五輪こそ感染対策失敗の原因 コロナ危機の時代を生きぬくために 人類とウイルスは共存を強いられている

週刊『三里塚』02頁(1040号02面03)(2020/05/25)


五輪こそ感染対策失敗の原因
 コロナ危機の時代を生きぬくために
 人類とウイルスは共存を強いられている

(写真 新型コロナウイルスの人間社会への破壊的影響力を誰も正しく予想できなかった)

(写真 信用ならない「専門家会議」)


 新型コロナウイルスが猛威を振るうこの情勢のもとで、私たちはこれまで当たり前に行ってきた諸活動----集会に参加し拍手し歓声を上げ、スクラムを組んでデモ行進し、ビラを手渡す等々を、最低限まで控えている。もちろん娯楽・旅行・交友なども抑制している。言うまでもなく仲間、家族、そして自分自身の命と健康を守り、何よりも医療現場で奮闘する同志たちと連帯し、階級的団結を強化するためである。
 一方、「不要不急の外出を避けよ」「家にいろ」「接触を8割減らせ」とやみくもに叫ぶ、安倍政権や小池都政による自粛キャンペーンは、額面通り「大切な人の命を守るため」なのか。
 違う。それは東京五輪招致の大破産、国家主導の感染対策の失敗とその居直りの表現だ。支配階級は、資本の延命のために労働者・農民・人民の生活を破壊し、時に命まで平気で奪う。(今、厚労省にコネのある人間だけが一早く治療薬候補「アビガン」を入手し服用しているという。)
 そして安倍はこのコロナ危機に乗じて、検察庁法や種苗法の改悪をもくろみ、緊急事態条項創設を含む憲法改悪の策動を進めようとあがいている。「黙って国家に従え!」という服従命令こそが、この「自粛要請」の本質だ。

ウイルスとは?

 ウイルスとは何か。一言で言うと、遺伝子情報をタンパク質のカラで包んだ極微小の構造体である。単細胞生物の「細菌」「バクテリア」とは明確に区別され、生物ではない、あるいは生物と非生物の境界に位置する存在とされる。ウイルスは他の生物の細胞を利用して自己を複製させる。
 この世界はすみずみまで、われわれの目に見えない無数のウイルスに満たされており、それらに感染することで人間もさまざまな進化を遂げてきた。われわれは選択の余地なく、ウイルスとの共存を強いられている。
 そのウイルスの一部が病原体として人間に害を及ぼし、時に命まで奪う。人間はこれまでさまざまな抗ウイルス薬やワクチンを開発してきたが、副作用が大きく、またウイルスの変異が急速であり、「免疫力を高める」ことこそ根本的な感染症対策とされる。
 新型コロナについては、感染から発症までの期間が約2週間と長いこと、感染しても無症状の人々が多いこと、しかし基礎疾患を持っている人は急速に重症化する恐れがあることなどの新たな特徴を備えている。
 唾液からの感染を防ぐためにマスク、手洗い、うがいなどが基本だが、感染者の便からもウイルスが検出され、病院や施設内でのトイレの衛生・管理が重要とされる。

「専門家」の過ち

 今、安倍政府のもとにある「専門家会議」が、PCR検査を極端に抑制してきたことで厳しい批判にさらされている。検査を受けられなかった人の重症化、死亡が相次ぎ、5月になって「検査拡充」に方針を転換したものの、実際の検査数はあまり増えていない。「PCR検査対象を広げすぎると医療崩壊が起きる」ことを口実に、専門家会議や厚労省クラスター対策班は「クラスターつぶし」(夜の繁華街で濃厚接触を摘発)にいそしんでいた。だがその時すでに市中感染は大幅に進んでいたと見られる。
 彼らは、感染の実態把握にも対策実施にも失敗した。その最大の原因は、安倍と小池が東京五輪開催に固執したことだ。実際には1〜2月に国内ですでに新型コロナ感染が広がり死者も出ていたことを無視し続けた。3月24日に五輪延期が決定した直後から、都内の「感染者数」が急激に上昇していくのだ。このような事実の隠蔽と書き換えをもとに、「非常事態宣言」が発出された。実は正確な感染者、死者数さえ分かっていない! 情報収集・分析もおぼつかないこの現状で、「第二波に備える」などできるのか。
 政権と癒着した「専門家」たちの実態は稿を改めて解明したいが、「医療における不採算部門の切り捨て」という新自由主義的政策(保健所の削減、公衆衛生軽視、公立病院の統廃合)の中心にいるのが彼らであることは疑いない。
 最後に一言、安倍農政による国内農業の切り捨てが、根本的に人々の滋養・免疫力をも損なうことを指摘したい。「もうかる医療」「もうかる農業」の推進の果てに、人の命が奪われる。
 安倍農政と最先頭で闘う三里塚闘争の勝利は急務である。
(中石浩輔)

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