空港拡張差止裁判 人格権侵害を認めよ 機能強化進める国に求釈明

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1169号02面01)(2025/10/13)


空港拡張差止裁判
 人格権侵害を認めよ
 機能強化進める国に求釈明


 千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で10月3日、成田空港拡張差し止め裁判が開かれた。
 この間被告の国は、航空法第39号1項2号の「空港等又は航空保安施設の設置によつて、他人の利益を著しく害することとならないものであること」の条文を曲解し、原告適格を認めないと主張してきた。つまり「他人の利益とは財産権のことだ。そこに土地や家を持っていない者には訴訟を起こす資格がない」というのだ。
 個々人が受ける騒音被害、健康破壊、生活への支障、落下物や事故による生命・身体への危険などの人格権に考慮する必要はない----こんな人間を無視する考え方で空港を造ろうとは、憲法第13条(人権保障)、第25条(生存権)に背き、根本から間違っている。
 反対同盟顧問弁護団は準備書面59を陳述し、千葉地裁や東京高裁での判例をも引用しながら、また「騒防法」「騒特法」の目的・内容を検討しつつ、「騒音、振動等による著しい被害を受けない利益を著しく害されない」権利が法律の上で保護されていることを突き出した。
 さらに、被告の国とNAAに対し、「地元住民にお願いする立場」という自身の建前もかなぐり捨て、市東孝雄さんについて「自らの意思で天神峰に戻ってきたから、人格権共有の主体ではない」と言い放つなどの傲慢(ごうまん)で横暴な訴訟態度を弾劾した。
 そして国に対する求釈明として、①航空法39条の「他人の利益」に周辺住民の人格権が含まれるか否か、②芝山町の死亡原因の第1位が心疾患であり、航空機騒音がその原因であることを認めるか否かについて、明白に回答するよう迫った。
 その上で岡山裁判長が国に、06年、10年、20年の変更許可にともなって行ってきた環境アセスメント(騒音などが環境に及ぼす影響の調査・予測・評価)を踏まえ、「他人の利益とは財産権のみ」「人格権に考慮する必要なし」との主張について問いただし、意見を補充し説明するよう求釈明を行った。
 国の代理人はおのれの主張が裁判長に否定されたことに打撃を受けつつ、しぶしぶ書面の提出を約束した。
 次回期日を1月20日、次々回を5月12日と確認し、閉廷した。
 千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた(写真)。弁護団がそれぞれ発言し、裁判所が「他人の権利」に人格権をはっきりと認めたことの重要性を確認した。
 弁護団はさらに、この日、空港周辺の成田市、芝山町、横芝光町、茨城県稲敷市の住民30人が原告となって、国・NAAに対し機能強化・新滑走路建設差し止めを求める新たな訴訟に踏み切ったことを報告した。今後、この空港拡張差止訴訟と併合して闘う方向性が明らかにされた。
 また耕作権裁判と団結街道裁判の控訴審について、東京高裁との間で今後いよいよ攻防が具体化し激化していくことが報告された。
 最後に伊藤さんが参加者に檄を飛ばした。「今自衛隊による北朝鮮、中国を射程に入れたミサイル配備が前倒しで進められ、専守防衛をかなぐり捨て戦争準備が進められている。成田機能強化の攻撃は軍事使用、兵站(へいたん)基地化が狙いだ。10・12全国集会の大成功をかちとろう!」

このエントリーをはてなブックマークに追加