International Lavor Movement 2010/10/01(No.410 p48)

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2010/10/01発行 No.410

定価 315円(本体価格300円+税)


第410号の目次

表紙の画像

表紙の写真 ヒロシマ大行動のデモに出る日独の学生ら(8月6日)

■羅針盤/「新成長戦略」粉砕しよう 記事を読む
■News & Review/韓国
 派遣法絶対禁止の闘い進む
 不法派遣判決をテコに非正規労組が拡大
記事を読む
■News & Review/中国
 労働者の巨大な階級的反乱始まる
 争闘戦激化の中で世界戦争にのめり込む
記事を読む
■News & Review/アフガニスタン
 混迷と泥沼化深める米侵略戦争
 米政権中枢と対立、現地最高司令官更迭
記事を読む
■特集/オバマ政権への怒りの決起 記事を読む
■翻訳資料/「核態勢見直し(NPR)2010」(下)
 鵜川遊作 訳
記事を読む
■Photo News
 ●アリゾナ州で新移民法に抗議する闘い
 ●ホテル労働者の抗議闘争
 ●フィリピン・トヨタの労働者の闘い
 ●上海でもパナソニックの労働者がスト
記事を読む
■世界経済の焦点/日本の財政危機 国債暴落は必至
 菅政権の参院選大敗で財政再建はもはや手遅れに
記事を読む
■世界の労働組合(イギリス編)
 鉄道・海運・運輸労働者全国労働組合
 (National Union of Railway, Maritime and Transport Union:RMT)
記事を読む
■国際労働運動の暦 10月21日
 ■1966年〜国際反戦デー■
 ベトナム北爆に反対
 総評がストに立ち世界に呼びかけ
 68年は燃料阻止で新宿「騒乱」闘争
記事を読む
■日誌 7月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 靖国神社弾劾デモに立つ青年労働者ら(8月15日)

月刊『国際労働運動』(410号1-1)(2010/10/01)

羅針盤

■羅針盤/「新成長戦略」粉砕しよう

▼日帝ブルジョアジー、菅政権、連合が一体となって「新成長戦略で国家の危機を救え」と叫んでいる。「新成長戦略」とは、6千万労働者、2千万青年労働者から血の一滴まで極限的に搾取し、「東アジア共同体」という現代の「大東亜共栄圏」を掲げて侵略と戦争へうって出る大攻撃だ。新成長戦略の一環としてある「地域主権戦略、新しい公共」の狙いは、2012年の人勧(人事院勧告)体制解体をとおして道州制攻撃、360万公務員の首切り、労働者階級の非正規職化、外注化による「雇用創出」やボランティア化を強行することだ。それによって労働者階級の組織的な抵抗と団結の解体、分断を狙っている。青年労働者はこの新成長戦略を菅政権もろとも粉砕しなければ生きることさえできない。
▼だが、資本主義は終わりを迎えている。労働者階級の立場は「ギリシャの労働者のように立ち上がろう」「資本主義の危機を労働者の闘いで促進し、打倒しよう」ということであり、「労働者階級の党をつくって最後の勝利を手にしよう」ということだ。大恐慌時代こそ、プロレタリア世界革命の現実性に満ちあふれている。
▼連合幹部や体制内勢力は「労働者は闘っても勝てない」という。そんなことは絶対にない。動労千葉は、JR資本の総力をあげた大合理化攻撃をストライキと青年労働者の組織拡大で粉砕した。全日建運輸連帯・関西地区生コン支部は大手ゼネコンを相手に「産業的ゼネスト」闘争で勝利している。11月集会派は、労働者階級が本気で団結すれば新自由主義に勝利できることを示している。労働者階級は、資本主義に代わる社会主義社会を建設できる力を持っている。

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月刊『国際労働運動』(410号2-1)(2010/10/01)

■News & Review/韓国

派遣法絶対禁止の闘い進む

不法派遣判決をテコに非正規労組が拡大

 現代(ヒュンデ)自動車非正規職労働者がこの6年以上も闘ってきた下請け撤廃・正規職化戦取闘争が、7・22大法院(日本の最高裁)判決を引き出した。7月22日、現代自動車で2年以上勤務した下請け労働者は正規職と見なせという大法院判決をかちとったのだ。今年3月の大法院判決、現代重工業下請け労働者の実雇用主は現代重工業であるという判決とともに、“現代の人身売買制度”である下請け・非正規制度に対する決定的な法的判断だ。

 □団結し闘いぬいた6年

 現代自動車の下請け労働者たちは、2005年の不法派遣正規職化戦取闘争だけで100人を超す組合員が解雇されるなど、03年に労働組合を結成して以来、闘えば解雇されるという厳しい状況で千人近い組合員が民主労組を守り抜いてきた。
 判決当日の7月22日午前7時、現代自動車非正規職支会は鍛造正門前で出勤闘争を闘った後、現代車蔚山(ウルサン)2工場前で整理解雇粉砕決意大会を開いた。整理解雇通知を受けた現代車2工場生産管理、艤装部所属の非正規職支会組合員など50人ほどが集まった。
 イサンス支会長は「2工場の整理解雇問題解決まで闘う。外注化、モジュール化、自動化、編成効率の名で非正規職が工場の外に追い出されている。簡単に退けば簡単に整理される。抵抗すれば使用者側は回答せざるを得ない」と呼びかけた。参加者は決意を込めた8拍子のシュプレヒコールで気勢を上げた。「整理解雇撤回しろ!」「人間らしく生きよう!」「非正規職を撤廃しろ!」
 韓国ではIMF事態後の98年、一部の業種だけに労働者の供給を認める派遣法が施行された。ところが派遣が禁止されていた自動車工場や造船などの製造業で横行したのが、合法請負を偽装した不法派遣だった。業務契約により事実上、派遣のように人材契約をし、元請け企業の工場で働かせる。この場合、元請け企業管理者が下請け企業労働者に業務を指示して労務管理する。これが偽装請負・不法派遣だ。
 今回の大法院判決の原告・チェビョンスン組合員(現・金属労組未組織非正規職局長)は、02年3月13日に現代車蔚山工場のある社内下請け業者に入社した後、労組活動を理由に05年2月2日、下請け業者から解雇された。チェビョンスン組合員らは、@旧派遣法(現行派遣法は07年7月1日施行)6条3項「直接雇用甘受規定」に基づいて、元請けの現代車が直接不当解雇および不当労働行為をしたこと、A現代車の社内下請け業者は偽装請負であり、2年たった時点ではなく採用時点から正規職と見なさなければならないと主張し争ってきた。
 大法院は、@について旧派遣法の直接雇用見なし規定について、適法な勤労者派遣の場合だけに適用されると縮小解釈することはできないとの判断を示し、2年以上、社内下請け業者で勤務した労働者は正規職雇用と見なせと判決したが、Aの主張は認めず、2年に満たない原告には破棄差し戻しをしなかった。

 □労組集団加入運動に突入

(写真 現代自動車蔚山3工場で開かれた懇談会に集まった非正規労働者たち。その場で労組加入願書を書く【8月19日】)

 これに対し、現代車非正規支会は7月27日、2010年賃金団体協議闘争速報と「不法派遣の正規職化戦取のための非正規職労働者説明会資料集」を発行して大々的な現場組織化、労組集団加入運動に突入した。
 現代車非正規職3支会(蔚山、牙山(アサン)、全州(チョンジュ))は、現代車に「不法派遣撤廃! 非正規職即刻転換」のための交渉を要求し、8点(@非正規労働者と3支会および対国民謝罪、A社内下請け労働者全員の正規職化、B全解雇者の正規職化、C同一部署・同一勤続による未払い賃金支給、D不当懲戒および拘束・手配に対する補償、E故リュギヒョク烈士の名誉回復、F現在進行中の整理解雇の即刻中止、G今後、不当な非正規職労働者を使用しないこと)の労使合意を要求した。
 600人ほどだった蔚山支会の組合員数は集団加入運動1週間で1200人に、さらに8月19日集計で1400人を突破した。各工場ごとに昼・夜と労組懇談会を実施し、その場で組合加入願書に記入してもらう。蔚山工場で働く社内下請け労働者は5800人。8月末までに2000人の組織化をめざす。
 ソウル良才洞にある現代起亜自動車本社前では、ドンヒオート社内下請け解雇者が、現代起亜車グループとの直接交渉を要求して座り込みを続けている。旧社屋前で籠城闘争を続けているキリュン電子の女性労働者たちに対しては、8月14日、16日と強制撤去のショベルカーが襲いかかっている。大法院判決が出たからといって待っていても解放されないことは、闘う労働者が一番わかっている。
 現代車非正規3支会は、リュギヒョク烈士の命日の9月4日を金属労組主催の全国労働者大会として闘おうと提起し、攻勢的な組織拡大と全国的な非正規闘争に打って出ようとしている。
 (室田順子)

(写真 7月28日、双龍(サンヨン)車平沢(ピョンテク)工場へ「解雇者復職なき拙速売却に反対する!」と書かれた横断幕を広げてデモ)

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 G20で移住労働者弾圧

 移住労組ミッシェル委員長の闘い

 李明博(イミョンバク)政権が11月にソウルで開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20)に向かって移住労働者に対する不法な摘発・強制退去攻撃に打って出ている。あらかじめ外国人労働者を「犯罪予備軍」と見なし、襲いかかっているのだ。
 5月10日に横浜で開かれた「外登法・入管法と民族差別を撃つ全国研究交流集会」に民主労総ソウル本部とともに来日したソウル京畿仁川移住労働者労働組合のミッシェル委員長は、帰国後、移住労働者摘発追放攻撃との闘いに立った。
 明洞のヒャンニン教会で断食座り込みをしていたミッシェル委員長が8月6日午前3時すぎ、突然の吐血で倒れ、病院の集中治療室に運ばれた。座り込み25日、ハンスト13日目のことだった。胃と十二指腸にできた潰瘍からの出血と診断されたが、激闘と疲労がミッシェル委員長を襲ったのだ。一日も早い回復を祈るばかりだ。
 移住労組の座り込みは続いており、6日夜には明洞聖堂で「移住労組キャンドル文化祭」が開かれた。司会を務めた移住労組のチョンヨンソプ事務局長は、「G20を口実に人がゴミのように生活基盤から道ばたに押し出されている」と怒りを語った。
(写真 吐血して入院したミッシェル委員長)

 □外国人摘発の実態

  法務部は6月1日から8月31日までを未登録移住者集中摘発期間と定め、警察庁も5月2日から50日間の「外国人犯罪」摘発に入った。4月21日に出入国管理法改悪案が国会で成立し、廃止された外国人指紋押捺を拡大、復活し、外国人の顔写真などの生体情報提供を義務化するなど、移住労働者に対する人権侵害が強行されている。
 4月7日には大邱(テグ)出入国管理所の無理な摘発でカンボジア移住労働者が重傷を負う事件が発生したが、さらに、外国人移住労働運動協議会(外労協)によれば、ネパール人のグルン氏は8月12日午前7時40分ころ、京畿道安山(キョンギドアンサン)の工場へバイクで出勤の途中、乗用車と衝突、右くるぶし骨折など全治6週間の傷を負った。グルン氏が未登録滞留中であるとした警察が手術からわずか4日後の8月16日にグルン氏を強制退院させ、仁川(インチョン)出入国管理所に引き渡したというのだ。外労協は保護所に引き渡されたグルン氏がまったく治療を受けられずにいるとし、「仁川入管事務所側がとりあえず解放する『一時保護解除』措置を検討しているが、1000万ウォンの保証金を要求している」と弾劾している。
 03年、当時の盧武鉉(ノムヒョン)政権が「合法的な外国労働者の活用制度で、生産職労働力難を緩和し、不法滞留者問題を解決」するとして導入されたのが雇用許可制だ。その施行に先立ち「不法滞留者問題」解決方案として未登録移住労働者への大規模な摘発が行われた。10年近く韓国に滞留した多くの移住労働者が追放される危機に瀕した。
 移住労働者たちは家と工場に隠れた。地下鉄の線路に身を投げたスリランカの労働者タルカ氏をはじめ、多くの移住労働者が自ら命を絶った。しかし移住労働者の一部は身をすくめて静まっていることを拒否した。摘発に抗議する座り込みが明洞聖堂をはじめとする各地で起きた。この闘いの中から「私たちの問題は韓国労働者の問題でもある」と叫んだ移住労働者たちが、2005年に移住労働組合を結成した。

(写真 座り込み中のミッシェル委員長【右】と明洞聖堂前で開かれた8・6移住労組キャンドル文化祭)

 □労働組合の力

 ミッシェル委員長は、5・9入管集会の翌10日に動労千葉で開かれた「日韓移住労働者運動報告会」で韓国の移住労働者の現実と労働組合への組織化について講演した。
 「雇用許可制が施行される前、産業研修制が90年代に導入されました。研修生と呼ばれていましたが、労働権は与えられず、人種差別や虐待的な処遇でたくさんの研修生が離脱し、結果として未登録移住労働者の人口が増えました。
 04年に導入された雇用許可制では、職場の変更は3回を限度とすると制限されており、雇用許可制のもとで働く移住労働者が権利を行使できなくするシステムです。法的地位を失うことを恐れて、移住労働者は低水準の仕事と生活状況に耐えました」
 「私は韓国で移住労働者の労働運動を進めることが重要だと考えています。言葉の壁は労働者としてともに闘う立場に立てば超えられるものです。移住労働者とその国に暮らす労働者は敵対的ではなく、同志的な関係であるべきです。労働者にはさまざまな分断を超えて団結することができる力があります。移住労働者が労働組合を結成して闘うのもそのためです」
 ミッシェル委員長は、集中治療室でさえハンストを続ける意志を示したという。ミッシェル委員長は民主労総ソウル本部とともに
国鉄全国運動の呼びかけ人となった32人の1人だ。国際連帯を貫き、ソウルG20―横浜APECを口実とした外国人労働者への不当弾圧を粉砕しよう!

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月刊『国際労働運動』(410号2-2)(2010/10/01)

