ZENSHIN 2003/06/09(No2104 p08)

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第2104号の目次

反戦共同行動委員会は有事立法採決のための儀式=公聴会粉砕を訴えて、横須賀市内を戦闘的にデモ行進。先頭には西村綾子相模原市議らが立った(5月29日)

1面の画像
(1面)
革共同の6月アピール
有事立法阻止6・5−6国会へ 労基法改悪・共謀罪新設を許すな
北朝鮮への排外主義を粉砕し職場・学園・街頭から総決起を
記事を読む  
5・29横須賀 “有事3法案は廃案に” 公聴会闘争に150人 記事を読む  
戦争と大失業の帝国主義の打倒へ絶大な夏期カンパを 記事を読む  
(2面)
東労組が代議員選で分裂 松崎派と嶋田派が内部抗争 カクマル支配が崩壊の危機
今こそファシスト運動打倒へ
記事を読む  
労働法制改悪阻止へ〈中〉
民主党の修正案の反動性 「合理的解雇」を容認 権利は闘いによって守られる
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労基法改悪に激しい怒り 国会前に労働者の声轟く 記事を読む  
(3面)
国労5・27臨大闘争弾圧粉砕 6・4全国集会に総結集を
デッチあげ打ち砕く重大局面 各地に「許さない会」つくろう
記事を読む  
個人情報保護法の成立弾劾 報道弾圧と人民管理許すな 記事を読む  
“証拠非開示は差別” 狭山最高裁要請行動 書記官を徹底糾弾 記事を読む  
三里塚・東峰神社裁判 公団がお粗末な反論
“入会権は封建遺制”!? 神社林盗伐を開き直る
記事を読む  
対角線 “新しい戦前の始まり” 記事を読む  
(4面)
北朝鮮侵略戦争法案を絶対阻止せよ
日米戦争会談を弾劾する 北朝鮮への「強硬措置」と自衛隊イラク派兵を合意
記事を読む  
5・23東京 有事立法阻止へ労働者立つ
20労組呼びかけ3万人 絶対廃案へ執念みなぎる
記事を読む  
5・20大阪 交通14労組を先頭に 廃案へ7千人結集 記事を読む  
広島・岡山・松山・松江など 中四国で一斉行動  “民主党の裏切り許せぬ” 記事を読む  
5・23 福岡で6百人デモ 「北朝鮮脅威」論と対決 記事を読む  
日誌'03 5月20日〜27日
小泉とブッシュが戦争会談 個人情報保護法が参院成立
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(5面)
北朝鮮侵略戦争法案を絶対阻止せよ シミュレーション これが有事立法の正体だ
米日帝が北朝鮮に先制攻撃 〔片瀬涼〕
記事を読む  
“有事法撤回せよ” 韓国で怒りの声 記事を読む  
(6面)
日本共産党は闘う勢力なのか
有事立法=北朝鮮侵略戦争の攻撃に屈服して闘いを抑制
決戦前に成立前提で武装解除 (高田隆志)
記事を読む  
コミューン 7月号 先制攻撃狙う小泉 記事を読む  
(7面)
教育基本法改悪=改憲攻撃粉砕へ
愛国心・道徳心を前面化し戦争のための教育に転換
日教組本部の屈服破り大運動を (大西 晶)
記事を読む  
教基法改悪許さぬ 文科省フォーラムを弾劾 記事を読む  
改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略と戦争の歴史
第4部 日帝の中国侵略戦争(12)
731部隊の犯罪 中国で細菌兵器を実践使用
記事を読む  
(8面)
弾圧と闘う
解同全国連寝屋川支部 4人の差別不当逮捕弾劾
未払い賃金支払い要求に「脅迫・恐喝」デッチあげ
記事を読む  
弾圧と闘う
福嶋裁判 筆跡鑑定の破綻つく 福嶋同志保釈奪還へ闘おう
記事を読む  
弁護士ら反戦集会 有事治安法に反対し650人 記事を読む  
5・15沖縄闘争に参加して 記事を読む  
公判日程 記事を読む  
国会へ怒り 労働法制改悪と有事立法に抗議のシュプレヒコール(5月28日)

週刊『前進』(2104号1面1)

革共同の6月アピール
有事立法阻止6・5−6国会へ 労基法改悪・共謀罪新設を許すな
 北朝鮮への排外主義を粉砕し職場・学園・街頭から総決起を

 第1章 北朝鮮侵略戦争への画期なした日米会談

 5月15日、有事3法案が衆議院を通過した。これは画歴史的な事態である。有事3法案は、連合の後押しのもとでの民主党の修正協議参加により、一挙に採決された。民主党は修正協議に応じ、「基本的人権」の項目が入れられたからと賛成したのだ。だが有事=戦争と基本的人権はまったく相入れない。これは裏切りのためにするペテンだ。有事3法案は北朝鮮侵略戦争法案であり、これが通ることは、日本帝国主義が北朝鮮(中国)への帝国主義的侵略戦争へ突入することである。この民主党の裏切りがもたらしたものは新たな15年戦争への道である。
 有事立法修正合意について小泉首相は「戦後50年有事というものを議論することさえタブー視されてきた。与党と野党第一党が合意をみたのは日本の政治史において画期的なこと」と言い放っている。政府・与党は6月3日に参議院有事法制特別委員会で参考人質疑、5日に締めくくり総括質疑と有事3法案の採決、6日には本会議で可決・成立を狙い、凶暴かつ急ピッチの攻撃を強めている。翼賛国会を粉砕し、有事立法絶対阻止へ、6月5日、6日を山場とする国会決戦に総決起することを訴える。
 国家安全保障戦略、ブッシュ・ドクトリンのもとでアメリカ帝国主義はイラク侵略戦争へと突入し、イラクを占領し再植民地化を行っている。今度はこのやり方を北朝鮮に対して行おうとしているのだ。すでに米帝は、北朝鮮侵略戦争計画「作戦計画5027」の全面的な改定・確定作業を行っている。5月4日ラムズフェルド米国防長官は、「米国を守ることはペンタゴンの仕事だ。われわれはそういう計画をつくり、緊急事態に備える。国防計画をつくることは憲法が大統領に求めている」と宣言し、さらに5月13日には、「北朝鮮の困窮は独裁体制が問題」と北朝鮮侵略戦争への突入、体制転覆を公言した。
 この米帝の新たな世界戦争計画、世界再編計画に対して、日帝は帝国主義として存立するためにはそれ以外に道はないとして、米帝と共同・競合して北朝鮮侵略戦争に突入しようとしている。そのための法案が有事3法案なのだ。
 5月23日の日米首脳会談は、米・日帝国主義の北朝鮮侵略戦争への突進の画期をなした。
 日米首脳会談は、第一に、ブッシュが、「核兵器計画の完全な検証可能な不可逆的な廃棄以外に何も受け入れない」と北朝鮮への戦争重圧を徹底的に強めることを宣言し、米韓共同声明の「追加的措置」をさらに強化して「北朝鮮が状況をエスカレートさせた場合、より強硬な措置を実行する」と宣言した。そしてさらにブッシュは、「北朝鮮は自由になるべきだ。韓国との違いは明白であり、自由と圧制の違いだ。北朝鮮の脅迫には屈しない」と北朝鮮の体制転覆をあからさまに表明した。
 まさにイラクに対するのと同じ手法で、「イラクの次は北朝鮮だ」として侵略戦争を実行に移そうとしている。しかも日帝・小泉は、「対話と圧力」を宣言し、自ら主体的に北朝鮮侵略戦争を遂行する立場を鮮明にした。そのために、日本政府は外国為替および外国貿易法(外為法)に基づく北朝鮮への送金停止・貿易停止を柱とした経済制裁を自ら発動しようとしている。それは、実質的な対北朝鮮侵略戦争の開始そのものである。
 第二に、日帝は、アメリカ帝国主義のイラク軍事占領に加担し、人道支援に名を借りた周辺国への自衛隊派兵を検討していると表明、さらにイラクへの自衛隊派兵について「日本の国力によってできることを帰国後よく検討したい」と表明した。「国力によって」とは、なんという言いぐさだ。まるで「法律は関係ない」と言わんばかりではないか。そして地上部隊を派兵し、米英帝国主義のもとで、イラク軍事占領の一角を担うことを約束したのである。有事立法に続いてイラク新法を制定し、自衛隊派兵を狙っているのだ。
 第三に、ミサイル防衛(MD)で「日米協力を強化し、加速する」ことが合意された。日帝は北朝鮮・中国などに対し「敵基地攻撃能力」を持つミサイルの導入へと決定的に踏み出そうとしている。
 こうした中でエビアン・サミットは、米英日帝のイラク軍事占領と石油独占をめぐって、さらにまた、米・日帝国主義の北朝鮮侵略戦争への突進をめぐる帝国主義間の、中ロをも巻き込んだ激しい争闘戦の場になろうとしている。

 第2章 帝国主義侵略戦争を内乱に転化する闘い

 日本のプロレタリアート人民にとって最も重大なことは、日本帝国主義が絶望的な体制的危機に陥る中で自己の帝国主義としての延命をかけて、自らの戦争として対北朝鮮・中国・アジア侵略戦争に踏み出したということである。
 日帝は、日本経団連の奥田ビジョンで、「東アジアの連携を強化し、グローバル競争に挑む」と題して、「東アジア自由経済圏構想」を公式に打ち出した。アメリカ帝国主義やEUに抗し、日本帝国主義が独自の勢力圏=経済ブロックを作って、帝国主義同士の抗争に参入することを宣言しているのだ。危機に立つ日本帝国主義の唯一の道として新たな大東亜共栄圏の形成に向かおうとしているのだ。帝国主義間争闘戦に勝ちぬき、延命するために、戦争をやれる帝国主義への飛躍をかけて、対北朝鮮侵略戦争に突入していこうとしているのである。
 ここから日帝・小泉の5月20日の参院有事法制特別委での「自衛隊は軍隊であると思う。それを言ってはならないということは不自然だ」という断じて許されない発言が出てくるのである。
 われわれは、日本帝国主義の北朝鮮への排外主義キャンペーンに激しい危機感を持って、それを粉砕しなければならない。とりわけ拉致問題をテコにした排外主義の扇動と断固対決しなければならない。これは日本帝国主義の対北朝鮮侵略戦争の実質的な宣戦布告だ。
 多くの労働者人民がこの扇動に影響を受けていることは重大だ。関東大震災時のデマが在日朝鮮人へのポグロム(民族大虐殺)をもたらしたことを想起しなければならない。こういう中で連合が朝鮮総連との「交流中止」の指示文書を提出したことは断じて許されない。
 もちろん北朝鮮スターリン主義の拉致は絶対認められない。また核保有発言も認められない。しかし、そこから出てくる結論は、帝国主義者の先制攻撃・核攻撃の手先に労働者階級人民がなることではない。金正日政権打倒は、南北朝鮮人民自身の課題である。われわれは、朝鮮人民、在日朝鮮人民と連帯し、日帝の朝鮮侵略戦争と闘いぬこう。
 この北朝鮮への排外主義宣伝の大洪水、大反動・大逆流と切り合い、粉砕して、6月上旬参院決戦の大爆発へ宣伝・扇動戦を大々的に展開し、巨大な決起を実現しよう。
 ここで問題は、国会の翼賛化にとどまらない。民主党の有事立法賛成への転向の基底には連合の昨年5・16見解による有事立法賛成への転換がある。労組の最大のナショナルセンターが自国政府の戦争に賛成し、産業報国会に移行したということである。そういう中で、日本共産党が北朝鮮への排外主義と有事立法攻撃に完全に屈服し、帝国主義の侵略戦争と闘うことに敵対し、闘いを抑圧していることは実に重大である。
 われわれは参院決戦の爆発へ5・15緊急闘争に決起し、20労組が呼びかけた5・23闘争の爆発に向け街頭、職場で全力で決起した。5・23闘争は明治公園を埋める3万人を超える結集で大成功した。全労連傘下、連合傘下の労働組合の決起がかちとられた。すでに春闘でのストライキ闘争などで全労連傘下で開始されていた動きが、有事立法攻撃と闘う中でさらに鋭く日本共産党中央の闘争抑圧をうち破る闘いとして始まった。それは3・20イラク開戦情勢下で加速された労働者階級の有事法制と労働法制改悪への怒りの決起の開始である。この流れを国会決戦と、6・10日比谷野音への大結集へと発展させよう。
 有事立法闘争は帝国主義戦争を阻止する道は何かを、すべての労働者人民に提起している。民主党・連合中央の大裏切りと日本共産党の屈服の背景には、国家の危機ということがある。この国家とは帝国主義国家である。帝国主義の矛盾が今や世界戦争に行き着くほどの段階にまで至ったのだ。帝国主義は労働者階級を「食わせる」ことができなくなり、労働者階級を戦争と大失業に引きずり込む以外に延命の道がなくなったのである。帝国主義戦争を阻止するためには戦争の根源である帝国主義を打倒する以外にない。レーニンが提起した「帝国主義戦争を内乱に転化する」ことが労働者階級のただ一つのスローガンである。
 3月20日の米帝(米英日)のイラク侵略戦争の開始という重大情勢の中で、このことを真っ向から打ち出した真に革命的な宣伝・扇動のみが労働者階級人民の意識と結合することができることをわれわれは経験した。歴史的激動期には、真の階級的な言葉のみが現実を説明できるし、労働者階級はそれを求めている。

 労働法制改悪許すな

 労働者階級の諸権利を剥奪(はくだつ)し、生活を破壊する攻撃が有事において不可避となる。労働法制改悪攻撃と、有事立法攻撃が一体となってかけられてきていることの重大性をしっかり確認したい。
 「奥田ビジョン」こそ、体制的危機を背景とした帝国主義ブルジョアジーの攻撃である。それはまた、革命党と一切の闘う勢力の存在を許さない攻撃である。絶対に粉砕しよう。国労5・27臨大闘争弾圧粉砕闘争は、その鋭い矛先である。国鉄決戦は日本階級闘争の基軸となり、闘う闘争団の解雇撤回・原地原職奪還の闘い、1047名闘争陣形の前進としてかちとられた。これに対して日帝国家権力は、国労5・27臨大闘争弾圧をもって国労共闘と闘争団の闘いに楔(くさび)を打ち込み、闘争団を孤立化させ、国労を解体する攻撃に出てきたのである。これに抗する「許さない会」運動の発展こそは、日本労働運動にとって巨大な位置をもっている。
 労基法改悪を軸とする労働法制改悪攻撃粉砕へ総力で決起しよう! 労基法改悪案が衆院厚生労働委員会で審議入りした。これは6000万労働者の人生に直結する法案である。民主党は、この労働法制改悪との闘いにおいても労働者への許しがたい裏切りを鮮明にした。
 今回の労基法改悪案の重大性は、経営者が首切りを行うことを原則自由化するものだということだ。「使用者は労働者を解雇できる」と解雇権を法制化することにある。もともと労基法は、労働者の権利を守るものである。それを根底から転換する重大な攻撃なのだ。
 さらに「共謀罪」新設は、革命党圧殺の治安立法であり、反戦運動・労働運動をつぶそうとする攻撃である。言論・思想・結社の自由を侵害する極悪法だ。断固、粉砕しよう。

 国際的内乱が拡大へ

 われわれは今、世界史の重大局面に立っており、全世界人民の未来をかけた歴史選択を迫られている。すべての労働者人民に人生をかけた決起を訴える。
 1〜3月の全世界的な反戦闘争の渦は、さらに各国の激しい闘いを引き起こし、次の巨大な噴火へと向かっている。
 5月21日、米国防総省は米軍基地などに対するゲリラ攻撃への警戒水準を「最高」に引き上げた。そして、ワシントンで地対空ミサイルを配備し米国内の防御態勢を強化した。全世界で、アメリカ国内で、米帝への労働者人民の怒りの決起が激しく燃え上がっている。
 パウエル米国務長官のサウジアラビア訪問直前の首都リヤドで5月12日深夜連続爆弾攻撃が敢行され、30人が死亡。モロッコのカサブランカで16日夜、4回の爆弾攻撃が起こり24人が死亡。これらの連続自爆攻撃に続き、米国内の米軍施設への直接攻撃の動きが高まっている。
 パレスチナでは、米帝がパレスチナ人民の闘いを圧殺するために「和平のためのロードマップ」を発表し、5月25日イスラエル・シャロン政権が受け入れを表明した。だがそれは、入植地拡大の権利を主張し、パレスチナ人民の帰還権を否定するという、パレスチナ人民にとっては、けっして受け入れがたいものだ。イスラム武装勢力のハマスは、これを拒否することを宣言している。
 シャロン首相は18日、パレスチナ自治区の封鎖強化を決定し、すべてのパレスチナ自治区からイスラエルへの移動を禁止した。この許しがたいパレスチナ人民圧殺攻撃は、イスラエルのかつてない経済的危機のもとでの体制的危機の現れである。イスラエルは連日のようにパレスチナ人民虐殺をくり返しており、これに対してパレスチナ人民の自爆決起が激しく闘われている。
 チェチェン共和国のズナメンスコエの新ロシア行政庁舎付近で12日、トラックに仕掛けた爆弾攻撃で41人が死亡した。16日にも自爆攻撃が闘われた。
 フランスでは年金改革に反対して公共交通機関労組が7年半ぶりに大規模なストライキを展開し、全土で交通がストップした。ドイツではシュレーダー首相の福祉切り捨ての構造改革案への怒りの決起が起こっている。オーストリアでも年金改革案に抗議する半世紀ぶりの大規模なストライキが発生した。イタリアでも年金制度改悪に対して労組が激しく闘っている。
 南朝鮮・韓国では、貨物トラック運転手などの労働組合、全国運送荷役労組貨物連帯(貨物連帯)がストライキを闘い、最大の貿易港、釜山港の港湾機能は停止状態に陥った。ストは光陽港でも起きている。労組側は、@軽油税や道路通行料などの引き下げ、A運転手の労働3権(団結権、団体交渉権、争議権)保障、B運送会社の多重仲介禁止、などを要求し闘っている。
 まさに戦争と革命の時代が到来している。国際的内乱が激化し、拡大している。帝国主義の危機が全面的に爆発する中で、反戦闘争と労働者が生きるための資本との闘いが、相互に呼応しあい、一体のものとして発展しているのである。
 そして今や米・日帝国主義の北朝鮮侵略戦争が世界史の焦点となったのだ。
 それは日帝にとって城内平和なき侵略戦争への突入である。全世界の労働者人民のイラク反戦闘争をもはるかに上回る全世界的な闘いの大波が来ることは不可避である。日本人民がいかなる闘いを展開するのか、日本労働者階級が世界に何を発信するのか、それが問われている。

