理由は、海外からの観光客を増やしてカネを集めることや、アジアの主要な都市では国際空港の合計発着数が100万回を超えていることに対抗するというもので、日帝ブルジョアジーの絶望的な生き残り政策にほかならない。このような破綻必至の政策のために住民を犠牲にすることは許されることではない。第3滑走路建設阻止、さらに空港廃港へ闘おう!

このエントリーをはてなブックマークに追加