「みんなで大家」ついに分配金停止 やはり投資詐欺だった 成田ゲートウェイ開発計画崩壊へ NAAと成田市の責任は重大
「みんなで大家」ついに分配金停止
やはり投資詐欺だった
成田ゲートウェイ開発計画崩壊へ
NAAと成田市の責任は重大



「みんなで大家さん」の分配金がついにストップした。
本紙1158号既報の通り、成田空港A滑走路の北端の先に位置する成田市小菅地区の45・6㌶の敷地に、商業・飲食施設、アリーナ、ホテルなどを集積した観光歓楽街を造る総合開発プロジェクト「ゲートウェイ成田」が、「共生バンク」という開発会社によって進められてきた。
その子会社が資金調達として展開していたのが、不動産小口化商品「みんなで大家さんシリーズ成田」だ。一口100万円から出資を募り、毎月分配、年利回りは7%。その高利の危うさが以前から投資界では指摘されていたが、破綻が現実のものとなった。
毎月の分配金支払い予定日の今年7月31日に各出資者に届いたのは、「今月は支払えない」という通知だった。そして22日には共生バンクグループの柳瀬健一代表の動画が公開され、「8月末の支払いに間に合うよう、最善の努力をする。死守する覚悟だ」と説明した。だが、8月末の支払いもなされなかった。解約を申し込んでも「半年から1年かかる」と言われ、必要書類が送られてこないという対応だ。
怒りと不安が一気に広がり、9月5日には5人の出資者が1億円の返還を求めて東京地裁への提訴に踏み切る事態にいたった。
現場は今も更地
「みんなで大家さん」と言っても、本来大家が行う家賃徴収や物件管理などの業務を出資者が行うわけではない。
出資者はただ一口100万円預ければ、毎年7万円が返ってくる。この低金利の時代に、実に手軽でおいしい話だ。若年層から高齢者まで新規の個人投資家が殺到した。投資家と言っても、大半が「老後の資金に」「生活費の足しに」と貯金や退職金からなけなしのお金を出した労働者・市民だ。
ネット動画やSNS広告の影響力もあり、「みんなで大家さん」は累計で3万8千人から総額2千億円の投資マネーを集めた。中でも「成田シリーズ」は、21年から18回に分けて1500億円を集めた主力商品だ。
だがその投資物件であるゲートウェイ予定地はどうなっているのか。開業予定を何度も先延ばしした上、現在も「ほぼ更地」の状態だ。こんな土地から「利益」が生まれるはずもない。ではこれまでどうやって配当を支払っていたのか。「新たな出資者から集めた資金を既存の出資者の配当に回す」という、自転車操業が行われていたことは間違いない。「ポンジスキーム」の名で知られる投資詐欺の手法だ。
機能強化と一体
退職金から400万円を出した70代男性がマスコミの取材に答えて語った。「初めて投資したが、やはり成田というとどんどん開発が進むとかインバウンド需要で大きくなるという安心感があった」「分配金を生活費と年金の足しにしていたが、今は不安でしょうがない。出資金だけは返してほしい」
まさにこの「ゲートウェイ投資詐欺事件」は、一民間企業の問題ではなく、共生バンク、成田空港会社(NAA)、成田市が三位一体で進めてきた計画の結果だ。
ゲートウェイ全敷地45・6㌶のうち、売りに出した以外の18・3㌶、約4割がNAAからの借地である。20年9月にNAAと共生バンクは借地契約を取り交わしている。ところが共生バンクは2012年と13年に資産過大計上などを指摘され、最大60日の業務停止命令という重い行政処分を受けている。
国が100%の株主であるNAAは、この怪しい企業の営利のために気前よく土地を提供したのだ(もともと空港のために必要だからとして買い漁った土地だ)。
そして成田市は同開発計画を18年に都市計画審議会で検討し、19年に「小菅地区計画」として承認した。この大風呂敷でいい加減な事業計画を精査することもなく、「不特定多数の小口出資」という前代未聞の資金調達方法も含めて丸ごと認めた。
田村明比古NAA社長(当時)は4月2日、衆議院国土交通委員会に参考人として出席し、「NAAは、成田市が事業を適正と判断したから土地を貸しただけ」と開き直りの答弁をした。だが実際にはNAAは同事業の構想開始時点から深く関与し、共生バンクと協議を重ねてきたのだ。
まさにゲートウェイは成田のブランド力を最大限利用した、共生バンク、NAA、成田市が結託して進めてきた巨大開発であり、機能強化=「第2の開港」プロジェクトと不可分なのだ。投資詐欺の片棒を担いだNAA、成田市の責任は重大だ。
成田機能強化もろとも、ゲートウェイ計画に最後の断を下さなければならない。 (田宮龍一)