市東さんの農地を実力で守りぬこう 成田の軍事基地化許さず岸田打倒へ 葉山岳夫顧問弁護団事務局長 に聞く

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週刊『三里塚』02頁(1097号01面01)(2022/10/10)


市東さんの農地を実力で守りぬこう
 成田の軍事基地化許さず岸田打倒へ
 葉山岳夫顧問弁護団事務局長 に聞く

(写真 葉山岳夫弁護士。動労千葉顧問弁護団長、救援連絡センター代表も務める)

(写真 3・27芝山現地闘争で反対同盟とともにデモ行進する葉山岳夫弁護士【右端】)

(写真 左上からB滑走路に面する大看板、排ガス監視やぐら、団結街道封鎖監視やぐら、旧小見川県道沿い立て看板)

(写真 南台農地の関係土地図と衛星写真。E1【南台41-9】は石橋家の貸借地で市東家が耕作したことは一度もない)


 9・23―27国葬粉砕闘争が圧倒的な高揚感をもって打ち抜かれた。全日建運輸連帯労組関西生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組は戦争協力拒否・労組弾圧粉砕の決意も固く、全学連と共に安倍国葬への怒りを体現して闘い、岸田政権の戦争国家化の狙いを粉砕した。三里塚芝山連合空港反対同盟もまた「反戦」「労農連帯」の旗を高く掲げ、連続する反戦・反基地闘争に全力で決起している。今号では成田市天神峰の市東孝雄さんの農地をめぐる決戦を迎えた三里塚裁判の現局面について反対同盟顧問弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士に伺った。

やぐら控訴棄却は不当

 ----9月2日、新やぐら裁判で、控訴棄却の反動判決が出されました。
 今回の東京高裁・渡部判決は、一審判決を是認し、成田空港会社(NAA)の違法を一切不問に付した不当判決です。
 成田空港については、工事実施計画に従って進めた工事だと言い、市東さんの農地を空港用地への転用のために取得したと言い張る。
 だが実際は、取得が行われた1988年の段階では、転用などできない状況でした。天神峰には市東さんのほかにも反対同盟の農家が数軒存在していた。「転用のため」と言っても、枕詞(まくらことば)にすぎません(農地法第5条違反)。
 通常の農地転用は、転用計画とそれに要する時間・方法などを具体的に明示した上、その必要性が緊急だとして許可申請を行うが、「ゆくゆくは空港用地として使う」では話にならない。
 NAAは、16年もたって農地転用の具体的必要が生じたという段階で、登記をしたとして取得を明らかにしたが、転用の条件に違反しているものをそのまま十数年たって持ち出してきたという意味で二重に違反です。
 その中で、千葉県知事の許可を得ずに農地を取得をしたことは、大変な違法行為です。「農地法施行規則に基づいて取得した」と言うが、この施行規則は「成田空港建設に限っては農地法に基づく許可申請は要しない」という、空港建設のために作られた、脱法的行為を容認するものです。
 もう一つは、空港公団は市東家が耕す農地を、農地のままで取得したという問題です(農地法第3条違反)。
 買収が行われた後もそのことを隠し、旧地主が市東東市さん(孝雄さんの父・故人)から長年月、地代を受け取り、市東家が耕作を続けることを認めてきた。「反対派の妨害行為が予想されるから」と言うが、それを根拠に農地法3条をねじ曲げるのは許されない。
 そして市東東市さんの賃借権・耕作権という権利そのものを否定し去ったという意味で、憲法違反は明白です。
 ----判決の確定を待たずに強制執行が行える、「仮執行宣言」が付けられました。
 仮執行宣言について「付けない理由が見当たらないから付ける」と書かれています。さらに、請求異議訴訟で判決が確定していることを理由にして付けたと言うが、付けるべき積極的な理由を示すべきなのに、裁判の独立性を自ら放棄するとは恥知らずな判決です。
 農地法裁判一審の千葉地裁・多見谷判決(2013年)も反動的判決だったが「市東孝雄氏がここで農業を営んでいる」ことを理由に仮執行宣言を付けなかった。NAAが付帯控訴したことを受けて、高裁が「ほかで判決が確定しているから自分のところも」ではなんの説得力もない。
 これは、平行滑走路の用地取得について「あらゆる意味において強制的手段を用いてはならない」という、シンポジウム、円卓会議での空港公団、千葉県知事、運輸大臣も含めた合意を、裁判所が自ら破るものです。明らかに裁判所は、合意をどう覆し否定するかに腐心してきた。強制的手段とは「収用法にもとづく行政執行」に限るもので、民事裁判での強制執行は「強制的手段とは別だ」と強弁するのです。「白い馬は馬にあらず」的な詭弁です。
 強制執行を阻み、この反動判決を覆すため上告審を全力で闘います。

