明日も耕す 農業問題の今 ゲノム編集加速のねらい 「健康トマト」の裏側で

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週刊『三里塚』02頁(1076号02面03)(2021/11/22)


明日も耕す 農業問題の今
 ゲノム編集加速のねらい
 「健康トマト」の裏側で


 前号で取り上げたゲノム編集を使った研究・開発は、日を追うごとに加速している。マスコミは「品種改良を飛躍的に高める技術」と宣伝する。ゲノム編集作物は私たちに何をもたらすのか、もう一度検証したい。

 前回、ゲノム編集の高GABA(ギャバ)トマトについて取り上げたが、これを販売する企業は2022年から福祉施設、23年から小学校に無償配布して育ててもらい普及させるという。
 また、日本の種子を守る会アドバイザーの印鑰智哉氏は、「後代交配種」がこのトマトの本命ではないかと指摘する。
 ゲノム編集は表示の義務がない。ゲノム編集トマトを親として交配させた後代交配種は、表示どころか届け出の必要すらないからだというのだ。
 「健康にいいトマトをつくる素晴らしい技術」として刷り込まれ、農家も消費者も知らないうちにゲノム編集トマトがどんどん栽培され、流通する状況になりかねない。

特許料をめぐり

 加速するゲノム編集の背景としておさえておかなければならないのが特許の問題だ。
 ゲノム編集の特許をめぐっては、カリフォルニア大学バークレイ校(UCB)とブロード研究所というところが争っている。この両者で特許を独占することになるだろうと言われる。
 ここに、世界の遺伝子組み換えの2大勢力、バイエル・モンサントとダウ・デュポン(コルテバ)がつながっている。モンサントはブロード研究所とライセンス契約を交わし、コルテバはUCB側の研究者が作った会社と農業分野の独占実施権契約をしている。
 日本の企業もライセンス契約を結んでつながり開発を競うが、巨額の特許料を払っても十分儲かるために、ゲノム編集が受け入れられ、市場が広がることが必要なのだ。

企業の農業支配

 市場と共に企業が求めるのは権利の保護だ。
 10月20日、農水省は種苗法施行規則を改正する省令を公示した。
 この改正で、第15条「従属品種を育成する方法」に、新たにゲノム編集が付け加えられようとしている。
 昨年、「種苗法改正」が国会で論議された際も、品種改良方法として「ゲノム編集」を認めるべきか、疑問が出されていた。しかし、種苗法改正には関係ないとして「ゲノム編集」については議論されなかった。
 国会での議論をすり抜けて、後から省令で「ゲノム編集」を品種改良方法として加えようというのだ。実に姑息(こそく)なやり方だ。
 ゲノム編集を「品種改良」として認定し、自家増殖を禁止して開発した企業の権利を種苗法で守る。農家は種を買い続け、消費者は何も知らずにゲノム編集作物を食べる。企業が種を支配して儲けるしくみが強固につくられようとしている。
 岸田政権が進めていることは、企業の農業支配を加速させることだ。岸田政権を打倒しよう。
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