 第3章 帝国主義の基本矛盾爆発と日帝金融危機

 米帝はその反人民的な世界支配、新植民地主義支配とその破綻、侵略戦争の強行の歴史に対するムスリム人民の怒りに満ちた9・11の特殊的極限的な反米ゲリラ戦をたたきつけられ大打撃を受けた。そこからブッシュ・ドクトリン=世界戦争戦略を全面発動するに至ったのだ。それが対アフガニスタン侵略戦争であり、対イラク侵略戦争である。
 今や帝国主義の矛盾が全面的に爆発し、帝国主義間対立が軍事的対立へと転化しつつある。その中で日帝が危機を爆発させ、帝国主義として生きていく唯一の道として、侵略戦争体制の構築へと向かっているのである。
 それこそが北朝鮮侵略戦争法案=有事立法攻撃である。これとの闘いはまさに帝国主義の危機の爆発のもとでの内乱の開始である。
 こうした中で、帝国主義経済は、根底的に危機を爆発させつつある。米帝を始めとする世界経済危機の中で、日帝経済の危機は今ひとつ新しい局面に突入した。
 「りそなショック」が日本経済を震撼(しんかん)させている。りそなグループは「税効果資本」の計算を変更しただけで債務超過に陥った。小泉政権は、りそなへの公的資金2兆2千億円の投入、実質国有化を決めた。これは、97年秋以来の金融危機の噴出だ。今後4大メガバンクで「第2、第3のりそな」が発生するのは必至である。
 5月26日に発表された2003年3月期連結決算で全大手銀行が最終赤字となったという事実がそれを裏書きしている。また、金融庁は、6月を目指し、事前の予防的公的資金の注入を可能とする新しい制度づくりに取り組んでいる。さらに、今国会で生保の予定利率引き下げ関連法の成立を目指している。危機はそれほど深刻なのだ。それは階級闘争全体を根底から規定する事態である。
 1〜3月のGDPは「実質ゼロ成長」と言われているが、しかし、日本経済は連鎖的に収縮する「デフレスパイラル」が続いているのだ。発表されている経済指標はすべて悪化している。@米帝経済は低迷脱出の見込みなし、A欧州の中核・ドイツで2四半期連続マイナス成長、B中国、アジアではSARSで危機的状況。輸出は減少し、設備投資は停滞している。世界的な経済危機の中で日帝経済危機が再爆発しつつある。
 ここから出てくる結論は、資本による「徹底したリストラ」の絶叫であり、消費税率大幅引き上げである。戦争と大資本攻勢と徹底的に対決しなければならない。労働法制改悪攻撃への反撃は決定的に重要である。有事立法決戦と一体のものとして闘いぬこう。

 第4章 『前進』倍増・一時金カンパ闘争に全力を

 われわれは今、世界史の転換点に立っている。革命的情勢が成熟しつつある。帝国主義の危機の全面的爆発と、全人民的な革命的内乱は不可避である。われわれは革命的前衛党として、その最終的勝利から逆規定した戦略的重心を明白にして闘わなければならない。この激動の6、7月、機関紙拡大と一時金カンパ決戦がその核心点である。
 レーニンは、革命的情勢下の革命党の義務を簡潔に次のように定式化した。
 「革命的大衆行動を支持し、発展させ、拡大し、激化させ、非合法組織を結成すること(これなしには、『自由』諸国においてさえ人民大衆に真実をかたることはできない)――これこそ、この戦争における社会民主主義〔=共産主義政党〕の実践綱領のすべてである」(「日和見主義と第二インターナショナルの崩壊」)
 新しい型の『社会主義と戦争』を実践し、国際的内乱の先頭に立とう。
 革命的な非合法・非公然の党を強大につくり出し、全面的な革命的宣伝・扇動を遂行せよということである。それを実現する唯一の基礎は、機関紙の拡大と職場、大学、地域の党細胞の建設である。
 有事立法参院決戦のただ中で、党として街頭宣伝に決起し、『前進』を大々的に販売しよう。職場、大学で『前進』を販売しよう。すべての同志が『前進』を手に、街頭に立とう。労働運動の指導者、活動家に『前進』を売ろう。『前進』販売は人民に展望と勇気を与える。本紙前号の経営局アピールを全力で実践しよう。
 一時金カンパ決戦に全力で決起しよう。すべての心ある労働者・人民に真剣に提起し、最大の成功をかちとろう。
 3同志奪還に続き、10年2カ月も長期勾留されている爆取デッチあげ弾圧の福嶋同志をなんとしても奪還しよう。裁判闘争と10万人保釈署名の推進が勝利の道だ。今年を獄中28年の星野同志奪還の画然たる闘いの年にしよう。全獄中同志をただちに奪還しよう。
 21世紀革命の勝利へマルクス主義青年労働者同盟の再建をかちとろう。

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週刊『前進』(2104号1面2)

5・29横須賀 “有事3法案は廃案に” 公聴会闘争に150人

反戦共同行動委員会は有事立法採決のための儀式=公聴会粉砕を訴えて、横須賀市内を戦闘的にデモ行進。先頭には西村綾子相模原市議らが立った(5月29日)
 5月29日、横須賀市内で参議院有事法制特別委員会の公聴会が開かれ、反戦共同行動委員会は、闘う労働者人民総勢150人とともに反対闘争を闘いぬいた。
 午前10時から京浜急行横須賀中央駅前で公聴会粉砕を訴えるビラまきと街宣活動を行った。西村綾子相模原市議と、北島邦彦都政を革新する会事務局長がマイクを握り、「戦争になれば人権なんかない」と有事立法絶対反対を訴えた。
 11時から公聴会会場の横須賀プリンスホテルへ向けて抗議デモに出発。「有事法反対、戦争阻止」のシュプレヒコールが横須賀市内に響き渡った。会場の前では、ひときわ高く公聴会粉砕を訴え、ヴェルニー公園までのデモを行った。
 途中、米軍横須賀基地のゲート前では地元の闘う市民団体の女性が、米兵に英語で、「われわれの平和憲法を踏みにじることに強く抗議する」と訴えた。
 その後、会場前で神奈川平和運動センターと三浦半島地区労の労働者たちに合流し、公聴会反対をともに訴えた。もよりの京急汐入駅前でも、地域の労働者と一緒にビラまきを行った。
 抗議行動の後、反戦共同行動委員会は公聴会会場の直近で総括集会を行った。百万人署名運動神奈川県連絡会から、横須賀での原子力空母母港化阻止闘争の報告がなされ、粘り強い闘いが多くの横須賀市民と米軍兵士の心をつかみ始めていることが報告された。
 大山尚行全学連委員長が基調を提起。有事立法攻撃が北朝鮮侵略戦争攻撃であり、背後に帝国主義の二大陣営への分裂があること、それは世界戦争にいたること、有事立法粉砕の参院決戦、北朝鮮侵略戦争反対闘争を爆発させ、世界的な反戦闘争の第二の大波を起こそうと提起した。
 反対闘争に参加した人びとの総括会議では、傍聴闘争に決起した人から、翼賛国会の現実を目の当たりにした怒りが次々に語られた。特に、元自衛官で組織する神奈川県隊友会会長(自由党推薦)の憲法改悪を正面から主張する発言や、横須賀商工会議所副会頭の「いざとなったら商工会議所はあげて協力する」などという発言の暴露は全参加者の怒りを買った。
 6月3日の参考人質疑、5日とも言われる委員会採決を絶対に阻止しよう。

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週刊『前進』(2104号1面3)

戦争と大失業の帝国主義の打倒へ絶大な夏期カンパを

 すべての『前進』読者のみなさん。
 夏期一時金の支給時期にあたり、絶大なカンパを革共同に寄せられるよう訴えます。
 有事3法案粉砕の闘いは参議院での重大な決戦段階に突入しました。小泉首相は、「自衛隊は軍隊」と明言し、「いずれ憲法でも軍隊と認め、しかるべき名誉と地位を与えるべき」と、民主党の大裏切り、野党の屈服に助けられ、あからさまな改憲発言を行いました。図に乗るのもいい加減にしろ! 絶対に許せません。
 5月23日、明治公園には陸海空港湾労組20団体などの呼びかけにこたえて3万人が結集し、有事立法絶対廃案の反撃を開始しました。連合の統制、日本共産党の制動をはねのけて、労働者階級は巨大な流動を開始しています。闘いはいよいよこれからです。
 本年冒頭、日本経団連は「奥田ビジョン」を発表し、「日本崩壊の危機」を叫び終身雇用制の解体など戦後労働者支配の転換を宣言しました。これは単に賃下げや春闘解体だけが狙いではなく、労働者の階級性を解体し、労働組合の産業報国会化を迫るものです。
 5・27国労臨大闘争弾圧は、その最先端の攻撃です。4党合意を突き破る国鉄労働者の決起は、こんなことで押しとどめられはしません。「許さない会」は確実に全国に拡大しています。
 りそな銀行への公的資金注入に見られるようにいかなる金融・財政政策を施そうとも没落を止められない日帝経済。一切の犠牲を労働者に押しつけ、米帝と共同・競合して北朝鮮侵略戦争に突進するしかない日帝。もはや労働者の生きる道は、大失業と戦争に行きつくしかない帝国主義を打倒する以外にありません。
 核心は、真に労働者階級を代表する党の問題です。口先だけで「イラク反戦」を語り、「アメリカの戦争に巻き込まれる」としか有事法制を語らない日共は、今回の統一地方選で300余も議席を減らしました。社民党はその存在すら危ぶまれるまでに至りました。°こんな政党に労働者の未来は託せない。日帝の攻撃と真っ向から対決する革命党が今こそ必要だ″――この労働者の声に革共同は全力でこたえます。
 杉並区議選で「反戦と介護(福祉)」を掲げ、6割増の得票を得て2議席を確保し、全国でも二けたに届く地方議員を擁するにいたったことは、労働者・住民に学びつつともに闘った革命的議会主義の偉大な成果です。
 今夏の決戦は、労働者の未来をかけた正念場です。生活のかかった夏期一時金であることは痛いほどわかります。だからこそ、みなさんの未来をかけて絶大なカンパを寄せられるよう訴えます。

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週刊『前進』(2104号2面1)

東労組が代議員選で分裂 松崎派と嶋田派が内部抗争 カクマル支配が崩壊の危機
 今こそファシスト運動打倒へ

 JR総連の最大単組であるJR東労組が、ついに分裂・崩壊の危機に陥っている。6月中旬に開催予定のJR東労組第19回定期大会に向けて、結成以来初の代議員選挙が行われ、松崎派と嶋田派が対立候補を立てて泥仕合を演じる事態となった。昨年来のJR総連カクマルの内部抗争はついに非和解的な対立に発展し、東労組のカクマル支配の崩壊、JR資本とJR総連カクマルの結託体制の破綻(はたん)へと向かう情勢に突入した。これは国鉄労働運動をめぐって、国鉄分割・民営化以来の流動・再編情勢が到来し、国鉄決戦の勝利の展望が切り開かれたことを意味する。東労組内で最も激しい分裂を生じさせている千葉での動労千葉の闘いに続き、闘う国労の再生をかちとり、今こそJR総連カクマルを打倒しよう。

 小林への制裁めぐり千葉地本は真っ二つ

 5月9日に投票が行われた東労組の代議員選の最大の焦点になったのが千葉地方選挙区である。千葉地本委員長・小林克也(東労組本部副委員長で千葉に派遣)が、東労組本部の松崎派から「嶋田派」として攻撃され、その小林の「制裁」問題が定期大会の焦点になるからだ。嶋田派が「制裁」を阻止するために対立候補を立てたのだ。千葉では定数18人に対して松崎派16人、嶋田派18人が立候補し、松崎派が9人、嶋田派が9人と真っ二つの結果になった。
 また横浜地方選挙区、「全国区」の運車部会、工務部会、営業部会でも嶋田派が対立候補を立てて選挙になったが、いずれも嶋田派が全滅した。松崎派が、嶋田派つぶしのために総力を挙げ、不正選挙を行った結果だ。新潟地本、長野地本では嶋田派が無投票で当選している。全体では松崎派が嶋田派を圧倒しているが、東労組を完全に二分する選挙になった。
 松崎派とは、JR総連カクマルの頭目・松崎明(前JR東労組顧問、現東京エリア4地本の顧問)に忠誠を誓う東労組本部執行部や東京地本執行部を中心とするグループである。
 嶋田派とは、昨年10月31日に東労組本部の副委員長を辞任した嶋田邦彦ら8人の元中執メンバーを中心とする「反松崎」のグループだ。新潟地本出身者が多く、新潟グループともいわれる。新潟地本、長野地本が辞任した8人を支持する見解を出した。横浜地本の一部も彼らを支持し、千葉地本の小林が加わった。
 二つのグループは、いずれもJR総連カクマルである。国鉄分割・民営化以降、JR総連は、西日本、東海、九州での旧鉄労系などの分裂―JR連合結成や東日本でのグリーンユニオンの分裂などがあった。また最近では、松崎・JR総連カクマルがほぼ丸ごと黒田・カクマル中央派と分裂するという事態があった。だが今日の事態は、旧動労―JR総連カクマルが真っ二つに割れ、その最大の牙城(がじょう)である東労組において泥沼的な抗争を繰り広げているという、かつてない重大事態なのだ。
 ついに松崎によるJR総連のファシスト的支配が根底的に揺らぐ事態に入ったということである。

 組合員の利益と無縁の醜悪な「利権」争い

 松崎派と嶋田派の対立・抗争は、昨年春、東京支社で、かつて東労組破壊を策した人物が業務担当課長に昇進した人事の問題に端を発している。松崎がこの人事の撤回を会社に迫ったが、その松崎の方針に反対したのが嶋田らであった。そして10月31日に嶋田ら8人が辞任するに至る。
 松崎は11月9日の八王子講演で「『松崎明は役員でもないのに何を言うんだ。どこかに行っていてくれ』と言われている」と言っている。嶋田らが松崎を排除しようとしているとして、松崎が激怒し、彼らを辞任に追い込んだのだ。
 今年1月23日、東労組本部中央執行委員会は「8人の中央指導部の辞任に対する見解」を発表した。それは「(松崎は)JR東労組の育ての親であり、JR東労組にとっての重鎮である」「『余人をもって代えがたい』存在」と松崎を賛美し、嶋田派の「目的」は「反松崎の権力構造をつくることにおかれていたことが分かる。自分たちの権益を守り、拡大していこうという野望に燃えての、これまでの行動・行為であった」と非難している。
 結局、この対立は「権益」をめぐる抗争であるということだ。
 双方による非難・中傷合戦の文書に書かれていることも、そうだ。嶋田派は、“松崎は、東労組を私党化し、別荘をいくつも持って、できの悪い息子を「さつき企画」の社長にして、それがM資金となり、自分だけが金もうけをしている”と非難している。これに対して松崎派は、“(嶋田らのバックにいる)新潟の松崎(嘉明)は600万円以上のセルシオ(乗用車)、40万円のローレックス(腕時計)を与えられ、「おれに2千万円くれれば新潟のローカル線を第3セクターにしてもいい」と会社に言った”などと主張しているのだ。
 ここには、JR資本との結託体制のもとでむさぼってきた利権をめぐって醜い抗争を繰り広げる、JR総連カクマルの腐敗した姿がはっきりと示されている。
 彼らは、国鉄分割・民営化に全面協力し、労働者を売り渡すことでJR総連の権力と利権を与えられた。だが、そうしたJR労資結託体制とファシスト労働運動が危機に陥り、従来のような利権構造が崩れる中で、生き残りをかけて利権抗争をやっているのだ。

