全国農民会議共同代表 小川浩さんに聞く 労働者と農民の力でこの社会を変えよう ――三里塚・市東さんの闘いに連帯し

週刊『三里塚』02頁(1058号02面01)(2021/02/22)


全国農民会議共同代表 小川浩さんに聞く
 労働者と農民の力でこの社会を変えよう
 ――三里塚・市東さんの闘いに連帯し

(写真 小川浩さん。千葉県匝瑳市の米専業農家。全国農民会議共同代表。)

(写真 昨年の11・1集会で市東さんと共に登壇した小川浩さん=右端【東京・日比谷野音】)


 千葉県匝瑳市の米専業農家の小川浩さんに、同じ農家として三里塚反対同盟・市東孝雄さんと連帯する思いと闘う決意を伺った。

米農家の苦境

 ----小川さんはずっと米農家だったんですか。
 小川 他の農家と同規模で米を基本にして、それプラスアルファという感じでした。高校を出て最初は養豚をやりました。実習制度があって富里の農家に実習にも行きました。ちょうど空港問題が富里に起きて、農家も反対、賛成といろいろあったんですが、そのときはぜんぜん意識していませんでした。牛の肥育も3年ほどやりました。
 米仲間とバインダー(稲刈り機)の作業を請け負って徹夜で作業したりしているうちに、やめる人が増えていって、だんだんトラクターで耕耘してくれとか、作業をやってくれだとか、自然とそうなっていった。
 米というのは日本中どこでも作ることができる。田んぼを通して生活環境の維持にとっても重要なんです。食料の問題だけじゃないんですね。ひとり米を作るのをやめてしまうと、水路の問題とかでみんなやれなくなっちゃうくらい影響が大きいんです。
 今大変でも将来何とかやっていけるという希望や展望があれば農家もがんばれる。それは、自分たちでつくっていくべきなんですが。
 ----昨年の農林水産物と食品(インスタントなどの加工品含む)の輸出額が、8年連続過去最高を更新したと報じられています。 
 小川 輸出が増えていると言っても、利益が農家に還元されているかと言えばそうではないと思います。アメリカなどでは輸出補助金を出しているので東南アジアと穀物で競争しても対抗できる。だけど、日本の場合は米価が生産費を下回るような状況なので。成功していると言われる植木なんかでも、儲かっているのはごく一部で、それも市場をやっている経営者です。
 ----米価は今どのように決まるのですか。
 小川 日本の場合は、18年に減反政策も止め、需要と供給の市場原理で値段が決まります。今はとにかく農機具が高い。コンバインは定価だと1800万円くらい。排ガス規制のための装置が60〜70万円もする。故障があれば農家もち。どうしても生産費が高くなり、収益が上がりません。小さい農家は機械を買う余力はないし、大規模のところでも家族農家でみんな綱渡りだよね。

商売ではなく

 ----労働者にできることはありますか。
 小川 労働者階級が革命の主体というのは間違いないが、萩原進さんは農民も仲間に入れてやっていこうと言っていました。基本的に労農連帯と言った場合、農民は農民の闘い、市東さんのような闘いがあってはじめて連帯できると思います。他方で、革命の主体たる労働者階級自身が、革命のために農民を獲得しようという意識も絶対に必要。そう考えたときに、市東さんが産直運動というかたちで労働者と提携して農産物、食料を通してつながっていることは参考になると思います。
 私の住むこのあたりでは、一昔前に日本共産党が産直運動を盛んにやっていたが、今はほとんどつぶれました。生協が大型化して、消費者のニーズに合わせて注文を取るようになったことが衰退の原因の一つです。
 品物を確保するためには天候不良などでできなくなると困るのでどうしても多少余計に作る必要があります。だいたい3割くらいは売りに出せない状況になったんです。
 ----できたものを分けるのが産直運動の理念の一つのはずですが。
 小川 最初はみんなそうだったんですが、どこの産直も生協の方が大きくなって力関係が変わっていったんです。
 ----理念よりも商売を優先したと。
 小川 商売ではなく、運動としてどう考えるべきなのか。労農連帯のあり方が問われています。

希望は闘いに

 ----生産だけじゃなくて加工、流通・販売をやる6次産業化に希望があるとあおられていますが、どう思われますか。
 小川 農家はやっぱり物をつくるのが仕事だから商人になる必要はないと思う。成功していると言われているのはみんな大企業です。直売所なんかに出しているほとんどの人は小遣い稼ぎ程度。
 私が高校生の時、教師が、「米、麦、甘藷はもうダメだから、野菜、畜産開発だ」と、農業近代化論を語り、農工間の格差をなくすと語った。農業基本法が出て、何とか将来に希望が持てたような気がしたんです。だけど、今の輸出だ、6次産業化だと言ったって、一般の農家にとってはワクワクするようなものは何もないんです。
 だから市東さんはじめ反対同盟のように、国家権力を向こうに回して闘って世の中を変えるという革命運動の中に生きがいを感じます。そのためには私も食っていかないとしょうがないから農家をやっているというね。
 どんな時代になっても食料を生産する農家はなくなりません。やっぱり市東さんみたいにがんばらないと。インドや韓国みたいに市東さんの闘いに大挙してみんなが連帯して闘う状況を全国農民会議としてもつくっていきたい。

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