成田空港拡張差し止め裁判 「全員に原告適格ある」 NAAの暴論に徹底反論

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週刊『三里塚』02頁(1129号01面02)(2024/02/12)


成田空港拡張差し止め裁判
 「全員に原告適格ある」
 NAAの暴論に徹底反論

(写真 岡山忠広裁判長)
(写真 制限表面【NAA資料より】。成田市、芝山町ほか周囲の市町を規制)

(写真 千葉県弁護士会館で裁判報告集会)


 千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で1月26日、空港拡張差し止め裁判が開かれた。この裁判は、反対同盟が国と成田空港会社(NAA)に対し、 滑走路の2500㍍への延長(2006年)、第3誘導路建設(2010年)の違法性を追及し、さらに現在「空港機能強化」として進められる の再々度の北延伸による3500㍍化、C滑走路(第3滑走路)新設の工事差し止めを求める裁判である。
 被告の国はこの間、天神峰の市東孝雄さん、東峰の萩原富夫さん以外の原告には「原告適格がない」(権利や法律上保護された利益を侵害される者にあたらない)という許しがたい反論を提出していた。
 反対同盟顧問弁護団は今回徹底的に反論した。
 芝山町の白桝に住む伊藤信晴さんの家は、航空機騒音防止法第一種区域にあり、日々耐え難い騒音に苦しめられている上、空港機能強化策によって移転の対象とされている。相川勝重前町長は、「空港はいずれ24時間化される」などと近隣で放言し、芝山町の廃村化に手を貸しているありさまだ。
 成田空港に近接する地域の太郎良陽一さんの住居は、騒音被害の上、離陸後の飛行機が頭上を旋回し、いつ墜落するかとの恐怖・威圧感にさいなまれている。もともと豊かな農業地帯だったが、現在は 滑走路延長工事にかかわるダンプなどの車両が多数、粉じん、排気ガスをまき散らしながら我が物顔に往来し、地域破壊が進んでいる。
 A滑走路南に位置する三里塚、南三里塚地域に住む北原健一さん、戸村和代さん、野平清子さん、さらに空港西側の宮本麻子さんについても、騒音被害の上、航空法に基づく制限表面(円錐表面)の上に出る高さの建物の設置や樹木植栽を禁止されている(違反すると50万円以下の罰金、航空法第150条)。
 被告が言う「被害があっても耐え忍べ。国には裁量権がある」は暴論であり、全員に原告適格が認められるべきだ!
 次回期日を5月24日と確認して閉廷した。
 千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた。
 弁護団が発言に立った。第3滑走路建設によって、空港周辺住民が被る生活破壊、人権侵害が今後果てしなく進められる。しかし、国、NAAは、「航空法は住民の個別の利益を保護するものではない。騒音も法律違反にならない」と居直り、航空需要が右肩上がりを続けるとの願望にしがみつきながら「空港の公共性」を強弁し続けている。このような空港の存在を根本的に問う裁判として闘い抜く決意を明らかにした。
 原告・当事者として、太郎良さんが発言した。「菱田東地区では田んぼの中に重機が入っている。大事にしてきた場所が空港や工業団地、物流基地などの建設でめちゃくちゃにされていく。『金もうけ第一』の空港づくりの対極で、われわれの反対運動は農業、自然、人の命の大切さを守ろうとしている。成田の発着も過密で羽田事故と同じことがいつ起きてもおかしくない」
 続けて伊藤さんが発言した。「国は空港地域から反対者の存在を一掃するつもりだ。芝山町と北総台地全体の存続にかかわる地域破壊であり、その背後には成田の軍事空港化、兵站(へいたん)基地化の攻撃がある。反対運動の原点に立ち、周辺住民とともに闘おう」
 最後に動労千葉の山田護さんが成田空港の地上業務で深刻な人手不足が生じている現実を指摘し、「だったら拡張など直ちにやめるべき」と弾劾した。

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