人格権侵害の事実認めよ 反対同盟顧問弁護団が意見陳述 成田空港拡張差し止め裁判
人格権侵害の事実認めよ
反対同盟顧問弁護団が意見陳述
成田空港拡張差し止め裁判


成田空港拡張差し止め裁判が5月12日、千葉地裁民事第3部で開かれた。この日から裁判官全員の顔ぶれが変わった。民事第3部の新裁判長は、大寄久(ごうより・ひさし)、昨年度末までは東京高裁の民事部にいた。左右陪席裁判官も含め一度に3人全員が交代するのは極めて異例だ。
今回は弁論更新手続きとして反対同盟顧問弁護団が以下の内容の意見陳述を行った。
航空法第39条1項2号には、「他人の権利を著しく害することにならないものであること」と空港設置の要件が明記されている。この「他人の権利」について被告の国とNAAは「財産権(不動産所有)に限定される。人格権は含まれない」と主張している。つまり空港近隣の住民が激しい騒音や事故の危険性によって生命と健康を維持し、生活を営んでいく上で著しく支障をきたしても知ったことではないというのだ。こんなデタラメがあるか。人々の生命・健康は憲法第25条、13条等によって保障されている基本的人権である。厚木基地騒音訴訟では、損害賠償を認め、騒音被害を受けた近隣住民の人格権侵害の違法性判断は、完全に定着している。
ところが年間騒音量では厚木の10倍にも達する成田空港においては、被告・国が人格権侵害を認めないとの主張を繰り返し、原告に向かって「所有する財産を明らかにしろ」などと筋違いの要求を出してくるのだ。
そして、NAAは6月にも機能強化・新滑走路建設について用地確保が困難になったことから、土地収用法に基づく事業認定の申請を6月にも行おうとしている。断じて認めることはできない。
そもそも成田空港建設については、国と空港公団(NAAの前身)が90年代において収用裁決申請を取り下げ、「あらゆる意味で強制的手段を用いない」旨を社会的に公約した。黒野匡彦NAA社長は05年に東峰住民に向けて「人間としての名誉、尊厳を損なっていた」とする謝罪の手紙を送っている。
ところが、そうした自らの非を認めた言辞は、ことごとくペテンであった。今日NAAは居丈高に、年間50万回発着へ向け第3滑走路が必要だから土地を寄こせと臆面もなく要求し、土地収用法で強制収用を行おうとまでしている。あるいは祖父の代から天神峰で営農を続けている原告・市東孝雄さんについて、「人の居住を予定していない場所に住んでいるから、騒音被害を受けても当然だ」と言い放ってきた。
このようにして人の生活を踏みにじって恥じない空港には何ら「公共性」はない。新型コロナ下では、成田から1機も飛行機が飛ばなくても、人民の生活は支障なく続いていた。そして現代帝国主義は戦争遂行でしか延命できない存在であり、全世界的な戦争情勢の深まりと一体で、成田の拡張も進められようとしている。
成田空港建設の歴史は憲法違反の累積であり、またこの千葉地裁においてもたびたびNAA側の主張を追認するだけの最初から結論ありきの判決が出されてきた。新裁判長がそれと同じ過ちを繰り返すようなことがあってはならない!
弁護団の意見陳述が、法廷を制した。
次回期日を9月8日と確認し、閉廷した。