明日も耕す 農業問題の今 都市封鎖で食料危機も 食料自給率とは何か②

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1037号02面03)(2020/04/13)


明日も耕す 農業問題の今
 都市封鎖で食料危機も
 食料自給率とは何か②


 世界で多くの政府が新型コロナウイルスの感染拡大に対してロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。そのため国際貿易と食料品のサプライチェーンに深刻な影響が出始め、今や食料危機が懸念される事態になっている。
 3月31日、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の3機関のトップが共同声明を発し、新型コロナウイルス危機に適切に対応できなければ、「国際市場で食料品不足が起きかねない」と警告した。2007年の世界金融危機後には、インドとベトナムがコメの国内価格の上昇を避けようと輸出を規制した結果、コメの国際価格が急騰して暴動が起きた。「食料ナショナリズム」も懸念される中で、「自給率37%の日本は大丈夫なのか」という声も聞こえてくる。

さまざまな解釈

 だが、この37%という数字が実はさまざまに解釈される。前号は「突っ込みどころ満載」というところで話が終わったので、今回は自給率について書き記されている論述のいくつかを拾い出してみよう。
 ★自給率の分母となる供給カロリーは、実際に摂取しているカロリーではない。大量廃棄されている食料まで含んでいる。それで「自給」という概念が語れるのか。
 ★厚労省が定める健康に適正な一日当たりの食事摂取カロリーを国産供給カロリーで割ると、自給率は56%になる。(2005年)
 ★野菜や果実などの動向がカロリーベースでは反映されない。野菜の重量換算の自給率は80パーセントを超えている。
 ★国産が増えなくても輸入が減れば自給率は上がる。貧困にあえぐ途上国は輸入が少なく軒並み自給率が高い。自給率の高さがそんなに大事か。
 逆に「実際はもっと少ない」との論述もある。
 ☆ずっと40%の自給率を堅持していたはずの98〜05年の間、日本の農地、農家は減少の一途をたどった。実態を正確に反映しているとは思えない。実質的な食料自給率は20%前後と考える。
 ☆農水省が「食料需給表」で公表しているデータの多くは、注やカッコで複数の数値が記載されている。算出方法や数値の扱いの違いで5%前後は上下する。どの国でも政治的な思惑から自給率を実態より高めに発表する傾向がある。

指標新設の意図

 このように食料自給率は、どういう意図で打ち出すのか、どういう立場で読み解くのかによって大きく意味合いが変わってしまうものなのだ。
 新たな食料・農業・農村基本計画では、飼料自給率を反映しない「食料国産率」を新設するという。消費者に国産消費を促すことが目的だと言うが、従来の自給率が後景化することは必至だ。「日本の食料自給はそんなに悪くない」そういう意図をもった数字になるのではないか。新たな数値が安倍政権のデマゴギーに使われるなら、見過ごすわけにはいかない。
このエントリーをはてなブックマークに追加