明日も耕す 農業問題の今 「人の命を育む農業実践」 石原健二さんの陳述から

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週刊『三里塚』02頁(1048号02面05)(2020/09/28)


明日も耕す 農業問題の今
 「人の命を育む農業実践」
 石原健二さんの陳述から

(写真 南台の畑に立つ市東さん)


 9月2日の請求異議裁判控訴審第3回では、市東孝雄さんの本人尋問と共に、農業経済学者の石原健二さんによる補佐人陳述が行われた。石原さんの陳述から、市東さんの農地と農業を守る意義を考えてみたい。
 石原さんの陳述は、一審・高瀬判決について「農地・農業が持つ高い公共的意義に対する軽視があり、また小作人(市東孝雄さん)の権利に対する無理解がある」と断罪し、「間違った農政の下で進行した」成田空港建設も批判している。

有機農業の産直

 石原さんは、まず市東さんが営む有機農業の特質として「徹底的な無農薬農法」「徹底的な露地栽培」(育苗の時以外はビニールハウスも用いない)、「少量多品目」の3点をあげている。市東さんのこうした農業が、肥料・農薬問題、遺伝子組み換え問題など近年、日本農業が抱える様々な矛盾や問題の克服をめざす有力な方法の一つだと高く評価する。
 そして、市東さんが営んでいる農業のもう一つの特徴として「産地直送」をあげている。
 現在の農産物の流通は、中央卸売市場、大手スーパーなど大企業がイニシアティブをもって企業優先になっているが、「産地直送」は大手資本の流通支配によって失われた人と人との関係を回復するという意義があると言う。
 1980年代以降、多くの資本主義国で新自由主義政策がとられ、すさまじい経済的格差が生まれた。農業でも「工業化」が推奨され、企業が農業に参入し、地域の協同性は失われて小規模農家の解体が進行した。
 こうした現実に、「私は、新自由主義政策によって生まれた悲惨な経済格差を克服し、地球規模で進行している環境破壊を喰い止める道は、市東さんが行っている『人の命を育む農業実践』にあると確信している」と石原さんは喝破している。

明日も耕す農地

 さらに、戦後日本農業の歴史と現在を踏まえて、市東さんの農業の意義を強調している。
 1955年の全国土地利用計画以来、「開発行政」が農地を他の用途に転用することを押し進めた。農業は「残された残存農地でやればいい」と扱われてきた。その結果、農地だけでなく林地も海浜もすべて荒廃し失われようとしているのに、国内農業を守るためのまっとうな農業政策はますます衰退している。
 だが、「小農の権利宣言」や「国際家族農業年」など小農重視が世界の流れとなり、さらに新型コロナの感染爆発や地球温暖化による気候変動が猛威を振るう中で、いまや効率と利益を追求するあり方からの転換が求められている。
 石原さんは、「小規模家族経営こそ息長く生活できる農業であり、市東さんの農業は、その先端にある。継続して残されなければなりません」と力説する。
 石原さんの陳述で明らかなように、市東さんの農地と農業は、本当にかけがえのないものだ。明日も変わることなく耕されるべき農地だ。奪われてなるものか!

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