■News & Review/中国

労働者の巨大な階級的反乱始まる

争闘戦激化の中で世界戦争にのめり込む

 □切迫するバブル崩壊とスターリン主義の矛盾

 世界大恐慌の深まりの中で、中国の経済と政治・軍事は明らかな変調過程に入った。そこに中国労働者階級人民の新たな階級的決起がわき起こっている。中国発のバブル崩壊は世界大恐慌を決定的に加速し、逆にそれを受けた中国スターリン主義支配の矛盾を激化させ、労働者階級人民の闘いが巨大に爆発する情勢が近付いている。
 中国経済の変調は、中国スターリン主義支配の構造的矛盾に関わる問題と帝国主義経済体制に組み込まれた中で起きている問題との二面で起きている。
 前者の面では、以下の問題があげられる
 一、株式の低迷状態、不動産価格の伸びの鈍化。投機的投資の漸減傾向の顕在化。
 二、鉱工業生産の伸びの鈍化と在庫積み増し傾向の顕在化。輸入の鈍化傾向=今年後半の生産の減速は確定的。
 三、自動車販売の補助金打ち切りによる頭打ち傾向など個人消費の伸びの緩慢さ。
 四、銀行の融資残高の激増と地方政府の膨大な債務の積み上がり、その中での不良債権の顕在化といった問題。
 08年後半からの4兆元の景気刺激策は公共事業中心の固定資産投資によって、輸出激減で下降した景気を上向きにさせるものとはなった。しかしそれは財政出動と放漫な金融緩和で不動産バブルをつくりだし、他方で国有企業と地方政府の膨大な債務増をつくりだしたにすぎなかった。個人消費は08年までのレベルにも届かない緩慢な増加状態(今年7月には18・2%増だが、物価上昇分を差し引けば景気後退の昨年と変わらない状態が続いている)にとどまった。
 放漫な金融緩和策の中で銀行融資が09年だけで9・59兆元にもなり、その大部分が国有企業と地方政府を通して不動産投機に流れ、不動産バブルをつくりだした。そして今日、不動産価格の頭打ち傾向の中で、それらが不良債権化する危険が迫っている。
 とりわけ地方政府の「融資平台」(景気刺激策のために地方政府が融資のため乱造したもので全国に8000社余もある)の債務残高が公式には09年末で7・7兆元(=100兆円強。実際には10兆元とも12兆元ともいわれ、詳細は中央もつかめていないありさま)にもなっている。このうちの2割がすでに不良債権と疑われている。
 他方、銀行は融資額の不良債権比率(現在は4分の1が既に不良債権と考えられている)が高まっていることを懸念し、住宅ローンの貸出制限など融資枠を狭める政策をとりだしている。生産の低迷や地方財政の欠落の下での国有企業や地方政府の不動産ブーム継続へのやみがたい衝動とバブル崩壊の懸念からの引き締め策の綱引きの激化のなかで、現実には膨大な空き部屋・オフィス(6000万件もあるという)が存在しており、不動産バブルの崩壊は完全に切迫している。
 不動産バブルの崩壊はすでに明らかになっている国内生産の過剰状況を激甚につきだし、鉱工業生産を激減させ、中国経済の高成長の崩壊となり、それに依拠しようとする帝国主義経済の大恐慌を決定的に促進せざるを得ない。
 中国スターリン主義の支配構造は、一国社会主義の下で不可避になる労働者と農民からの強収奪の基礎の上に成り立っている。改革・開放政策はその構造の下での新自由主義政策の採用であり、搾取と収奪が吹き荒れ、スターリン主義官僚と資本家層が富裕化し、労働者・農民との格差を拡大(二極分化)しつつ「成長」する中国経済社会をつくりだした。
 スターリン主義支配体制は、官僚(とそれを支える国有企業)の利害を軸にしている社会であるために、彼らが富裕になるバブルへのやみがたい衝動があり、この体制の下ではバブルを自ら抑えることなどできない。
 だが、世界経済に組み込まれ、しかも大恐慌の中では、帝国主義以上に富裕層の一層の富裕化と労働者人民の貧困化、そして政府債務の膨大な積み上げを結果するものとなってしまっている。行き詰まった中国の経済社会建設を帝国主義世界経済に依拠して打開するという中国スターリン主義の「発展の展望」は、大恐慌の中で、根本矛盾を決定的につきだされる過程に入った。それは労働者階級人民の現体制に対する怒りの反乱を呼び起こすものとなっていかざるを得ない。
 後者の点では、人民元安の維持と輸出強化に関わる矛盾が激化しているが、中国スターリン主義は帝国主義的争闘戦の激化の中での市場・資源争奪戦により激しく踏みこむことを決断せざるを得なくなっているのだ。6月中旬に人民元「弾力化」を打ち出したが、それは「外圧」との関係で元高容認の姿をとりながら、現実には元安を維持し、輸出の強化にかけるものであることがはっきりした。
 実際、輸出の低迷によって、金融危機段階で起きたような中小企業の倒産の嵐、2000万人の失業という事態に対する危機感が、強まっている。
 中国紡績工業協会の幹部は「中国では繊維産業に従事する者は2000万人で、綿花栽培に関わる者も含めると関係者は1億4000万人に上るが、元相場の上昇でこれだけの人が路頭に迷ってもいいのか」と党系列の新聞(チャイナデーリー)で喚くような状態となっている。
 大恐慌の深まりの中で、中国のこうした国益のごり押しに対する国際的重圧への懸念からする党内論争も起きているが、延命のために摩擦覚悟で市場・資源争奪戦に突き進む姿勢をとらざるを得なくなっているのだ。それは大恐慌の深まりの中で、争闘戦の激化要因となり、逆に中国経済の破綻性の重大な圧力となっていくであろう。

 □政治的・軍事的摩擦に引き込まれる中国

 今日の中国は、世界的な争闘戦の激化の中で、その大きな加速要因となっている。世界的な市場・資源争奪戦に割って入り、否応なく他国との軋轢を深めている。
 すでに述べたように、中国は「人民元問題」をめぐる独自利害のごり押しの態度に踏み込んでいるが、それは帝国主義世界体制的秩序に対する「挑戦」ということを意味する。それは経済の面だけでなく、軍事や外交の面でも明らかな踏み切りとなっている。 今日、米日帝国主義による北朝鮮侵略戦争に向かっての決定的踏み込みが始まっているが、その中で中国は外交面では、韓国の哨戒艦沈没問題での北朝鮮への制裁への同調を米日韓に要求されながら、逆に膨大な北朝鮮への経済協力を推し進めている。北朝鮮に対する米日帝国主義の侵略戦争重圧による体制崩壊の危機を、中国の支えで何としても乗り切らせるという決意の表れだ。さしあたり、6カ国協議などはどこかに吹っ飛んでいるありさまだ。
 その上で、この間の黄海や日本海での米韓合同演習に対する反対の態度表明にとどまらず、黄海での軍事演習を繰り返して、米帝に対する対抗性をむき出しにしたが、それは米帝の9月からの黄海での米韓合同演習に原子力空母を派遣する態度を引き出した。さらに南中国海の西沙諸島、南沙諸島領有権をめぐって、全諸島の領有を主張して周辺諸国との軍事的緊張を含む摩擦をかまわず、実効支配のために積極的に乗り出している。 これは米帝(7月末のアセアン・フォーラムでのクリントン国務長官の発言=「南中国海での航行の自由はアメリカの国益」)との緊張関係だけでなく、ベトナムと米帝の合同演習を南中国海で行うことさえ生みだした。
 空母の建造などを含めて、中国スターリン主義は世界革命の放棄=一国社会主義論(国際労働者階級の闘いへの不信)に基づいて、中国の権益を押し出し、それを守るという形をとって、軍事、外交における強腰への変転を行いつつ、いまや明らかに大恐慌の中での世界戦争への道を加速する道に踏み込んでいる。だがそれは中国スターリン主義の、世界安定の下での経済発展などという展開がありえないことをはっきりさせるものとなっていく。

 □労働者階級の本格的な台頭への扉が開く

 中国の政治・軍事・経済における大きな変調が起きている中で、この間の新世代農民工を支柱とした中国労働者階級の新たな階級的台頭は巨大な意味をもつ。
 5月中旬の広東省仏山市南海のホンダ部品工場に端を発した中国労働者のストライキは、7月末の『朝日』のまとめでは、全国で43件(うち日系企業で32件)となっていた(左図参照)が、報道封鎖の中で、遼寧省大連市の経済技術開発区で6月から8月にかけて、59社の日系企業を中心とする連鎖的ストライキの大波が起きていたことが分かった。
 大連の連鎖的ストライキは、ネット情報によれば、東芝、YKK、トステム、リョービ、旭硝子、早川電子、日本電産、キャノン、マブチモーターなどの著名な企業を含めて数十社で起きた。
 ストの要求は賃上げと待遇改善である。900元程度の基本賃金でしかないことに対する強い不満が充満しており、中国南部のストが大幅賃上げを勝ち取ったことから、500元の賃上げや手当の増額を要求するストが開発区全体に巻き起こった。
 それはほとんど山猫ストで仕事放棄から始まって、工場全体を巻き込むようなあり方で行われたもので、工会は調停役として最終局面での労働者代表と企業の協議に加わっただけでしかなかった。ここでもスターリン主義権力を背後とする総工会の反労働者的姿が明示につきだされた。
 大連では05年にも日系企業を中心に全体で7万人の労働者が加わる大ストライキが長期にわたって起き、これに対する弾圧で指導者が解雇、投獄される事態があった。今回は指導者を明示しない形の山猫ストを切り口にした闘い方など、それを教訓としての闘い方であった。
 重要なことは、仏山市や中山市のホンダ系の労働者の闘い、および大連市の闘いは、業種や地域内での労働者の緊密な連携がなされる中でストが連鎖したこと、また工会の改組や自主的な労組運営などを目指す労働者の自覚的な階級的団結意識に根差した要求が、はっきりと運動の中に貫かれ始めていることである。中国における労働者階級の指導部形成を伴った階級的台頭が始まりつつあるのだ。
 中国の労働者階級は、1927年の中国大革命の敗北以降、日中戦争、国共内戦、スターリン主義による新中国建国をとおしても独自的な階級性の発露は失われたまま、総工会もスターリン主義政府の上から組織化によってつくられ、労働者階級の自己解放的な活動は抑圧の状態を強いられてきた。
 56年のスターリン批判を契機にした東欧反乱と同時期に、中国でも労働者や学生のストが数万規模で起きたが鎮圧され、またその後総工会指導部の労働者階級の独自要求を容認する路線の展開が主張されたが幹部が失脚させられ、総工会への統制は強まっていく。その後、文革時には臨時工の大造反によって総工会は占拠・閉鎖(66年末)され、78年に旧来型の総工会が再建されて今日に至っている。だが、89年の天安門の闘いの中で、労働者の自主的な労組建設の活動が一気に噴き出し、一カ月で会員2万を超える全国的な動きとなった。スターリン主義の労働者抑圧に対する反乱は、搶ャ平ら中央官僚の恐怖に満ちた血の大弾圧で挫折させられた。
 しかし今日始まった新世代農民工を軸にした中国労働者階級のストの大波は、こうした労働者階級の歴史的状態を根底から突き破る可能性をもつものだ。中国スターリン主義の新自由主義政策と対峙し、さらに「社会主義」の名をかたる労働者抑圧に対する自主的な労組建設を対置した階級意識の鮮明な労働運動が始まったのだ。
 大恐慌の中で、日帝を含む帝国主義資本の植民地的搾取・収奪の激化に対する重大な反撃の橋頭保を築くものとして中国の労働者階級の隊列が形成されつつある。日本労働者階級は日本革命―世界革命の共同の隊列を形成するものとして中国労働者階級の新たな階級的台頭と固く連帯していかなくてはならない。
 (賀山 宏)
(図 中国のスト発生状況【5月17日以降、判明分】)

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月刊『国際労働運動』(410号2-3)(2010/10/01)

■News & Review/アフガニスタン

混迷と泥沼化深める米侵略戦争

米政権中枢と対立、現地最高司令官更迭

 米帝のアフガニスタン侵略戦争がいよいよ泥沼に入っている。鳴り物入りで打ち出されたオバマの兵力増強とカンダハル奪回作戦も、完全に泥沼化し、大失敗に終わっている。さらにオバマ政権と現地軍司令部との戦争遂行上の不一致も広がっており、米帝は完全に展望を失っているのである。

 □現地最高司令官の解任

 米帝オバマは6月23日オバマ政権の戦争のやり方について雑誌ローリング・ストーンの中で公然と批判したマクリスタル米・NATO合同軍司令官を解任することを表明した。
 マクリスタルは、雑誌の中でバイデン副大統領について聞かれたのに対し「誰だそれは」と侮辱し、政権中枢に対する不信感をあらわにしたのだ。これによって政権中枢と現地司令官の間に決定的な不信感があることが明らかになった。オバマは、この責任をマクリスタルに押しつけ、彼を解任し、後任には米中央軍司令官のペトレイアスを充てることにした。マクリスタル将軍は6月30日になって軍から退役することを表明した。アフガン戦争のやり方について政権と現地軍の間に深刻な対立があり、米軍の将校や将軍には退役によって逃げ出す者が相次いでいるのだ。
 オバマは、マクリスタルの政権批判が民主主義に反すると批判したが、問題はそんなところにあるのではなく、米軍最高司令官がアフガン侵略戦争について完全に展望を失って、どうしたらいいか全くわからない状態に陥っていることにある。将軍たちは退役してどんどんと逃げ出し、戦闘において一番重要なベテランの下士官たちは犠牲者続出で補充が効かず、米軍は崩壊状態に陥りつつあるのだ。米軍の追加投入で現在ISAF(国際治安支援軍)は15万人といわれているが、その内実は崩壊状態に近い。
 米軍は、カンダハル奪回作戦を展開したが、その6月のISAFの死者は100人を超え米兵の死者も7月には60人を超え過去最高となった。アフガン侵略戦争開始以来1カ月のISAF軍の死者が100人を超えるのは初めてのことだ。アフガニスタンでのISAF軍の死者は年々増加傾向にあるが、特に、昨年は年間で521人に上っており、今年は昨年をも上回るペースで死者が増えている。ISAF軍の敗勢がはっきりと示されているのだ。
 もともとカンダハルは、タリバンの大拠点であり、米軍が侵略戦争の当初にタリバンの拠点をつぶすとして制圧し、その後はアフガン全土への侵略作戦の拠点としてきたところである。ところがその米軍の拠点であったはずのカンダハルがいつの間にかタリバンの拠点となり、米軍(ISAF軍)が奪回作戦を組まなければならないところまで追い詰められているのである。
(写真 アフガニスタン南部カンダハル近郊でタリバン兵と銃撃戦になり、応戦する米兵)

 □タリバンの拡大

 昨年以来ISAF軍の死者が激増した背景には農民をはじめとしたアフガン人民がタリバンに加わり、タリバンの勢力が拡大したことがある。タリバンに加わらなくても、人民が親タリバンとなり、情報がISAF軍には伝わらなくなっており、ISAF軍の情報はタリバンに筒抜けになるという状態になっているのだ。
 昨年米軍はケシの栽培によるアヘン取引がタリバンの資金源になっているとして、収穫前のケシ畑を焼き払う作戦を強行した。これは貧しい小作農民にとって一年の収入を奪うもので死ねと言うに等しい行為である。収穫前の作物を焼き払われた農民の怒りは計り知れない。農民をはじめアフガン人民にとっては生きるためには米軍をたたき出す以外にないことがはっきりしたのである。8月3日には「アメリカに死を」と叫んだ数百人のデモがアフガン東部の村のメインストリートを埋め尽くすという事態も起こっている。
 今やISAF軍はアフガン全土でアフガン人民の怒りに包囲されているといっても過言でない状態である。こうした中でイギリス軍は、タリバンとの激しい戦闘が続いてきたヘルマンド州から撤退し、米軍に任務を引き継ぐことを決定した。
 2001年の戦争開始以来のイギリス軍の死者は312人に上っており、そのうちの99人がヘルマンド州北部のサンジン地区に集中している。このへルマンド州からの撤退を決めたのである。オランダも2011年には部隊を引き揚げるとしており、カナダも2011年から部隊を削減し、アフガン政府軍の訓練のための部隊だけを残すと、基本的に撤退の方向を打ち出している。これ以上の死者に耐えられなくなっているのである。

 □無人爆撃機の誤爆

 こうした中で米軍は無人爆撃機による空爆を激化させている。プレデター(捕食者)と名付けられた無人爆撃機は、飛行時のブーンといううなり声から通称ドローンと呼ばれている。無人爆撃機は墜落しても米軍の人的被害が出ないということでドローンへの軍事的要求は拡大している。それに伴ってドローンの墜落も増加しているし、一般市民への誤爆も大きく拡大している。
 米軍は一般市民への誤爆については認めようとしない。反論の余地のない証拠を突きつけられてようやく認める場合でも、わずかな補償金で黙らせようとするのだ。こうしたやり方もアフガン人民の怒りをかき立てており、カルザイ政権の権威失墜とタリバンへの支持拡大の重要な要因になっている。現在はカンダハルの基地から操縦者がドローンを操縦していると言われるが、以前は地球を半周も離れた米本土ネバダ州で操縦していた。そして操縦者のミスで墜落や誤爆が繰り返されているのだ。
 こうした中で、インターネット・サイトのウィキ・リークスが7月26日、9万に及ぶ米軍の秘密記録を暴露した。その中には今年だけで1300人を超える一般市民が米軍によって虐殺されていることやタリバンが地対空ミサイルを保有していること、タリバンの攻撃でISAF軍の死者が激増していることなどを覆い隠していたことも記されている。
 そして米軍がアフガン戦争について何年にもわたってごまかしを行っており、マスコミもそれに乗っかってきたことが暴かれている。またタリバンの攻撃の成功やその重大性、米軍が要請した治安維持軍の犯罪的暴力などについても隠していたことが記録されている。しかも重大なことは、米兵の自殺者が激増しており、戦闘による被害を超える事態になっているということだ。米軍の崩壊的事態が起こっているのである。また、特殊部隊の戦争といわれているものが、完全に隠された秘密の戦争でドローンの攻撃、夜間攻撃による殺戮などが現在も継続していることである。
 もともと無人爆撃機で攻撃するというあり方自身が、帝国主義の無差別殺戮の本質を示している。それは、広島・長崎への原爆投下や日帝の重慶爆撃と同じ本質を持ったものである。ベトナムやイラクでも繰り返された無差別爆撃をアフガニスタンでも日々繰り返しているのである。
 無人爆撃機での攻撃に頼らざるを得なくなっているところに米軍の敗勢がはっきりと示されている。しかも無人機での攻撃は決して万能ではない。戦争の勝敗は地上戦での勝敗によって決せられるのだ。地上部隊は安心して行動できるところはどこにもなくなってしまっているのだ。この間タリバンと交戦中のアフガン政府軍を米軍が誤爆するという事件が相次いでいるが、これも追い詰められた米軍の焦りの姿を示している。
 米帝のアフガン侵略戦争は、8年9カ月を超えベトナム侵略戦争を超えて米帝にとっての最長の戦争となっている。しかも侵略戦争は泥沼化を深めるだけで何の展望も見いだせない状態になっている。来年夏からの撤退開始など問題にもならない状況になっている。しかも米帝にとってアフガン侵略戦争は絶対に放棄できない戦争だ。タリバンが勝利すれば、米帝のテロとの戦いが敗北したことを意味し、米帝の世界支配全体が揺らぐことは避けられないからだ。それは世界大恐慌をも劇的に拡大させるものとなるであろう。今や米帝のアフガン侵略戦争は死の苦悶に転化しているのである。
  第4章 □ペトレイアスの新戦略