 “東労組は本質上分裂している”

 この抗争は東京対新潟にとどまらず、千葉や横浜に拡大する。2月7日の東労組中央委員会では、松崎派が千葉地本委員長・小林を名指しし「松崎前顧問に弓を引いている」「8プラス1ではないか」「辞任すべきじゃないか」と公然と批判し、千葉の委員に対して激しいヤジを浴びせた。
 2月15日に開かれた千葉地本の定期委員会には、本部から奈良副委員長ら3人が乗りこんだ。小林は「1・23本部見解支持」「8名辞任には反対」を表明するが、「進退については組合員の皆さんにお任せしたい」と居直りの発言に終始。奈良は「(東労組は)形式上は分裂していないけれど、本質上分裂している」と発言し、小林批判を行った。この議事録を掲載した千葉地本の機関紙は直ちに回収処分になった。
 2月22日の横浜地本の定期委員会では、嶋田派支持を打ち出した杉本副委員長らへの批判が噴出した。
 4月10日、東労組臨時中央執行委員会は、千葉地本委員長・小林について、@関東担当(千葉地本派遣)の解除、A地本委員長の辞任勧告、辞任しない場合は本部副委員長の執行権停止、B4月21日をもって専従解除とする「本部指令」を決定。さらに12日には、小林がこれらに従わないとして次期定期大会で「制裁申請」することを決めた。
 小林は専従を解除され、出身職場の高崎車掌区に戻され、5月1日付で関連会社(立川駅ビル)に出向に出された。
 こうして、4月24日に告示された代議員選に至るのである。
 その後、千葉地本では、前・元委員長3人の連名で「全ての組合員のみなさんへ!」という文書が配られた。それは「(小林が)本部指令を認めないと言うことは、組織分裂の危機的な事態です」「組織破壊に与(くみ)した者はその役員生命は終わりです」と叫んでいる。
 もともと小林は、松崎の「子飼い」といわれたカクマルであり、千葉地本のカクマル支配の強化のために送り込まれた人物だ。その小林が「反松崎」となり、前・元委員長が松崎派の立場から小林を「組織破壊分子だ」とののしるというのも、異様な話である。千葉地本では、その後、地本定期大会の代議員選も分裂選挙となり、完全な分裂状態をさらけ出している。
 さらにこの過程で、黒田・カクマル中央派の「介入」と見られる動きもあった。3月下旬に「JR東労組の真の一枚岩の団結を創りだそう!」なる「怪文書」が東労組の各支部に郵送された。これに先立って「役員学習・討議資料」として松崎の講演記録が送付されている。この「怪文書」は、その松崎講演を引用しながら「嶋田一派の放逐」を主張している。「松崎前顧問は、9人組との闘いは『階級闘争として位置づける』と提起している。つまり『打倒の対象でしかない』」と言うのだ。
 東労組の「組織部報」はこれを「革マル派による組織介入であり、黒いネットワークによる手のこんだ謀略文書だ」と断定している。松崎派カクマルとの関係修復を狙う黒田カクマルによるものであることは間違いない。
 松崎派と嶋田派、これに黒田=カクマル中央派までがからんだ三つどもえの様相を呈しているのだ。

 東労組の青年労働者はカクマルと決別を

 こうした抗争は、すでに見たように利権をめぐる泥仕合である。労働組合の権力をめぐる争いは、本来は資本との闘いの路線・方針をめぐって争われるものである。ところが東労組の内部抗争には、そうした労働組合運動の路線・方針をめぐる論争は何もない。組合員の利益とは無縁のところで行われているのだ。
 東労組定期大会に向けて、松崎派は嶋田派をたたきつぶし、そのファシスト的支配を維持するために全力を挙げるだろう。大会では、嶋田派の代議員や傍聴者を「缶詰」にして徹底した自己批判を要求するとも言われている。
 こうした事態の意味するものは何か。それは、いよいよJR総連カクマルを打倒し、今日の国労と国鉄闘争の混迷状況を打ち破り、国鉄労働運動の新たな発展に向かって突き進む好機が訪れたということだ。
 この情勢は、何よりも動労千葉や闘う国労組合員の不屈の存在と闘いが切り開いたものである。
 そして、国家権力の国鉄労働運動解体攻撃とJR資本の第2の分割・民営化攻撃の中で起こっていることだ。国家権力は、一方でJRのファシスト的な労資結託体制の「清算」を迫り、特に人事にまで介入する松崎の支配にくさびを打ち込もうとしている。昨年11月に東労組カクマルを「退職強要」事件で逮捕・家宅捜索したのは、そのためだ。その中でJR総連カクマルの危機と矛盾が深まっているということだ。
 他方で、国家権力は国労を解体し、1047名闘争をたたきつぶすことを狙って、国労5・27臨大闘争弾圧をかけてきた。
 これらは、国家権力の側から国鉄分割・民営化攻撃の総決算を行おうとするものである。それは、国鉄分割・民営化の時以来の国鉄労働運動の流動・再編状況をもたらす。
 松崎派と嶋田派の抗争は、明らかに松崎のファシスト的支配のたががはずれていることを示している。抗争の激化は、東労組組合員の中に不満と混迷を持ち込むことは間違いない。「平成採」の青年労働者の役員不信が高まっている。
 いよいよ松崎によるJR総連のファシスト的支配が崩壊し、JR労資結託体制の最後的な破綻に行き着くであろう。
 それは、JRの第2の分割・民営化攻撃を粉砕し、日帝資本の「奥田ビジョン」などによる資本攻勢に総反撃する突破口を切り開くことになる。
 そうした闘いを国鉄労働者の力で実現しなければならない。そのためにも、ストライキでJR労資結託体制と闘う動労千葉の闘いを国鉄労働運動の中に押し広げよう。国労5・27臨大闘争弾圧を打ち破り、国労の現執行部を打倒し、闘う国労を再生しよう。
 そしてJR職場に真に闘う労働組合をつくり出し、「平成採」の青年労働者を獲得しよう。
 東労組の青年労働者は、今こそカクマルと決別し、ともに闘おう。

 JR東労組の最近の動向

02年10月31日 嶋田副委員長ら8人の本部中執が集団辞任(11月3日受理)
03年1月23日 東労組中央執行委員会が「辞任は背信行為」「松崎前顧問は重鎮」とする「8人の中央指導部の辞任に対する見解」を発表。
2月6日 JR総連中央委員会で「東労組内の不団結の克服」に議論が集中。
2月7日 東労組中央委員会で松崎派が千葉地本委員長・小林を「松崎前顧問に弓を引いている」「8プラス1」と批判。
2月15日 千葉地本定期地方委員会に本部から奈良副委員長らが出席、小林とののしり合う。
3月下旬 カクマル中央派のものと見られる「怪文書」。
4月10日 東労組臨時中央執行委員会が、小林の関東担当(千葉地本派遣)解除、地本委員長の辞任勧告、専従解除を指令。
4月12日 東労組臨時中央執行委員会が、小林の統制違反を満場一致で確認。第19回定期大会で「制裁申請」することを決定。
4月24日 定期大会の代議員選挙告示。結成以来初の選挙に。
5月9日 代議員選投票日。千葉地本は9対9で松崎派と嶋田派が同数。横浜地本と部会選挙区も松崎派が占める。

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週刊『前進』(2104号2面2)

労働法制改悪阻止へ〈中〉
民主党の修正案の反動性 「合理的解雇」を容認 権利は闘いによって守られる

 解雇規制法制定要求路線の帰結

 小泉政権は、資本の「解雇権」を認めることを柱とする労働基準法改悪案を、6月4日にも衆院厚生労働委員会で採決に付そうと構えている。また、衆院を通過した職業安定法・労働者派遣法改悪案は、5月27日、参院厚生労働委員会での本格審議に入った。労働法制改悪をめぐる攻防は、廃案に追い込むか、成立を許すのかの重大な段階を迎えている。
 労働法制改悪への怒りは、有事立法への怒りと結びついて、ナショナルセンターの枠を越えた労働者階級の決起を引き起こしている。改悪絶対阻止の気運は急速に高まっている。ところが、この時にあって民主党は、政府案に修正を施すことで労基法改悪も認めようとしているのだ。有事立法の衆院通過に道を開いた民主党の歴史的な裏切りが、ここでも繰り返されつつある。
 21日、民主党が打ち出した修正案は、政府案の「使用者は……労働者を解雇することができる。ただし、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」という部分を、「使用者は、労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することができない」に改めるという。
 社民党や共産党も、“民主党案なら、使用者が解雇の正当性の立証責任を負うことになる”という理由で、法案修正へと態度を転換させている。連合中央はそもそも「廃案ではなく修正」というスタンスだ。「解雇規制法の制定」を唱える勢力は、こぞって民主党案推進に回ったのだ。
 だがそれは、労基法の根本的転覆を狙う今次大改悪の歴史的な意味を完全に見失った議論である。もちろん、労働者に「解雇の不当性」の立証責任を負わせようとすること自体は、重大な攻撃だ。しかし、小泉政権の意図は、そうしたレベルをはるかに超えている。
 今日、連合中央の裏切りのもとで、幾多の労働者が解雇に対して抗議の声を上げることさえ抑圧されている。だが、それでも一大資本攻勢に対する労働者の怒りは至るところで噴出し、資本に脅威を与えている。だからこそ、小泉政権は「解雇権」なるものを絶対不可侵のものにし、労働者が解雇撤回を求めて争う余地さえ認めず、それでも立ち上がってくる労働者を暴力的にたたき伏せようと狙っているのだ。
 労働法制改悪が、有事立法とともに強行されようとしていることを直視しなければならない。労働者の権利を一切認めず、問答無用の首切りをまかり通らせることによって、労働者の戦争動員は全面的に貫徹されるのだ。
 労基法上認められた労働者の権利は、どれ一つとっても労働者階級の数百年に及ぶ闘いの獲得物である。資本の解雇攻撃に縛りをかけてきたものもまた、労働者の団結とそれに基づく不屈の闘いにほかならない。整理解雇の4要件や「解雇権の濫用は無効」とする判例などは、労働者の闘いが資本に強いた一定の譲歩の産物だ。だから資本は、「奪われた資本の権能」を取り戻そうとして、常に労働者に攻撃を仕掛けてきた。労働者の権利は、そうした攻撃との攻防を全力で貫くことによって初めて権利たりえてきたものだ。
 今や小泉政権は、労働法制の全面改悪で労働者の権利をことごとく奪い去ることに歩を進めている。これに対して「いかなる解雇なら認められるか」などという議論をもてあそぶこと自体が、許しがたい裏切りなのだ。民主党の修正案は、資本の「解雇権」を裏返しの表現で認めるものでしかない。
 「客観的合理性」や「社会通念」という法文上の文言が、解雇に対する歯止めになるなどという幻想にとらわれてはならない。むしろそれは、今日の情勢の中では解雇の「正当性」を強弁する資本の側のキーワードにすらなりうるのだ。それを象徴するものこそ、“国策としての国鉄再建に逆らう者は不採用になって当然”とした全動労採用差別事件の東京高裁判決だ。
 現局面において求められているのは、修正論議にうつつを抜かすことではなく、労働法制改悪への怒りを解き放ち、廃案に追い込むことである。

 有期・派遣の拡大狙う攻撃許すな

 労基法改悪案は、さらに有期雇用契約の上限を1年から3年に延長することで有期雇用の拡大を狙っている。これは、労働者派遣法の改悪案とあわせて、終身雇用制の解体と労働者の不安定雇用化を一気に進めるものとなる。
 派遣法改悪案は、派遣期間の上限を1年から3年に延長し(専門職26種については期間制限を撤廃)、製造業への派遣を解禁する、紹介予定派遣を解禁するとともに派遣先による労働者の事前面接を認めるというものだ。労働者を不安定・低賃金・無権利状態に落とし込めるという資本の攻撃は、ますます激化する。法案成立を阻むため、全力で闘おう。
 (長沢典久)

政府案
 使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。ただし、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
民主党案
使用者は、労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することができない。
 

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週刊『前進』(2104号2面3)

労基法改悪に激しい怒り 国会前に労働者の声轟く

 労働法制改悪への労働者の怒りは激しく噴出し始めた。国会前では、衆院厚生労働委員会の開会日にぶつけ、さまざまな労働組合が抗議行動を続けている。こうした粘り強い闘いこそ、改悪を阻む力である。
 5月28日午後0時半から、全労協と「戦争も雇用破壊も許さない! こんな解雇ルールはいらない! 労基法大改悪NO! 2003年春の共同行動」は、衆院第2議員会館前での座り込みを行った。労働法制改悪に反対する労働組合が全国から結集し、100人以上が参加、各組合旗が林立した。
 午前中、衆院厚労委の審議を傍聴した労働者が、怒りを込めてその様子を報告した。「与党の議員はほとんど欠席している。出席していても居眠りしている。こんな状態で私たちの権利を奪う法律が決められようとしていることに本当に腹が立つ」
 労働法制改悪への怒りは、有事立法への怒りと結びついている。「戦争ができる国にするためには、有事法制だけではできない。労基法改悪もその一環。一つひとつの法案をたたきつぶすことが、自分の命と子どもたちの将来を守る道だ」と訴える労働者。藤崎良三全労協議長も、「労基法改悪に労働組合・労働者の総力を結集して闘う」と述べるとともに、有事立法とイラク復興支援法制定阻止を、と強調した。
 争議を闘う各労組は、違法な解雇が現に横行している中での労基法改悪は絶対に許せないと怒りを語り、派遣労働者などを組織する組合は、派遣期間の上限延長を“派遣労働者の要求によるもの”と強弁する小泉政権のペテンを弾劾した。
 参加者は、午後4時半に厚生労働省前に移動し、労働法制改悪を強行する同省にシュプレヒコールをたたきつけた。厚労省職員で組織する全労働省労働組合の代表が、「労働行政に働く者として、この改悪には我慢できない。反対の一点ですべての労働者と共闘する」と決意を語った。
 午後6時半、日比谷野外音楽堂で中央集会が行われた。昼間からの行動を貫徹した労働者に、勤務を終えて駆けつけた労働者が加わり、熱気があふれた。

 “改悪阻止へ最後まで闘う”

 主催者として全労協全国一般の中岡基明委員長が「戦争反対、生活と権利防衛へ、改悪阻止のため最後まで闘おう」と訴えた。全労連の寺間誠治幹事も連帯のあいさつに駆けつけた。
 リレーアピールでは、国労闘争団の酒井直昭鉄建公団訴訟原告団長が「解雇撤回までともに闘う」ときっぱりと発言。航空労組連絡会の村中哲也副議長が、傘下組合にかけられた全日空による子会社つぶし−全員解雇攻撃と闘う決意を述べるとともに、「解雇撤回要求署名に協力するな」と通達を出した連合の草野忠義事務局長を弾劾した。
 集会後、参加者は国会請願デモに立ち、社民党と共産党の議員に改悪阻止へ奮闘を訴えた。
 動労千葉や労組交流センターもこの日の闘いをともに担いぬいた。

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週刊『前進』(2104号3面1)

国労5・27臨大闘争弾圧粉砕 6・4全国集会に総結集を デッチあげ打ち砕く重大局面
 各地に「許さない会」つくろう

 国労5・27臨大闘争弾圧裁判は第5回公判(4月21日)の冒頭陳述から検察側立証過程に入った。5月16日の第6回公判では、弁護団と被告団は、検察側冒頭陳述への求釈明をとおしてその立証構造の脆弱(ぜいじゃく)性とデッチあげを暴き、そのほころびの糸口をつかんだ。裁判闘争は一瞬の気の緩みも許されない白熱的攻防の局面に突入した。6月4日の第7回公判闘争と全国集会への総結集を呼びかける。

