農地死守、第3滑走路阻止、成田を廃港に 12・17東京高裁判決に結集を

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週刊『三里塚』02頁(1051号01面01)(2020/11/09)


農地死守、第3滑走路阻止、成田を廃港に
 12・17東京高裁判決に結集を

請求異議控訴審
 「強制執行許可するな」
 市東さんの決意がNAAを圧倒

(写真 首都中枢・霞が関一帯に「空港阻止!」の声響く 反対同盟を先頭に日比谷公園霞門からデモに出発【10月22日】)

(写真 市東さんの農地取り上げ強制執行を許さない要望書を手に提出行動に臨む三里塚反対同盟)

(写真 菅野雅之裁判長)

 米大統領選挙でのウソと欺瞞(ぎまん)に満ちた応酬とは裏腹に、BLM運動が米国史上最大の闘いとして発展している。全世界で階級闘争が先鋭化する中、日本においても戦時体制の構築を狙った大阪都構想は住民投票で再び否決された。改憲・戦争の菅政権を打倒する機は熟している。11・1集会で固めた決意を胸に、職場・キャンパスでの実践に立ち上がろう。10月22日、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの請求異議控訴審・第4回が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の仲間140人は、土地強奪の強制執行を絶対に許さぬ決意で一つに結束し、全力で闘い抜いた。裁判長は結審を宣言し、わずか2カ月足らず後の12月17日を判決日と指定した。東京高裁を包囲する大結集で判決を迎え撃とう。

 日比谷公園霞門に全国の仲間たちが旗・のぼりなどを携えて続々と参加者が集う。午前11時30分、決戦本部長・太郎良陽一さんの司会で集会が始まった。
 最初に東峰の萩原富夫さんがマイクを握り、「今や成田空港は必要なくなった。農地に戻せ!」と断じ、官公庁や裁判所の労働者に向けて、空港の反人民性と農地を守る闘いの正義を熱烈に訴えた。
 動労千葉の中村仁書記次長、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受け、意気高くシュプレヒコールを上げ、反対同盟を先頭にデモに出発した。快晴のもと、宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが「空港絶対反対・農地死守」のアピールを響かせた。
 デモ後ただちに裁判所前に移動。反対同盟は、この間全国から寄せられた「農地奪うな」の要望書653通の合冊を携え正門前に並んだ上、大きな拍手に送られて裁判所内へ向かった。16階の高裁第4民事部書記官室を訪れ要望書を提出した。
 午後2時に102号法廷で開廷。今回も「コロナ」を理由に一般傍聴は座席数の3分の1、30人程度しか許されない。
 最初に、市東さん本人が意見陳述を行った。
 「なぜ私が農地を明け渡せなどという裁判に訴えられたのか、今もわからない」と怒りをにじませ、祖父の代から受け継ぎ耕してきた農地を奪おうとするNAAの卑劣なやり口を挙げ、弾劾した。そして、「小作農にも耕す権利がある。違いますか」と鋭く問いかけ、航空需要が激減した成田空港の惨状を指摘し、「これでも裁判所は農地強奪の強制執行を許すのか」と裁判長に迫った。そしてもっとも自分の大事にしている信条を「うそをつかないこと」と述べ、完全無農薬・有機農業に誠実に取り組んできたことを自信をもって確認した。最後に裁判長に向けて、「私は言いたい。土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。農業をおろそかにしてはならない。強制執行を許可しないでほしい。どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます」と不動の決意を突きつけ陳述を結んだ。
 農民の土地を奪うために卑劣なうそをつき続けてきたNAAの代理人たちは目を伏せ、市東さんの顔をまともに見ることもできない。
 続いて、石原健二さん(農業経済学)、内藤光博さん(憲法学)の2人が補佐人として意見陳述し、それぞれの専門分野から市東さんの農地を奪うことは許されない暴挙であることを明らかにした(詳細次号)。

弁護団最終陳述

 弁護団による最終準備書面の陳述に入った。342㌻という分量で、まさに心血を注いで書き上げた弁護団の主張の集大成だ。
 空港公団(現NAA)は空港建設において「今後あらゆる意味で強制的手段をとらない」「あくまで話し合いで解決」と社会的に公言している。この事実をねじ曲げ、一審判決が「民事訴訟での強制執行は放棄してはいない」としたのは、とんでもない詭弁であり、信義則違反、権利濫用だ。
 そして強制執行は市東さんの営農権、生存権的基本権を侵害する苛酷執行であり、憲法に違反する暴挙である。
 コロナ大不況でNAAは存亡の危機に転落し、農地を空港施設に転用する必要性・合理性は完全に消滅した。
 感染症の世界的大流行によって、航空市場の需要は蒸発し、航空バブルは崩壊した。B滑走路をはじめ成田空港の諸施設は閉鎖に追い込まれ、設備過剰が露呈した。今後回復することはあり得ない。観光立国戦略は挫折し、国交省らの需要右肩上がりの夢想は破産した。最新の報道によれば、全日空の今期の赤字は過去最悪の5100億円規模となり、国際線を成田から撤退させ羽田に集約するとの方針である。NAA田村社長は、「航空需要に貢献するためにも機能強化をやる」と言うが本末転倒だ。
 状況は一変し、農地法裁判の「明け渡せ」と命じる確定判決も今やまったく無意味となった。
 NAAはこれに対し、「成田空港の社会的要請はまだある。今後も航空需要は増大する」と反論する義務があるのに、口を閉ざしたままだ。確定判決は死文と化しており、それに基づく強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、明白に権利濫用である。原判決を取り消せ!----
 弁護団の主張が法廷内を完全に制圧、傍聴者の拍手が鳴り響いた。
 菅野裁判長は、被控訴人のNAA側が主張も反論も何もしないことを当然のように確認し、弁論の終結を宣言した。そして「12月17日(木)午後2時」と判決の日時を言い放ち、閉廷した。

現地実力闘争で

 弁護士会館において伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。市東さんは、「石原さん、内藤さん、弁護団にすばらしい陳述をしていただきました。これが1%でも裁判長に届けばとも思いましたが、こんなに判決日が早いとは内容をもう決めているのでしょう。しかし、コロナの空港への影響は続きます。ほかの裁判もあります。これからもみなさんと共に闘います」と決意を述べ、大きな拍手を受けた。
 続いて弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が、「今日の陳述で理論的には完勝した。請求異議裁判の大きな展開によって、NAAに痛打を浴びせた。今後どのような判決が出ようと、みなさんが蓄積した力をもとに、現地での実力闘争を基盤として弁護団も全力で闘う」と決意を表した。さらに弁護団それぞれが勝利感をたたえて発言し一同の奮起を促した。
 ユニオン習志野、群馬・農地を守る会などの発言に続き、全国農民会議の小川浩共同代表は「日本農業そのものの危機が背景にあり、国家権力が市東さんの農地を奪うことに総力を挙げている」と述べ、決戦を共に担う意気込みを表した。
 一日の闘争を通して、判決を迎え撃つことを参加者全員が誓い合った。

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