明日も耕す 農業問題の今 乾田直播(かんでんちょくは)は稲作の切り札か

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週刊『三里塚』02頁(1180号02面04)(2026/03/23)


明日も耕す 農業問題の今
 乾田直播(かんでんちょくは)は稲作の切り札か

(写真 高速で大面積の播種が可能というV溝直播機)

農薬依存の大規模化へ?

 高市首相は農業構造転換による食料安全保障の確立を掲げ、農地の大区画化や集積・集約、スマート農業の導入加速などを推し進めている。こうした政策の切り札であるかのように今、節水型乾田直播が宣伝されている。
 乾いた田に水稲の種もみをまき、出芽後は省力的な水管理をしていくのが節水型乾田直播で、稲作で労力がかかる育苗と水管理の作業時間を減らすことができるという。
 有機農業・自然農法でもありうるし、乾田直播そのものが悪いということではないが、問題は大規模・農薬依存の乾田直播とそれを進める政策だ。
 農水省は、省力化に資する田植え不要の米づくりの取り組みを推進するとして「田植え不要の米づくりコンソーシアム」を立ち上げ、25年9月に第1回を開催した。
 小泉進次郎農水相(当時)は、「田植えをしなくても米ができる。これはまさに米作りの常識を変える可能性のある技術だ」とあいさつし、推進姿勢を打ち出している。

省力化追い求め

 2月24日、国会内で市民団体による「節水型乾田直播問題を考える院内集会」が開かれた。
 集会では節水型乾田直播について「省力化して人を減らすのではなく、農家を増やす政策が大切」「水田稲作は日本の文化。省力化、コストカットの考えで普及するのは問題」といった意見が出された。
 農水省の担当者は「まだ検証が必要な新技術という位置づけで、実証試験などで普及可能なものか検証していく」と「前のめり」を否定した。
 だが「多面的機能(田んぼのダム機能など)への影響」も検証に含めるべき」などの声には、「ご意見は承った」と答えるのみで、参加者から「最初から推進という結論は見えている」という声が上がった。

中小農家つぶし

 「乾田直播は世界のスタンダードだ」と言う農水官僚もいるという。もともと水田の少ない北米や南米では乾田直播が多く、近年、省力のために東南アジアや南アジアでも乾田直播導入の動きが進んでいる。
 だが他方、ブラジルでアグロエコロジーを進めるMST(土地なし農村労働者運動)は近年、アジアの水田のすばらしさに気が付き、乾田を水田に替える試みを始めているのだ。
 水田は雑草を効果的に抑制できるが、乾田直播では雑草は避けられないので、農薬の使用は増え、化学肥料もなくてはならなくなる。
 北米や中南米では、ラウンドアップ(除草剤)耐性稲によるモンサント(現バイエル)の支配が進んでいたが、さらに来年、ゲノム編集稲が投入される可能性が取り沙汰されているのだ。
 大規模な乾田直播は、遺伝子組み換え企業=農薬企業、農業機械企業のためのものだ。
 その推進は、農業構造転換の名による中小農家切り捨て=戦時体制づくりの農業大改悪だ。
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