 核心突き感動を呼ぶ8被告の意見陳述

 最初に、本裁判のこれまでの経過を見ていきたい。
 昨年10月の第1次と第2次弾圧で起訴された8人を統一被告団とする本裁判の初公判は2月3日に開かれた。冒頭手続きである、裁判官による人定質問、検察官の起訴状朗読と弁護団による起訴状への求釈明が行われた後、松崎博己被告団長を先頭に8被告が意見陳述をした(第3回公判まで)。その闘いの正義性と無実の主張は法廷に感動を呼び起こし、検察官を追いつめ、裁判官の前に本裁判の労働運動裁判としての核心を突き出した。とりわけ7人の国労組合員は、誇りと確信をもってそれぞれの苦闘に満ちた「自己史」を語ることをつうじて、自分こそが裁判闘争の主体であることを宣言したのである(『国労組合員らの意見陳述集』参照)。
 続いて、弁護団による冒頭意見は第5回公判まで続き、本裁判の労働運動と刑事事件のすべての争点について明解な見解を明らかにした。そして、その結論として検察官の公訴提起自体が法令に違反しているとして公訴棄却を申し立てた。
 以上で冒頭手続きを終了し、検察側の冒頭陳述と証拠申請が行われ、証拠調べの段階に入ったのである。
 被告団と弁護団は意見陳述をとおして裁判闘争の基本方針を打ち立てるとともに、この間に以下のような成果をかちとってきた。
 一つには、第3回公判から大法廷での開廷をかちとったことである。傍聴席38の小さな法廷で始まった裁判が途中から大法廷(96席)に変更されるというのは異例のことである。「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」(昨年12月結成)が公判闘争への大結集を呼びかけ、第1回、第2回公判ともに百人以上があふれて廊下に座り込み、法廷での大法廷開廷の要求と一体となった闘いを繰り広げた成果である。
 二つには、被告1人を刑務官2人が挟み込むという重戒護体制を毎回の公判で弾劾・追及し、第5回公判から戒護体制を縮小させたことである。その結果、被告の座席が分断された状態を変更させ、8人全員が弁護団の前に並ぶという要求を実現したのである。
 三つに、逮捕以来続く接見禁止攻撃と闘い、家族との接見の権利をかちとったことである。検察官は、接見禁止決定解除の申請に対する意見で、「被告人の家族(子どもらも)が被告人の意を受けて証拠隠滅工作に走るおそれがある」などというデタラメなことを、反対理由の第一として挙げていた。この許しがたい策動を打ち破って、各被告の家族との接見を次々と実現した。その後、労働委員会闘争の関係者との接見もかちとっている。
 四つに、小泉伸被告の勾留の一時執行停止をかちとり、数日間とはいえ、重態である父親の病気見舞いができたことである。
 しかし、8被告に対する7カ月を超える勾留はまったく不当だ。裁判官が口実とする「証拠隠滅のおそれ」は何ひとつ根拠がない。直ちに保釈が許可されなければならない。「許さない会」が呼びかける署名運動に積極的に取り組み、早期保釈奪還をかちとろう。
 これらは、法廷内外の裁判闘争の大衆的展開が切り開いたものである。法廷において、裁判闘争の主体として被告団が立ち、弁護団・傍聴者と一体となって攻勢的に闘い、各課題や要求の実現をめざして検察官や裁判官を追いつめてきた重大な成果である。

 検察側の立証構造の脆弱性とねつ造暴く

 検察側がその冒頭陳述で明らかにした立証構造の脆弱性とデッチあげ性を暴露していこう。
 冒頭陳述とは、検察官が「証拠により証明すべき事実」を明らかにするものである。ところが本裁判において、検察側は正当な証拠に基づかず、「裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞(おそれ)のある事項を述べることはできない」(刑訴法296条)という規定を踏みにじり、不公正で違法・不当な冒頭陳述を展開した。

 「中核派が大会を妨害した」?!

 第一に、「犯行に至る経緯等」において、「中核派は……国労全国大会に対する妨害活動を行っていた」とするデタラメな主張を繰り広げた。それは、本件が闘争団切り捨てに突き進む国労本部派に対し、国労組合員が展開した正当なビラまき・説得活動であったことを否定し、中核派による国労襲撃事件としてデッチあげ弾圧を押し貫こうとするものだ。
 検察側が「中核派の妨害活動」の例証に挙げているのは、「国労全国大会会場内で演壇を占拠するなどの議事妨害をした」ことと、「大会参加者の宿泊先周辺において、大会参加者が大会会場に移動するのを妨害した」ことの二つである。
 前者は2000年5月30日の国労本部による4党合意受け入れ後に開かれた7・1臨大での出来事である。闘争団とその家族の訴えを踏みにじり、4党合意承認を拍手で強行しようとした本部執行部に対して、闘争団を始めとする組合員が演壇に殺到し、ついには大会休会に至ったことである。検察側はこの真実を塗り隠して、中核派が演壇占拠したなどというデマを平然と口にしたことで自ら墓穴を掘ったのである。
 このように偏見と予断を裁判所に与えることだけを目的とした冒頭陳述は不公正かつ違法なものであり、断じて許されない。弁護団と被告団が要求するように、この部分をすべて削除する以外に検察側のとるべき方法はないのである。

 100%矛盾し破綻する検察の「共謀成立」論

 第二に、「共謀の成立及び犯行状況等」における主張のデタラメさである。
 その一つは、「被告人向山=リーダー」論のデッチあげである。
 支援者の向山和光被告は起訴状でその筆頭に挙げられているが、実行行為は何ひとつ特定されておらず、共謀のみで起訴された。これは「中核派による国労への襲撃」というデッチあげと表裏一体のものである。
 その冒頭陳述への求釈明に対して、検察側は「向山被告は暴力行為はしていず、共謀共同正犯である」こと、および「多衆の威力を示す行為の一部をしている」ことを明らかにした。
 これは向山被告が単に「多衆の一人」にすぎないことを自認し、「向山被告=リーダー」論を自ら否定するものにほかならない。にもかかわらず「向山被告=リーダー」と言い張ることで、「中核派による国労襲撃事件」という暴論を護持しようとしているのだ。
 共謀に関しては、「松崎被告を含む数名が池田に暴行を加え、それを他の被告が目撃し、松崎被告らの意思を了知して」成立したとしている。この検察側の主張によれば、向山被告は「松崎被告の意思を了知し」それに付き従った「多衆の一人」でしかないことになる。検察側はここでも「向山被告=リーダー」論を自ら否定しているのだ。
 二つは、前述した共謀の成立に関することである。
 検察側は、事件当日以前の会議・打ち合わせなどによる事前謀議型の共謀をデッチあげようとしたが、共謀の事実などそもそも存在せず、被告たちの完黙・非転向の闘いによってその策謀は挫折させられた。
 それに追いつめられた検察側は、いわゆる成り行き型の共謀(現場共謀)をデッチあげようとしているのだ。
 ところが、「松崎被告らの池田への暴行」は公訴提起(起訴)されていない。つまり、その暴行は、仮に事実であったとしても起訴するレベルには達していない、非常に些細(ささい)なものだったということだ。冒頭陳述の「突き、その両太ももを膝(ひざ)蹴りした」というのはまったくのウソなのだ。
 したがって、他の被告が松崎被告らの行為を目撃したとしても、それはおよそ暴行とは言えない程度の行為だったのだから、「暴行の意思」を了知することは不可能であり、ましてや「暴力行為に及ぶことについての共謀が成立」しようはずがないのである。
 検察側が主張する共謀の成立論は全面的に矛盾し、完全に破綻(はたん)していることは明らかだ。
 三つは、各被告の行為に関する記述がデタラメだということである。
 検察側は「押す」とか「引く」とかいう、およそ暴行で起訴するレベルにはない行為に「激しく」とか「強く」とかの形容詞をつけて、その行為をことさらに強調する姑息(こそく)な手段をとっている。ここではそのことを指摘するにとどめ、今後の実際の証人調べでの追及と弾劾をとおして検察側の主張がデッチあげであることを全面的に暴露することにしたい。

 解雇・不当配属の事実も隠す

 第三に、「各被告人の身上、経歴等」において、国労組合員7人のうち松崎、羽廣両被告が国鉄分割・民営化の過程で首を切られた事実にふれず、残りの5人の被告の職歴も逮捕当時勤務していた職場のみを記載しており、各被告が分割・民営化前後からずっと不当配属職場への配転に次ぐ配転を強制された重大な事実を抹殺している。また、組合役員歴も何ひとつとりあげていない。
 これは、各被告が冒頭陳述の中で明らかにしたことを意図的に無視し、被告の行動が組合員としての主体性に発した正当な組合活動であったことを否定しようとするものだ。
 このように検察側冒頭陳述は最初から最後までデタラメとウソのかたまりだ。弾劾・粉砕あるのみだ。
 第7回公判は、前回に引き続いて、検察側冒頭陳述への求釈明の闘いから始まる。弁護団と被告団は決定的な瞬間にすべての力を集中してさらなる勝利の地平を切り開く。
 第7回公判の傍聴に結集しよう。被告・弁護団が法廷において必死に切り開いた勝利を揺るぎなく打ち固めるものこそ、「許さない会」の拡大だ。6・4全国集会の成功をかちとり、全国各地で「許さない会」をつくり、早期保釈奪還・裁判闘争勝利の陣形を形成しよう。8被告と固く連帯して闘いぬこう。

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週刊『前進』(2104号3面2)

個人情報保護法の成立弾劾 報道弾圧と人民管理許すな

 5月23日、個人情報保護関連5法案(民間、行政機関、独立行政法人の3者をそれぞれ対象とした個人情報保護法、不服申し立てなどに応じる審査会の設置法、行政機関関係法の整備法)は、参院本会議で採決が強行され、自民、公明、保守新の与党3党などの賛成多数で可決、成立した。
 小泉政権によるこのような悪法の制定を腹の底からの怒りで弾劾する。
 個人情報保護関連5法の目的は、戦後憲法のかなめをなす基本的人権を蹂躙(じゅうりん)し、すべての労働者人民を米日帝による北朝鮮(中国)侵略戦争に動員することだ。そのため有事立法第4法案とも呼ばれているのだ。
 具体的な狙いは、@報道・言論を規制し、国家権力を握る政治家、官僚、資本家などの個人情報を一切暴露させないこと、A労働者人民の個人情報を国家権力(行政機関)が濫用(らんよう)し、まったく保護しないこと、B住基ネットとの一体的運用で、すべての労働者人民を管理・統制すること――などである。
 防衛庁の赤城徳彦副長官は、5月19日の参院個人情報保護特別委員会で、4月末にマスコミにより暴露された自衛官の適齢者情報収集問題について、「(本籍は)日本国籍を有しないと自衛官になれないので、その確認をするのに有用だった」「(親の職業は)保護者の理解を得るため自宅訪問する場合があり、必要だった」と答弁した。
 また石破防衛庁長官は、福島瑞穂議員の「本籍や親の職業の情報収集は、差別につながる大問題だ」という追及に対して、「そういうことが分からなければ、私どもは国を守る精強な自衛官というものを募集できないからやっている。なんら違法なことはしていない」と居直り答弁した。
 防衛庁や小泉政権は、労働者人民の個人情報を国家や軍部が濫用したことについて謝罪・反省するどころか、戦争動員に不可欠だと言い放っているのだ。
 8月の住基ネットの本格稼働により、自治体が労働者人民にICカードを配布し、国家権力はそこに集積した膨大な個人情報を一元的に管理・支配する。権力がパソコンのキーひとつで必要な個人情報を入手し、やりたい放題濫用するのは明白だ。こんな悪法は絶対に認められない。なんとしても廃止に追い込もう。
 全国各地で多くの労働者人民が個人情報保護法の成立に抗議し、廃止の闘いに立ち上がっている。
 沖縄の平和市民連絡会は「有事関連法案やイラク戦争、北朝鮮の問題と結びつけて考える必要がある。情報が操作され、知りたい情報が抑え込まれる」と危機感を訴えて、廃止の声を上げている。また、日本雑誌協会は「これで終わったわけではない。政治家と官僚によるプレッシャーをはね返す」と廃止に向けた闘いを宣言している。
 今、参議院では有事3法案の審議が山場を迎えている。個人情報保護法廃止と人権擁護法案廃案、有事3法案廃案の闘いはひとつだ。有事3法案推進の民主党と連合を許さず、有事立法粉砕・改憲阻止の巨大な決起を実現しよう。

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週刊『前進』(2104号3面3)

“証拠非開示は差別” 狭山最高裁要請行動 書記官を徹底糾弾

 5月22日、部落解放同盟全国連合会関東ブロックは、東日本解放共闘とともに40人で、5・23石川一雄さん不当逮捕40カ年糾弾全国統一行動の一環として狭山特別抗告審闘争―最高裁・最高検糾弾要請行動に立ち上がった。
 午前10時半、永田町の星陵会館で集会をもち、全国連狭山闘争本部の小森勝重事務局長が基調報告を行った。小森事務局長は、40年前、無実の部落青年、石川一雄さんを「誘拐殺人犯人」にデッチあげた国家権力の部落差別、権力犯罪を徹底的に糾弾する闘いとして狭山闘争を闘うことを訴えた。特に、解同本部派が石川さん不当逮捕40カ年の運動を政府・自民党などに人権擁護法案を制定させる圧力としてのみ取り組んでいることを暴露し、全国連が差別糾弾闘争として狭山闘争を闘うことの意義を強調した。また有事立法を廃案に追い込むために23日に明治公園での集会に総結集することを呼びかけた。
 次に全国連の井橋昌夫中央委員が、脅迫状は石川さんが書いたものではないことを証明する斎藤鑑定などの新証拠や高裁高木・高橋決定の矛盾点について詳しく説明した。
 茨城県連、長野県連、埼玉の青年、都留文大生協労組、埼玉労組交流センター、婦人民主クラブ全国協が闘う決意を表明した。
 午後、代表20人が最高裁内に入り、要請行動を行った。11団体が「最高裁は事実調べを行え。最高検に証拠開示命令を出せ」と迫る要請文を読み上げた。碓井書記官は要請の内容については何も答えず、「30分です」と制限時間だけを告げ、一方的に終了し退席しようとした。要請団は「その態度はなんだ」と激しく糾弾し、30分の制限を大幅にこえて闘った。
 最高検に対する要請行動では、要請団は1審検事論告・死刑求刑がいかに悪質な差別文書であるかを暴露し、最高検を糾弾した。証拠を開示しないのは部落差別にほかならないと厳しく追及した。粟辻課長補佐は、ひたすら要請団の意見を聞く姿勢をみせて糾弾・追及をかわそうという対応に終始した。
 総括集会で小森事務局長は「強大な権力にひるむことなく毎月、継続して闘い、権力を追いつめよう」と力強く訴えた。

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週刊『前進』(2104号3面4)

三里塚・東峰神社裁判 公団がお粗末な反論 “入会権は封建遺制”!? 神社林盗伐を開き直る

 5月19日、成田空港平行滑走路予定地にある東峰神社境内地の所有権と同神社林伐採の違法を争う東峰神社裁判の第6回公判が千葉地裁民事第2部(小磯武男裁判長)で行われた。
 東峰神社裁判は、原告・被告双方が準備書面の認否と立証趣旨を明らかにする書面交換の段階にある。前回(第5回)公判で原告・東峰部落と弁護団は、神社境内地が東峰部落(氏子集団)の総有関係(注)にあることを神社の沿革と入会権(総有)の法理論の両面から明らかにした。
 具体的には、@神社敷地は氏子の一人である寺田増之助氏によって部落に贈与されたものであること、Aその時点で敷地には入会的(総有的)な権利関係が成立したこと、Bしたがって登記名義は意味をもたず、空港公団が所有権を主張することは違法であること――などである。

 追いつめられ

 これに対して、被告・空港公団はこれまでどおり贈与の事実を根拠なく否認したが、そのうえで今回初めて、入会権をめぐって法社会学の定説を真っ向から否定する驚くべき暴論を展開しはじめた。
 すなわち「民法は、従前存在していた入会慣習を権利として認めたのであり、新たな入会権の発生を認めていない」「入会権は徳川封建体制からの遺制にすぎず、民法施行後の集団によって入会権が取得されることは、入会権の解体の歴史に照らして、法社会学的な考え方からも認めえないものと考える」などと強弁したのだ。
 だが、これはかつて入会権を否定・解体しようとする立場からつくられた主張であり、学説によって否定されつくしている。入会権は1896年(明治29年)の民法制定後も、村落集団が集団として土地を取得し総有的に支配する場合、新たに発生する。これを認める判例もある。近くは、横堀墓地の所有権を争った横堀墓地裁判で、1903年(明治36年)入植後に造った墓地の入会権が判決によって認められた。
 さらに公団は、入会地は「山野を共同して使用収益し生活上欠くことのできない財物を得る」ことにあるから「神社は入会権になじまない」として、神社の入会権を否定している。しかし、入会地の利用形態には制限がなく、入会者の意思によってその内容を決めることが学説によって認められている。

