明日も耕す 農業問題の今 グリーンリカバリーとは コロナ後の世界を模索

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週刊『三里塚』02頁(1049号02面03)(2020/10/12)


明日も耕す 農業問題の今
 グリーンリカバリーとは
 コロナ後の世界を模索


 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、首切り・賃下げが大きな問題になっている一方で、コロナ後をめぐる動きも多くなってきた。最近あちこちで目にする言葉に「グリーンリカバリー」というものがある。

 グリーンリカバリーとは何か。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした経済停滞からの回復を、単に元に戻すのではなく、気候危機、環境対策に重点を置き、持続可能な社会の再構築、生態系を守りながら立て直そうというもので、4月ごろから欧米の研究者や国際機関が提唱し始めた。
 7月に発表された世界経済フォーラムの報告書では、「生物物理学的リスクを無視しての経済発展が、地球規模で人間の健康と経済に壊滅的な影響を与えることをコロナは教えてくれた。復興の取り組みに気候変動や自然の再生を取り入れなければ、この万に一つの機会が無駄になる」と、グリーンリカバリーこそがポストコロナの経済のあり方だと強調している。
 では、どのような動きがあるのか。オーストリアでは、オーストリア航空に救済金を提供する条件として、短距離便の減少や、より二酸化炭素排出量の少ない燃料の使用を求めている。
 フランス政府も、エールフランスへの融資に、短距離便の縮小と2024年までのCO2排出量5割削減を求めている。
 また、復興に最新の環境技術も駆使し連携しようと各国政府に呼び掛ける「ネットゼロ・リカバリー」声明に、世界で155の企業が署名するといった動きもある。

企業競争の中で

 だが、一口にグリーンリカバリーといっても、その内容には大きな幅がある。
 一方で「脱経済成長」など、社会のあり方そのものを変えようという提言がなされている。
 他方、先に紹介したような事例は、環境政策やエネルギー政策で他に先んじて主導権を取ることがコロナ後の新たな成長につながるという国際的な競争でもある。
 日本政府は、7月までは経済復興プランに気候変動への対応策など示さなかったが、8月25日、環境省は新たなオンライン・プラットフォームなるものを立ち上げ、新型コロナウイルスからの復興と気候変動・環境対策に関する具体的な行動や知見を共有しようと世界各国に呼びかけた。
 企業においても、「経済の回復と緑の回復が同軸でないとダメだ」(山下良則リコー社長)など、海外から後れを取った日本企業にとってグリーンリカバリーが挽回のチャンスだととらえている。

社会変革が必要

 これまでの社会や経済が、「地球規模での壊滅的な影響」(前出報告書)を与えているのに、より良い復興でいいはずがない。社会そのものの変革が必要なことは明白だ。
 そのことを農業を通して考えてみたい。次号でコロナ後の農業を、もう一度取り上げたい。
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