明日も耕す 農業問題の今 米の先物取引 上場不認可 価格安定か、市場活用か

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週刊『三里塚』02頁(1070号02面03)(2021/08/23)


明日も耕す 農業問題の今
 米の先物取引 上場不認可
 価格安定か、市場活用か


 農林水産省は8月6日、大阪堂島商品取引所が国内で唯一扱う米の先物取引の「本上場」の申請を認めないと決定した。2011年から続けてきた「試験上場」の延長は申請しないことから米の先物は上場廃止となる。

 そもそも、先物取引とは何か。「期日を定めた将来の売買について、前もって決めた価格での取引を約束する」ことだ。
 たとえば、1年後の米の売買を現時点で決めた値段(例えば1000円)で行うと約束する。1年後の実際の価格が500円でも1500円でも、事前に約束をした1000円で取引が行われる。そこで損得は生まれるが、価格があらかじめ決まることで、価格変動のリスクが抑制できる。
 現在、米の価格はJAグループの示す価格が指標とされているが、その発表は秋の収穫直前にしか行われない。1年後の価格が先に分かれば、その価格に合わせて、作付け面積などの計画が立てられるというわけだ。

江戸時代に起源

 実は米の先物取引は、江戸時代にすでに行われていた。
 1730年に江戸幕府から認められた大阪の堂島米市場は、大名たちが米を売買する際に実物を運び保存する手間と費用を削減するために作った「米切手」(お米券)を発行したところから始まった。その米切手をまだ収穫が終わっていない将来の収穫物に関しても売買を始めたことで、先物取引が始まったのだ。
 世界で最初の先物取引市場ともいわれ、戦時中の1939年に廃止されるまで存続した。それを2011年から試験的に再開させたのが、今の大阪堂島商品取引所だ。

投機マネー流入

 「公開の市場なら実需に基づいた透明性のある価格提示が可能で、価格の変動リスクを抑えることも可能」と堂島側は訴えた。他方、先物取引は投機マネーが流入することになれば価格の異常な高騰が懸念される。
 JAは「米の先物は投機的なマネーゲームだ」として反対の立場に立ち、自民党の農林部会は「米は日本の主食。投資と同じには考えられない」と慎重な判断を農水省に求め、結論として不認可となった。
 だが、JAなどとの価格形成の主導権争い、利益の奪い合いとの指摘もある。どちらが正しいという話でもない。
 大阪堂島商品取引所の中塚一宏社長は記者会見で「主食の米の価格は国が安定をはかるべきという考えと、市場を活用して決めるべきという考えがことあるごとにぶつかり、混乱をもたらしている」と政府を批判した。
 この言葉に示されるように、米は主食だから大事と言いながら保護政策を放り投げ、なし崩し的に自由化を進め競争にゆだねてきた矛盾の表れとして今回の問題はある。
 新自由主義の破綻が次々と浮かび上がる今、農業における新自由主義攻撃=「食管制度の廃止」について、あらためて検証する必要がある。次号で取り上げたい。
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