明日も耕す 農業問題の今 日英FTA承認なぜ急ぐ 秘密交渉で安全売り渡し

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週刊『三里塚』02頁(1047号02面04)(2020/09/14)


明日も耕す 農業問題の今
 日英FTA承認なぜ急ぐ
 秘密交渉で安全売り渡し


 〈コロナ×大恐慌〉情勢のもとで立ち上がる労働者人民の憤激を前に安倍は逃亡した。だがその陰で、イギリスのEU離脱により日英自由貿易協定(FTA)交渉が急ピッチで行われ臨時国会での承認が策動されている。

 日英FTAは6月9日、茂木敏充外相とイギリスのトラス国際貿易相がビデオ会議で対面し交渉を開始した。そして、日本とEUとの経済連携協定(EPA)をベースとしているとはいえ、わずか2カ月後の8月7日、茂木外相は「大半の分野で実質合意した」と発表した。
 日英貿易は、現在はイギリスのEU離脱移行期間ということで、日欧EPAに基づいて行われている。しかし、その効力は12月末で切れる。日英FTAは、その後の貿易協定として来年1月1日の発効をめざして急いだのだというが、あまりにも短期間の交渉だ。
 内容はほとんど明らかにされていないが、日本から輸出する自動車や関連部品の関税撤廃や、日本に輸入する英国の農産品の取り扱いが焦点になっている。

畜産農家に打撃

 両政府が8月を目指していた大筋合意は、9月以降にずれ込んだ。ブルーチーズなど農産品をめぐる協議が難航しているためだ。
 イギリス側は、ブルーチーズなど一部の農産品について、実質的な低関税輸入枠を求めている。 もし、イギリス枠を新設すれば、日欧EPAでギリギリ設けた輸入枠にプラスして増枠になる。
 さらにイギリス枠を認めれば、日米貿易協定など他の協定で要求される可能性もある。日本の畜産農家へ打撃は大きい。最終的には「クルマを売るために」大幅妥協してきたのが、これまでの貿易交渉の常だ。
 この拙速で秘密裏の交渉の問題点はこれだけではない。
 8月7日、政府は英アストラゼネカ社と新型コロナウイルス予防ワクチンの供給で基本合意したが、日英FTAによって「ワクチン供給に際し企業側に副作用の責任一切なしとされるのではないか」という危惧から、FTA反対の声が高まっている。

ゲノム推進か?

 さらにはゲノム編集の問題だ。
 EUは、18年7月に司法裁判所が「ゲノム編集は遺伝子組み換えと変わらない」と判断するなど規制的だが、ジョンソン英首相はゲノム編集推進の立場だ。
 日本政府は「ゲノム編集は遺伝子組み換えではない」とし、厚労省への届出だけで市場への流通を認めている。日英FTAがEUの縛りからはずれて、ゲノム編集作物の日本輸出を推進するものとなることは、容易に想像される。
 日英FTAは、他の大型貿易協定と同様に、日本の農業と民衆の生活を破壊するものだ。安倍を辞任・逃亡に追い込んだ怒りをさらに結集し、臨時国会での日英FTA承認と、再度策動される種苗法改悪を阻止しよう。
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