耕作権裁判の重大局面

 ----市東さんの耕作権裁判は今、重大局面を迎えました。
 耕作権裁判は、NAAが南台耕作地の一部を「不法耕作」と言いなして明け渡しを求め、一審で16年続いています。
 甲8号証、甲9号証(同意書、境界確認書)はNAAが出してきた唯一と言える証拠で、それをもとに市東さんに「NAAの所有地を無断で耕作する男」の汚名を着せようとした。だが同意書、境界確認書に添付された図面の土地の位置特定が、まるでデタラメだったわけです。それはこの訴訟の正当性を根本から揺るがすものです。
 NAA側は一貫して、南台41―9(左図E1)の土地を、市東東市さんの賃借地だと主張してきた。だが実際には、そこは石橋家の賃借地で、市東さんは一度も耕作したことがありません。この事実を突きつけられ、結局NAAは、41―9については農地法裁判で請求放棄をして、裁判を経ることなしに「自力救済」的に、今やロープで囲って取得したことにした。一種の強奪行為ですね。
 NAAは、同意書、境界確認書の証拠価値が失せていく中で、これらの作成に関与した人間を隠し通そうとしています。NAAによれば、これらにかかわった空港公団用地部の担当者である上西亮治とその上司2人はすでに死亡したので、立証しうる人間は出せないし文書も残ってないと。
 絶対にありえない。
 これほど重大な位置特定問題について、多数が関与して論議され実行されたことは間違いない。その隠ぺいを図るとは、訴訟法的に見ればとんでもない犯罪的行為です。
 ----同意書、境界確認書の作成に関連する文書について、弁護団は裁判所に「文書提出命令」を出させました。
 NAAが「そういう書類は一切ない」としらを切ることに対し弁護団は抗告して、東京高裁も「こういう重大な証拠がNAAの中にないことはおよそあり得ない。提出せよ」という命令を出した。千葉地裁・岸裁判長もあらためて「提出しろ」と命じた。それでも「存在しない」とNAAは言ってきた。
 本来、同意書、境界確認書の証拠価値そのものが否定されるべきです。だが、裁判所が真っ当な判断をするかどうかは極めて疑わしい。
 弁護団は、当時の空港公団の職員録を調べて、その中に関与した者が必ず存在することを指摘し、そこに記載された用地部・用地課の職員全員の安否・所在を確かめることを要求しました。
 しかし、千葉地裁・本田晃裁判長は「16年もたつし、命令は出せない。NAAの認否反論を待ってから...」などと、むしろもみ消しに加担し拙速裁判を進める姿勢です。絶対に認められません。徹底追及を続けます。
 こちらの主張のもう一つの大きなポイントは、「市東さんは農地の賃借権、耕作権を時効取得した」ということです。賃借権の時効取得というのは、戦後に最高裁で認められた判決例があり、いまだに覆されてはいない。だから、市東さんが耕す土地にはすべて、市東さんの絶対的な権利があります。
 16年もかかっているのはNAAの違法を暴く上で当然ですが、裁判所は早く決着をつけたい。最高裁も圧力をかけていることは明白です。
 だから、みなさんが厳しく裁判所とNAAを監視する毎回の傍聴闘争が決定的に大事です。
 ----岸田政権との対決の上で、三里塚は重要な位置を持ちますね。
 安倍国葬に対し、強烈な反対の声がたたきつけられました。自民党と統一教会=勝共連合との結びつきが暴露される中で、岸田政権の支持率は危険水域の30%台を割り込んだとの報道もあります。
 岸田は、憲法第9条改悪、大軍拡政策、米帝国主義と結託してのウクライナ戦争加担、中国侵略戦争遂行の道を進むために、安倍の死を利用しようとしたが、この攻撃は破産しました。
 一方で成田空港は旅客が激減し、完全に経営破綻的な状況ですが、なおかつ機能強化・第3滑走路建設を強行しようとしている。これまで「公共性・公益性」を振りかざして進めた空港建設を、今や兵站(へいたん)基地・軍事空港として使うために進めていると言わざるをえない。
 この改憲・戦争攻撃と対決し岸田政権を倒す闘いの一環として、三里塚闘争は大きな意味を持ちます。連合の芳野会長の国葬出席が労働者の怒りを買う中で、動労千葉を中心とする3労組が主催する11月6日の日比谷野音での大集会が重要です。
 三里塚闘争も労農連帯の力で勝利の糸口をつかむ時であり、強制執行をやれば人民の怒りの火に油を注ぎ、闘いが爆発することを彼らに痛烈に思い知らせなければなりません。
 農地死守の実力闘争と一体で、みなさんとともに弁護団は裁判闘争勝利へ全力で闘います。

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反対同盟が空港拡張計画の白紙撤回を呼びかけるネット署名はこちらから



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