 □ペトレイアスの新戦略

 こうした中で新司令官になったペトレイアスにも特別に変わった方策があるわけではない。元々マクリスタルが行っていた作戦も、中央軍司令官ペトレイアスの指示によるもので基本的には大きな変化はない。だがペトレイアスが大きく強めようとしているのは、アフガン人民とタリバンとの間にくさびを打ち込むということである。実際には、アフガン人を警察や軍に雇い入れ、訓練するというものでこれまでも行われてきたものだが、さらにこれを強めようというものである。また農民に鶏を与えたり、女子の学校を作ったり、子どもに鉛筆を配ったり、民衆を引きつける政策を強めようとしている。
 だが、はっきりさせなければならないことは、アフガンの農民は、10年間の米軍支配の現実に対して米軍をたたき出すことを選択したということであり、小手先の政策でそれを覆すことはできないということである。実際何人かの農民に鶏を与えたところで、農民全体がそれで生きていけるわけではない。年一回の収穫を焼き払っておいて農民が生きられるわけがないのだ。 政府軍の訓練にしても、訓練中に訓練生が発砲して教官を殺害するという事件が何件も起きている。しかも米軍よりも貧弱な装備しか与えられていない政府軍がタリバンの格好のターゲットになるケースが相次いでいるのだ。こんな状態で各国の軍が警備の責任をアフガン政府軍に引き渡して撤退することなど不可能であることは明白である。
 また米帝はこの間、アフガンに石炭や鉄鉱石、希少金属のリチウムなどの鉱物があると発表した。さらにアフガンに油田があるということも地質調査の結果として発表している。これらはISAFに軍を派遣している各国にも侵略戦争の野望を駆り立てようとするものである。
 しかし、ISAFに軍を派遣している各国ではその犠牲に耐えきれなくなってきているのだ。オバマ自身の米軍増強政策もそれによって事態を改善して来年7月からは軍を削減して撤退の道筋をつけようというもので、そんなことは完全に不可能であり、追い詰められた米帝の姿をさらけ出しているのだ。

 □絶望的な戦争拡大

 このように、アフガニスタンが米帝にとっての泥沼そのものになっている中で米帝は、絶望的に戦争拡大政策に走っている。アフガンでの敗勢が大恐慌情勢の深化とともに米帝の世界支配を根底から揺るがしているが故に、米帝はこれをそのままにしておくことはできないのだ。
 何よりも米帝は北朝鮮侵略戦争策動をますます強めている。北朝鮮スターリン主義の体制的危機の深まりの中でこれに対応して戦争体制をエスカレートさせている。7月には朝鮮半島の東側海域で米韓合同軍事演習を行った。そして8月の米韓合同指揮所演習に続いて、9月には中国をにらんだ黄海で核空母ジョージ・ワシントンを派遣して米韓合同軍事演習を行おうとしている。韓国哨戒艦「天安」沈没事件を口実に北朝鮮と中国の残存スターリン主義に対してすさまじい戦争重圧を加えることで、アフガン侵略戦争の敗勢で決定的に揺らいでいる米帝の世界支配体制を維持しようとしているのだ。
 追い詰められた米帝の絶望的な侵略戦争拡大を許してはならない。
 戦争を止める力は労働者階級の決起にある。職場生産点における職場闘争を全力で闘い、労働組合と労働運動をよみがえらせ、革命的反戦闘争を爆発させよう。
 ( 秋原義明)  ( 秋原義明)

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月刊『国際労働運動』(410号3-1)(2010/10/01)

(写真 アリゾナ州で成立した移民弾圧法に反対する10万人のデモ【5月1日 ロサンゼルス】)

特集

■特集/オバマ政権への怒りの決起

 はじめに

 オバマは、「チェンジ」への期待をあおって登場した。だが、就任後は、ブッシュの破滅的、超反動的政策をさらに進めている。実質失業率は20〜25%に達している。公的国民皆保険制度の公約は破られた。民主主義の根本原理を踏みにじって裁判なしの長期投獄や令状なしの盗聴などを推進している。戦争を拡大する一方だ。
 本特集は、この破産した新自由主義の本性を解明し、アメリカの現実に迫っていく。
 第1章では、アメリカ資本主義の没落と腐敗を暴き、階級闘争が非和解的発展を開始したことを明らかにする。
 第2章では、革命的激動の歴史の中で新自由主義をとらえかえしていく。
 第3章は、オバマ・民主党支持の選挙にすべてを流し込み、労働者の闘いを抑えつける既成指導部との闘いが成長し、労働組合権力を奪還していることを明らかにする。

■第1章

 オバマ政権の崩壊的危機 経済も軍事も権威失墜

 今、アメリカ帝国主義の根幹を揺るがす事態が次々に起きている。
 第一に、メキシコ湾でのBPの原油流出事故だ。これは、ブッシュ政権とオバマ政権が、巨大石油独占資本と一体となってBPの極端な手抜き工事を認めてきた結果だ。そして、流出が起こった後でも、BPの責任逃れのためのやり方を認めたために、事故の規模が桁違いに大きくなった。
 しかも、オバマ政権は損害賠償の責任をBP本社でも、BPアメリカ社でもなく、孫会社であるBPメキシコ湾掘削会社に負わせることを認めた。つまり、孫会社が倒産すれば、賠償金は支払われなくなる。
 第二に、アフガニスタン戦争に関する米軍の秘密文書が9万件以上流出し、うち7万件以上が、「ウィキリークス」というウェブサイトで公表されたことだ。これまで米軍が隠していた特殊部隊の暗殺作戦によって民間人が多数殺害されている事実や、米軍の敗戦の様子が生々しく記録されている。
 これに対してオバマ政権は連日、秘密暴露を非難する大宣伝をし、ウィキリークスの責任者を暗殺する恫喝までやっている。そうやって、米軍の危機を自己暴露しているのだ。
 第三に、7月末には、米陸軍の『健康増進・リスク軽減・自殺防止報告書』が出された。「軍内の自殺、他殺、飲酒運転などの高リスク行為での死亡が戦死者の数より多い」と危機感をあらわにしたものだ。
 以上のことは、アメリカ帝国主義の体制的危機の中心的な問題だ。だが、そのことについて詳しく見ることは、別の機会に譲り、本特集では、経済危機と階級闘争の側面を主要に見ていくことにする。
(写真 BPの原油流出事故が起きたメキシコ湾)

 2千8百万人の失業者

 現在アメリカの失業率が深刻化し、9・5%に達している。だが、この数字さえ現実の一部しか反映していない。
 正規のルートでの求職活動をあきらめた人や生活できない賃金のパート等の職に就いた人を含めて、実質的な失業率を計算すると20〜25%に上る。少なく見積もって5人に1人が失業者なのだ。
 長期失業者問題は、いっそう重大になってきている。失業手当の支給期間=26週間が切れた後、さまざまな延長支給があるが、99週間すぎるとすべて打ち切られる。この「ナインティナイナー」と呼ばれる人がすでに140万人に達している。こうした労働者の苦難は、大恐慌の結果であるだけでなく、オバマ政権による労働者攻撃の結果でもある。
 とりわけ、08〜09年のGM、クライスラーの破綻に対するオバマのやり方は、大量解雇にさらに追い討ちをかけるものだった。オバマは、退職者の年金や医療保険まで放棄させようとして「在アメリカの日本の自動車会社と比べて、GMは人件費が高すぎる」と攻めた。だが、トヨタの労組破壊は激しく、アメリカの工場に労働組合を作らせない。このトヨタと同じ労働条件にせよということは、労働組合など無い方が良いと言っているに等しい。国家権力による公然たる不当労働行為だ。
 またオバマは、「破産法第11章申請(倒産・民事再生)にならないようにするには、労組側がもっと譲歩すべきだ」と徹底的に攻め立てた。そして腐敗したUAW(全米自動車労組)本部がそれを受け入れて年金・医療を事実上放棄したとたんに、GM経営者に破産法第11章申請を行わせた。破廉恥きわまる詐欺行為だ。
 破産・再建の手続きによって経営側は、従来の労働協約を一挙に破棄できる。アメリカの自動車産業は、この間30万人を解雇しただけでなく、解雇されなかった労働者の労働条件も大幅に切り下げた。
 この労働者攻撃の結果、自動車産業の中心地、デトロイトでは、失業率は現在50%を超えている。
 こうした中で、7月30日、オバマはデトロイトのクライスラーとGMの自動車工場を訪問し、両工場で演説した。「景気回復政策は着実に成果をあげている」「自動車産業は新たに5万5千人を雇用した」
 だが、新規採用者は既存の労働者の50%の賃金だ。労働者同士を分断し、既存の労働者の賃金をも下げていく狙いをもった二層制賃金が導入されたのだ。
 全米で最も住宅の競売・立ち退き、ホームレス、飢餓がはなはだしいデトロイトで平然と自分の経済政策を自慢するオバマに、労働者の怒りは煮えたぎっている。

 ネズミ講同然のデリバティブ

 08年9月の金融破綻は、最末期帝国主義の矛盾が噴出したもので、政府や個々の資本の政策が根本的原因ではない。
 だが、全世界の金融破綻がここまで天文学的額に拡大し、激化したのは、新自由主義の金融規制緩和で極限的に膨張したサブプライムローンの証券化を始めとした詐欺商法が巨大化していたためだ。
 破綻することが分かっている債権を、他の債権に紛れ込ませて売りつけた。証券化、金融派生商品(デリバティブ)の手法を複雑化して、どんなサブプライムローンをどの程度紛れ込ませたかは、わからなくしてある。また買い手も、自分がそれを転売する前に破綻しなければ利益が上がるとして、証券の本当の構成については追及していない。
 最終的な損害は、誰か他人がかぶれば良いということだ。
 多くの経済学者が、サブプライムローンのデリバティブ化、証券化を正当化する理論を作った。さまざまなリスク(破綻の危険)とリターン(収益性)の金融商品でポートフォリオ(最適組合せ)を作れば、ハイリスク・ハイリターンの金融商品から、ローリスク・ハイリターンの金融派生商品ができるという理論だ。
 原理は単純で、「他人が敬遠する超ハイリスクのものは、それだけリターンが大きいから、どんどん買うべきだ。ただし、一つのものだけに賭けると破綻した時に大損するから、他のものと組み合わせて買いなさい」ということだ。
 この単純なことを経済学者たちが、複雑な数式を使い、難解な理論で説明した。
 このデリバティブ理論の根本的な問題は、商品売買の基礎の基礎を欠落させていることだ。本来、いかなる商品売買も、買い手がその商品を知っているか、少なくとも、商品使用の結果を知っていることを前提にしている。買い手が商品について知らないとカモになる。
 だから、買い手が、ある程度使ってからでないと商品の欠陥の有無を判断できない電気製品などは、一定期間のメーカー保証で故障に無料で対応するようになっているのは当然だ。
 ところが、デリバティブは、商品をことさら複雑化し、しかも、転売を繰り返すものだ。だから、売り手さえ自分が何を売っているかわからない状態になる。
 こうして、「最終的な損には関係なく、その前に転売で稼ぐ」ということになってしまう。ネズミ講に参加する論理と同じなのだ。
 こういう詐欺商法の事例は、歴史上無数にあった。だが、世界トップの金融機関が軒並み詐欺商法に長期にわたってどっぷりひたったのは、史上初めてのことだ。
 本来、資本の利潤の根本は、生産過程から生じる。産業資本以外の銀行などの利潤の大元も、産業資本の利潤にある。
 したがって、本来、詐欺をする必要はない。むしろ、それは長期的な取引を阻害するものだ。資本家の長期的利益にも反する。
 現代資本主義の根幹中の根幹の所で、資本主義の自殺行為が行われている。それ自身が資本主義の崩壊を促進している。まさに、資本主義の最末期だ。

 メイドフ事件

 デリバティブを使わずに、古典的なネズミ講と同じ方法を使ったのが、リーマンショック後の08年12月に逮捕されたメイドフの事件だ。
 メイドフがこの詐欺で取った額は、把握できた分だけで200億j、本当は2000億jに上るといわれる。トヨタの年間利益の1倍〜10倍を詐欺でだまし取ったのだ。
 このような史上空前の詐欺が、なぜまかり通ったのだろうか。
 それは、新自由主義の金融規制緩和によって、社会全体に「リスクを取る」ことが奨励され、「高配当の投資先に投資しないのは犯罪的」とまで言われる状況になっていたからだ。
 また、アメリカ帝国主義の存在そのものが、国際収支の赤字・累積債務を毎年加速度的に拡大することで維持されている。“最終的決算”の責任は取りようがない。「今、配当があれば良い」という論理は、ネズミ講と同じだ。
 また、金融資本の主流のメイン業務そのものが、複雑な理論で粉飾されていたとはいえ、本質的にはネズミ講と同じものだった。
 したがって、金融監督当局がメイドフを調査することは、当局自身の自己否定につながる。だから、すでに19
99年から多くの告発があったにもかかわらず、監督機関であるSEC(証券取引委員会)は、メイドフを追及せず、逆に、告発者を攻め立てたのだ。
(写真 詐欺師メイドフ)

 ゴールドマン・サックスの詐欺

 2010年4月16日、SECは世界最大の投資銀行(証券会社)ゴールドマン・サックスを詐欺罪で民事訴追すると発表した。メイドフに対する告発を圧殺してきたSECも、ゴールドマン・サックスが多数の顧客に告訴される事態にあわて、訴追せざるをえなくなったのだ。
 同社がやった詐欺は、@07年にヘッジファンドのポールソン社と組んで、破綻率が高いサブプライムローンを多く組み込んで、暴落するのが確実な金融商品を作り、A顧客にはその金融商品の購入を推奨し、Bゴールドマン・サックス社自身は、その金融商品を先物売り〔注〕した、ということだ。
 値下がりするものをだまして、値上がりすると言い、それによって自分が巨額な利益を得たのだ。
 07年といえば、サブプライムローンの破綻で恐慌に突入した年だ。ゴールドマン・サックスは、サブプライムローンを組み込んだ金融商品が暴落すればするほど自分が利益を得るという仕組みを作ったのだ。こうして、大恐慌の激化を促進したのだ。
〔注〕先物売り 将来の特定期日に商品を引き渡す約束をする取引。現時点ではその商品を持っていなくても一定の証拠金さえつめば取引できるので、その商品が期日までに値下がりの方向に動けば、投資資金当たりの利益が大きい。値上がりすれば、損失が大きくなる。

 ギリシャ財政破綻を隠したのもゴールドマン

 ゴールドマン・サックスはギリシャ国債の先物売りでも暴利を得ている。その仕組みは、こうだ。
 まず、財政破綻を隠したいギリシャ当局と協力して、「スワップ(交換)取引」をする。一つのケースでは、将来の空港使用料とゴールドマンの現在の資金を「交換」した。これは現実にはギリシャ政府の借金だが、帳簿の負債欄には記入されない。その他、複雑な取引によって負債を隠したので、ギリシャはユーロ圏の負債限度額を超えて国債を発行し続けられた。
 こうして帳簿偽装で巨大に膨れ上がった借金を抱えたギリシャの国債が弱くなっていることを知っているゴールドマンは、誰よりも先駆けて先物でギリシャ国債を売りあびせ、暴落させ、それによって莫大な利益を得た。
 ギリシャ国家の破綻はいっそう激化し、それに、ギリシャに巨額の債権を持つユーロ圏全体をも引き込んでいる。
 ここで、ゴールドマンサックスに絞ってさまざまな問題を見てきたが、それは、同社が単なる一つの私企業ではないからだ。オバマ政権の経済スタッフのほとんどが、ゴールドマン出身ないしその系統だ。アメリカ帝国主義、金融資本が、その中心中の中心から、丸ごと最末期の状態に陥っているのだ。
 そして肝心なことは、労働者階級がその実態を目の当たりにして怒り、闘いに立ち上がっていることだ。

