明日も耕す 農業問題の今 「廃食用油」めぐり争奪戦 SAF導入で飼料が高騰

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1098号02面04)(2022/10/24)


明日も耕す 農業問題の今
 「廃食用油」めぐり争奪戦
 SAF導入で飼料が高騰


 食料危機が叫ばれるなかで、肥料や飼料の価格高騰が大きな問題になっている。国産化が叫ばれ、下水汚泥の利用などが脚光を浴びているが、いま、意外なところで資源の「奪い合い」が起きている。
 9月16日、成田空港会社(NAA)の給油施設で、ベンチャー企業のユーグレナが製造する航空燃料のSAF(Sustainable Aviation Fuel)の導入が始まった。
 SAFは「持続可能な航空燃料」を意味する。バイオマス、廃食油、都市ごみなどを原料とし、従来の化石燃料よりCO2の排出量を大幅に削減できるとされている。
 国際的な航空業界における脱炭素化の流れの中で、NAAは「サステナブルNRT2050」を策定し、空港から排出されるCO2を半減させるという。
 ANAとJALの両社は2030年までに使用燃料のうち、最低10%をSAFに移行する目標を設定している。
 お察しかと思うが、実はこの航空燃料と飼料が競合しているのだ。
 最高値の更新を続ける配合飼料価格の高騰は、主原料のトウモロコシや大豆かすの価格上昇が大きな要因だが、飼料用油脂の高騰も一因だ。

航空燃料を転換

 その背景にあるのがSAFの世界的な市場拡大で、どちらも原料には飲食店などから出る廃食用油が使われる。限られたパイをめぐる「取り合い」(油脂業界関係者)が起きているのだ。
 回収業者でつくる全国油脂事業協同組合連合会(全油連)によると、全国の飲食店やコンビニなどから集まる廃食用油の量は年間約40万㌧。2015年時点では、そのうちの6割強が飼料用に使われた。それが21年度には5割に低下した。
 代わって伸びたのがSAFのための輸出だ。17年ごろまでは6万㌧程度だった輸出量は、21年度には12万㌧まで増加した。
 こうした輸出分について、SAFの国産化に力を入れる政府は、「国内資源循環を進めていくことが望ましい」(環境省)とする。
 また、財団法人の運輸総合研究所は、「国内にある使用済み食用油や家庭ごみなどを全て生産に利用できれば、国内での航空機燃料のほぼ全量をSAFに置き換えられる」と試算する。

脱炭素の欺まん

 さすがに「全てを航空燃料」ということはないとしても、ますます飼料向けが圧迫されるのは火を見るより明らかだ。飼料メーカーに飼料用油脂を供給する全農は「不足感がある。焦らざるを得ない状況」と話す。
 自給飼料などの取り組みも大事だと思う。だが、目の前の価格高騰で、酪農・畜産農家はいまや壊滅的な危機にある。こうした食の資源を奪って、何が脱炭素だ!何がサステナブルだ! 
 NAAのペテンを許さず、農業と食を守るためにも、空港機能強化に反対の声を上げよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加