 論点をずらす

 以上のうえに公団側は、入会権を否認するために論点ずらしの稚拙な論を展開した。「東峰部落は財産権の主体たりえない」「所有関係が第三者にわかるように公示すべきだった」というものだ。
 神社敷地が東峰部落のものであるという場合、それは東峰神社の氏子集団を意味する。氏子集団構成員は当然にも権利の主体であり、何の問題もない。公示といっても、入会権は登記なくして第三者に対抗できるし、神社はだれが見ても神社であることから、社会的に見て神社の存在とその権利関係は明々白々である。
 公団側の主張は、いずれも原告・弁護団の準備書面への防衛的な対抗でしかなく、積極的論点がつくられない中でひねりだした粗雑な論理に終始している。
 だが、ここに東峰神社裁判の核心が凝縮している。地域共同体の守護神である産土(うぶすな)神社の敷地(境内地)の所有関係は、登記名義がいかなるものであるとしても、その部落、氏子集団の総有関係にある。空港公団が敷地を公団のものと主張するのは間違った主張であり、神社林の伐採は部落の権利を侵害する完全な違法行為であった。
 航空機の進入表面を突き出して飛行の妨げになるとして伐採された神社林は、直ちに原状回復されなければならない。その勝利は暫定滑走路の使用不可能(閉鎖)と平行滑走路の最後的な破綻(はたん)を意味する。
 公判終了後の弁護団主催の総括会議には、東峰部落の萩原進氏と弁護団から大口昭彦、鶴見俊男両弁護人が参加した。両弁護人は「学説的に否定されつくしている暴論」として公団側論点の一つひとつを批判した。群馬実行委の青柳晃玄氏(僧侶)は「大変興味深い裁判。入会権は宗教界においてとても身近な問題であり、この裁判にはぜひ勝ってほしい」と話した。
 原告・東峰部落は全国の支援者に東峰裁判支援のカンパを呼びかけている。全力でカンパを寄せよう。
 次回公判期日は6月30日(月)午前10時30分、千葉地裁501号法廷。傍聴闘争に決起しよう。
(注)
総有 多数の者が同一の物を共同で所有する場合の一つの形態。総有では、その物の管理・処分などの権限は、多数の者で形成する団体自体に属し、各団体員はその物の使用・収益する権限にとどまる。民法で定められている共有と比べると、各構成員には持分(もちぶん)がなく、また分割請求権もない。入会権はこれと同じ正確をもつ。

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週刊『前進』(2104号3面5)

対角線 “新しい戦前の始まり”

 有事3法案の衆院通過に加担した民主党に対する怒りが猛然と噴出している。小泉・菅の密室談合から衆院通過までわずか40時間という超スピードだ。ここに事の本質が現れている。政府と民主党の目的が「修正」ではなく「成立」にあったということだ。
 かつてアジアを侵略し苦しめ、その謝罪も補償もまったくしてこなかった日本が、憲法を踏みにじって再び戦争をする、武力行使をする法律を持つことに、民主党は公然と協力したのだ。
 これまで「護憲」を掲げてきた横路孝弘副代表ら旧社会党グループもまったく同罪である。ひとりの「造反」もなかったことで「9割の賛成」になったのだ。
 横路は「若い仲間には賛成するよう声を掛ける」として自派の議員を説得した。そして「党内外で有事法制反対の声は広がっていない。ここで反対したら、党内での発言力を失ってしまう」との考えが大勢を占めたという(共同通信)。
 決定的な選択を迫られた時に横路らは、民主党にしがみつくことで戦争法案に賛成する道を選んだということだ。
 生方幸夫衆院議員は、自分のホームページで告白している。
 「今日は5・15です。(1932年の5・15事件のように)2003年の5・15も、後から考えればあれが日本の戦前の始まりだったというようなことになりはしないかと、急に朝考えました。そんな重要な法案に賛成していいのだろうか……ききっと反対して、離党しようと考えました。……(しかし)仲間の議員に『辞めるのはいつでもできる。苦しいだろうが、ここはふんばって、これから出てくる国民保護法案や基本法の部分でいかに、有事法の危険な部分を削除できるか努力をするのが私たちの義務である』と説得され、思いとどまりました」
 何が「ふんばって」だ。何が「思いとどまり」だ。侵略戦争法案への自覚的協力ではないか。実に罪は重い。
 (未)

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週刊『前進』(2104号4面1)

北朝鮮侵略戦争法案を絶対阻止せよ 日米戦争会談を弾劾する
 北朝鮮への「強硬措置」と自衛隊イラク派兵を合意

 5月23日、日帝・小泉は米帝ブッシュと首脳会談を行い、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への侵略戦争とイラク軍事占領・植民地支配で戦争政策を強化する重大な確認を行った。米日帝は北朝鮮侵略戦争へ一層の踏み込みを行ったのである。この攻撃を怒りに燃えて弾劾し、有事3法案成立阻止の参院決戦を全力をあげて闘い抜こう。

 小泉が北朝鮮に「圧力」路線

 日米首脳会談の超反動性は、第一に、北朝鮮への侵略戦争に向けて大きく踏み込んだことである。
 会談の中でブッシュは「北朝鮮は自由になるべきだ。韓国(南朝鮮)との違いは明白であり、それは自由と圧政の違いだ」と述べて、北朝鮮の政権を転覆することを公然と打ち出した。「イラク解放」を掲げてイラク侵略戦争を行い、フセイン政権を転覆して軍事占領と石油略奪、中東支配再編をはかっているのと同様に、北朝鮮の金正日政権転覆に向けて日米が北朝鮮に対して「より強硬な措置」をとることを確認したのである。
 ここで言う「より強硬な措置」とは、明らかに日米による「経済制裁」と軍事力発動を指している。米帝ブッシュは「すべての選択肢をテーブルの上に置く」とも発言しており、「より強硬な措置」は武力行使に踏み切る意図をはっきりと表明しているのだ。
 「経済制裁」は、実際には戦争そのものと言ってよい政策である。米帝のイラクに対する経済制裁で150万人ものイラク人民が犠牲になった。その上で米帝は侵略戦争を強行したのだ。このように、「経済制裁」は、侵略戦争の前段としての政策なのである。しかもこの「経済制裁」を国連とは関係なく、日米両国で勝手に強行するのだ。
 日米首脳会談で日帝・小泉は、「対話と圧力」の路線を鮮明にさせた。これまで日帝は、ペテン的に「平和的解決」「対話重視」を掲げながら、実際には「不審船」撃沈や日本人拉致問題への対応に見られるように、強硬に戦争政策を進めてきた。これをさらに一歩踏み込んで「圧力」政策と称する戦争重圧政策に突き進むことを宣言したのだ。拉致問題について、ブッシュが「米国は日本を完全に支持する」と表明したことは、こうした戦争重圧を強める政策の一環である。
 日帝は、すでに外国為替及び外国貿易法の「解釈を変える」として、日米合意があれば北朝鮮への日本からの送金停止や貿易停止を行うことができると打ち出した。日本国内にいる在日朝鮮人が北朝鮮の親族などに送金することを一方的に阻止し、また貿易を禁止して国家を転覆しようということである。これは米帝が第2次世界大戦の過程で日帝に対してとったのと同じ経済封鎖そのものである。
 そしてさらに、日米首脳会談で「より強硬な措置」で合意したことは、14日の米韓首脳会談で発表された共同声明の「追加的な措置」からよりエスカレートした内容となっている。これで韓国政府に圧力をかけ、最終的には米日帝の意志で戦争突入を強行することを狙っているのだ。
 こうした点で、日帝の有事3法の強行は、日帝の北朝鮮侵略戦争参戦への決定的なハードルを越えること、日米帝がいつでも北朝鮮侵略戦争に突入できる状態になることを意味している。なんとしても有事3法成立を阻止しなければならない。
 米帝ブッシュは、北朝鮮への戦争政策と絡んで、「中国が責任をとるような状況になったことは大きな意味がある」と発言した。これは、米帝がこの問題で中国に圧力を加え屈服させ、中国に米日帝の北朝鮮侵略戦争を容認させる意図を明確にさせたものであり、重大な事態である。米帝は、4月24日の米朝中協議に中国を引き出したが、米帝の北朝鮮侵略戦争に中国がいかなる態度をとるのかとぎりぎりと締め上げ、決定的に追いつめていこうとしているのである。
 日米首脳会談ではまた、北朝鮮への侵略戦争策動との関係で「ミサイル問題での協力を強化し、加速する」ことを合意した。日帝がMD(ミサイル防衛)の共同技術研究を行ってきたことをさらに進めて、MDの開発・配備への日帝の同意を取り付けたのである。それは同時に、日帝に対して地対空ミサイル・パトリオットPAC3やイージス艦発射の艦対空ミサイルSM3の購入を約束させたことを意味している。日帝はこれによって一層の軍事力強化、何よりもミサイル技術の飛躍的向上を狙っているのだ。

 イラク新法も米帝に“公約”

 日米首脳会談では第二にイラク軍事占領・植民地支配への日帝の参戦が重大な問題となった。
 ブッシュは、小泉をイラク参戦国として自分の牧場に招くという異例の扱いをした。そしてイラク占領への「ブーツ・オン・ザ・グランド(地上部隊)の貢献」を要求した。ブッシュは、「イラク復興では『目に見える協力』が役立つ」と、協力がなければ分け前もないことを臭わせながら、自衛隊の派兵を要求した。
 これに対して小泉は、「航空輸送を行うため、自衛隊のC130輸送機を派遣する考えだ」とした上で、「日本の国力にふさわしい貢献をしたい」と地上軍をも派兵する意向を表明した。すでに小泉は帰国後陸上自衛隊派兵に向かって「イラク復興支援法」の検討を進めており、有事3法成立後国会に提出しようとしている。日帝が「復興支援」と称してイラク軍事占領・植民地支配に自衛隊を派兵し、侵略軍として乗り込もうとしているのだ。絶対に許してはならない。
 イラクをめぐっては国連安保理が5月22日に経済制裁解除を決定した。国連が米英帝のイラク軍事占領を容認し、石油強奪を容認することを決定したのだ。米帝は27日に経済制裁解除の措置をとり、他国にも制裁解除措置をとるように要求した。米帝はイラクの石油を輸出できるようにし、イラクの石油利権を独占支配しようとしているのだ。
 イラクへの経済制裁は、150万人の人びとの命を奪った。その大半が子どもである。この歴史上かつてなかった反人民的な経済制裁を12年間も続けた上で、これを解除するという決定が、米帝がイラクの石油を強奪するために行われたのだ。実に盗人猛々しいやり方である。

 イラク・朝鮮人民と連帯を

 だが、イラクの人民はけっして米帝の軍事占領・植民地支配を認めたわけではない。人民の抵抗と反撃が続いている。25日から27日までの3日間で5件のゲリラ戦闘が闘われ、米兵6人が死亡した。イラク中部ファルージャでは27日早朝、米軍車両が発砲を受けて銃撃戦となり、米中央軍によると米兵2人が死亡、9人が負傷した。バグダッドでも26日夕、走行中の米軍車両が爆破され、兵士1人が死亡した。バグダッドの北西約190`の地点では26日朝、米第3機甲騎兵連隊の8台の車列が、ロケット砲や機関銃を使った待ち伏せ攻撃を受け、同部隊の兵士1人が死亡、1人が負傷した。
 イラク人民は米英占領軍と激しく闘っており、カイライ政権デッチあげの策動と激しく闘い抜いている。米帝がカイライに据えようとしたチャラビなる人物はヨルダンの裁判で有罪を受けていることもあり、イラク人民は誰も受け入れようとしていない。そうした中でフセイン政権と闘ってきたシーア派が主導権をとることをおそれて、米帝はイランに対し、「核問題」やアルカイーダとの関係をデッチあげるなどの戦争重圧を強めている。
 こうしたイラクに自衛隊が乗り込むことは、イラク人民の民族解放闘争を圧殺し、イラク人民を虐殺する任務を自衛隊が先頭で担うということなのだ。日帝が戦後史を大転換させ、侵略帝国主義として戦争に突入するということなのである。絶対許すな。
 日米首脳会談は第三に、6月1日から3日にかけて開かれるエビアンサミットに向けた日米の意志一致をはかるものとして行われた。米帝は、イラク侵略戦争で仏独ロとの争闘戦が激化したことで、サミットでもこの争闘戦を有利に貫くために、イラク侵略戦争を真っ先に支持し、燃料補給などで参戦した日帝の取り込みをはかったのだ。
 イラク侵略戦争で帝国主義は2つの陣営に分裂し、決定的な対立に突入した。エビアンサミットは、その修復どころか、より熾烈(しれつ)な争闘戦の場となる。日米首脳会談でも、経済問題では「ドル安容認」の米帝と「円安」誘導を意図する日帝が対立したままで、協調も演出できなかった。いま始まっているのはまさに帝国主義の基本矛盾が爆発し、二大陣営に分裂し、激突する第3次世界大戦への道にほかならない。
 世界の人民を大虐殺し、侵略と戦争によってしか生きられない帝国主義を今こそ打倒しよう。日帝の有事3法案を絶対阻止しよう。闘う朝鮮人民、在日朝鮮人民と連帯し、米日帝の北朝鮮侵略戦争を内乱に転化しよう。
 (秋原義明)

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週刊『前進』(2104号4面2)

5・23東京 有事立法阻止へ労働者立つ 20労組呼びかけ3万人 絶対廃案へ執念みなぎる

 5月23日、陸・海・空・港湾労組20団体などが呼びかけた「STOP!有事法制5・23大集会」が東京・明治公園で開かれた。緊迫した情勢下、危機感を募らせ、3万人を超える大結集となった。
 オープニングの歌声が流れる中、労働者が引きも切らずに駆けつける。黄色のゼッケンで登場した動労千葉の労働者、連合や全労連傘下の自治体労働者や教育労働者、国鉄労働者、民間労働者など色とりどりの組合旗や横断幕、のぼりが林立する。国会前で座り込みを続けている百万人署名運動は、関東各地から総勢1千人が集まった。
 航空安全推進連絡会議副議長の中川香さんの司会で集会は始まった。
 主催者を代表して、航空労組連絡会の内田妙子議長が開会のあいさつ。「与党に加担して国民、労働者を裏切って合意した野党第一党にじゅうりんされた思いです」「かつてアジア諸国を侵略し、多くの犠牲を生んだ戦争の過ちに対し、二度と戦争をしないと誓ったのではないか」と怒りに燃えて訴え、「歴史の重大な岐路に立っている今、次の世代に胸を張って残せる運動を力強く全国で展開したい。あきらめることなく、必ず廃案に追い込みましょう」。熱い訴えに、なんとしても廃案にするんだという思いがひとつになった。
 続いて社会民主党、日本共産党の国会議員が発言した。平和をつくりだす宗教者ネットの木津博充さんのカンパアピールに続き、決意表明では、日弁連の有事法制問題対策本部の藤原真由美事務局次長、日本青年団協議会の八頭司幸恵常任理事、平和を実現するキリスト者ネットの大倉一美神父が次々に有事法制を弾劾した。さらに全建総連、NGO非戦ネット、中学生、そして、同時刻に福岡で開かれている「5・23有事法制STOP集会」から航空労働者の赤島直美さんが発言した。
 建設労働者を代表して決意を語った千葉一明さんは、「家族団らんの場である住宅を造ることに誇りをもって働いている。破壊と殺りくをもたらす戦争などに協力したくはない」と力強く語り、中学2年生の菱山南帆子さんは、「中学生だからと政治から遠ざけ、行動を抑えつけないで。世界の子どもが手をつないで声をあげれば、この世界を変えることができると思います」ときっぱり。大きな拍手が寄せられた。
 司会の中川さんが「私たちの運動はまだまだ終われません。次回は6月10日夕方6時半から、日比谷野外音楽堂からあふれるように集まりましょう」。
 最後に「NOユージ、VIVA友情実行委員」の星野ゆかさんが高らかに集会宣言を読み上げた。
 国会請願、宮下公園、新宿の3コースに分かれて、夜の都心へデモが出発した。20労組が先頭に立った国会コースでは、参院、衆院の議面前で「われわれは廃案まで闘うぞ!」とシュプレヒコールをあげて請願行動を闘いぬいた。

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週刊『前進』(2104号4面3)

5・20大阪 交通14労組を先頭に 廃案へ7千人結集

 5月20日、大阪の扇町公園で、「有事関連法案を廃案に! 5・20大阪集会」が、有事立法を廃案へという一点で、労働組合がナショナルセンターの枠を超えて結集して行われました。
 この日の集会とデモは、関西における「陸海空港湾交通関係労働組合14団体」の呼びかけで、昨年に続いて行われたものです。イラク侵略戦争以降、関西で最大の盛り上がりを見せ、約7千人が参加しました。
 私は「とめよう戦争への道! 百万人署名運動・関西連絡会」のデモ隊と一緒に行動しました。学生の太鼓隊を先頭に、元気よくデモを行い、労働者市民の圧倒的な注目をあびました。
 (投稿/A・T)

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週刊『前進』(2104号4面4)

広島・岡山・松山・松江など 中四国で一斉行動 “民主党の裏切り許せぬ”