 これ見よがしの高額ボーナス

 さらに労働者を激怒させていることは、一方で大量解雇をしておきながら、08年の不良資産救済プログラム(TARP)7000億jで救済された巨大金融機関の幹部が、その後、まもなく巨額のボーナス支給を決めた。ゴールドマン・サックスは、08年10月に早くも1000人以上に100万j(1億円)の支給を決めた。AIG、シティーなど、すべてが09年の1〜3月には、ボーナスを急増させている。
 しかも、記者会見の席で公然と「優秀な経営者を引き止めるには、高いボーナスが必要だ」と言っている。一言ひとこと、怒りなしに聞けない。
 オバマは、当初は、このボーナスに怒った表情を見せた。だが、実際にやったことは、「契約書は、すでに署名されている。民間会社の契約に政府が介入する前例を作るわけにはいかない」とガイトナー財務長官に言明させることだった。
 オバマの後押しを受けて、金融機関だけでなく、製造業でも、倒産したGMの経営者への巨額退職金などが次々に支払われていった。中央・地方の行政機関・準行政機関(公立大学理事会や公立学校を管理する各学区当局など)も「財政危機に対処できる優秀な人材を引き止めるため」と称して幹部のボーナスを増やしている。
 そして、一方で労働者や中間層の消費が激減するなかで、ニューヨークの高級ブランド店の売り上げが増えたことが報道された。

 労働者の怒りと労資協調路線の破産

 このような支配階級の破産と救済、高額ボーナスと居直りに対する労働者の怒りが、現在のアメリカ労働運動を動かしている。
 これまで労資協調路線の指導部に動員されてきた労働者も今は、もう経営者に協力してもどうにもならないと感じている。
 「会社が倒産したら元も子もないから苦渋の選択で労働条件を譲歩しよう」と既成労働運動指導部が言っても、「譲歩しても、重役のボーナスが増えるだけだ」と言われてグーの音も出ない。
 80年代の新自由主義攻撃の本格化以来の戦闘的革命的活動家の長い苦闘が報われ、今や既成指導部から独立した巨万の大衆的決起が起こっている。
 「労働者階級と雇用者階級には何一つ共通なものはない」「資本主義を廃絶するのが労働者階級の使命である」(世界産業労働者組合規約前文)というアメリカの戦闘的労働運動の合言葉が、圧倒的な説得力を持ってきている。

■第2章

 新自由主義の歴史的破産 60年代闘争への恐怖と反動

 新自由主義は、次のような過程を経て登場した。
 @30年代のニューディール政策がそれ自身では世界大恐慌を解決できず、第2次世界大戦をもって「解決」したものの、再び、それでは解決できないことが露呈したこと。
 Aスターリン主義の協力によって30年代階級闘争を歪曲・圧殺し労働者階級を第2次世界大戦に動員したにもかかわらず、戦勝国アメリカにおいてさえも戦後革命の闘いが巻き起こったことへの危機感から、もともとはニューディール支持者だったミルトン・フリードマンらによって40年代末〜50年代初めに萌芽が作られた。
 そして、それが本格的に帝国主義の政策として採用されたのは、
 B国内階級支配においては、60年代の国内的・国際的なベトナム反戦闘争と公民権運動(黒人隔離・差別反対)の高揚、そしてスターリン主義諸国での労働者階級の決起によってアメリカ労働運動が新たな質を獲得したことによって、ニューディール〜第2次大戦期のタイプの闘争圧殺が不可能になり、
 C世界支配においては、ベトナム戦争が泥沼化したあげくに歴史的な大敗北をこうむり、
 D米済の没落と財政赤字の天文学的拡大で、71年に金ドル交換停止を宣言せざるをえなくなり、73年石油ショックを経て、戦後初の世界恐慌=74〜75年恐慌が爆発し、アメリカ帝国主義を基軸とする戦後の帝国主義世界体制が崩壊過程に突入したからだ。
 つまり、新自由主義は、狭い意味での経済政策として登場したのではなく、戦後革命への反動として形成され、ニューデール型経済政策・階級支配政策の最終的破産への巻き返しとして支配階級に本格的に採用されたのだ。
 したがって新自由主義は、単なる経済政策ではなく、社会全体を変えるための運動だ。だから、マスコミを総動員し、また種々の運動体を組織するイデオロギー攻撃(デマゴギー)の要素が非常に大きい。
 また、実際に実行される経済政策の内容と、新自由主義の宣伝文句との背離は、甚だしく大きなものとなる。

 団結の芽までつぶす運動

 通常、新自由主義は、市場原理主義の経済思想だと思われている。だが、新自由主義は資本主義の崩壊的危機の中で登場した。だから、新自由主義は、資本主義体制擁護を見境もなく主張するものであり、経済学としての最低限の科学性さえない。そして新自由主義は、単なる経済政策ではなく、社会の構成員、一人ひとりのあり方、意識を徹底的に変える非常にイデオロギッシュな運動なのだ。
 だから、新自由主義の建前上の主張としては、各人は、徹底して利己的、個人主義的な存在となるはずだが、現実の新自由主義運動は、各人がバラバラに直接の自己利益を求めて動くのではなく、新自由主義のための団体・勢力を作って運動するものとなる。このように、新自由主義は、従来型の保守主義に留まるのではなく、大衆を直接に動員することを狙っているのだ。

 労働者の主体的決起の力とニューディール連合の破綻

 40年代末〜50年代初頭のタフトハートレー法制定と非米活動委員会の赤狩りによって暴力的な転換が行われたとはいえ、戦後のアメリカの基本的な政治勢力の構成は、30年代に形成された「ニューディール連合」を受け継いでいた。
 一般には、「ニューディール連合」とは、ルーズベルトの国家独占資本主義的なニューディール政策の支持母体となった、大都市の民主党組織(集票マシン)、労働組合、リベラル知識人、人種的・民族的・宗教的マイノリティー(カトリック、ユダヤ人、黒人など)と南部白人の連合だと言われている。
 だが、問題の核心は、30年代の大恐慌と巨大な階級闘争の波をニューディールと第2次大戦で抑え込んだ構造にある。
 1934年に勝利した三つのゼネストを始めとする労働者の闘いは、労働者が生産と交通を握っており、労働者が団結すれば、全社会を動かすことができることを示した。
 ニューディール政策によって、大恐慌からの回復の兆しが見えたように思われたが、実際には、深刻な経済危機が繰り返され、大恐慌は深刻化していた。まさに、革命そのものが日程にのぼったのだ。
 そのため、ルーズベルト政権は、労組指導部を取り込むことによって革命を阻止しようとした。この目的のために行われたのが35年のワーグナー法(全国労働関係法)制定だった。労組結成を容易化し、また経営者の労組破壊を「不当労働行為」として罰することを規定したことと引き換えに、労働運動の体制内化を求めたのだ。
 だが、労働者の権利は法律によって守られたのではない。36〜37年のGMのシットイン・ストライキなどの職場の労働者の闘いによって、実力で権利をもぎ取ったのだ。

 共産党の反革命的な役割

 この時、反革命として決定的な役割を果たしたのがアメリカ共産党だった。スターリン主義による国際共産主義運動の歪曲、反革命化の事実が自覚されていない状況下で、アメリカ共産党はまだ少数ながら、労働者階級の中に決定的な影響力を持っていた。
 1934年の三つのゼネストを始めとするランク&ファイル(職場の一般組合員)の戦闘的な決起が広がっていく中で、既成の保守的なAFL(米国労働総同盟)の中から、反乱が起き、AFLから決別して37年に新たなナショナルセンター、CIO(産業別労働組合会議)が作られていった。
 このCIO結成の中心になったのは、反共組合ボスのジョン・ルイス炭労委員長だった。彼は、労働者の信頼を失った伝統的保守的なAFLに変わる労組組織を作らねばランク&ファイルの激しい闘いへの決起の中で、吹き飛ばされるという危機感を持った。彼は、CIO結成のために共産党と協力し、積極的にCIOの幹部に共産党員を登用していった。
 CIOは、発足当初から爆発的に組織拡大していった。このような戦闘的な団結の拡大の道は、そのまま革命に通じていたはずだった。だが、CIO内の幹部の位置を占めていた共産党は、ルーズベルト大統領・民主党・ニューディール政策を支持した。
 39年8月23日には、スターリンのヒットラーとの同盟(独ソ不可侵条約と両国のポーランド占領)を支持し、労働者階級に衝撃を与え、多くの共産党員の離反を招いた。そしてドイツがソ連に侵攻するや、一転してアメリカ帝国主義の対ドイツ戦争を支持するに至った。
 このジグザグにもかかわらず一貫していたことは、アメリカ共産党がランク&ファイルによる労組権力の奪取を抑圧し、ジョン・ルイスら反共組合主義者との同盟関係の維持を最優先にしていたことだ。そして共産党は、第2次大戦に協力するためにAFLやCIOの「ストをしない誓約」の貫徹のために必死になって組織統制を強化していった。こうしたアメリカ共産党=スターリン主義の裏切りによって、30年代階級闘争は歪曲・圧殺されていった。

 アメリカの戦後革命

 われわれは、“アメリカでは欧州や日本のような戦後の階級闘争の激動が起こらなかった”という通念をひっくり返さねばならない。
 戦後、45年には、4750件のストに3470万人の労働者が参加しているのだ。46年には4600万人、そして47〜49年にはさらに数百万人増加している。
 この中で、軍の中からの闘いが起きている。労働組合の決起に兵士が呼応して立ち上がる時、革命は現実のものとなる。
 兵士たちが決起していった直接のきっかけは、戦争が終結したにもかかわらず、兵士の動員が解除されなかったことへの怒りだ。そして労働組合の仲間への連帯感だ。
 アメリカ帝国主義は、ドイツ、イタリア、日本、フィリピンなどを広範に占領し続けることによって、戦後世界支配を確立しようとしていたのであり、それには膨大な兵力が必要だった。だから、兵士たちの期待に反して、動員が解除されなかった。
 占領地ドイツでは、動員解除・早期帰国を求めた兵士たちの大デモが組織された。フィリピンのマニラでも、帰国を要求して兵士委員会が組織され、クリスマスには4000人のデモが行われた。グアムでは3500人がハンストに突入した。
 そして米国内では、多くの兵士たちが戦争終結とともに労働組合のストライキのピケットラインに制服のまま参加し、ピケット防衛隊の役割を果たした。ニューヨーク州では、退役兵が労組のスト要求を受け入れることを求めてデモをした。
 こうした労働組合の巨大なストライキの波と兵士の決起の中で、支配階級は、40年代末〜50年初に赤狩りをやったのだ。だからそれは、反ソ反共の形をとってはいても、その本質はアメリカ戦後革命を闘った労働者への恐怖と反動に他ならない。その大反動の一環として、新自由主義の基礎がミルトン・フリードマンらによって作られたのだ。

 再編ニューディール体制

 だが、その後、戦後革命運動は、スターリン主義の裏切りによって敗北し、相対的に安定した支配体制が形成されていった。それは、アメリカの政治的支配体制としては、「再編ニューディール連合」(=ニューディール連合の基本的な継続)だった。
 タフトハートレー法と赤狩りによって、戦闘的労働運動に大きな打撃を与え、労働運動の反共主義的な転換を行ったうえで、ニューディール連合の基本骨格である、“民主党と既成労働運動の連合”が継続した。経済政策的にも、国家独占資本主義的な政策が基本的には継続されたのだ。
 しかし、このニューディール連合は、それだけで成立していたものではない。この連合の外側に極右勢力の右からの強烈な圧力が存在して初めて成り立ったものだ。労働者階級・人民がたえず民主党・既成指導部の制動を乗り越えて闘いに決起してくることに対して、「分裂したら右派を利する」と恫喝し、戦闘的な決起を民主党支持運動に集約していくことが鍵だった。
 アメリカ共産党は、極小党派に転落したが、民主党に加入し、「民主党左派」の装いをもって、労働者人民の決起を民主党支持へと押し戻していく役割を果たし続けた。

 俳優レーガンが州知事に

 アメリカの新自由主義が本格的に実施されたのは、レーガンが大統領になった1981年からだ。
 レーガンは、最初から右翼だったわけではない。彼は学生自治会の経験もあり、映画俳優労組の委員長も務めた。だが、彼が委員長になった1947年に、米下院非米活動委員会によるハリウッド攻撃(赤狩り)が本格的に始まり、またタフトハートレー法が作られた。
 これは、30年代階級闘争でかちとられたワーグナー法(35年)が労働組合を作る権利・所属する権利を保護したことを原理的に転換し、労働組合の権利を厳しく制限するものだ。重大なことは、労働組合の内部構成にまで介入し、「共産主義者ではない」という宣誓供述書に署名することを労組役員に義務付けたことだ。
 これによって大量の共産主義者や戦闘的活動家が労働組合から追放された。決定的な問題は、CIO(産業別労働組合会議)本部を始めとする勢力がAFL(米国労働総同盟)と合併し、体制内「左派」から帝国主義労働運動に転換するにあたり、じゃまになった戦闘的活動家を排除するためにこのタフトハートレー法を使ったということだ。
 レーガンは、非米活動委員会のハリウッド赤狩りに協力し、「共産党シンパ」の俳優の名前をFBIに報告した。また、タフトハートレー法に基づく非共産主義者宣誓書に全役員が署名することを映画俳優労組で組織決定させた。
 そして、レーガンは、@GE等の巨大独占資本の資金力、A俳優、タレントとしての知名度と能力、B学生自治会や映画俳優組合でつちかった能力を使って、ニューディール連合の外側の極右の広告塔になったのだ。

 再編ニューディール体制の破産

 60年代の学生運動、労働運動の爆発は、67年10月8日の日本のベトナム反戦・羽田闘争を皮切りに、68年に全世界を席巻した。「反帝国主義・反スターリン主義」の立場を軸に闘われた日本はもちろん、フランスの「5月革命」もドイツの68年も、すべて従来の社会党・共産党系の枠を破壊した若者の闘いだった。
 東欧の労働者人民のスターリン主義支配体制に対する闘いはチェコスロバキアのスターリン主義体制を根底的に動揺させ、68年8月、ソ連・ワルシャワ条約軍の介入、そしてそれに対する抵抗闘争にまで至った。
 第2次大戦前の植民地・半植民地諸国は、戦後次々に独立をかちとったものの、60年代には、その新たな体制も重大な危機に陥った。中国のスターリン主義体制は、58〜60年の「大躍進運動」とその後の「文革」で数千万の餓死者、死者を出した。
 全世界的に60年代は、新たな階級闘争が大爆発した時代であり、既成の社共的、あるいは民族主義的な枠が歴史的に無力化したことを思い知らせるものだった。そして労働者人民の間には、スターリン主義の「一国社会主義論」を乗り越え、世界革命を求める声があふれていた。
 アメリカにおいても、60年代階級闘争は、既成「左翼」、既成「リベラル」の枠を突破して、大高揚をかちとったのだ。60年代の公民権運動も、学生運動、ベトナム反戦運動と一体不可分であり、既存のニューディール連合の枠を破壊するものだったのだ。
 60年代の南部の公民権運動の原点と言われる1955年のモントゴメリ市のバスボイコット運動は、キング牧師が始めたものではない。戦闘的な伝統がある列車ポーター労働組合のエドガー・ニクソンらが戦略を立てたのだ。バスの座席を白人に譲らずに逮捕されてボイコット闘争に火を付ける役割は、長い間若者を指導する組織者であったローザ・パークスが自ら担った。
 既成の黒人地位向上運動は、この運動に否定的だったが、大衆運動の高揚によって、その中に入らざるを得なくなった。そうした勢力を代表する思想を持ち、しかも、既成勢力的色彩があまり強く感じられない人物としてキング牧師が統一戦線的組織の代表格に選ばれたのだ。
 だが、この「非暴力闘争」も、既成勢力の民主党・連邦政府依存体質も、大衆自身の民間差別主義者や警察権力との激しい実力闘争との矛盾にぶつかった。北部、西部の黒人解放運動からの批判にも直面した。ベトナム反戦運動の拡大は、ケネディ、ジョンソン民主党政権への幻想を吹き飛ばした。
 キング牧師も、67年4月には「沈黙は裏切りだ」として決定的な反戦演説をするにいたり、戦闘的労働運動と一体になって闘うことを選択した。彼が暗殺されたのは、清掃労働者が州兵の弾圧を跳ね返して闘っていたメンフィス市に駆けつけた時だった。
 そしてアメリカ帝国主義はベトナム戦争に敗北した。
 74〜75年恐慌で、ニューディール・第2次大戦後の経済の根底的破綻を突きつけられたのと同じ時期に、政治的にも「ニューディール連合」の破綻が明らかになっていたのだ。

