明日も耕す 農業問題の今 新計算導入し目標達成? 食料自給率とは何か①

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週刊『三里塚』02頁(1036号02面05)(2020/03/23)


明日も耕す 農業問題の今
 新計算導入し目標達成?
 食料自給率とは何か①


 この3月に見直し期限を迎える食料・農業・農村基本計画で、農水省が新たな考えに基づく食料自給率の目標を設定しようとしている。なぜ新たな自給率がつくられようとしているのか。それはどういうものだろうか。

 そもそも食料自給率とは? 農水省によれば、「国内で供給される食料のうち、国産でどの程度まかなえるか」を示す指標だという。「食料・農業・農村基本法」では、「カロリーベース」と「生産額ベース」という二つの目標が定められている。40%を割り込んだと問題視され、普段目にするのは、カロリーベースの自給率。これは国民一人1日当たりの国産供給カロリーを一人1日当たりの全供給カロリーで割って計算される。
 今回、農水省はカロリーベース、生産額ベースのどちらについても、「飼料自給率」を反映しない「産出段階」の自給率も目標として掲げるというのだ。

飼料自給率25%

 どういうことかというと、現在の自給率は、国内で生産した畜産物でも輸入飼料を与えていれば「国産」に算入しない。これは食料安全保障や厳密な国内生産を把握するなどの観点からだとされる。実際、日本の飼料自給率は25%(2018年)で、輸入飼料に依存している実態がある。
 それを今回、エサが国産か輸入かを問わずに、自給率を出そうというわけだ。農畜産農家の生産努力を反映させたり、国産消費の実感を高めることがねらいだというが、そうすると数字はどうなるのか。
 農水省によれば、2018年度の牛肉のカロリーベース自給率は11%、豚肉は6%、鶏卵は12%で、全体の自給率37%は過去最低だ。しかし、輸入飼料でも国産にするなら、牛肉43%、豚肉48%、鶏卵96%で、全体の自給率は46%になる。
 実は、食料・農業・農村基本法では、基本計画に食料自給率の目標を定めることになっていて、現行計画では、25年度にカロリーベース45%、生産額ベース73%の目標を設定している。新たな計算方法でカロリーベースの食料自給率が一気に46%になったら、目標の45%を達成するように見えてしまう。

農水省の意図は

 農水省は、これまでのカロリーベース食料自給率が「基本」(江藤拓農相)と位置づけるというが、はたしてどうか。
 「(自給率を)上げて見せたいからではない。それぞれの意味も含め、分かりやすく情報を発信したい」(大臣官房)と説明しているが、自給率が低下を続けるこのタイミングで新たな目標を設定することはやっぱり疑わしい。
 農業問題を語るとき、しばしば引き合いに出される食料自給率。農水省がどのように打ち出してくるのか注視する必要があるが、その前に自給率そのものをもうちょっと深掘りしてみたい。実はこれ、さまざまな立場によってツッコミどころ満載の数字なのだ。
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