 広島・中四国の各地では5月25日、百万人署名運動を中心に、有事立法の廃案を求めるさまざまな行動が一斉に取り組まれた。
 広島では、「とめよう戦争への道! 百万人署名運動」広島連絡会の呼びかける集会「ストップ有事法制 ヒロシマ行動」が、200人の参加により原爆ドーム前で行われた。
 津軽三味線が演奏される中、午後1時に集会は始まった。動労西日本の平岡誠副委員長の司会で、開会あいさつを反戦被爆者の会の下田禮子さんが行った。
 そして、航空労組連絡会副議長の村中哲也さんから報告が行われた。村中さんは、被爆地ヒロシマでの有事立法反対の取り組みの意義を確認した上で、「5月15日は生涯忘れられぬ日となった、国会にはもはや任せておけない。特に民主党の裏切りは許せない。戦争のもとで人権などありえない。廃案に向けて死力を尽くす。5・23に続いて、6・10の集会を予定している。たとえ法律として通るような事態となっても、われわれの闘いは終わることはない」と、労働組合の総力を結集して闘う決意を述べた。
 続いて、リレートークに移った。まず高校生2人がギターと歌で反戦をアピールした。そして、若者たちがそれぞれの立場から有事立法反対の決意を述べた。
 続いて国鉄労働者が5・27弾圧を許さず、有事法廃案へ闘う決意を述べた。空港労働者は「空は広いようだが、航路は決まっている。戦争になると民間機は制限され、高速道路なども滑走路に使われる。有事立法は廃案以外にはない」と、闘いの決意を述べた。さらに、元参議院議員の栗原君子さん、広島県内の百万人署名運動連絡会の代表が次々と発言し、米ANSWERなどのメッセージが紹介され、最後に集会アピールの採択が行われた。
 集会の後、市内に向かってのデモ行進に出発した。
 岡山でも、百万人署名運動を先頭に、労組、市民団体による実行委が、「有事法制NO」を掲げ250人で市内デモを行った。
 四国の松山では、百万人署名運動のもとに、90歳のお年寄りから高校生まで80余人が集い、「有事法を廃案へ」と元気にアピールし、松山市内の目抜き通りをデモした。
 さらに、山陰の松江市でも百万人署名運動を先頭にした実行委員会による100人のデモが行われ、他の各県でも、有事法廃案を呼びかける街頭署名行動などが一斉に取り組まれた。

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週刊『前進』(2104号4面5)

5・23 福岡で6百人デモ 「北朝鮮脅威」論と対決

 5月23日、福岡市警固公園で「有事法案は廃案にせよ5・23集会」が集会実行委員会の主催で開催された。航空連福岡地連など3団体が集会実行委員会を構成し、陸海空、港湾、自治体、マスコミなどの労働組合に呼びかけてこの日の集会がもたれた。
 会場には50団体、600人が集まり、有事立法の参院通過を阻止するために全力で行動することを確認した。主催者あいさつを行った福岡市職労委員長は東京での20労組の集会と連帯して集会を成功させようと提起した。
 決意表明に立った毎日新聞労組役員は「北朝鮮脅威」論と対決して有事立法成立を阻止しようと訴えた。集会の最後に発言した航空連福岡地連の議長は「有事立法を廃案に追い込むために労組の枠をこえて輪を広げていこう。有事立法との闘いはこれからがメインだ。陸海空港湾労働者は再び軍事物資を輸送するな。自治体労働者は赤紙を配るな。マスコミ労働者は戦争報道の輪転機を回すな」と訴えた。
 集会終了後、天神を一周するデモを行った。

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週刊『前進』(2104号4面6)

日誌'03 5月20日〜27日
 小泉とブッシュが戦争会談 個人情報保護法が参院成立

●ミサイル部品「万景峰号で運ぶ」 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核開発や麻薬密輸の問題をめぐり、米上院政府活動委員会の小委員会が公聴会を開いた。弾道ミサイル開発にかかわっていたという元技師は「部品の90%は日本から来た」「万景峰号で3カ月ごとに運ばれた」と証言。(20日)
●自衛隊機炎上で4人死亡 山口県岩国市の米海兵隊岩国航空基地で離着陸訓練をしていた海上自衛隊のU36A訓練支援機が滑走路をオーバーランして炎上。乗っていた乗員4人は全員が死亡した。(21日)
●国連安保理、イラク制裁を解除 国連安全保障理事会の公開協議で、米英とスペインが共同提案した対イラク経済制裁解除決議を採択した。フセイン政権後のイラク「復興」が米英などの占領下で進められることを承認するもの。仏独ロシアも賛成した。(22日)
●憲法9条「議論進めるべき」 福田官房長官が参院有事法制特別委員会で、集団的自衛権と憲法の関係について「9条を含め、憲法のあり方には議論がある。国会での議論を進めないといけない」「状況をみながら、内閣として判断する時期が来るのではないか」などと述べた。(22日)
●小泉「イラク新法も検討」 小泉首相が「イラク復興支援」で自衛隊を派遣するための新法について、「現行法で十分でなければ新法が必要かという点についても、十分検討していきたい」と述べた。(22日)
●米軍機が下地島に強行着陸 フィリピンで行われた米比合同演習を終えた在沖米海兵隊普天間飛行場所属のKC130空中給油機1機とCH46中型ヘリコプター6機が給油作業のため沖縄の宮古列島の伊良部町の下地島空港に強行着陸した。(22日)
●個人情報保護法が成立 政府提出の個人情報保護関連5法が、参院本会議で自民、公明、保守新の与党3党の賛成多数で可決、成立した。5月中にも公布され、個人情報保護法のうち基本法的な部分については直ちに施行され、残りは公布後2年以内に施行される。(23日)
●日米首脳会談 小泉首相が訪米し、ブッシュ米大統領と会談した。北朝鮮の核開発問題では「より強硬な措置」を講じるとして、経済制裁などを検討することで一致。ミサイル防衛(MD)での協力を加速することで合意した。小泉は、「イラク復興支援」のため、周辺諸国に自衛隊輸送機で物資輸送にあたる考えも表明した。小泉が横田基地の軍民共用化を提案し、ブッシュは検討を約束した。(23日)
●「MD2段構えで」 石破防衛庁長官が参院有事法制特別委員会でミサイル防衛(MD)について「PAC3(地対空誘導弾パトリオット)だけとか、イージス艦(発射型)だけということは考えていない」などと述べ、両システムを組み合わせて導入を目指す考えを表明した。(23日)
●G8外相会合文書に北朝鮮問題盛る 帝国主義8カ国(G8)の外相会議が開かれ、議論内容の要約文書に初めて北朝鮮の拉致問題が核問題とともに盛り込まれた。(23日)
●「治安維持の後方支援を」山崎幹事長 自民党の山崎幹事長が、イラクへの自衛隊派遣について「治安維持の後方支援のために派遣する法律は作り難く、国連の制裁解除決議を待っていた」などと述べた。(25日)
●武器使用基準「緩和が必要」と石破 石破防衛庁長官がイラクへの自衛隊派遣に関して「出すからには、任務が遂行できなければ意味がない。武器の使用権限という話になってくる」と述べ、武器使用基準の緩和が必要との考えを示した。(25日)
●政府調査団派遣を決定 政府は「イラク復興支援」に関連して、調査団をイラク周辺国へ派遣することを決めた。(26日)

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週刊『前進』(2104号5面1)

北朝鮮侵略戦争法案を絶対阻止せよ シミュレーション これが有事立法の正体だ
 米日帝が北朝鮮に先制攻撃
 片瀬 涼

 有事3法案に関連してブルジョア・マスコミでさまざまなシミュレーションが試みられている。だがそれは北朝鮮による日本への武力攻撃に対して武力攻撃事態法が適用されるというシナリオである。これらは米帝の先制攻撃から始まる北朝鮮侵略戦争に日帝が全面協力し参戦する有事3法案の正体を隠すものでしかない。有事3法案は、戦争放棄を定めた戦後憲法を踏み破って、ついに日帝が自衛隊の武力行使と国家総動員の戦争に突入するものだ。参院での採決を粉砕し、絶対に廃案に
追い込もう。陸海空港湾20労組などが呼びかける6・10日比谷野音集会に大結集しよう。

 ブッシュドクトリン発動 日本全土に数十万の米兵

 「悪の枢軸」論が事態の元凶

 米帝は、01年QDRとブッシュ・ドクトリンによる世界戦争計画の実行にのめり込み、北朝鮮を「悪の枢軸」と規定し、金正日政権の転覆を狙っている。ブッシュ政権は現在、イラク侵略戦争を踏まえ対北朝鮮の軍事作戦計画を策定中だ。ラムズフェルド国防長官は「北朝鮮への先制攻撃は大統領が決める」「現在、北朝鮮に対する作戦計画を策定中」と述べている。
 この作戦計画はコードナンバーで「5027−03」と呼ばれている。5027が最初に策定されたのは、クリントン政権による北朝鮮侵略戦争が発動寸前にまでいった94年だ。その後2年ごとに見直され次は04年の予定だったが、1年繰り上げて03年版が策定されている。戦争発動の現実性を示している。
 これまでの5027のシナリオは、38度線の軍事境界線を越えてきた北朝鮮軍をくい止めて反撃し、逆にピョンヤンを攻略するという内容だった。ところが、03年版はこれを大転換し、一方的な先制攻撃で金正日政権を転覆するというシナリオとなる。
 5027−03はこれまでの作戦計画とはまったく性格が違う。ブッシュはイラク侵略戦争に際して「イラクの国民に自由と民主主義をもたらすために戦争を行う」「脅威の可能性が形成される前に攻撃する」と主張した。これらの考えに基づく北朝鮮侵略戦争計画が5027−03なのだ。つまり、北朝鮮の「脅威の可能性(のさらに前)」を理由に、あるいは「北朝鮮人民を解放する」と称して一方的な先制攻撃で米韓軍(と自衛隊)が北朝鮮に襲いかかり、金正日政権を転覆する軍事作戦計画なのだ。
 5027−03の改定内容は、@核関連・ミサイル施設への先制攻撃、A北朝鮮軍を一挙に壊滅させる小型戦術核の使用、B韓国軍を前面に押し立てた全土制圧作戦――の3点である。
 恐るべきことに小型戦術核の使用が検討されている。北朝鮮軍は兵力の7割にあたる70万人とロケット砲などの火力の大半を非武装地帯(DMZ)から160`以内に配備している。一方、韓国の人口の約4割が集中するソウルはDMZから約40`の距離にある。94年の「戦争危機」のときには、ペリー元国防長官の「証言」によれば最初の90日間で米軍の死傷者が5万2千人、韓国軍の死傷者が49万人、市民も含めた大量の死傷者が出て、避難民は数百万人に達する見込みだったという。これには北朝鮮軍民は含まれていない。
 当時の金泳三大統領はクリントン政権の戦争準備に対し「韓国軍の中から一人たりとも動かすことは許さない」と反対した。しかも当時の日帝は周辺事態法も有事法制もなく、米軍が日帝の全面的な戦争協力が得られないこともあり、クリントン政権は北朝鮮侵略戦争を断念したという。
 しかし、ブッシュ・ドクトリンに基づいて策定中の5027−03は、オプション(選択)として、DMZ周辺の北朝鮮軍(地下施設や特殊部隊なども含め)を一挙に壊滅するために小型戦術核を使用することも検討しているのだ。ブッシュは、ソウルが「火の海」になることもヒロシマ・ナガサキが朝鮮半島で再現されることも辞さずに戦争を強行しようとしているのだ。

 5027作戦

米日帝が狙う北朝鮮侵略戦争の計画 ブッシュ政権が5027−03をベースに北朝鮮攻撃を決断した場合、どのように動いていくのか。
 ブッシュ政権は、金正日政権に核開発政策の放棄と通常兵力の大幅削減を要求。国連安保理では査察をめぐり茶番劇が行われるが、ブッシュ政権は「北朝鮮が査察を受け入れても『脅威』はなくならない」「独裁者を打倒して、北朝鮮人民を解放する」などと軍事攻撃を主張する。結論ありきだ。
 米軍は北朝鮮への全面攻撃のために、直ちに日本に増援戦力を集結させ始める。米軍は通常、東アジアに10万人の兵力を配備しているが、そのほとんどが日本と韓国に集中している。在韓米軍の主力は陸軍でソウルの前面に配備された在所張り付けの部隊だ。他方、在日米軍は、海軍・海兵隊・空軍いずれも広域の即応展開が可能で戦時には最前線に投入される部隊が主力である。沖縄の海兵隊は、第3海兵遠征軍という米海兵隊に3つしかない海兵遠征軍のひとつだ(海外駐留の海兵遠征軍は日本だけ)。海軍は、イラク侵略戦争に参加した空母キティホークを擁する第7艦隊が横須賀(神奈川県)を母港としている。
 在日米軍のもう一つの際立った大きな特徴は、世界最大の空軍嘉手納弾薬庫(沖縄)や秋月弾薬廠(広島県・呉周辺)、相模総合補給廠(神奈川県)、横須賀や佐世保(長崎県)の大規模弾薬庫や燃料貯蔵庫など、最大級の米軍弾薬庫や燃料貯蔵庫、補給設備が日本に存在することだ。また横須賀は唯一の空母の海外母港(整備・修理・補給などの能力を持つ)であり、ハワイ以西からインド洋までの間に空母の母港化が可能なのはグアム、横須賀、佐世保しかない。また横田基地(東京)、嘉手納基地は米空軍の出撃・中継のハブ基地として重要な機能を持つ。
 ここから分かることは、第一に、米帝の北朝鮮侵略戦争では、在日米軍が最前線に投入される部隊となるということだ。第二に、5027では、米軍は数十万人以上の兵力と約200隻の艦艇、千数百機の航空機という大戦力を投入するが、それは在日米軍の持つ兵站(へいたん)補給能力を「核」にして日帝の全面協力を取り付けながら、日本に集結させ、日本から出撃するということだ。
 したがってこの段階で米軍は日本に殺到する。空軍は、アラスカや米本土から増援の戦闘機部隊や大型輸送機などが嘉手納基地や横田基地に飛来する。海軍では、第7艦隊の増援や第3艦隊の艦艇も寄港する。弾薬や燃料、装備などを搭載した輸送艦が太平洋岸の主要港湾に到着する。ここで米軍がもっとも必要とするのは、日本の空港・港湾の使用権と輸送協力だ。
 前述のように在日米軍の弾薬庫や燃料貯蔵庫が横須賀や相模原、呉、佐世保にあるが、有事の際は、米軍はその周辺の輸送協力のほか、米本土と韓国との中継で、苫小牧・小樽・新潟・名古屋・大阪・神戸・水島(岡山)・松山・博多・那覇などの港湾と、新千歳・成田・小松(石川)・関西・福岡・宮崎・鹿児島・長崎・那覇などの民間空港を全面使用する権利を要求する。
 軍用機に加え、米国には民間予備航空部隊(CRAF)という制度があって常時300機近くの民間の大型旅客機・貨物機が登録され、有事には動員される。また日米防衛協力の新指針(新ガイドライン)では、日本による米軍の後方支援活動として補給や輸送が定められている。自衛隊だけでなく民間航空会社も動員されるのは確実だ。船舶も同様だ。

 周辺事態と「日本有事」 「予測事態」で「陣地構築」

 米軍の動きに関連して、新ガイドラインによる日米共通の作戦準備が始まる。
 新ガイドラインは、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動」と「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力」のあり方を具体的に定めたものだ。要するに日本有事(武力攻撃事態)と周辺事態における米帝と日帝の共同作戦を定めたものである。周辺事態に対しては「相互協力計画」という名の日米共同作戦計画が、日本有事(武力攻撃事態)については「共同作戦計画」という名の作戦計画が用意されている。
 ここで重要な点は、新ガイドラインでは、周辺事態と武力攻撃事態がリンクし、作戦計画は、政治レベルはともかく軍事レベルでは完全に一体のものとして作成されている。つまり、5027に連動する形で実施される一連の軍事作戦計画なのだ。有事法案の国会審議で、川口外相も「武力攻撃事態と周辺事態は併存しうる」と述べている。
 周辺事態において日帝は、@救援活動・避難民への対応、捜索・救難、非戦闘員の退避、経済制裁の実効性を確保するための活動A米軍に対する新たな施設・区域の提供、米軍への後方支援活動(補給・輸送・整備・衛生・警備・通信・その他)B警戒監視、機雷除去、海・空域調整−−を行うことに合意している。この合意に基づいて99年5月に周辺事態法と自衛隊法改正が成立し、物品役務相互提供協定(ACSA)が周辺事態にも適用されるようになった。00年11月には船舶検査活動(臨検)法が成立している。