 レーガンが主流に

 こうして最終的に破綻したニューディール政策(国独資的経済政策と戦争)とニューディール連合にとってかわるものとして、新自由主義が登場したのだ。
 レーガンは、カリフォルニア大学バークレー校の学生運動の弾圧と、当時、「福祉依存」だと右派から非難されていた黒人貧困家庭への差別攻撃扇動をテコとしてカリフォルニア州知事選に勝利した。
 レーガンは、知事に就任すると固定資産税(資産税)の上限を「その貨幣評価額の1%以下とする」という金持ち優遇税制や福祉カットなどを強行した。特に重要なのは、右翼大衆運動としての減税運動をあおったことだ。これによってレーガンは全米で支配階級の信認をえるようになり、80年の大統領選で勝利したのだ。
 そして彼は大統領として連邦税制の大改造をやった。「減税によって、税収を増やす」という、いわゆるレーガノミックスだ。減税と大軍拡の結果、アメリカ経済は、当然にも危機を激化させ、財政赤字も経常収支の赤字も拡大していった。

 PATCOの破壊

 1981年のPATCO(連邦航空管制官労組)のストライキに対する全員解雇は、新自由主義攻撃の突破口だった。これは、アメリカの支配階級全体の総攻撃だった。
 PATCO破壊を直接にやったのは共和党レーガン政権だが、その前の民主党カーター政権の時から周到に準備している。カーター政権は、まず航空規制緩和を行い、航空業界を激烈な競争にたたき込んだ。そして航空管制官については、ストライキを予想し、あらかじめスト破り要員の訓練をした。訓練を受けたスト破り要員と軍の航空管制官の両方が投入できるめどをたててから、FAA(連邦航空局)は、PATCOに劣悪な労働条件を突きつけ、ストライキに追い込んだのだ。
 80年の大統領選挙で極右のレーガンを支持した労働組合はごく少数だった。PATCOはそのうちの一つだった。その右派労組さえ、労働条件を守る職場代表という形をとる以上はたたきつぶす前例を作ることが新自由主義にとって決定的だった。
 全マスコミがPATCOを攻撃し、執行部が手錠姿で連行される場面をテレビで一斉に報道した。徹底的に屈服しないかぎり、体制内労組だって手加減しないというすさまじい恫喝だった。
 これを機に既成労働運動指導部は一斉に譲歩(コンセッション)路線に転換した。「組合側から先制的に譲歩を提案して、労働者に有利な形の譲歩にする」というわけだ。
(写真 ストに立ったPATCO【81年】)

 アウトソーシング、海外移転

 譲歩を労働者に飲ませるための殺し文句は、「アウトソーシングされたらどうする。海外移転されたらどうするんだ」だった。実際、労働組合の拠点工場の業務の一部を外注化する動きが多くなった。さらには、工場丸ごと閉鎖し労組が少ない地域に移転するようになった。そして、メキシコや中国への移転がさらに多くなっていった。
 アメリカの労働者は、「譲歩して雇用を守る」という口実の下に、次々に労働条件を切り下げられ、諸手当、年金、医療を失い、しかも雇用まで失い、低賃金の不安定雇用に追いやられてきた。

 金融サービスと知的所有権にシフト

 新自由主義の下では産業構成も急激に変化した。
 アメリカ帝国主義は、もはや製造業の競争力では絶望的なまでに衰退していた。そのかわり、金融業が膨張していった。アメリカの貿易赤字をファイナンスするものとして、外国から膨大な資金がアメリカに流れ込む。それを動かして金融的利益を得るという構造だ。アメリカの銀行、証券、保険などの金融サービス業に対する門戸開放が米通商代表部の交渉の主要項目になっていった。
 産業的な競争では負けても、アメリカは、広大な国内市場を持っている立場と、衰えたとはいえ圧倒的な基軸国である立場を使って、会計基準等をアメリカ式に統一させるために巨大な圧力を行使することができたのだ。
 もうひとつは、知的所有権(特許権、著作権など)だ。特許制度はそれまで、各国で相当異なっていた。これをアメリカに都合のよいようにするのが、新自由主義的な知的所有権政策だった。これが、マイクロソフト社などの超独占的市場支配を可能にしたのだ。80年にアメリカ最高裁判決で生物にも特許権を認めたことが、アメリカの巨大農業関係企業の種子独占を通じた農業支配を促進した。
 さらに、86〜93年のGATT(関税と貿易に関する一般協定)ウルグアイラウンド、95年のGATS(サービス貿易に関する一般協定)などの新自由主義の経済政策も、超独占的支配を進めるものだった。
 新自由主義は労働者や中小企業、農民には無制限の競争をさせ、巨大独占資本に無制限の独占の自由を与えた。

 IMF・世銀の構造調整プログラム

 80年代にアフリカ四十数カ国と中南米諸国などに累積債務を支払わせるためにIMFと世界銀行は、構造調整プログラム(SAP)を遂行させた。その内容は、徹底した緊縮財政(公務員削減、教育。医療等の削減など)、大衆課税の強化(消費税など)、公共事業の民営化、外貨を稼ぐ輸出産業への特化、貿易自由化などの政策だ。
 これによって、食料生産農業が破壊されて飢餓が蔓延したり、砂漠化が急激に進行したりして、こうした諸国の生活は激しく破壊された。そして債務はますます増大し、従属が深まった。
 SAPは、市場原理に基づく合理的な政策だから、一時的痛みはあっても、長期的には必ずその国の発展に役立つ、という新自由主義イデオロギーを押し立てて強行された。だから、IMF、世銀の政策で経済危機が激化しても、ますます強引にSAPが進められたのだ。
 SAPの遂行のためにIMFと世銀は代表を当該国に送り込み、植民地総督さながらに経済政策の指揮をとらせた。単に経済的従属が進められだけではなく、政治的にも再植民地化が狙われたのだ。このSAPやGATSが、新自由主義の「グローバル化」の道を開いたのだ。

■第3章

 職場権力を奪取する闘い 自信持って闘えば勝てる

 新自由主義の重圧を跳ねのけた決起の開始

 

もともと新自由主義は、政策であるだけでなく、社会全体に対するイデオロギー攻撃だった。
 新自由主義は、ミルトン・フリードマンらの経済学を看板に掲げている。しかし、それは、いかなる意味でも経済学といえるほどの内容はない。整合性があるものではない。そして、新自由主義の建前上のイデオロギーと実際の新自由主義の政策とは、破廉恥なまでにかけ離れている。
 イデオロギーとしては「小さな政府」「自由競争」を掲げながら、現実には、政府を巨大化させて金融市場、知的所有権等への介入を増大させてきた。また、大軍拡を行い、軍事予算も政府の総予算額も巨大化してきた。また、「自由競争」「市場原理」を唱えて規制緩和を行ったが、その現実の目的は、巨大独占資本のいっそうの独占の自由=競争の制限だった。
 このように現実とイデオロギーが背離していればいるほど、イデオロギーが強調されてきた。マスコミを始めとするあらゆる社会的な力を総動員して、洪水のように新自由主義のイデオロギーを宣伝し
た。
 また、それに少しでも批判的な言論、表現を表舞台から排除するために全力をあげてきた。マードックグループは、英タイムズ紙、米20世紀フォックス(映画・テレビ)、ウォールストリートジャーナル紙、ニューヨークポスト紙やメトロメディア(大テレビ局網)など主要メディアを買収しただけでなく、地方の小メディアも大々的に買収し、マスコミの集中化を進めた。
 まず、イデオロギーの部門で、競争よりも独占支配を確立していったのだ。
 これによって、労働者階級の闘いを威圧し、萎縮させることが行われてきた。労働運動の既成指導部による譲歩につぐ譲歩は、このイデオロギー攻撃を背景にして行われた。
 この新自由主義の威圧力が、大恐慌の現実によって吹き飛ばされたのだ。

(写真 カリフォルニア州の教育労働者、学生の100万人ストに合流して闘った全学連【3月4日】)

 解放感あふれる3・4のデモ

 アメリカは、現在の世界大恐慌の震源地であり、労働者の生活は最も厳しい打撃を受けている。
 だが、こうした生活の厳しさに直面しつつも、アメリカの労働者は、明るさを取り戻し、生き生きとした表情で闘い始めている。
 これまで圧倒的に強大だと思われてきた支配階級がうろたえ、弱さがさらけ出された。労働者にも浸透させられてきた、支配階級のイデオロギーのでたらめさが、全世界の前で暴き出された。同時に、これまで支配階級に勝てるはずがないとして闘いを抑圧してきた既成指導部の権威も失墜した。
 大量の労働者が、「言いたいことを言っていいんだ」と感じている。これまで孤立感を感じていた先進的な活動家たちは、仲間の労働者とともに闘える喜びを感じている。
 アメリカ階級闘争の力関係は、急速に転換しつつある。それを最も良く示しているのが、今年3月4日、カリフォルニア州の100万人の教育労働者、学生の一斉スト・デモだった。教育民営化・解雇・賃下げ・授業料値上げ反対を掲げて、小中高から大学まで、労働者、学生、生徒、保護者が根こそぎ決起した。
 デモの参加者も、沿道で手を振る人も皆、喜びにあふれる顔をしている。
 「トップから首を切れ」
 「大学はわれわれのものだ」
 「教育はわれわれのものだ」
 この闘いの組織化の中心は、カリフォルニア大学バークレー校の革命的な活動家たちだった。(具体的には全学連の訪米報告集を参照)
 だが、巨万の学生、労働者が決起する勢いを前にして、既成の体制内労組指導部もこれに賛同せざるをえなくなった。NEA(全米教育協会)系やAFT(アメリカ教員連盟)系の教職員組合やAFL―CIO(米労働総同盟産業別組合会議、ナショナルセンター)の州組織、地域組織も動員をかけた。そして運動の内側から、既成指導部がヘゲモニーを取り戻そうとした。だが、革命的な活動家たちは、独自の組織化を貫き、ヘゲモニーを奪われなかった。もはや、労働者大衆の主体的な決起を既成指導部が掌握することは不可能になった。
 そして、教育予算カット=解雇・授業料値上げの張本人であるシュワルツェネッガー知事やカリフォルニア大学のユードフ総長でさえ、「意義のあるデモ」といって、なんとか闘いを沈静化させようと必死になった。もちろん、これで沈静化するものではなく、逆に、労働者人民が力関係の転換を自覚し、自信を強めただけだった。
 このカリフォルニアの闘いは、全米の注目をあび、闘いが波及している。

 ILWUローカル10のイスラエル船ボイコット

 6月20日、ILWU(国際港湾倉庫労組)ローカル10は、オークランド港に入港したイスラエル船の荷扱いを拒否した。労働者階級が最も力を持っている職場生産点で闘い、パレスチナ人民と連帯したのだ。
 これに対して、隣町サンフランシスコの労組評議会もオークランドが属するアラメダ郡労組評議会もボイコットに賛同した。
 そして、この闘いを先頭にして、イスラエルのアパルトヘイト政策、とりわけガザ封鎖と救援船襲撃に対する連帯は、全世界の労働運動の中に広がっている。
 イギリスの労働貴族的ナショナルセンター、TUCでさえ、イスラエルボイコットを決議せざるをえなくなっている。これまで、アメリカ、欧州の労働運動にとって、イスラエル・シオニズム問題は、非常に重苦しい問題だったが、圧倒的多数の労働組合がそれから解放されつつあるのだ。
 シオニズムは、その発生の当初から帝国主義と手を組んだ運動として形成された。
 一方では帝国主義国内の労働者階級の闘いを分断するために、帝国主義国内での解放運動を否定するものにユダヤ人解放運動を変質させる、転向運動を展開した。
 他方では、パレスチナに植民し、文字通りの植民地支配の先兵になった。最初は英帝の次には米帝の中東支配の戦略的要となった。
 だから、潤沢な資金と国家権力の支援が受けられる。
 そして同時に、ユダヤ人解放運動の装いをとって、イスラエルの侵略戦争・弾圧への反対者を「反ユダヤ主義者」として激しく「糾弾」した。こうして、労働運動の比較的戦闘的な部分にさえ、かなりの影響力を形成してきた。
 ILWUローカル10のイスラエル船ボイコットは、こうした労働運動を内部から歪曲・分断する構造そのものに大打撃を与えたのであり、体制内労働運動を打倒するための巨大な一歩なのだ。

 リッチモンド教組の闘い

 今年4月初め、カリフォルニア州サンフランシスコの近くにあるリッチモンド市で、UTR(リッチモンド統一教組)の委員長のリコールが成立した。
 昨年秋、UTRは、新協約案をめぐって組合員投票を繰り返した。シッケリ委員長は、いったんは否決された協約案と実質的に同じものを抜き打ち的に再投票にかけて「可決」してしまった。
 この新協約は、学区側の財政赤字を理由とした賃金カットやクラス定員の増加、健康保険の大幅カットなどを組合側が受け入れたものだ。
 特に、健康保険の大幅カットは教育労働者の生活を破壊する。今までのUTRの労働協約では、現職・退職者両方の医療費を雇用主が全額負担することが決められていた。だが、それが破壊されるとアメリカのとんでもない民間保険会社の詐欺的暴利にさらされることになる。
 クラスの定員数が拡大され、6年生から12年生(高3)までの主要教科で「クラスの最大定員数」が38人となる。低学年でも最大クラス定員数が増やされる。
 リッチモンド市は、「財政危機」だといっているが、ここは世界的な巨大石油メジャーであるシェブロンの石油精製施設がある所だ。それによる大気汚染、水汚染がひどい。特に98年に違法に汚水処理の手抜きをやった大量の汚染を引き起こしたにもかかわらず、たった54万jの罰金で済まされてしまったことは有名だ。
 UTRの闘うランク&ファイルは、学区当局の労働条件切り下げ攻撃と闘うとともに、シェブロンとも闘っている。
 「財政危機」は、自然現象ではない。どこから税金を取り、どこに支出するかは力関係できまる。闘わずに当局に屈する執行部から組合を奪還しなければならない。
 ランク&ファイルの組合員たちは、この不正投票・開票があった12月からリコールの準備を始めた。それには、同じサンフランシスコ湾岸にあるオークランド教組(OEA)やカリフォルニア州南部のロサンゼルス統一教組(UTLA)から活動家が応援にかけつけた。
 OEAとUTLAの活動家も学校民営化攻撃と闘わない体制内執行部を打倒した経験をもっている。広いカリフォルニアの南部から北部までを結ぶ戦闘的ランク&ファイルのネットワークができている。
(写真 シェブロンの環境汚染に抗議するUTRの労働者)

 オバマの地元シカゴの教組で民営化反対派が勝利

 シカゴには、ロックフェラー財閥が作ったシカゴ大学がある。戦後、ここにフリードリッヒ・ハイエク、ミルトン・フリードマンら新自由主義的な傾向を持つ多くの学者が集められた。シカゴは、新自由主義の拠点にされたのだ。
 フリードマンは、早くも1955年には、教育バウチャー制度を提案し、彼の生涯を通して教育の民営化を推進してきた。
 バウチャー制とは、政府が保護者に私立学校の授業料に相当する「バウチャー(券)」を与えて、子どもを私立に通えるようにする制度だ。これに対する反対があまりにも強かったので、現在では新自由主義の方針は、チャータースクール(公設民営校)の導入に変わっているが、いずれにせよ、シカゴが学校民営化派の最大拠点だったのだ。
 学校民営化プロジェクト「ルネサンス2010」を推進してきたシカゴ市教育長が、現在のオバマ政権の教育長官、ダンカンだ。
 このオバマの教育民営化政策の拠点地域で、これまでのシカゴ教組の指導部は、民営化に協力してきた。
 だが、今年、CORE(ランク&ファイル教育者連合)というフラクションが、民営化絶対反対を掲げて執行部選挙で勝利した。
 シカゴ教組は全米第3位の巨大教組だ。第2位のロサンゼルス統一教組(UTLA)と合わせて、民営化絶対反対の戦闘的潮流がオバマと不屈に対決している。

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月刊『国際労働運動』(410号4-1)(2010/10/01)

翻訳資料

■翻訳資料/「核態勢見直し(NPR)2010」(下)

