明日も耕す 農業問題の今 もはや「戦時食料安保法」 改悪農業基本法全文を読む

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週刊『三里塚』02頁(1131号02面05)(2024/03/11)


明日も耕す 農業問題の今
 もはや「戦時食料安保法」
 改悪農業基本法全文を読む

(写真 小泉一成成田市長)


 政府は2月27日、農政の憲法とされる食料・農業・農村基本法改悪案を閣議決定し、国会に提出した。関連法である「食料有事法」を先に取り上げてきたが、あらためて4章56条からなる改悪案全文に目を通してみた。
 日本農業新聞の言葉を借りてひとまとめにするならば、「食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農業の持続的な発展のための生産性向上、農村での地域社会の維持」というのが法案全体の中身だ。
 だが、第一条(目的)で「食料安全保障の確保等の基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め......」とあるように、食料安全保障のために食料・農業・農村をどうするかということが法案の根本だ。
 第一条では、それまで現行法にはなかった「食料安全保障の確保」を加えた。また第二条の見出しでは、現行法の「食料の安定供給」を「食料安全保障」に改めた。
 これはもはや「戦時食料安全保障法」だ。
 先に行くと農業や農村にも言及しているが、総花的で理念法とはいえあいまいさが目立つ。

「不測時」を明記

 第二条(食料安全保障の確保)では、6項で「不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても......供給の確保が図られなければならない」と定めた。
 これに対する施策として第二十四条(不測時における措置)が新設された。不測時とは戦時のことにほかならない。
 その2項で「国は、第二条第六項に規定する場合において、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする」と規定。まさに戦時体制の構築だ。

企業参入容易に

 これを具体化するのが新法案として出される「食料供給困難事態対策法案」(食料有事法)だ。
 また、第二十六条(望ましい農業構造の確立)の「多様な農業者により農地の確保が図られるように配慮する」や、第二十八条(農地の確保及び有効利用)の「農地の利用の集積及び集団化、農地の適正かつ効率的な利用の促進」は、企業が農業に参入し、農地を所有しやすくするためだ。
 食料供給困難事態対策法案や農地関連法改悪案も27日に国会に提出されて一括審議が狙われている。マスコミ各紙は総じて食料安全保障は前提化した上で、あれやこれやの施策的内容に注文をつけている。
 だが、今国会は紛れもなく戦争国会であり、地方自治法改悪案をはじめ、さまざまな国家総動員体制づくりの法案が提出される。
 基本法はこれと一体であり、戦争のための食料安保だ。「食料安保粉砕」の声を大にしよう。
 基本法の審議は2024年度予算成立後の4月以降本格化すると言われる。国会決戦に立とう。

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