 「経済制裁」は事実上の開戦

 新ガイドラインに基づく動きは、政治レベルに先行して自衛隊による情報収集や警戒活動など軍事レベルではどんどん動き始める。
 まず米日帝は経済制裁に突入する。国連安保理の制裁決議なしで実施に移すこともある。経済制裁とは財政、金融、通商貿易上の制裁措置だが、特に通商貿易上の制裁措置は、船舶や航空機による交易を実力でストップさせることを意味する。これを実施するために、米軍が北朝鮮沿岸の海上封鎖を始める。米帝は現在、北朝鮮の核開発計画に必要なミサイル部品の90%が日本から密輸されているとキャンペーンしている。
 経済制裁そのものが激しい軍事作戦であり、事実上の戦争の開始だ。北朝鮮の船舶を強制的に停船させ、積み荷などを検査する。海上自衛隊や海上保安庁も出動。米軍の護衛のためにイージス艦が展開、北朝鮮潜水艦などによる機雷敷設を阻止すると称してAWACSやP3C対潜哨戒機や掃海艇も出動する。さらに自衛隊自ら米軍とともに海上封鎖・臨検活動も開始する。ここから戦端が開かれる可能性も大きい。
 軍事的緊張が高まる中で日本政府は、「北朝鮮の反撃の可能性」を理由に、周辺事態の認定を含む「基本計画」と武力攻撃予測事態の認定を含む「事態対処基本方針」を閣議決定する。具体的には以下のプロセスとなる。
 武力攻撃事態法案では、武力攻撃(予測)事態の認定は、まず首相が安全保障会議に諮問し、安保会議の答申を受け、次に閣議にかけて議決する。この「戦争を開始し、戦争を遂行する」権限を首相に与える装置として安保会議は重大な位置を持つ。
 安保会議は、今回の改正案で、会議メンバーに総務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣を加えた。これは地方自治体の動員や運輸統制の必要からだ。同時に改正案は、武力攻撃事態の認定などの軍事的方針の決定には、首相、外相、国土交通相、内閣官房長官、国家公安委員長、防衛庁長官の6人にメンバーを絞っている。自衛隊の制服組トップの統合幕僚会議議長は求められれば陪席できる。
 さらに安保会議の補佐機関として事態対処専門委員会が新設される。委員長を内閣官房長官とし、内閣官房や関係省庁の局長クラスを任命する。実はこのメンバーは、新ガイドラインによる有事の際の調整メカニズムの「日米合同委員会」「日米政策委員会」の日本側メンバーでもある。また対策本部の実務上の運営にあたる本部職員メンバーにもなる。
 日本政府は、周辺事態について@日本周辺で武力紛争が発生、A武力紛争が差し迫っている、B政治体制の混乱で大量の難民が流入する可能性、C経済制裁、D武力紛争は停止したが秩序の維持・回復が達成されていない、E内乱や内戦が発生し、それが国際的に拡大――の6類型を定義している。また武力攻撃予測事態については「(ある国が日本攻撃のため)予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられることや、我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」との見解だ。
 これらは、かなり広い範囲を含み、あいまいな解釈が可能な概念である。結局、日本政府の恣意的な判断で「周辺事態」「武力攻撃予測事態」を認定するのだ。米帝の侵略戦争発動のプロセスの中で、新ガイドラインが動き始め、その中で日帝の政治的判断(参戦決断)で「武力攻撃予測事態」の認定がなされ、自衛隊が陣地構築などで動き出すのだ。

 国家総動員の戦争体制 首相独裁で戦争動員強制

 安保会議の答申を経て、閣議で対処基本方針が閣議決定される。対処基本方針とは@武力攻撃(予測)事態の認定、A武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、B対処措置に関する重要事項――の3点だ。対処基本方針は閣議決定と同時に法的効力を持つ。国会には事後承認を求めればよい。この段階で自衛隊、国のすべての機関、地方自治体、指定公共機関など日帝の国家総動員的な戦争準備が始まる。
 まず自衛隊はどう動くのか。自衛隊には防衛出動待機命令が出され、予備自衛官・即応予備自衛官が招集される。さらに自衛隊法改正案の77条の2によって自衛隊は、展開予定地域を指定して防御施設の構築が可能だ。この指定地域内で自衛隊は武器使用ができるようになり、土地の使用、立木などの処分も可能となる。日本海沿岸を中心に、対ゲリラ、対弾道ミサイルの施設がつくられる。対弾道ミサイルでパトリオットPAC2を展開(米軍の最新のパトリオットPAC3部隊の展開もありうる)したり、対ゲリラの監視施設がつくられる。また陣地構築とは陣地編成と一体であり、自衛隊が臨戦態勢をとることを意味する。
 集結する米軍の兵士や軍需物資の臨時施設(兵舎や野戦病院、倉庫など)、民間空港や港湾、米軍基地の防衛のために武装した自衛隊が出動し、対空、対ゲリラなどの防御施設を設置することも考えられる。自衛隊法改正案で、自衛隊による土地家屋の使用、立木などの移転・処分などが可能になる。その際の立入検査の拒否には罰則もある。
 なぜ防御を固めるのか。それは北朝鮮を攻撃するために、反撃の可能性があるからだ。そもそも攻撃に際して自国の防衛を固めるのは戦争の常道だ。防衛態勢の完了は、そのままイコール攻撃の開始を意味する。
 自衛隊法改正案では道路法、建築基準法、医療法、森林法、都市公園法など20の法律が適用除外される。これは防衛出動のときだけでなく77条の2の陣地構築のための出動も同権・同列に適用除外される。これによってすべての道路、森林、河川、海岸、公園などにも自衛隊が縦横無尽に展開し、野戦病院の設置や都市部のバリケードなども可能になるのだ。
 これに加えて周辺事態法の基本計画に基づく自衛隊の活動として米軍に対する後方支援(兵站)活動などが行われる。
 後方支援活動は、@米軍への給水・給油・食事の提供など(補給)A人員・物品の輸送など(輸送)B修理・整備、整備用機器等の提供など(修理・整備)、C医療・衛生機具の提供など(医療)D通信設備の利用・通信機器の提供など(通信)E航空機の離発着・船舶の出入港支援など(空港・港湾業務)F廃棄物の収集や処理・給電など(基地業務)――などを自衛隊を核に関係行政機関、地方自治体、指定公共機関などを動員して行う。
 日本政府は、後方支援活動の範囲は戦闘地域外と説明しているので、自衛隊が韓国内の米軍まで弾薬・燃料などの輸送したり、朝鮮半島の南部へ医療部隊(民間が含まれる可能性が非常に高い)を派遣したり、朝鮮半島沿岸部の機雷掃海に自衛隊が出動することも考えられる。ソウルなどで「日本人救出」作戦を行うケースもある。
 また、米軍に対しては、民間空港・港湾の使用、物資の積み降ろしや保管施設の確保・提供、自衛隊基地の使用、訓練・演習区域の提供、米軍施設内における事務所・宿泊所の新設などが定められている。つまり日本に殺到する数十万人の米軍が日本各地の民間空港や港湾を独占的に使用し、全国で実戦さながらの訓練を行い、兵舎や野戦病院をどんどん設置するのだ。

 協力は「責務」

 対処措置を実施するために首相を本部長とする「対策本部」が設置される。対策本部長である首相には「総合調整権」が与えられる。対策本部長の総合調整に基づいて、国の各機関、地方自治体、指定公共機関が対処措置を実施する。武力攻撃事態法案は、地方自治体と指定公共機関に対する首相の強力な権限を規定している。首相独裁で戦争動員を強制するのだ。
 対策本部長(首相)の総合調整に基づく措置が実施されないときは、地方自治体の長などに対して当該措置を実施するように「指示」できる(指示権)。これでもだめなときは、当該対処措置を首相自らが直接実施したり、所管の大臣を指揮して実施させたりすることもできる(直接執行)。
 地方自治体の動員は具体的にどうなるか。例をあげると、@地方自治体が管理する空港・港湾の使用問題、A米軍や自衛隊に対する給水やゴミ処理、B自衛隊による土地の使用、物資の収用、病院などの接収などに関する公用令書、C医療・土木建築・輸送業者への業務従事命令の公用令書、C米軍・自衛隊最優先の交通規制(避難)――など枚挙にいとまがない。
 米軍や自衛隊への物資補給も膨大な量になる。50年朝鮮戦争の時には、米陸軍への補給は、車両73%、弾薬51%、食料74%、衣類71%、医療器材75%など補給の約76%が日本で調達された。地方自治体の労働者を始め、民間も含め、膨大な労働者が動員されるのだ。
 指定公共機関は、法案で明示されているのは日本銀行、日本赤十字社、NHKだけで、それ以外は「政令で定める」となっている。日本道路公団、JR各社、日本通運、、新東京国際空港公団、NTT、東京電力、東京ガス、日本航空、民放などが無制限に指定される。武力攻撃事態法案4〜6条は、国と地方自治体、指定公共機関の戦争協力は「責務」と規定している。
 特に輸送や医療関係が危険な戦時業務に動員される。医療・建設・輸送関係の労働者は自衛隊法103条で強制力を持つ業務従事命令が規定されている。
 湾岸戦争のときには、サウジアラビアに30万人以上の兵員や50万d以上の物資が6000機以上の航空機を使って空輸された。後方支援を担ったドイツは、民間チャーター機を435機投入した。
 海運も同じように、湾岸戦争で、サウジアラビアのアルダンマン港へ、多国籍軍のために1000万dの軍需物資が集められ、軍事用の輸送船では数が足りず200隻の民間の船舶が動員されている。
 米本土−日本−韓国を結ぶ輸送に米韓だけでなく日本の各航空会社や海運会社が動員されるのは確実だ。パイロット、客室乗務員、整備士などあらゆる航空労働者や船員が戦争動員され、命に関わる危険に直面するのだ。

 「自衛」で侵略

 以上、新ガイドラインに基づいて、米軍は北朝鮮侵略戦争の準備を日本を舞台に行う。戦争準備の完了と政治的タイミングの中で米軍が先制攻撃で北朝鮮侵略戦争を始める。
 一番最初に検討したように、ブッシュの主張する米帝の自衛権は、脅威の可能性が形成される前に戦争に訴えるというものである。また緒戦での小型戦術核の使用の可能性もある。米軍の北朝鮮攻撃と一体で自衛隊も参戦するのだ。
 ここで重大なのは、日帝の参戦問題だ。もちろん日帝が米帝の北朝鮮侵略戦争に全面協力することは確実だが、それにとどまらない。自衛隊が直接的な意味での北朝鮮攻撃を追求していることを指摘したい。
 それは有事3法案をめぐる国会論議にも噴出している。小泉首相は「座して死を待つわけにはいかない」と述べ、日本攻撃の意思表示と準備行為があると日帝が判断すれば先制攻撃できると主張している。「相手国の基地攻撃は法理上可能」(川口外相)、「他国領土に出動可能」(石破防衛庁長官)など、自衛権の行使で反撃は可能→自衛のためには攻撃されてからでは遅い→先制攻撃――と一挙にエスカレートしている。「自衛権の行使」と称して、イラク侵略戦争の英軍のように自衛隊が戦後憲法を真っ向から踏み破り、北朝鮮への軍事攻撃や朝鮮半島の軍事的制圧に参戦−全面的な武力行使を狙っているのだ。

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週刊『前進』(2104号5面2)

“有事法撤回せよ” 韓国で怒りの声

 5月14日、日本の国会議員全員に韓国の国会議員30人から「有事法制3法案に反対」の要請文が届けられた。「有事法制が過去のアジア諸国家と国民に大きな痛みを与えた不幸な戦争の歴史を再現しかねない」と「深刻な憂慮」を表明し、「一瞬の誤った判断で世界の人びとを戦争の苦痛に追いやった不幸な歴史をもう一度考えてください」と記されていた。この声を踏みにじって15日、有事3法案の衆院通過が強行された。
 民主労総、全農、全貧連など18団体が結集する民族和解自主統一協議会は15日、「日本軍国主義復活糾弾――日本はアメリカの対アジア侵略戦争参戦のための有事法制定を直ちに撤回せよ!」との怒りの声明を発表した。
 「アメリカの無謀な対北先制攻撃策動を受け入れることができない私たちは、アメリカの軍事的冒険主義をあおり、そこに積極的に加担する有事3法の制定を、わが民族と北東アジア民衆に対する正面からの挑戦行為であると見なして、直ちにその撤回を日本に要求する」と弾劾した。
 民衆連帯が主催し、光州の全羅南道庁前で開かれた「5・18民衆抗争国民大会」には2万人が集まった。「新自由主義粉砕、戦争脅威阻止、民衆生存権争取、自主的平和統一」が掲げられ、盧武鉉(ノムヒョン)大統領の親米屈辱外交に怒りが噴出した。
 民主労総の段炳浩(タンビョンホ)委員長が、「民主労総は帝国主義と対決して労働者、農民の生存権を守る闘いの先頭に立つ」と宣言した。闘う朝鮮人民、在日朝鮮人民と連帯し、有事立法を阻止し、米日帝の北朝鮮侵略戦争を絶対阻止しよう!

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週刊『前進』(2104号6面1)

日本共産党は闘う勢力なのか 有事立法=北朝鮮侵略戦争の攻撃に屈服して闘いを抑制
 決戦前に成立前提で武装解除
 高田 隆志

 有事3法案粉砕闘争は、参院段階の重大な決戦となっている。北朝鮮侵略戦争法案としての有事立法であることを徹底的にはっきりさせ、これを全力で粉砕しなければならない。ところが、日本共産党中央(不破・志位指導部)は、米帝のイラク侵略戦争とそれに続く北朝鮮侵略戦争の切迫に対し、「大量破壊兵器査察を」とか「北朝鮮への説得を」などと言って、帝国主義に真っ向から対決する闘いに敵対している。有事立法粉砕闘争を全人民的に大爆発させるためには、この日共の帝国主義への屈服と闘う必要がある。

 「国連憲章を守れ」では帝国主義の擁護にしかならない

 スターリン主義・日本共産党は、昨年来のイラク侵略戦争の切迫に対して、この戦争が帝国主義の侵略戦争であることを明確にし、侵略戦争絶対反対で反戦闘争を闘うのではなく、もっぱら「イラクに対する(大量破壊兵器の)国連査察を」と言い続け、国連査察が成果をあげることが平和解決の道であるかのように宣伝してきた。
 だが、「イラクの大量破壊兵器が平和を脅かしている」というのは、イラク侵略戦争を強行しようとする米帝の口実にすぎなかった。したがって、イラクの側に問題があるかのような宣伝をした日共は、侵略戦争の口実づくりに加担する役割を果たしたのである。
 しかも、米帝のイラク攻撃が強行され、こうした「大量破壊兵器」をめぐるペテンが満天下に明らかになった今になっても、日共は「国連査察団のすみやかな復帰によって、真実を明らかにすること」を要求として掲げている。茶番をあばきだして反帝国主義の闘いを呼びかけるべき時に、帝国主義による茶番劇の再演、継続を求めるという犯罪的な役割を果たしているのだ。
 今度のイラク攻撃過程は米帝(米英日)の植民地主義、新帝国主義むきだしの侵略戦争の強行に対して、国連に依拠してこれを阻むことなどできないことを示した。だが、日共はあくまでも「国連憲章」にすがり、起こった事態もそれに沿ってゆがめてしまう。
 志位は言う。「国連の存在感というものが今度の戦争ほど重く、国際政治の中で浮き彫りになった戦争はないと思うんですよ。すなわち、戦争が始まる前に国連の安保理を舞台にあれほど激しい外交のやりとりがやられて、安保理はともかく戦争を食い止めるために最大の力を発揮したと思います」(5月1日のCS放送朝日ニュースター「志位委員長語る」)
 国連の議論などまったく無視して、実際に侵略戦争が強行されたこと、そして米帝がイラクを制圧して植民地支配を開始すると、国連安保理もまたそれを追認したこと(5・22安保理決議)、こういう現実を弾劾するのではなく、「国連の力が発揮された」と現実とはまったく逆の国連礼賛の結論に持っていってしまうのだ。その極めつけは次の一言である。
 「世界中のこれだけの人々が『国連憲章を守れ』と、何千万人もの人々が声を上げたというのははじめてなんですよ」(同)
 世界中を覆い尽くした人民の決起を「国連憲章を守れ」の運動だと括ってしまうとは、人民の闘いに対するなんという冒涜(ぼうとく)であろうか。
 全世界の人民は、米帝のイラク侵略戦争に反対し、「イラクの子どもたちを殺すな」「石油のための戦争反対」を掲げて闘ったのだ。「国連憲章を守れ」と闘ったのでは断じてない。そして、これだけの反対の闘いにもかかわらず、イラク侵略戦争を強行した米帝に対し、これこそ帝国主義の真の姿だ、戦争を止めるためにはこの帝国主義を打倒しなければならない、全世界の人民の団結と連帯闘争で帝国主義を打倒しよう、という認識と自覚を深めたのである。
 全世界労働者人民の一斉決起は、侵略と戦争の元凶である帝国主義と真っ向から対決し、それを全世界的に打ち倒す世界革命の現実性を示したのである。まさにマルクスが提唱し、レーニンとボルシェビキがロシア革命で一歩を踏み出したプロレタリア世界革命の事業が、長い回り道を経てついに現実のものとなる時代が到来したのである。
 ところが、この戦争が帝国主義の侵略戦争であり、帝国主義を打倒することによってのみ止めることができるという真理を絶対に認めない日本共産党は、国連の意義をがなりたて、運動をねじ曲げようとする。
 これは逆に言うと、“国連安保理が認めた戦争なら正義の戦争だ”と言って容認してしまうことにつながる。現に日共は1991年の湾岸戦争(イラク中東侵略戦争)の際には、国連決議にもとづく戦争だから侵略戦争ではない、と完全に擁護した。
 5月24日に行われた日共の第6回中央委員会総会で幹部会報告を行った志位は、「国際社会は米国の圧力に屈しなかった」「米国は深刻な外交的敗北のなかで、戦争に突入した」と述べ、米帝のイラク侵略戦争を弾劾するトーンを消し去ってしまっている。
 志位が「国際社会」と言う時、それは@「非同盟諸国の平和と理性の声」、A「サミット諸国のなかで米国の一国覇権主義に反対したフランス、ドイツ、カナダとロシア」、B「中国はイラク攻撃反対を言明し、国連憲章を守り抜くという原則をつらぬいた」ときてC「これらの政府レベルでの平和の流れを、支え、促進したのが、地球的規模で広がった空前の反戦・平和運動」だとしている。
 驚くべきことに人民の反戦運動は仏独などの帝国主義国を含む「政府レベルでの平和の流れを支え、促進する」ものに落とし込められている。
 「非同盟諸国」とは大半が新植民地主義体制を構成する諸国の独裁的政権だ。また、仏、独、ロなど帝国主義支配階級は自らの帝国主義的国益を守るためにイラク戦争に反対したにすぎない。中国スターリン主義も、イラク侵略戦争を阻止するなんの行動をもとらなかった。これらの政府は、5・22安保理で米帝のイラク占領支配に屈服し承認したのだ。
 人民の闘いは、このような帝国主義支配階級や、新植民地主義体制下の独裁的政権や、中国政府のためにあったのではない。まったく逆に、人民大虐殺の戦争をやめろ、そのような戦争によってしか生き延びられない帝国主義など打ち倒せ、という方向性をもって闘われているのである。
 問題の根本は、この戦争がどのような階級的本質をもっているかをはっきりさせることだ。この戦争は、米帝が強大な力をもっていて好き勝手に戦争をやっているというようなものではない。米帝(そしてヨーロッパ帝国主義も日本帝国主義も)が、今や帝国主義として経済的にも政治的にも完全に行き詰まっていること、29年世界恐慌をも上回る恐慌と大不況のプロセスに突入していること、世界経済の分裂化とブロック化を深めていること、この中で米帝の中東支配政策が大破綻(はたん)しているという現実がある。
 しかも、戦後の中東・パレスチナ・アラブ・イスラム諸国人民に対する抑圧、民族圧殺の攻撃に対する積もり積もった怒りが9・11反米ゲリラ戦争として爆発し、全世界ムスリム人民の決起を生み出し、それが戦争と大失業攻撃に対する全世界プロレタリアート人民の闘いと結びつこうとしている。
 こうした何重もの現実を転覆するために、米帝はブッシュ・ドクトリンをもって世界戦争計画を打ち出し、イラク侵略戦争を突破口に戦争を拡大しようとしているのである。世界最大の帝国主義国であり、基軸国である米帝が現状破壊の戦争に訴えるしか道がないところまで、現代帝国主義の危機は深まっている。
 このような中で国連憲章をたたえて、これが戦争を止める道であるかのように言うのは、とんでもない虚偽宣伝である。国連(安保理)は、帝国主義に牛耳られた世界支配の道具であり、労働者人民の利益とまったく相入れない。帝国主義の体制的危機の深まり、ブロック化と分裂の中で国連自体が機能しなくなっていることは、いよいよ帝国主義を打倒しなければならないことを示しているのであって、その逆ではない。
 日共の国連中心主義は帝国主義擁護の路線でしかないのである。

