睡眠妨害は命を奪う 飛行制限緩和を徹底批判 成田夜間飛行差止行政訴訟

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週刊『三里塚』02頁(1167号02面01)(2025/09/08)


睡眠妨害は命を奪う
 飛行制限緩和を徹底批判
 成田夜間飛行差止行政訴訟

(写真 裁判報告集会【9日】)


 成田空港夜間飛行差し止め請求行政訴訟の第8回口頭弁論が9月9日、千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で開かれ、傍聴しました。
 この裁判は、成田市、横芝光町、芝山町、茨城県稲敷市の住民が国を相手取って成田空港の深夜早朝(午後9時から午前7時)の離着陸禁止を求めているものです。
 冒頭、A滑走路とB滑走路にはさまれた「谷間地区」に住む芝山町の原告Aさんが意見陳述に立ちました。(要旨別掲)
 Aさんは航空機騒音による健康への影響、排気ガスなどによる環境への影響、空港拡張で地区の維持が困難になっている現状などを明らかにし、「何より、地球環境を含め、次の世代の未来を守っていただきたい」と裁判所に迫りました。
 続いて弁護団が、今回提出した準備書面の要点を述べました。
 国は健康影響について「分からない」と言うが、拷問にもあるように睡眠が奪われると人は死ぬ。夜間の航空機騒音によって高度な睡眠妨害・睡眠障害が発生するという疫学的調査・科学的知見は存在してる。2018年欧州環境騒音ガイドラインでは、夜間騒音レベルの指標であるエル・ナイト40デシベル (図書館並み。騒音評価は平均値を使うため1㍍離れた掃除機の音が1時間あたり30回発生した場合と同値)の騒音を被曝した住民のうち約11%に睡眠障害が発生する。エル・ナイト45デシベル では約15%だ。ちなみに3%の住民に障害が出れば対策が必要とWHO(世界保健機関)は言っている。
 国の交通の基幹である新幹線でも午前0時から午前6時まではまったく走行しておらず、6時間以上の静穏時間が保障され、これ以上悪化させないことも約束されている。なぜ成田だけが静穏時間をどんどん短縮されなければならないのか。
 生命・健康を破壊する計画を国が許しているのは裁量権の逸脱・濫用にあたる。夜間飛行は直ちに差し止められなければならない。
 岡山裁判長は年間発着回数の50万回化、夜間飛行制限の緩和を国が許可した基準や根拠、実状を明らかにするよう国に指示しました。さらに「スライド運用」「カーフューの弾力的運用」とは何か。国がエル・ナイトを採用しない理由などについてもただしました。
 次回期日は、12月2日(火)午前11時からです。
(土屋栄作)
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次の世代の未来を守って
 芝山町Aさん

 朝6時になると飛行機がごう音と共に降りてきます。朝は静まり返っているので、騒音が特に大きく聞こえてきます。休日だから少しゆっくり起きたいと思っていても容赦なく飛行機の騒音で起こされてしまいます。
 谷間地区はほとんどの家が山の斜面の下にあるので騒音が山々に反響して、音がこもるようになります。雲が厚いときは騒音が雲にも反響すると思われ、自宅の窓ガラスが騒音で小刻みに揺れるほどです。
 健康維持を兼ねて犬と散歩に出ますが、気持ちのよいものではありません。夕方の5時から6時くらいになると1分程度の間隔で離着陸が始まり、騒音によって心をかき乱されますし、飛行機の排気ガスやオイル等によって汚染された空気を吸っていると思うとストレスも感じるので、逆に散歩に出ることで健康を悪化させているのではないかと暗い気持ちになりながらトボトボと夕暮れ時を歩くことになります。これから先も一日も休むことなく飛び続ける飛行機の騒音に死ぬまで悩まされるのかと思うと絶望しかありません。
 大気汚染も大きな問題です。開港時は畑のビニールハウスが飛行機から落下した油で汚れてしまうということが話題になりましたが、あまり騒ぐと風評被害で作物が売れなくなるので自粛するということがありました。
 近年になって大雨や洪水、森林火災、干ばつなど大規模災害が頻繁に起きていますが、二酸化炭素排出などによる気候変動が原因とされています。新たに空港を拡張し、増便することは時代に逆行していると言わざるをえません。
 一昨年前に自宅の脇の土手が崩れました。心配なのは、こうした災害の規模や被害が年々大きくなっていることです。
 今後、空港は今の倍ほどの大きさに拡張されることになっています。騒音下で苦しんでいる住民の意思を無視して、国と成田空港会社は次々とやりたい放題です。
 移転する件数が増え、二度の移転を強いられている例もあります。移転や少子高齢化により、維持が困難になってきている地区もありますし、近い将来私の地区もそうなると思います。
 空港が拡張され人口が減っていく芝山町で、子どもたちがどのような人生を送ることになるのだろうかと考えると不安でたまらなく、夜眠れなくなってしまうこともあります。
 裁判所におかれましては抑圧された私たち住民の声にしっかりと耳を傾けていただきたい。そして私たちの健康や生活環境も守っていただきたいのですが、何より、地球環境を含めて、子どもたち次世代の未来を守っていただくようにお願いを申し上げます。

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