「騒音被害さらに深刻に」 スライド運用を厳しく批判 成田夜間飛行差止民事訴訟

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週刊『三里塚』02頁(1164号02面01)(2025/07/28)


「騒音被害さらに深刻に」
 スライド運用を厳しく批判
 成田夜間飛行差止民事訴訟

(写真 閉廷後の裁判報告集会)


 成田空港騒音被害訴訟団による民事訴訟第6回口頭弁論が7月9日、千葉地裁(村主隆行裁判長)で開かれました。
 この裁判は、成田空港の周辺住民(成田市、芝山町、多古町、横芝光町、茨城県稲敷市)が成田空港会社(NAA)に対し、午後9時から午前7時の飛行差し止めと損害賠償を求めているものです。
 この日は、裁判官の交代に伴う弁護団の意見陳述、毎回の口頭弁論で交代で行っている原告の意見陳述が行われました。
 弁護団は本訴訟の主要な要点をまとめ、成田の内陸空港としての欠陥と、その結果不可避にもたらされる騒音被害の甚だしい人権侵害を告発しました。他の内陸空港の運用時間は、おおむね朝9時から夜9時半。それに対して成田では、朝6時から夜12時まで、さらにC滑走路ができればスライド運用でさらに拡大(全体の運用時間は朝5時から夜中の12時半に)する。これは、睡眠障害をもたらし、心疾患を促進する。航空機騒音による肉体的精神的被害は甚大である。なぜ、成田だけ周辺住民への被害が許容されるのか。「成田空港だけに認められた特異な夜間使用を止めるべき」と主張しました。
 これに対して被告NAA側は、「今までスライド運用について、原告は主張していない」と原告弁護団の意見にいちゃもんをつけました。しかし弁護団の追及で結局は引き下がるという一幕も。
 この日の原告の意見陳述は、多古町で陶芸を生業としているAさんです。陶芸家としての仕事が妨害されていると指摘し、機能強化による騒音拡大や健康被害を訴え、国やNAAによる人権軽視にNOを主張しました。
 閉廷後の報告会では、進行協議の報告が行われ、弁護団は今後の立証計画として以下の5点を方針としました。①北海道大学の田鎖順太助教の成田空港の飛行データの作成と騒音の実態解明、②裁判所による現地調査の実施、③騒音被害の高感受性のアンケート調査、④騒音被害の原告本人尋問、⑤騒音問題の学者・専門家の調べ。
 次回の民事訴訟(第7回)は、9月24日(水)午前11時開廷。行政訴訟(第8回)は9月9日(火)午前11時開廷。
 立証段階に入り裁判闘争もいよいよ本格化しています。傍聴に駆けつけましょう。
(大戸剛)

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日常的騒音が作品作りを妨害
 多古町 陶芸家Aさん

 家は移転対象地区の境界から10㍍ほど。その10㍍で飛行機の騒音が変わるわけではないので、きわめて不合理だなと感じています。
 私の職業は陶芸家です。陶芸家ですので、本来は自然の条件だけに縛られ自由な暮らしであるはずなのですが、成田空港のせいで実際には不自由な生活をしています。朝は6時頃に飛行機の音で目が覚めます。リラックスした夜を過ごしたいのについイライラしてしまいます。
 陶芸の工程で作業は屋外で行います。騒音が聞こえるとイラっとしてしまい、作品作りのための集中力を高めているときには気がそがれ、仕事を中断せざるを得ません。陶芸作品にはやはり作者の精神状態が表れます。例えば絵付けの線など変わってきてしまいます。したがってイラっとした精神状態で仕事をすると、それが作品に出てしまいます。騒音により私の陶芸家としての仕事が妨害されているといえます。
 今でもこのような状態ですから、将来、機能強化計画によりC滑走路ができたらどうなってしまうのかという点は大変心配しています。成田空港会社の説明によれば、C滑走路は、私の自宅から西側に800㍍ほど、北側に2900㍍ほど離れた位置になるとのことでした。
 非常に心配した私と妻はA滑走路を使って実験してみることにしました。その結果、飛行機がとても地面に近いところを飛んでいてすぐ横を飛んでいるような感覚でした。ジェット機の窓が見分けられるようで、その近さにびっくりしました。C滑走路ができ、この体験した騒音や振動が日々の生活になってしまったらどうなるかを想像しました。離陸の時の音などがもっとうるさくなったうえに振動まで加わるときもあると思うと、今の家で暮らすのが嫌になってきます。陶芸家としての仕事を続けることは難しくなるのではないかと考えています。
 また、私は現在、逆流性食道炎を患っており服薬しております。6年ほど前には大腸がんにもなりました。これらの病気は、飛行機の騒音により日常的にストレスを受けていることの影響もあるのではないかと思います。C滑走路が2029年に完成すれば、騒音の状況はさらに悪化します。もっと多くの人たちの健康と生活が脅かされるようになります。
 このような国や成田空港株式会社による人権を軽視した方針に対して、はっきりとNOを突き付けて頂きますようお願い申し上げます。

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