成田夜間飛行差し止め民事訴訟 騒音が睡眠を妨げている 因果関係否定のNAAを追及
成田夜間飛行差し止め民事訴訟
騒音が睡眠を妨げている
因果関係否定のNAAを追及

成田空港騒音被害訴訟団による民事訴訟第7回口頭弁論が9月24日、千葉地裁(村主隆行裁判長)で開かれました。
この裁判は、成田空港の周辺住民(成田市、芝山町、多古町、横芝光町、茨城県稲敷市)が成田空港会社(NAA)に対し、午後9時から午前7時の飛行差し止めと損害賠償を求めているものです。
この日の原告の意見陳述は、芝山町の騒音「谷間地区」の住民Aさんです。今年6月の行政訴訟での訴えをブラッシュアップして陳述しました(要旨別掲)。
つづけて弁護団は、「成田国際空港航空機騒音健康影響調査委員会」が小林理学研究所に実施させた調査報告書について、被告NAAの主張への反論を行いました。小林理研の調査報告書は、NAAの関与で「睡眠妨害」を「睡眠影響」と言い換えるなど、不十分のものですが、睡眠妨害と航空機騒音との関係については疫学的因果関係を認めています。そのため原告団は、本訴訟でも証拠として提出しています。
それに対して、NAAは「(小林理研の調査手法が)被害の時間的な変化が把握できないため、因果関係の推測は困難」ととんでもない理由で証拠能力を否定しました。弁護団は、このNAA主張を「小林理研の調査は、NAAが関与して行われた。調査手法・時期等に問題がある場合に、適正に対処する責任はNAAだ。この主張は、著しく正義に反する」と弾劾しました。
また、NAAは小林理研調査結果を都合よく解釈し、「睡眠妨害が真に航空機騒音によるものかは断定できない」とも反論しています。弁護団は、「(同じ調査報告記載の)睡眠時の脳波測定によって睡眠妨害が生じていることが客観的に明らか」と突きつけました。NAAは、入眠困難、中途覚醒、早期覚醒及び熟睡困難の頻度の調査結果に対しても、底の浅いこじつけで否定しましたが、弁護団はこれを許しませんでした。
弁護団は、「調査によって、睡眠妨害を含む生活妨害と騒音曝露量に強い正の関係があることを確認」「原告の中には、自身や家族の疾病について睡眠妨害が影響しているのではないかと強く疑っている者が多数存在」「今後原告らの調査分析を行い、騒音曝露量と睡眠妨害との関係についての立証を補充する」とまとめました。
次回の裁判(民事訴訟)は、12月17日(水)午前11時開廷。行政訴訟は12月2日(火)午前11時開廷です。ぜひ傍聴に駆けつけましょう。
(大戸剛)
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45年騒音に苦しめられ
芝山町 Aさん
成田空港が開港したのは、小学5年生の時でした。今でも爆音と黒い煙を出しながら飛び立つ飛行機の当時の記憶があります。
私の住まいは、成田空港の南側、直線距離にして約8㌔。この地区は、「谷間地域」と言われています。両方の飛行経路からの騒音被害を二重に受ける場所です。ひっきりなしに上空を飛行機が飛んでいるような状況で、残響音も含め騒音が鳴り続けているような、飛行直下にも勝るとも劣らない非常に過酷な地域です。このような騒音に、私は45年以上さらされてきたのです。
今回の訴訟は、夜間の飛行禁止だけを求めていますが、昼間の時間帯の騒音も、本当は耐え難いものです。休憩の時にテレビを見ていても、音が聞こえづらく、本を読んでいても集中できないと感じることが多々あります。そういった本音は抑えて、せめて何とか睡眠時間だけは確保してほしいと願って、この裁判に臨んでいます。
成田空港は開港以来23時から翌朝6時までしか飛行機禁止はありませんでした。しかも、オリンピック開催にかこつけて2019年10月27日よりカーフュー(時間制限)の弾力的運用を含めて午前0時30分までの運用時間となり、どんどん睡眠に必要な静穏時間が奪われていきました。飛行機騒音による睡眠障害によって、私たち地域住民が健康被害を受けていることは明らかです。私たちの健康や命を犠牲にして、皆さんは飛行機に乗っておられるのです。
私の父は突然死しました。父と一緒の寝室で寝ていた母が、うるさくて眠れなかったとよく話していましたので、父の度重なる疾病と突然死にも長年の睡眠妨害の影響があったのではないかと思っています。母も突然死をしてしまうのではないかと、毎朝や会社帰宅後に母の顔を見るまで心配でなりません。
この裁判は私にとって、母親の健康と命を守るための闘いでもあるのです。