明日も耕す 農業問題の今 「有機拡大」掲げる新戦略 そこに農業の未来あるか

週刊『三里塚』02頁(1066号02面04)(2021/06/28)


明日も耕す 農業問題の今
 「有機拡大」掲げる新戦略
 そこに農業の未来あるか

(写真 2050年までに有機農業の取組面積を100万㌶に急拡大すると豪語!【農水省の資料より】)


 農水省は5月12日、農業の環境負荷低減と生産基盤強化を目指すという政策方針「みどりの食料システム戦略」を正式決定した。検討開始からわずか半年で策定された同戦略に批判が続出。1060号に続き取り上げる。
 みどりの食料システム戦略とは何か。おさらいすると、2050年までに①農林水産業の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ、②有機農業を全農地の25%(100万㌶)に拡大、③化学農薬の使用量半減というのが概要だ。
 誰がどう見ても「できるわけないだろう」という数字を菅政権が打ち出すのは、「脱炭素」「持続可能」や「有機農業」をめぐる国際的な潮流・競争に追いつかなければ、農産物輸出を軸とする菅農政が立ちゆかなくなるからだ。
 だが、「できもしない荒唐無稽な話」として見過ごすことはできない。

遺伝子操作OK

 批判点はいくらでもあるが、問題を有機農業に絞って見てみたい。
 1060号でも指摘したように、同戦略は目標を実現するためにイノベーションやスマート技術で課題を克服するとしており、企業の農業参入を加速する。現在2万3千㌶しかない有機農地を100万㌶にするとは言うが、有機農業者をどれだけに増やすとは決して言わない。
 そして問題は、有機農業の中身にまで関わってくる。イノベーションの中には、化学農薬を使わないためとして、ゲノム編集やRNA農薬(※)が掲げられている。化学農薬でないからといって、ゲノム編集や遺伝子操作の一種であるRNA農薬が有機栽培に認められることになったら、有機栽培の意味するものが大きく変わってしまう。
 さらに「2040年までに次世代有機農業技術の確立」ということがうたわれている。
 100万㌶と言いながら、農水省のプランでも2030年の時点ではまだ6万3千㌶でしかない。それが、次世代技術の開発・確立で有機農業が急拡大するという。

有機農業つぶし

 その中身は「AIによる病害虫発生予察や、光・音等の物理的手法、天敵等の生物学的手法」「病害虫対抗性を強化するなど有機栽培に適した品種等」とある。
 有機農業の拡大はすべて技術開発で成し遂げられるというのだが、有機農業とは自然の摂理と向き合い、自然との共生の中で営まれるものだ。化学農薬を使わないことに本質があるのではない。
 みどりの食料システム戦略は、企業の農業参入を促進するだけでなく、「有機農業推進」の名の下に有機農業を全く別なものにしてしまう有機農業つぶしに他ならない。
 こんなデタラメを許さないためにも、強制執行を阻み、市東さんの有機農業と農地を守り抜こう。

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RNA農薬 「RNA干渉」という方法で、害虫や雑草がもつ特定の「有害」な遺伝子の働きを妨げ、駆除するもの。

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