鵜川遊作 訳

鵜川遊作 訳

 □NPR要旨(前号から続く)

・縮小した米戦略運搬手段である大陸間弾道ミサイル(ICBMs)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBMs)、そして核搭載可能重爆撃機をSTARTT水準から約50%減らし、戦略弾頭数をモスクワ条約水準から約30%減らすにもかかわらず、安定した抑止は維持できる。
・NPRの分析により、米国はロシアと、新START制限として、1550個の戦略核弾頭、700の配備された戦略運搬手段、そして配備済み、および非配備の戦略発射台の合計800について合意した。
・米戦略核の三本柱、ICBMs、SLBMs、核搭載重爆撃機は新STARTの下で維持される。
 全ての米ICBMsは安定性を増すために一個の核弾頭「非多弾頭」とする。
・米の地域的抑止と安全に対する非核兵器システムの役割は、ミサイル防衛の制限を外すことと、通常兵器として重爆撃機と長距離ミサイルシステムを使うという選択肢を保持し続けることによって維持される。
 NPRは、米戦略軍事力の現在の警戒態勢、つまり全時間警戒態勢から外されている重爆撃機、ほとんど全てのICBMを警戒態勢にしておく、そしてSLBNの多くがどんな時間にも海中にいる態勢は現在も維持されるべきだ、と結論づけた。
 事故、許可されていない行動、誤解によって・核の発射が行われる可能性をさらに減少させ、大統領が核兵器の使用を認めるか否かを考える時間を最大にすることは、今後も続けられるべきであることもまた結論付けている。重要な手順は以下である。
・全てのICBMとSLBMは外洋に打ち込む練習を続けているので、許可されていない、あるいは事故による発射というのは極めて有り得ない事例で、ミサイルは外洋に着水する。そして、ロシアにこの練習への了解を求める。
・核危機の際に大統領の決断時間を最大にするための司令制御システムを強める。
・生き残り率を高めるICBM基地の新しいモデルを研究し、即座の発射への誘因をさらに減らす。

 戦略的安定性を強化する

 ロシアと中国が現在その核戦力を現代化しているので、そして、そのことによって両国とも米核ミサイル防衛と非核ミサイル計画を不安定化させようとしているので、2国との戦略的安定性を維持していくことは今後数年間重要な課題である。
・米国は、ロシアと中国両国との戦略的安定性に関する水準の高い相互対話を求める。それは、さらに安定した、柔軟な、透明性のある戦略的関係を育むことを目指すものである。
・ロシアとの戦略的対話は米国に、わがミサイル防衛と未来の米長距離通常弾頭弾道ミサイルシステムが新たな地域的脅威に対処する計画であり、ロシアとの戦略バランスに影響与える意図はないことを説明する機会を与える。
 ロシア側としては、はその現代化計画を説明することができ、その現代軍事政策(特に核兵器の重要さをどの程度重視しているか)と、ロシア深奥部の少数の安全保障施設における非戦略システムのさらなる強化などの、非戦略核についての西側諸国の心配を和らげるために取る諸措置を話し合うことができる。
 中国とは、戦略的安定性に関する対話の目的は、核兵器と他の戦略戦力に関する相手の戦略、政策、計画について意見を交換するために双方の場所や機会を提供することである。
(写真 オバマ政権下で行われたICBM【大陸間弾道弾】ミニットマンVの発射実験【09年6月29日】)

 将来の核軍縮

 大統領は将来の核兵器縮少を考えるために、新START後の軍縮方針の見解を指示した。幾つかの要素が、米核戦力の新START水準以下の将来の縮少の規模と速度に影響を与える。
 まず、将来のどんな核軍縮も地域的潜在的敵への抑止力、相対しているロシアと中国との戦略的安定、それと我が同盟国、連携国の安全保障を強めるために続けるべきである。
 抑止力の要請は最新の評価にかなうものでなければならない。米国、同盟国、連携国における非核戦力のさらなる改良、戦略的、非戦略的兵器の焦点化された縮減、同盟国、連携国との緊密な協議などである。
 米国は、どんな潜在敵が見積もっても、米国、その同盟国、連携国への攻撃によって得られる利益は反撃のとてつもないコストによって、はるかに超えられてしまうことを確信させ続ける。
 第2に、NPRで勧められている備蓄管理計画の実行と核施設投資は米国に、技術的あるいは地政学的な不測事態への保障として保有している膨大な非配備弾頭の転換を可能にし、核備蓄の大削減を可能にする。これらの投資は、新STARTの下での抑止が維持されている一方、削減をするために必須である。
 3番目に、ロシアの核戦力は、どれだけの量、どれだけの速さでわれわれが米戦力を縮小するかを準備する上で極めて重要な要因である。われわれの改善された関係ゆえに、2国間の厳密な数の上の同等性の必要性はもはや冷戦時代のような厳密的なものではない。しかし、核戦力の不等性が大きくなれば、双方、および米国の同盟国、連携国に懸念を引き起こさせ、安定した、長期の戦略的な関係のためにならない。特に核戦力が著しく削減されたときは問題になる。それ故、われわれが核戦力をさらに削減する時はロシアをわれわれとの協議に参加させることが重要である。 重要なNPRの勧告は以下である。
・地域的潜在敵への抑止力、ロシアと中国との戦略的安定性とわが同盟国と連携国の安全保障を強める一方、新STARTの水準以下の将来の核削減への目標設定のために追加の分析を行う。
・ロシアとの新START後の話し合いでは、双方の非配備核兵器と共に、非戦略核兵器を扱う。
・我が同盟国と連携国への安全保障の信頼性と有効性を維持しつつ、米核戦力縮少を実行する。米国は、新START後の話し合いへと発展したなら、同盟国、連携国と相談する。

 地域的抑止力を強化して、米国の同盟国と連携国の安全を保障する

 米国は相互的そして地域的安全保障関係を強めて、これらの関係を21世紀の課題とすべく同盟国、連携国と共に作業する。
 潜在的脅威を抑止する上で、この安全保障関係は決定的である。そしてまた、近隣諸国に、核兵器追求は、軍事的あるいは政治的優位を確保する目標をただ掘り崩すだけであることを示すことによって、そして非核の米同盟国と連携国に、彼らの安全保障利害は自らの核抑止力なくして守られうることを彼らに再保証することによって、不拡散の目標に寄与することが出来る。 米核兵器は、諸地域で核兵器を保有し、あるいは保有しようとしている国からの核攻撃、あるいは核を背景にした強制に対する抑止力をアメリカの同盟国と連携国に広げる上で決定的な役割を果たす。
 信頼の置ける「核の傘」は諸手段の組み合わせによって与えられてきた。つまり、米戦略核の3本柱、重要な地域に前方配備してある戦術核兵器と地域紛争に適応するために素早く先方に配備できる米本土内の核兵器の組み合わせによってである。抑止手段の組み合わせは時間と場所によって変わる。ヨーロッパでは、前方配備の核兵器は、冷戦の終結以来劇的に減ったが、少数の米核兵器は残っている。
 NATOメンバーに対する核攻撃のリスクはかつてなく小さくなったが、米核兵器の存在は、非核メンバーが核計画に参加でき、核兵器が運搬できるように特別に改造された航空機を保有できるNATO独特の核共有協定と結合して、同盟の団結に寄与し、地域的な脅威にさらされていると感じているすべての同盟国と連携国に安全を保障する。
 同盟メンバーを防衛する核兵器の役割はその戦略的概念のNATOによる見直しと関係づけて今年議論される。NATOの核態勢の何らかの変更は、同盟内での、そしてその決定を受けて、全般の見直しの後にのみなされる。アジアと中東で、そこではNATOのような多国間同盟はないが、米国は、2国間同盟と安全保障関係とその前方軍事展開と安全保障を通じて拡張抑止を維持した。冷戦が終わった時、米国はその前方配備の核兵器を太平洋領域から引き揚げた。それは、海軍の洋上艦や一般目的の潜水艦からの核兵器の撤去をも含むものであった。それ以来、米国はその中央戦略軍と危機の際の東アジアの核システムの再配備能力に依拠している。
 核兵器は同盟国、連携国への米国の保障の重要な要素であることを示しているが、米国は、米非核プレゼンスと効果的な戦域弾道ミサイル防衛を含む地域安全保障体制を強化する非核要素にますます依拠している。
 核兵器の役割は米国家安全保障戦略では減っているので、これらの非核要素が抑止力の負担を大きく分担する。そのうえ、効果的な地域的抑止力に不可欠な要素は非核兵器だけでなく、非軍事つまり、米国とその同盟国、連携国との強い、信頼しうる政治的関係である。
 4節 戦術核兵器
 米国は、冷戦終結以降、戦術核兵器を劇的に減らした。今日、ヨーロッパでは、限られた数の前方配備の核兵器と、世界中の同盟国と連携国への拡張抑止を支援する目的で海外配備される可能性に備えて米国内に備蓄されている少数の核兵器のみを維持している。ロシアははるかに多数の戦術核を残しており、その非常に多くを幾つかのNATO諸国の領域近くに配備している。
 NPRは、米国が次のことを行うことを結論づけた。

・戦術戦闘爆撃機と重爆撃機搭載の前方配備米核兵器の戦力を維持し、B−61爆弾の安全性、確実性、使用制御性を高めつつ、寿命延長を全力で推進し、制御する。
・核弾頭装着海上発射巡航ミサイル(TLAM―N)を退役させる。
・米前方展開軍事プレゼンスを補う長距離攻撃力の維持を続け、地域的抑止力を強める。
・米国の拡張抑止の信頼性と効果をいかに確実なものにするかという問題に対処するために同盟国と連携国との話し合いを継続し、強化する。

 安全、確実、効果的な核兵器を維持する

 米国は、その核兵器が安全、確実、効果的であることが確証できることに責任を負う。1992年の米国の最後の核実験以来、我が国の核弾頭は、ほとんど始めの設計図に従いそれを修復する事によって弾頭の寿命を延ばす備蓄管理計画によって、安全で信頼あるものとして保障され、維持されてきた。
 30年間先のことを見つめて、存在している核弾頭の寿命を延ばすために、議会が定めた備蓄管理計画と米国の非核目標と一貫性を持たせつつ、どうしたら最善かをNPRは考え、次の結論に達した。
・米国は核実験を行わず、包括的核実験禁止条約の批准と発効を求める。
・米国は新しい核弾頭を開発しない。寿命延長計画(LEPs)は前に実験された型の核部分のみを使い、新しい軍事任務を支援したり、新しい軍事力を作らない。
・米国は、状況に応じて、核弾頭の安全、確実、信頼性を保障する選択肢を、議会が定めた備蓄管理計画に合わせて、研究する。全領域の寿命延長計画の取り組みが考えられている。存在する核弾頭の改修、異なる弾頭の核部分の再利用、それに核部分の置き換えなどである。
・核弾頭寿命延長計画技術開発を進めるどんな決定においても、米国は改修または再利用を選択する方を強く望む。核部分の置き換えは、決定的な備蓄管理計画目標にそうしなければ沿えない場合、そして特に大統領によって同意された場合、議会によって承認された場合にのみ行われる。 これらの結論を踏まえて、NPRは以下の点を勧告する。
・W―76潜水艦発射の弾頭についての進行中の寿命延長計画と寿命延長計画研究とB―61爆弾の以後の活動に満額予算を計上する。
・弾頭型の数を減らすために、SLBM上に残された弾頭の使用の可能性を含めて、W―78ICBM弾頭LEPの研究を始める。
 安全、確実、効果的にしておくためには、米国の核備蓄は、国立安全保障研究所と支援施設の複合ビルから成る現代物理施設と、核抑止力を維持するのに必要な特別な技能を持った高い能力の労働力によって支えられなければならない。米国が核兵器の数を減らすので、それを維持するに必要な施設の質も、さらに重要になる。
 人的資源もまた懸案事項である。国立安全保障研究所は次の世代の最も有力な科学者や技術者を引きつけ確保することが益々難しくなったことを認識した。拡散と核テロリズムを防ぐのと同様、政府の備蓄管理への明快な、長期計画への関与は、やりがいのある、有意義な研究開発活動に携わる機会を与えることによって、明日の科学者と技術者の募集と確保を強化するだろう。
 NPRの結論は以下のようなものである。
・科学、技術、工学の基盤は、不拡散の洞察を与えるのと同様、備蓄管理に取って決定的であり、強化しなければならない。
・核兵器複合施設や人事への投資の増加は長期的な安全、確実、効果的な我が核兵器の確保するために必要である。・現存の50歳になる老朽施設を取り替えるためとテネシー州、オークリッジのY−12プラントでの新ウラン処理施設を発展させるためのロスアラモス国立研究所の化学と冶金学研究取り替え計画には財源増加が必要である。
 『核態勢見直し2010』の勧告を進めることは米国とその同盟国、連携国の安全保障を強め、核兵器のない世界への大統領の構想に近づく重要な措置をわれわれにもたらすものである。
 国際的な不安定さが増したり、安全が確保されない危険性なしに、米国とその他の国がその核兵器を放棄する事が究極的に許される条件は非常に待ち望まれるものである。これらの条件とは、核兵器の拡散の停止の成功、懸案の主要な国の計画と能力への透明性をずっと増すこと、軍縮義務違反の検査ができる検証方法と技術、そのような違反を抑止するに十分な強力な信頼性のある強制手段、対抗国家が核兵器を獲得する、また持ち続ける動機となる地域的紛争の究極的解決などである。明らかに、そのような条件は今日存在しない。
 しかし、われわれはこれらの条件を生み出すためにせっせと働くことが出来る。そうしなければならない。われわれはNPR2010で示された実際の措置をとることが出来る。それは世界中の全ての核兵器を廃絶する究極の目標にわれわれを駆り立てるばかりでなく、世界的不拡散体制を当然の権利として、再活性化し、テロリスト集団による核兵器や核物質の取得のハードルを高くして、米国と国際社会の安全保障を強める。
 (おわり)

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月刊『国際労働運動』(410号5-1)(2010/10/01)

■Photo News

 ●アリゾナ州で新移民法に抗議する闘い

写真@A

 7月29日、移民労働者を街頭で恣意的に呼び止め、身分証明書をチェックできることを規定したアリゾナ州の排外主義的な新移民法が発効した。これに対して、アリゾナ州全域、アメリカ各地、メキシコなどで抗議の闘いが行われた(写真@A サンフランシスコ 7月29日)。

 ●ホテル労働者の抗議闘争

写真BC

 7月22日、サンフランシスコで、UNITE HEREローカル2に所属する1500人のホテル労働者たちが、グランド・ハイアットホテルによる、首切り、労働強化に抗議するデモに決起した。ホテルを取り巻く抗議の闘いに対し、警察部隊が襲いかかり150人を逮捕したが、労働者たちはこれにひるまず抗議闘争を最後まで貫徹した。この日、シカゴ、ホノルル、ロングビーチ、ロサンゼルス、ボストン、ローズモント、バンクーバー、トロント、ピッツバーグ、インディアナポリスなどでもホテル資本に対する抗議闘争が行われ、数千人のホテル労働者が参加した(写真BC サンフランシスコ)。

 ●フィリピン・トヨタの労働者の闘い

写真DE

 8月10日、フィリピン・トヨタの労働者たちは、トヨタ資本による4人の労働組合指導者の不当解雇に抗議する闘いに決起した(写真DE)。4人はフィリピン・トヨタ自動車労働組合の役員で、生産サボタージュを組織したとして8月2日、懲戒解雇を通告された。トヨタ資本は、6月5日に職場の苦情処理グループの行動が行われた際に、生産ラインが停止した責任を組合に押し付け、不当な処分を行ったのだ。

 ●上海でもパナソニックの労働者がスト

写真FG

 8月6日、上海のパナソニック工場で、労働者がストライキに立ち上がった(写真F)。これは今のところ小規模な賃上げを求めるストライキであるが、比較的賃金の高い上海地域で起きた初めてのストライキとして注目されている。中国労働者の闘いはついに上海地域にも波及したのだ。なお、7月にストライキに決起した中国のアツミテック自動車部品工場とオムロンの労働者(写真G 7月21日)は、賃金の大幅引き上げを勝ち取った。

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月刊『国際労働運動』(410号6-1)(2010/10/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点/日本の財政危機 国債暴落は必至

