明日も耕す 農業問題の今 加速する「フードテック」 先端技術は食を救うか

週刊『三里塚』02頁(1123号02面03)(2023/11/13)


明日も耕す 農業問題の今
 加速する「フードテック」
 先端技術は食を救うか

(写真 シャーレで培養「肉」)


 国連食糧農業機関(FAO)は10月13日、災害による農作物や家畜の被害が過去30年で約568兆円に上ったと発表した。食料の安定的確保が叫ばれる中、今「フードテック」がメディアで盛んに取り上げられている。
 フードテックは直訳すると「食の技術」だ。
 食料不足の解消、フードロスの抑制、労働力不足の解消、多様な食習慣(宗教上、健康上)への対応、環境負荷の軽減など、さまざまな問題を解決する最先端のテクノロジーだと言われる。
 政府は「食料安全保障」の中心にフードテックを位置づけており、農水省は「みどりの食料システム戦略」の中でその推進を掲げ、積極的に企業を支援するという。
 この技術がどうなっているのか、そして何が問題なのか考察したい。

代替肉、培養肉

 いま、主に開発が進められているのが、代替肉、昆虫食、培養肉で、これらの商品化、増産が加速している。
 代替肉は、牛や豚、鶏などの肉の代わりに、植物などを用いるもので、大豆由来の植物肉が代表例だ。
 代替肉はこれまでいかに動物の肉に近いものを開発するか競争してきたが、これからの本命は、微生物を培養してタンパク質を作り出す微生物タンパクだそうだ。
 昆虫食は、イナゴの佃煮やハチノコの甘露煮など、日本では地域の食文化として根づいてきた。 だが、政府が推進している昆虫食は、食肉の代替として、あるいは食料不足に対応するために研究・量産が進められているもので、全く異質だ。
 小欄でもゲノム編集コオロギを取り上げたが、実用化が進んでいるにもかかわらず、安全性評価の仕組みもない。
 培養肉とは動物などの細胞を培養してつくる人工肉で「細胞農業」とも言われる。
 アメリカやシンガポールでは、飲食店向けに提供が始まっている。
 日本では、マルハニチロが魚の細胞を培養してつくる「培養魚肉」を2027年度にも海外で販売すると報じられた。「魚肉」で各国政府の認可を得た企業はまだなく競争が激化している。

次世代の食料?

 11月1日、NHKのクローズアップ現代で「フードテック食品最前線」が放送された。
 冒頭に料理が紹介される。白インゲンマメやニンジンを原料とした代替卵を使ったオムライス。すべて植物性原料の豚骨風ラーメンは、大豆由来のダシをベースにチャーシューは豆腐を加工。麺も卵不使用で全粒粉だ。
 また、どんな廃棄食材も粉末にできる装置や、食感を自在にコントロールできる食品用の3Dプリンターが紹介された。
 番組はフードテックを「世界の食生活を持続可能なものにする新たな食文化」と位置づける。個別の技術だけで言えば、フードロス抑制や環境負荷低減も語れるだろう。だが、本当にそうなのか。次号で問題点を掘り下げたい。

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