明日も耕す 農業問題の今 「同志国自給」のささやき 資源・食料の勢力圏化ねらい
週刊『三里塚』02頁(1173号02面06)(2025/12/08)
明日も耕す 農業問題の今
「同志国自給」のささやき
資源・食料の勢力圏化ねらい
前号で高市首相の「食料自給率100%」のために、なぜ植物工場が第一なのか考察した。植物工場が継戦能力確保の第一級の課題だとして、それだけでは戦時食料生産はおぼつかない。日帝は食料確保をどうするのか。
インターネットでいろいろと検索していたら、ひとつの記事が目にとまった。「おこめとおくに その2 軍事化と農と食、多重安保構造のもとで大軍拡の時代」と題するジャーナリスト・大野和興さんの記事だ。
いくつか抜粋する。
――そこで今、奇妙な自給論議が密かにささやかれています。「同志国自給」という言葉です。
――同志国とは対中国を意識した言葉で、日米同盟を軸にカナダ、オーストラリアなど太平洋諸国とアジア諸国を組み込んだ「自由で開かれたインド太平洋」を指しています。
——―アジア太平洋軍事圏はそのまま「食料自給圏」と重なる。日本一国が自給しなくてもなんの不都合もない。
小泉農水相外遊
さっそく「同志国自給」で検索してみたが、この記事以外見当たらず、誰によって「密かにささやかれて」いるのかはわからない。記事は3月29日付で、石破政権時代。ここで思い出したのが当時の小泉農林水産大臣のフィリピン訪問(10月1日)だ。小泉は自民党総裁選中に異例の外遊として、ASEAN+3農林大臣会合に出席し、食料安全保障などについて議論したという。
「同志国自給」の「ささやき」に合点がいってしまう動きではないか。
さかのぼれば、横浜市で8月20~22日に開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で、当時の石破首相がアフリカにインドや中東を含めた新経済圏構想「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」を提唱したことも同様だ。市場・資源と食料を強奪し、あからさまに勢力圏化を狙う姿勢に他ならない。
高市政権になってから、表だってこうした動きは見えないが、かつて日帝が「自給」するためにたどった道は、「満蒙開拓」に代表されるように海外侵略で植民地をつくり、「自給」経済圏をつくるやり方だ。日帝の政策の根幹には、常にアジア勢力圏化がある。
祖国敗北主義を
高市が軍事費の国内総生産(GDP)比2%化を進め、中国侵略戦争が身近に迫る中で、「食と農を守ることこそが最大の安全保障」といった論を多く目にする。日本共産党は「農業を守り育てることは安全保障の根幹」「命を支える食料や農業にこそ予算の拡充が必要」(6月1日付赤旗電子版)と言う。
だが、祖国敗北主義=帝国主義打倒の革命の立場に立たず、「自国の安全保障」「自国の防衛の必要」を認めて食料自給を云々するなら、結局は戦争賛成になる。
「日本の食料・農業を守れ」ではなく、「戦争絶対反対・高市打倒」こそが取るべき立場だ。