菅政権の参院選大敗で財政再建はもはや手遅れに

 □消費税の大増税は最後の危機回避策

 世界大恐慌のもと、日本帝国主義の国家財政は破産状態に突き落とされている。
 菅首相は、消費税の税率を10%に引き上げると公言して参院選に臨んだ。その結果は民主党の大敗であった。菅政権そのものがぐらぐらであり、支配階級は消費税増税の見通しなど立たないところに追い込まれている。
 09年末から噴出したギリシャ危機は、日帝を震え上がらせた。大蔵省―財務省は70年代後半以来、一貫して「財政再建」を唱え、社会保障の解体など労働者人民の生活を破壊する攻撃を繰り広げてきた。だが、日本国債の暴落とデフォルト(債務返済不能)の危機がリアルに突きつけられたのは、ギリシャ危機が初めてだったと言っていい。
 菅は、来年度にも消費税増税に着手しなければ国家財政は崩壊すると財務官僚から突き上げられて、参院選前に消費税増税をぶち上げた。その結果は完全に裏目に出た。
 日帝にとって「来年度から消費税増税に着手する」というプランは、国債暴落を回避する最後の手段だった。菅は今なお消費税増税をたくらんでいるが、少なくとも「来年度から増税に着手」という計画は絶望的だ。これは、日帝の財政再建策がもはや手遅れになったことを意味する。どんなにあがこうとも、国債暴落―デフォルトを避けることはできない。日本の労働者階級は、自民党支配を崩壊に追い込んだ昨年8月の衆院選に続き、投票行動という形ではあれ、今回の参院選において日帝国家の存立を突き崩す歴史的選択をしたのである。

 □ギリシャを上回る巨大な累積債務

  日本の財政は際だって破綻的だ。民主党への政権交代はこの危機をさらに加速した。
 2010年度予算で国債の新規発行額は44・3兆円に膨らんだ。他方、同年度の税収見積もりは37・4兆円。当初予算の段階で国債発行額が税収を上回るという異常な事態は、敗戦直後の1946年以来のことだ。
 これにより2010年度末の国債発行残高は637兆円に達する見通しだ。地方自治体の債務を加えた国と地方の長期債務残高は862兆円に膨らむ。この額は日本のGDPの181%。ギリシャでさえ、政府債務残高のGDP比は112%程度だ。IMF(国際通貨基金)の試算では、日本の累積財政赤字は2015年度にGDPの250%にもなると言われている。
 6月に開かれたG20(20カ国・地域首脳会議)は、主要国が2013年度までに財政赤字を半減することで合意した。だが、巨大な財政赤字を抱える日本は、この目標の達成はとうてい不可能と見なされ、例外扱いとされた。しかし、日本政府が何の財政再建策も示さなければ、日本国債は直ちに暴落しかねない。
 だから菅政権は、6月に「財政運営戦略」と「新成長戦略」を閣議決定した。「財政運営戦略」は、2015年までに基礎的財政収支の赤字を今年度の水準の半分に減らし、2020年までに黒字化するとうたっている。だが、こんな計画に現実的な展望はまったくない。
 基礎的財政収支(プライマリーバランス)が赤字になると、新たな借金が年々の借金返済額を上回り、債務は雪だるま式に増えていく。この状態を続ければ、いずれ必ず国債は大暴落し、国家はデフォルトに陥る。
 だから、「基礎的財政収支の黒字化」は日帝にとって絶対的な目標とされてきた。これを激烈な形で押し貫いたのが、新自由主義政策を満展開した小泉政権だ。小泉政権は06年に「骨太方針2006」を策定し、「2011年度に基礎的財政収支を黒字化する」という目標を掲げ、社会保障費を年々2200億円も削減する大攻撃を強行した。
 しかし、そのプランもすでに破産した。今回、菅政権が打ち出した「財政運営戦略」は、基礎的財政収支の黒字化を2020年度に先送りしている。これは、財政再建など不可能であることを日帝国家が自認したに等しい。
 2010年度の基礎的財政収支の赤字は23・7兆円に達する。今後10年でこれを黒字にするためには、消費税の税率を27・3%に引き上げる必要があると言われる。こんなことはおよそ不可能だ。
 「財政運営戦略」は「強い政治的リーダーシップ」が一切の前提だと繰り返し強調している。しかし、参院選大敗で菅は「政治的リーダーシップ」など発揮しようのないところに追い込まれた。「財政運営戦略」はあらかじめ破産を運命づけられている。

(図 日本の国債残高の推移)

 □膨大な資本救済費が財政赤字の根本原因

 日帝が赤字国債の発行に追い込まれたのは、74〜75年恐慌からである。その後、国債発行残高は一貫して増大し続けてきた。70年代後半から、日帝は「財政再建」を叫び始める。その切り札となったのが、消費税の導入だ。
 これは新自由主義の攻撃と一体のものとして展開された。中曽根政権による国鉄分割・民営化も、「国鉄赤字の解消」を口実にして強行された。国鉄分割・民営化が行われた87年当時、国債の発行残高は152兆円だった。現在の国債発行残高と比べれば5分の1程度だ。しかし、当時から支配階級は国債の累増に強烈な危機感を抱いていた。
 消費税は89年に労働者人民の抵抗を押し切って導入された。しかし、これによっても財政再建は果たされなかった。国債発行残高は、バブル期においてもその増加の程度が抑えられたにとどまり、減少したことは一度もない。そして、バブル崩壊の91年以降、国債発行は急加速した。資本救済のために膨大な財政支出がなされたためだ。とりわけ、97年末に山一証券や北海道拓殖銀行が倒産し金融恐慌が本格化する中で、国債発行額はうなぎ登りに増えた。
 このことへのすさまじい危機感に駆られて、小泉政権は社会保障費や、国が地方自治体に交付する地方交付税交付金の大幅削減に踏み切った。しかし「基礎的財政収支の黒字化」を掲げたこの方策も、07〜08年度の2年しか続かず破産する。
 08年秋、米証券大手リーマンの破綻で世界大恐慌が一挙に激化して以降、赤字財政への歯止めは完全に失われた。国債発行残高は08年度末の546兆円から09年度末の6
00兆円へと、わずか1年で54兆円も増大した。
 財政破綻の原因は、巨額の資本救済費が延々とつぎ込まれてきたことによる。

 □法人税の大幅減税でさらなる資本優遇策

 にもかかわらず菅政権は、資本への優遇策をさらに拡大しようとしている。
 日本経団連は4月13日、「経団連成長戦略2010」を策定し、国税・地方税を合わせた法人課税の実効税率40%は諸外国に比べて高すぎるとして、実効税率を30%に引き下げろと叫びたてた。同時に、来年度から消費税の引き上げに着手し、税率を10%とすることを要求した。
 これに呼応した菅政権は、「新成長戦略」で「日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引き下げる」と打ち出した。
 法人税減税は消費税増税とセットになっている。労働者人民には消費税増税を押しつけ、資本にはさらなる大減税を施そうというのである。
 仮に消費税の増税が強行されたとしても、その税収は法人税減税ですべて吹っ飛ぶ。国税である法人税の場合、その税率は80年代半ばには43・3%だった。それが度重なる税制改定を経て、2000年以降は30%に引き下げられている。消費税導入以来の消費税の税収総額と、その間になされた法人税減税の総額はほぼ等しい。
 しかも「法人税の実効税率は40%」という資本の主張にはうそがある。実際には大資本は40%も税負担をしていない。租税特別措置による減税制度があるからだ。

 □国債バブルは必ず破裂

 大恐慌は国家財政危機に集約され、一層の深化を遂げている。にもかかわらず、直ちに日本国債が暴落するという形にはなっていない。むしろ、余剰資金は企業の設備投資に回らず、相対的に安全な資産としての国債に流れ込んでいる。だがこれは、大恐慌下における「国債バブル」と言うべき状態だ。バブルである以上、それはどこかで必ず破裂する。いったん資金が国債市場から流出を始めれば、国債価格は激しい勢いで暴落することになる。
 ところが、ブルジョアジーはもとより日本共産党など体制内諸勢力は、「日本国債のほとんどは国内で買われているから国債暴落など起こらない」と言い募っている。だが、財政赤字の巨大さを直視しないこんな主張には、何の説得力もない。むしろこの間、財務省は日本国債を海外に売り出そうと躍起になってきた。財務省にとっては、日本国債の海外保有高が5%程度にとどまっている現状は、ひとたび国債価格が動揺すれば国債の投げ売りを招きかねないきわめて不安定なものと意識されていた。
 国債暴落否定論は結局、「最後は日銀が国債を引き受ければいい」という暴論でしかない。野放図な国債の日銀引き受けは、経済を破滅状態に突き落とすものになる。

 □公務員大リストラ攻撃と全面的に対決しよう

 日帝はいかなる意味でも財政再建の道を断たれた。そこから菅政権は、公務員労働者への大首切りと大幅賃下げ、公共部門の一層の民営化と非正規職の拡大に走る以外になくなった。
 民主党はマニフェストに「国家公務員の総人件費2割削減」を掲げている。鳴り物入りで展開される「事業仕分け」も、公務員労働者への激烈なバッシングそのものだ。社会保険庁の解体を最終的に強行したのも民主党政権だ。
 しかし、こうした公務員労働者の首切りと大幅賃下げは、直接にはなんら「財政再建」には結びつかない。2010年度予算で国家公務員の人件費は5兆円、予算総額92兆円のわずか5・4%に過ぎない。この数年、人件費総額をはるかに上回る規模で新規国債の発行額は増大し続けてきた。労働者に赤字の責任は一切ないし、公務員賃金をどんなに削減しようが赤字の解消にはならない。
 地方公務員の場合も同じだ。2010年度の全国の自治体の一般会計予算額の総計は82兆円だが、そのうち正規雇用職員の人件費は21・7兆円、全体の26 ・4%に過ぎない。日帝が財政赤字のくびきから逃れようとすれば、結局は道州制を導入して社会保障を自治体に押しつけ、ひいては自治体に社会保障を切り捨てさせる以外にない。  地方公務員の場合も同じだ。2010年度の全国の自治体の一般会計予算額の総計は82兆円だが、そのうち正規雇用職員の人件費は21・7兆円、全体の26 ・4%に過ぎない。日帝が財政赤字のくびきから逃れようとすれば、結局は道州制を導入して社会保障を自治体に押しつけ、ひいては自治体に社会保障を切り捨てさせる以外にない。
 しかしそれは、公務員労働運動を跡形もなくたたき伏せることが大前提となる。だから菅政権は、公務員労働運動の解体へめり込んでいるのである。そこには、支配体制の崩壊に直面したブルジョアジーの、プロレタリア革命の圧殺に向けた強烈な階級意志が込められている。
 民主党政権に深々と入り込んだ連合幹部は、公務員労働者への大リストラ攻撃の先兵になっている。彼らは消費税増税も容認し、菅が公務員労働運動解体の切り札に位置づける公務員制度改革を率先推進する側に回っている。
 こうした攻撃の先端に、国鉄1047名解雇撤回闘争を圧殺する4・9政治和解案があった。だが、動労千葉を先頭とする闘う労働者は、国鉄全国運動を立ち上げ、これと真っ向から対決する新たな挑戦を開始した。これは、4大産別を始めあらゆる職場で階級的労働運動を巻き起こし、労働組合を労働組合としてよみがえらせる決定的闘いだ。
 資本主義の命脈はもはや尽きた。プロレタリア世界革命のみが、危機打開の道だ。
 (岩谷芳之)

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月刊『国際労働運動』(410号7-1)(2010/10/01)

世界の労働組合

■世界の労働組合(イギリス編)

鉄道・海運・運輸労働者全国労働組合

(National Union of Railway, Maritime and Transport Union:RMT)

(National Union of Railway, Maritime and Transport Union:RMT)

 ■概要

 RMTは、19世紀末に結成された伝統ある労働組合の全国鉄道員組合(National Union of Railwaymen:NUR)と全国海員組合(National Union of Seamen:NUS)が合併して1990年に結成された。NURとNUSは、1984年のNUMの炭鉱ストライキのときに同情スト禁止を乗り越え、石炭輸送を拒否して首をかけて闘い抜いた組合である。また、NUSは1966年の海員大ストライキを闘ったことでも有名であり、1988年にも大ストライキを打っている。  RMTは、19世紀末に結成された伝統ある労働組合の全国鉄道員組合(National Union of Railwaymen:NUR)と全国海員組合(National Union of Seamen:NUS)が合併して1990年に結成された。NURとNUSは、1984年のNUMの炭鉱ストライキのときに同情スト禁止を乗り越え、石炭輸送を拒否して首をかけて闘い抜いた組合である。また、NUSは1966年の海員大ストライキを闘ったことでも有名であり、1988年にも大ストライキを打っている。
 しかし、海運国だったイギリスも海員数は近年激減し(1980年に3万人、現在は1万人以下)、RMTの組合員は鉄道(地下鉄含む現業全職種)、バス・トラックなどの労働者が多数を占める。職域別では、鉄道関係が圧倒的に多い。2002年にボブ・クローが委員長に就任して以来の5年間で、組合員の数を6万人から現在の8万人へと大幅に増やし、イギリスで最も急速に組織拡大している組合である。
(写真 RMTのボブ・クロー委員長)

 ■社会主義を規約の冒頭に掲げるRMT

 RMTは、その規約第1条第4項の組合の目的のところで、「資本主義制度を社会の社会主義的秩序によって置き換えること」としている。労働組合が、経済闘争のみにその役割を切り縮めるのではなく、社会主義の実現を真っ向から掲げて政治闘争を闘うことを明言しているのは、非常に画期的である。
 イギリス労働党は、労働組合によって作られたから、その組織原則は労働組合の一括加盟であり、RMTも創設時から組織加盟していた。現在、左派といわれるほとんどの組合は、労働党に留まって内部から改革しようという立場をとっている。この中で、RMTは労働党との決別の先頭に立った。RMTは、労働党政権がイラク戦争に賛成していく中で反戦闘争に決起して除名され、それでもなおかつ闘い抜いて大幅に組織拡大している。
 ボブ・クロー委員長は、労働党以外の新たな労働者党を作るためのさまざまな集会などで発言し、政治再編のための集会をRMTが呼びかけて主催してもいる。

 ■動労千葉と同じ質の反合理化・運転保安闘争

 1979年のサッチャー政権登場以来、イギリスでは全世界で最も徹底的な規制緩和と民営化攻撃が吹き荒れた。イギリス国鉄は1994年1月に分割・民営化されたが、それは日本以上に徹底したものだった。レールを保有する会社と列車を走らせる旅客会社が別になっており、しかも旅客会社は数十も存在している。レール保有会社のレールトラック社は日本のJRと同様、線路の保守・点検を請負会社に外注化し、運転保安の責任を放棄した。そのため、「ケージ・コーナー・クラッキング」と呼ばれる線路のひび割れが1200カ所以上あるにもかかわらず、レール交換を行おうとせず、「30_以上のひび割れがある現場では応急措置として時速32`の速度制限をとる」などというでたらめきわまる指示を出して平然としていた。線路のひび割れと破断を放置した結果、2000年10月17日に列車がハットフィールド近くの損傷したレール上を走行中にレールが300以上の破片となって砕け、9両連結の客車のうち7両が脱線し4人の死者を出すに至った。
 このような運転保安の危機に対して、RMTは激しく闘っている。今年2〜3月も、ファースト・スコットレール会社が新路線で車掌を乗務させず、運転士と検札係のみで運行する計画を出してきたことに対してストライキに決起した。ボブ・クロー委員長は、この闘いが乗務員の安全を守るだけでなく、乗客の命を守るものであることを強調し、労働者人民に支持を呼びかけている。このような反合理化・運転保安闘争は動労千葉の闘いと同じ質を持った闘いだ。

 ■公共部門の民営化反対闘争の先頭に立つ

イギリスでも公共部門に対する大幅な削減などの民営化攻撃が激化している。今年4月10日、数万人の集会とデモがロンドンで闘いぬかれた。RMTは、「民間企業が公共部門に入り込んできたことによって、鉄道における雇用削減が行われている」と述べ、民営化反対の先頭に立って闘っている。  イギリスでも公共部門に対する大幅な削減などの民営化攻撃が激化している。今年4月10日、数万人の集会とデモがロンドンで闘いぬかれた。RMTは、「民間企業が公共部門に入り込んできたことによって、鉄道における雇用削減が行われている」と述べ、民営化反対の先頭に立って闘っている。 

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月刊『国際労働運動』(410号8-1)(2010/10/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦 10月21日

