NAA統合報告書2025を弾劾する 成田の深刻危機と反人民性はもうごまかせない
NAA統合報告書2025を弾劾する
成田の深刻危機と反人民性はもうごまかせない

成田国際空港株式会社(NAA)は1月30日、「統合報告書2025」を発行した。毎年、この時期に発表しているものだが、例年以上に「成田空港が目指す将来像と価値創造のための取り組み」なるものを強調している。NAAの狙いは、成田機能拡張工事と「エアポートシティ構想」の世論づくりである。
「存在価値強調」はあせりの表れ
そもそも、統合報告書は、株主・投資家向けに各種財務情報、株式情報などをまとめたものだが、近年、企業が「自分たちは何で価値を生みどこへ向かうのか」を社内外に示すためのツールとして、一部で流行している。統合報告書を出す企業側の意義は、中長期の価値創造を「ブランド・ガバナンス・サステナビリティ(環境・社会)」といった〝無形資産〟を含めて、どう生み出すかを示し、企業ブランド・信頼性の向上を印象付けることにある。
NAAの統合報告書も、このブランドづくりのために力点を置いている。NAAは、前書きにおいて、次のように言う。「本報告書は『成田空港がどのようにして長期的に価値を生み出していくのか』を、『社会インフラとしての役割・使命、ステークホルダーとの関係性』といった視点で記載」。そして、今年の報告書は、「ESG(環境への配慮・社会的責任・企業統治の向上)の観点を主軸とした昨年度までの構成から、価値創造のストーリーがさらに分かりやすくなるように再編成」と。つまり「価値創造のストーリー」なるものを手前勝手に羅列し、表や図で、成田空港の存在価値や機能強化の意義が印象付けられるようになっている。
このような印象付けが必要なわけは、成田空港とNAAの反人民性と破綻性である。住民を無視し機動隊の暴力で強権的に空港建設を進め、農地を奪い、住民をたたき出し、北総台地一帯を騒音地獄におとし入れてきたのが、成田空港建設である。今や、羽田との競争に敗れ、老朽化し時代遅れとなったターミナルやアクセス施設を自力では更新することもできない。機能強化に反対する周辺住民が、反対同盟とともに訴訟に加わり、C滑走路予定地の買収のめども立たない。このような危機にNAAは追い込まれている。このどん詰まりからのあがきが透けて見える。
収益改善のため住民生活を破壊
昨年、新社長に就任した藤井直樹は、冒頭あいさつで「社会インフラとしての使命―空港の社会的価値」を強調し、「国土交通行政に携わってきた者として、この国の空の玄関口である成田空港を次の世代へ責任をもって引き継ぐことが、自らの最大の責務」と宣言する。藤井は、前社長田村と同じく首都圏空港拡張計画を策定した官僚であり、C滑走路建設の張本人だ。
他方、官僚らしく成田の破綻性も吐露している。藤井は「長距離国際線の羽田空港へのシフトが進んだことなどにより、成田空港では短距離・小型機の発着比率が上昇し、収益構造の改善という新たな課題が浮き彫り」と指摘している。つまり、LCC誘致に活路を見出さざるを得ない成田空港は、収益の減収という事業体にとって継続の危機に直面しているのだ。
藤井があえてこの点に触れた理由は、成田の貨物空港化を突き出したいからである。藤井は、「成田空港は依然として日本最大の航空貨物拠点であり、貿易立国・日本の産業競争力を支える重要な基盤」という。しかし、貨物便の増大は航空機騒音の増大でもある。貨物便は、深夜早朝の時間帯が多数であり、その重量から航空機騒音は拡大する。周辺住民の航空機騒音の苦情では、貨物便に対するものが特に多いのが現状だ。
また、藤井は「乗り継ぎ需要」の開拓をねらう。「今後の成長には、旅客・貨物の両面でアジアと北米という巨大な経済圏を結ぶハブ空港としての機能をさらに高め、乗り継ぎ需要を確実に獲得していくことが不可欠」と言う。すでに韓国・仁川空港や台湾・桃園空港など、近隣の主要ハブとの競争に成田の勝機はない。成田がハブ空港になるためには、利用料の引き下げと深夜・早朝便の増大である。これらも周辺住民破壊の増大である。
成田空港の破綻性と周辺住民の犠牲の拡大ゆえに藤井は、「成田空港の発展は、長い年月をかけて築かれてきた地域社会の皆様のご理解とご協力の上に成り立っています。『空港づくりは地域づくり』という考えのもと、空港と地域が持続的に共生・共栄することは、NAAが長年にわたり大切にしてきた価値観です」などと、外面作りの地元政策を並べる。
周辺住民を犠牲にする成田拡張工事と「エアポートシティ構想」、それを推進するNAA「統合報告書2025」弾劾しよう。
(大戸剛)