■1966年〜国際反戦デー■

ベトナム北爆に反対

総評がストに立ち世界に呼びかけ

68年は燃料阻止で新宿「騒乱」闘争

 1960年代後半、アメリカ帝国主義によるベトナム戦争は、絶望的に凶暴化し、激化した。世界中でこれに対する反戦闘争がまき起こった。この中で、日本の労働組合のナショナルセンターだった総評(日本労働組合総評議会、当時約420万人)がベトナム反戦ゼネストを提起し、それを全世界に呼びかけたのが国際反戦デーの始まりだ。

 ●初めての反戦スト

 総評は65年の大会で「北ベトナムのハノイ、ハイフォンへの米軍の空爆が行われたらゼネストで闘う」という決議していた。しかし66年6月に現実に爆撃が始まった時、総評はデモすら行わなかったので、労働者の突き上げが殺到した。8月の大会で10月中旬に60年安保闘争に匹敵するベトナム反戦ストを闘うという方針を決定した。決定された10月21日は、43年に学徒出陣の壮行会が行われた日として記憶されてきた。
 10月21日、ベトナム反戦ストは、48単産211万人が参加した。人事院勧告完全実施などの秋闘要求を絡め、未明から国労、動労、私鉄、都市交通、炭労、日教組などが時限ストに突入した。自治労、私鉄、全逓などは戦術ダウンした。
 それでも、労働組合がベトナム侵略戦争反対を掲げて歴史上初めて敢行したストは、世界中から注目された。9月に来日したフランスの哲学者ジャン・ポール・サルトルは「世界の労働者の模範」とたたえた。
 翌22日に、日教組の本部など全国200カ所の日教組事務所に「反戦ストは地公法違反」を口実に一斉捜索が行われたことは、労働者の反戦ストへの権力の恐怖の表れだった。
 翌67年は、10月8日に全学連、反戦青年委員会が佐藤首相の南ベトナム訪問を日本帝国主義のベトナム参戦国化と弾劾し、京大生山崎博昭君の虐殺をのりこえ羽田現地闘争を闘った。
 この闘いへのマスコミから日本共産党に至る猛烈バッシングの中で迎えた10
・21国際反戦デーは、44都道府県で150万人が集まる高揚を示した。総評・中立労連主催の中央集会には6万人が集まり、全学連7千人が合流した。法大、横浜国大がストで結集した。また、出版労協、全日自労など6単産で30分から2時間のストが闘われた。
 当時、鶴見から国鉄貨物線で新宿を経由して立川・横田の米軍基地に燃料タンク車が運ばれていた。67年8月8日未明、貨物列車衝突炎上事故が新宿駅で発生した。衝突時に発生した火花が引火して爆発、タンク車4両と機関車が炎上した。10・21闘争の前日20日には、立川貨物駅構内に国労3千人、浜安善に8千人が集まり、米軍タンク車輸送阻止を掲げて闘った。
(写真 新宿駅に向かう全学連の部【68年10月21日】)

 ●ワシントンの大闘争

 この日は文字通り国際反戦デーとして世界各地で反戦闘争が闘われた。トリノ、アムステルダム、コペンハーゲン、オスロ、ロンドン、ダブリン、西ベルリンなど欧米各地で。
 アメリカの首都ワシントンでは、全米600の大学から集結した学生など20万人がベトナム反戦デモに決起した。そしてペンタゴン(国防総省)に突入し、座り込み、これを排除するために銃剣を持った軍隊が投入され、600人が逮捕される大闘争になった。
 翌68年10・21は、「新宿米タン阻止・騒乱闘争」として知られる。各地の米軍基地に対する闘いは、10・21にピークを迎えた。新宿駅周辺は闘いを待ち受ける数万人の労働者人民によって埋め尽くされた。
 全学連が登場し、駅構内は2万人の労働者・学生・人民に占拠された。機動隊との激しい衝突が繰り返されたが、人民の側が圧倒した。全学連など組織された部隊が闘いをやりきって撤収した後、翌日の午前0時15分に、権力は騒乱罪を適用して市民多数に暴行を加え、数百人を逮捕した。
 この後も71年沖縄返還協定批准阻止闘争などで国際反戦デー闘争は続くが、2003年の米帝のイラク侵略戦争に対する全世界一斉決起以後は、開戦日の3・20が国際反戦闘争の新たなメモリアルデーになった。
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 10・21国際反戦デー 主な闘い

1966年 総評がベトナム反戦スト
1967年 中央集会に6万人。全学連7000人
1968年 全学連など2万人が新宿駅を占拠。警察は騒乱罪を適用
1969年 新宿地区を完全制圧。全共闘・反戦白ヘル軍団が先頭に立つ
1970年 日比谷に2万3000人、大阪で1万人。「入管・沖縄」を掲げる
1971年 沖縄返還協定批准阻止で日比谷に2万人。大阪で5000人
1972年 白ヘル8000人が東京芝公園。機動隊を撃破、都心を制圧
1975年 代々木公園に全学連、反戦青年委員会6200人。朝鮮侵略協定阻止
1976年 明治公園に8000人。朝鮮侵略粉砕、天皇50年祭粉砕
1977年 三里塚反対同盟など主催で全人民共闘集会、代々木公園に8000人
1978年 全人民共闘集会、代々木公園に5000人。有事立法粉砕

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月刊『国際労働運動』(410号9-1)(2010/10/01)

日誌

■日誌 7月

1日千葉 三里塚一坪裁判
千葉地裁で三里塚芝山連合空港反対同盟の鈴木幸司さん、いとさん夫妻の一坪共有地裁判が開かれた。反対同盟側の追及に対して、県側は具体的な問題での認否を「必要ない」と一切拒否する姿勢だ。こんな態度は許されない。閉廷後、弁護士会館で開かれた報告集会では鈴木いとさんがあいさつに立ち、「おじいさん(幸司さん)の分もがんばります」と述べ、一同が大きな拍手で応えた
2日東京 国鉄全国運動東部の会を結成
亀戸で「国鉄闘争全国運動・東京東部の会」の結成集会が開かれ、70人を超える結集で感動的な成功をかちとった
3日宮城 裁判員制度にとどめを!一斉行動
仙台で「裁判員制度にとどめを! 全国一斉行動・仙台」集会(仙台弁護士会館)とデモが70人の参加でかちとられた。百万人署名・宮城、裁判員制度に反対する在仙弁護士の会ほかの共催。裁判員制度の廃止をかちとるべく9月に予定されている全国一斉行動の先駆けとして闘われた
4日大阪 関西空港反対全国集会開く
泉佐野市末広公園で「関空の米軍基地化阻止!財政健全化計画絶対反対!」関西空港反対全国集会が185人の結集で大成功した。集会では、5月泉佐野市議選の勝利を謳歌し、「住民と労働者が団結して闘えば、絶対に勝てる」という確信に満ちた発言が相次いだ
7日東京  「洞口さん処分弾劾」の抗議集会 7日東京  「洞口さん処分弾劾」の抗議集会
2日の法大経済学部臨時教授会の洞口朋子さん処分決定を受けて、7日昼休みに全学総決起緊急抗議集会が開催された。最初に文化連盟委員長の齋藤郁真君が、学祭規制反対で最先頭で闘ってきた洞口さんの処分は学祭規制強行のための処分であると満身の怒りを込めてアピールした
7日東京 中国ホンダと連帯し本社前に赤旗
中国ホンダに対しストライキで闘う中国の青年労働者との連帯行動が、動労千葉と全国労組交流センター、全学連の呼びかけで取り組まれた。平日昼の緊急闘争にもかかわらず、東京・関東から労働者・学生約60人が結集した
8日ギリシャ 官民ゼネスト第6波打ち抜く
今年6回目の官民労働者ゼネストが行われ、数万人の労働者が首都アテネなどで街頭デモに出た。パパンドレウ全ギリシャ社会主義運動(PASOK)政権の緊縮財政策に反対する行動として2大労組全国組織、ギリシャ労働者連合(GSEE)とADEDY(公務員連合)が呼びかけた
14日神奈川 動労千葉、鉄道運輸機構に抗議
動労千葉と動労千葉争議団の呼びかけで、横浜にある鉄道運輸機構(旧国鉄清算事業団)本社への抗議・申し入れ行動が行われた。「1047名の解雇を撤回しろ! 国鉄−JRの不当労働行為を謝罪しろ!」。鉄道運輸機構本社に向けて怒りのシュプレヒコールをたたきつけた
16日大阪 関西交流センターが国鉄集会
「国鉄分割・民営化反対! 1047名解雇撤回/関西国鉄集会」が、関西労組交流センターの主催で大阪市内で開かれ150人が結集した。大阪市職の青年労働者の開会宣言に続き、関西労組交流センターの南谷哲夫代表運営委員が主催者あいさつで、関西労組交流センターが国鉄闘争と安保・沖縄闘争に責任をとりきると宣言した。
18日大阪 全国連西郡支部、新執行部確立
八尾市桂人権コミュニティセンターで、部落解放同盟全国連合会西郡支部第5回大会をかちとった。支部員を先頭に180人の労学が結集。支部結成以来の激戦につぐ激戦の4年間を前史として総括し、自ら引き寄せた革命的情勢のただ中で国鉄全国運動を軸に支部の闘う方針を打ち立てた歴史的大会となった。大会で、恒常的に全国闘争や現地調査に参加し、徳島刑務所に手紙を送り続けて、面会を楽しみにしているAさんが「星野さんの再審を勝ちとる決議」を読み上げ、全体で確認された
19日東京 反核東京集会、田母神と対決
杉並で8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会主催の「7・19反戦反核東京集会」が行われ、125人の労働者・学生が参加した。青森県六ケ所村、福井県敦賀市などでの反核燃の闘いを記録したビデオ上映を受け、集会は中島敦史さん(被爆3世、前全学連副委員長)の司会で始まった。冒頭、主催者代表のス労自主労組委員長の入江史郎さんが「本日の集会の目的は日本の核武装を許さないことだ」とあいさつ。核問題研究情報センター代表の吉田義久さんが「戦争で肥え太るのはいつも核軍事産業」と題する講演を行った
19日大阪 技能分会先頭に国鉄闘争を熱烈に訴え大阪東部と奈良の労組交流センターの仲間たちは近鉄奈良駅前で「新たな国鉄全国運動」の街宣署名活動を展開。梅雨明けの猛暑を吹き飛ばす戦闘的な街宣行動を打ち抜いた
21日東京 再発防止研修に反撃
東京都教育委員会は、今年3〜4月の卒・入学式で「日の丸・君が代」強制に反対して不起立で闘いぬいた東京の教育労働者4人に対する「服務事故再発防止研修」を強行した。研修会場である文京区の東京都教職員研修センター前では、真夏の照りつける日差しの中で朝から昼過ぎまで、教育労働者を先頭に多くの仲間が抗議行動を闘いぬいた
21日東京 洞口さん、処分撤回へ熱い訴え
法政大市ケ谷キャンパスで「洞口さんの無期停学処分を撤回しろ」の怒りの声をあげた。今回の門前闘争は、7月12日に不当処分を下した法大当局と経済学部教授会に、処分撤回要求署名の500筆達成と再審査請求をたたきつける闘いだった
23日千葉 三里塚現闘本部裁判、控訴審初弁論
東京高裁で三里塚現闘本部裁判控訴審の初弁論が開かれた。一審の千葉地裁・仲戸川隆人裁判長の反動判決は、三里塚芝山連合空港反対同盟の地上権(土地の使用権)をあらゆる詭弁を使って否定した。だが判決確定を待たずに建物の撤去を可能とする「仮執行宣言」を粉砕したことで、NAA(成田空港会社)は追いつめられ「仮執行を早く東京高裁が出してくれ」などと泣きついている。絶対に許さない。
25日 関西、東北、革共同集会が大成功
関西 大阪市・中央区民センターで革共同関西政治集会が開催され、285人が結集した。2010年前半の激闘を時代認識と路線を鮮明にして闘い抜いてきた参加者の熱気にあふれた
東北 革共同東北政治集会が155人の結集で仙台市でかちとられた。2010年後半戦において階級闘争の責任勢力、主流派として登場し、プロレタリア革命へ突き進んでいこうという熱意、情熱にあふれるすばらしい集会だった
25日千葉 動労千葉を支援する会定期総会開く
動労千葉を支援する会の2010年度定期総会が、千葉のDC会館で開催された。各地の支援する会会員、動労千葉組合員など180人が集まり、ものすごい熱気の中で新たな闘いの方針を決定した。総会には、広島や新潟、静岡、さらに6・13集会を前後して支援する会を立ち上げた千葉、東京西部、岡山、三多摩、東京北部の代表、全国運動・東京東部の会の代表などが集まり、具体的な実践をふまえた報告を行った
26日千葉 市東さんの耕作権裁判
市東さんの耕作権裁判が開かれ、法廷を三里塚の正義が圧倒した。この裁判は、市東さんが耕す南台(現闘本部となり)の畑の一部をNAAが「不法耕作」と決めつけて明け渡しを求めて提訴したものである。開廷直後に反対同盟顧問弁護団が立って、NAAがこの裁判の途中でありながら団結街道の封鎖を強行し、市東さんの営農を直接妨害していることを怒りをこめて徹底的に断罪した
26日千葉 NAA、市東さんの畑を鉄板で囲む
NAAは、反対同盟が市東さんの耕作権裁判に出かけた隙に、大量の警備員と作業員・重機、私服刑事と機動隊を動員して、現闘本部となりの市東さんの畑の周囲に鉄板フェンスを建てて包囲する工事を行った。夜陰に乗じての団結街道封鎖に続く、空き巣狙いと同様の卑劣な攻撃だ
28日東京 「国労共に闘う会」が総決起集会
「国鉄分割・民営化に反対し、1047名解雇撤回を共に闘う国労の会」が主催する国鉄闘争勝利総決起集会が文京区民センターで開かれた。325人が結集し、熱気に満ちてかちとられた集会は、国鉄闘争全国運動が本格的発展の端緒についたことを鮮やかに示した
27〜28日静岡 弾圧を粉砕し伊東市で情宣
国労大会が開かれた伊東現地で、国労秋田闘争団の小玉忠憲さん、小倉闘争団の羽廣憲さんを先頭に、国労共闘や静岡、神奈川両県の労組交流センターは、国労本部ら4者4団体派の裏切りを弾劾し、解雇撤回の貫徹を訴える宣伝戦を闘いぬいた
31日千葉 三里塚緊急闘争、鉄板包囲に怒り三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかけで、市東孝雄さんの耕作地への鉄板フェンスでの囲い込み攻撃に対する緊急闘争が闘われた。市東さん宅南の東峰の開拓組合道路に、反対同盟を先頭に80人を超える労働者・学生・市民が結集した
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 (弾圧との闘い)

8日  前進社国賠訴訟始まる 8日  前進社国賠訴訟始まる
前進社本社への違法・不当な捜索に対する国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で開かれた。前進社を代表して6人の同志が原告となり、違法な捜索を強行した警視庁(東京都)と令状を発布した裁判官(国)を被告として提訴した。今年5月20日に提訴、記者会見を行い、今回の第1回口頭弁論に臨んだ
9日東京 法大5・28暴行デッチあげ控訴審
法大5・28暴行デッチあげ裁判の控訴審初公判が東京高裁第9刑事部(小倉正三裁判長)で行われた。法大当局と警視庁公安部が結託し、07年4月27日には新井拓君に対して、08年5月28日には新井君と中島宏明君に対して、暴行事件をデッチあげて逮捕・起訴した。2人は長期勾留をものともせず、完全黙秘・非転向を貫き、118人の逮捕者、不当起訴された33人の学生とともに、法大弾圧を完全に粉砕した

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月刊『国際労働運動』(410号A-1)(2010/10/01)

編集後記

■編集後記

 世界大恐慌は大失業と戦争を生み出す。全世界で膨大な失業者が生まれ、青年労働者は明日をも知れない生活を強いられている。他方では巨万の富を蓄えているブルジョアジーがいる。
 イラク、アフガニスタン侵略戦争の戦火が燃え盛る中で、米日韓の北朝鮮侵略戦争が切迫している。これは東アジアの大動乱の始まりだ。しかし米帝は、イラク・アフガン両戦争で疲弊しきっている。この二つよりも大規模な北朝鮮侵略戦争を準備するだけで米帝の屋台骨が吹っ飛ぶ革命情勢になる。韓国の階級闘争しかり、日本の階級闘争しかりだ。中国スターリン主義者も戦々恐々としている。
 この戦争情勢はプロレタリア世界革命のチャンスだ。11月派が反戦闘争の先頭に立って労働者階級の本体を獲得し、日本のプロレタリア革命を実現していくのだ。

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