 米日帝が北朝鮮への攻撃を狙っていることに沈黙

 北朝鮮の問題についても、日共は完全に転倒した問題の立て方をしている。
 先のCS放送インタビューで、志位は、「北朝鮮が核兵器開発の道を進んでいるということは間違いがない」「北朝鮮が核兵器の問題をいわば脅しのカードに使って、もてあそんでいる」「これらは絶対に許しがたいことであって、北朝鮮に核兵器の開発計画を放棄させる必要があります」と繰り返し強調している。
 だが、北朝鮮の側に問題があり、原因があるかのようなこうした言辞は徹底的に間違っている。米日帝と北朝鮮の間には比較を絶する国力差は、軍事力差がある。米軍は東アジア10万人体制をもって軍事的重圧を加えている。しかも、96年日米安保再定義、97年新ガイドライン、99年周辺事態法成立などは、北朝鮮侵略戦争のためのものである。
 それに対して、米帝の戦争重圧下で北朝鮮の体制は危機を深める一方であり、人民は飢餓に苦しんでいる。この現実を逆さまに描く「北朝鮮脅威」論は、イラクの「大量破壊兵器」の問題と同様、北朝鮮に対する侵略戦争のためのデマゴギーである。日共の「北朝鮮に責任あり」の宣伝は、この排外主義キャンペーンの一翼を担うものだ。
 もちろん、北朝鮮・金正日体制の対応は核開発路線であり、核を外交手段に使うスターリン主義的・反人民的なものであり、弾劾されなければならない。しかし問題は、それを口実にしエジキにして、米日帝が北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、イラクに続き先制攻撃をもって攻撃し、人民を大虐殺し、政権を転覆しようとしていることにある。
 北朝鮮が反動的反人民的体制だからといって、その体制をどうするかは南北朝鮮人民自身の課題であって、米帝がそれを口実として攻め込むいわれはない。日共はそのことをあいまいにして、米日帝の対北朝鮮攻撃のしり馬に乗っているのである。
 志位は、「北朝鮮が核兵器開発を進めている論理そのものが、たいへん北朝鮮にとっても有害だし、周辺諸国にとっても、有害かつ危険なものだということを、道理をもって北朝鮮にしっかり説いていく必要がある」(前出CS放送インタビュー)と言う。
 これは、日本帝国主義の側に立って、日本政府と一緒に北朝鮮を「説得」するというものであり、現に対北朝鮮の侵略戦争を計画し準備している勢力と共同する立場なのである。それは次の言葉に示される。
 「私は、日本政府が、日朝平壌宣言という一つの到達点があるわけですから、そのうえにたって、いま知恵をつくし、汗をかいて、事態を打開するために力を発揮すべきときだと思うんです」(同)
 昨年9月17日の小泉訪朝と日朝首脳会談を全面的に賛美し、それに協力する約束をした志位が、その後の対北朝鮮排外主義キャンペーンの中で、あらためて小泉に協力することを宣言したのである。日帝に対して、「知恵をつくし、汗をかいて、事態を打開するために力を発揮せよ」と要求するとはなんということか。日共は“政府と共同の努力をする”という立場性の一致、緊密な協力関係を表明しているのである。
 いま、日帝は米帝の対北朝鮮侵略戦争に共同=競合していかに参戦するかということを追求している。そのためにこそ有事立法がある。日共は、こうした日帝・小泉にとことん協力するという裏切り的な姿勢を表明したのである。

 日本守る戦争ならいいのか

 こうして日本共産党の最大問題は、現に有事3法案が北朝鮮侵略戦争のための法律であることを絶対に言わず、その本質を覆い隠していることである。
 「有事三法案は、米国の要求にもとづく海外派兵国家づくりを新たな段階にエスカレートさせる、重大な内容をもっています。わが党が、国会論戦で明らかにしてきたように、それは『日本を守る備え』でなく『米軍とともに攻める備え』であります」(6中総の志位報告)
 いったい「海外」とはどこなのか、どこを「攻める備え」なのか。それを日共は徹底して言わない。また、「米国の介入戦争」とか「先制攻撃」とは言うが、けっして「侵略戦争」とは言わない。そして、日本は「米国の要求にもとづいて海外派兵する」としてしまい、日帝自身の意志で参戦するのだということを否定している。
 さらに決定的に重要なのは、「日本を守る備えではなく米軍とともに攻める備え」であるという言い方である。これは、「日本を守る戦争ならよい」、日本が攻められたら断固自衛権を行使するということを意味している。だが、「自衛のための戦争」論は、帝国主義者の自衛権主張と選ぶところがない。これまですべての帝国主義の戦争は「自衛」を掲げて行われてきたではないか。00年の第22回大会で「有事の自衛隊活用」論が採択されたが、自衛戦争賛成という点で日共は帝国主義と同一の土俵に立っているのである。
 有事立法をめぐるあらゆる動きが、米日帝の北朝鮮侵略戦争の方向を示している。米日帝による北朝鮮への先制攻撃が行われ、これに北朝鮮が反撃的に対応することをもって「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」を宣言し、北朝鮮侵略戦争に日帝自身が踏み込んでいく。ここに核心があることは明白なのだ。漠然とした「脅威」に対する一般的な備えなどではけっしてない。きわめて現実的かつ切迫した戦争として北朝鮮侵略戦争が構えられているのである。カクマルや日共のように有事立法を語ってこのことを語らないものは、事柄の本質が分からなくてそうしているのではない。意識的におし隠しているのである。
 さらに、日共は今日、衆院に続き、参院でも、審議段階から有事法制成立を既定のものとして前提化し、闘いの武装解除を図っている。5・23明治公園で発言した筆坂政策委員長は、「仮に有事法案が通ったとしても、これは動くことができない法律なんです」と語り、まだ米軍支援法がない、憲法9条が残っていると言って、有事法案の絶対阻止のために闘うと言うのではなく、「通っても大丈夫」論を振りまいた。絶対に容認できないことだ。

 「資本主義の枠内での改革」路線は帝国主義打倒の放棄

 戦争の問題、帝国主義の侵略戦争の問題は、その党派の階級性をごまかしようもなくあばきだすリトマス試験紙である。かつて第1次世界大戦に直面した第2インターナショナルが、祖国防衛主義に転落し、自国の帝国主義に協力していったように、平和な時代に「戦争反対」を言うのはたやすいが、戦争が現実のものとなった時に、それを貫くことができるかどうかで真価が問われるのだ。
 日本共産党のイラク侵略戦争に対する態度、北朝鮮侵略戦争に対する態度に共通することは、帝国主義の侵略戦争を真っ向から見据えてこれと対決することを絶対にしないことである。そもそも日共の最近の文書からは、「帝国主義」という言葉が完全に消えてしまっている。
 これは、97年の日共第21回大会で定式化された「資本主義の枠内での民主的改革」路線が、帝国主義との対決、帝国主義打倒と革命=体制変革を最後的に放棄する路線であることを示している。この「枠内」路線の綱領的立場に一切の根本問題があるのだ。
 この路線は、今日のすべての問題は資本主義の枠内で解決できるとする立場に完全に立ったものである。過剰資本・過剰生産力の問題、恐慌と大不況の問題、そして帝国主義の侵略戦争、世界戦争の問題――いずれも帝国主義の固有の矛盾、帝国主義体制であるかぎり解決できない矛盾である。だが、日共はこれらはすべて「民主的ルール」にもとづいて解決できる問題であるとしてしまう。
 戦争と大失業は資本主義・帝国主義そのものに原因がある。帝国主義のもとでは必ず戦争になるし、資本攻勢によって生きていけなくなる。だから労働者は「資本主義の枠」と衝突せざるをえないし、それを打倒し、転覆する以外にない。この時に、日共はあらかじめ「資本主義の枠内」をはみ出さないことを帝国主義支配階級に誓約し、また人民に対しては「枠内」にとどまることを強要する。だからこの「枠内」路線は現実には徹底的な反革命的制動としての役割を果たす。単に改良主義をも容認するという路線ではない。
 そもそも資本主義の枠内ですべての問題が解決し、「平和で、豊かで、自由な、人間らしい生活をおくれる」(21回大会決議)のであれば、革命や社会主義、共産主義は絶対不可欠の必要ではなくなり、現実には永遠の彼岸に追いやられてしまう。これは修正資本主義の立場以外の何ものでもない。
 実際日共はこの間、資本家団体の会合に呼ばれてその屈服路線を説明し、自分たちは資本家にとって危険ではないことをアピールし、そして資本家に向かっては「ルールある資本主義を(節度をもって労働者を搾取してほしい)」とお願いして回っているのだ。
 日共は今年11月に第23回大会を開き、党綱領の全面書き替えをしようとしている。ここではこれまでの綱領にあった「帝国主義」や「革命」という言葉も一掃した、まさに「資本主義の枠内」にすべてを押し込める綱領に変えることが画策されている。
 日共は90年代中期の一定の議席と得票の伸張から、00年以降、一転して各種の選挙で後退を続けている。今年4月の統一地方選挙ではその没落ぶりが激しい。道府県議選で152議席から110議席に、政令市議選では120議席から104議席に、東京区議選では158議席から141議席に、一般市議選では1027議席から940議席に、町村議選では949議席から943議席に減少した。
 ところが日共中央は、この敗北を糊塗するために、4年前の統一地方選とではなく2年前の参院選比例票との対比で、「得票を伸ばした」と総括してごまかしている。国政選挙の、しかも政党を選ぶ選挙と、個人を選ぶ地方選挙とは同列に比較できないものなのに、日共中央は一番低い票と比べて「押し返した」と強弁し、責任を回避しているのである。
 日共中央は、98年参院選で議席を増やした際、「野党連合政府では安保廃棄を凍結する」という路線を打ち出した。彼らは議席が増えたと言っては右寄りにスタンスを変え、議席が減ったと言っては「より現実的」にと、一層右寄りにかじを切り続けてきた。
 日共の選挙での後退は、日帝への屈服、ずぶずぶの議会主義への労働者人民の不信の表れだ。国鉄闘争での裏切り路線などに対する全労連傘下の労働者の党中央への不信任だ。日共の影響力が後退しているのだ。まさに、真の労働者党が求められているのである。
 今、日帝自身が侵略戦争に突入していこうとする戦時下にあって、日共中央は帝国主義との対決を避け、闘う労働者、闘う勢力を排除して生き延びていこうとしている。
 全労連のもとで闘う労働者のみなさん。このような日本共産党の屈服と制動に従っていたら、私たちはいつの間にか戦争に協力加担する労働者に変えられてしまう。特に国鉄闘争での日共の裏切りは許しがたいものだ。スターリン主義としての日本共産党を今こそのりこえ、階級的労働運動をよみがえらせ、戦争と大失業の攻撃と対決して帝国主義と真っ向から闘いぬこうではないか。

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週刊『前進』(2104号6面2)

新刊紹介 コミューン 7月号 先制攻撃狙う小泉

 特集は「有事立法は北朝鮮先制攻撃法」。
 第1章は、米帝がイラク侵略戦争の口実とした大量破壊兵器がイラクになかったことに焦点を当て、国際法無視、国連憲章無視に象徴される米帝のイラク侵略戦争の不正義性や大義のなさを徹底的に明らかにしている。
 第2章は、ブッシュのイラク開戦演説を全面支持した小泉発言が北朝鮮に対する先制攻撃宣言であること、さらに一連の石破防衛庁長官の北朝鮮への先制攻撃発言が有事立法の核心であることを提起している。トマホーク保有の検討や偵察衛星の打ち上げは米帝レベルの先制攻撃能力の獲得を目指すものだ。
 討議資料は「日本経団連新ビジョン(奥田ビジョン)」の抜粋。日帝の崩壊的危機に対する資本家階級の激しい危機感を背景に打ち出された超反動的な国家・社会改造プラン。主な内容は社会保障制度の解体と消費税16%への引き上げ、労働者の階級意識の解体と国益への奉仕の強要、「東アジア自由経済圏構想」という名の新「大東亜共栄圏構想」、「既得権益を擁護する活動の是正」の労組への要求など。
 翻訳資料はアメリカの新たな中東植民地化政策。@ブッシュの「中東自由貿易圏」構想と、A米、EU、国連、ロシアによる「イスラエル・パレスチナ和平のロードマップ」。前者の経済的側面、後者の政治・軍事的側面が一体となった米帝の新中東植民地化戦略。

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週刊『前進』(2104号7面1)

教育基本法改悪=改憲攻撃粉砕へ 愛国心・道徳心を前面化し戦争のための教育に転換
 日教組本部の屈服破り大運動を
 大西 晶

 3月20日の中央教育審議会答申を受け、教育基本法改悪の動きが急ピッチで進んでいる。5月12日には与党3党の「教育基本法に関する協議会」初会合が開かれ、自民・保守新両党は改正作業チームの設置へ進もうとしている。小泉政権は、早ければ会期延長により今通常国会に、遅くとも今秋臨時国会には改悪案を提出し、改悪を押し通そうとしている。民主党の大裏切りで恐るべき戦争翼賛の場となった国会で、有事立法とともに教基法改悪を強行しようとしているのだ。これに対して5月20日、朝日新聞全国版に「子どもたちを戦場に送らない! 教育基本法の改悪に反対します」という意見広告が出され、教基法改悪阻止へ
大きな流れがつくり出されている。この力を押し広げ、教基法改悪阻止の大運動をつくり出そう。

 “見直した教基法の精神で改憲”と公言

 イラク侵略戦争と有事立法衆院通過という情勢の大激変の中で、小泉政権は有事立法、労働法制の抜本改悪と並んで教育基本法改悪を一気に押し通そうとしている。教基法改悪は日帝の戦争国家化のための労働者階級総体への大攻撃だ。
 今こそ、教育基本法改悪阻止闘争が「戦争国家化阻止=改憲粉砕・日帝打倒」の闘い、改憲阻止闘争そのものであることをはっきりさせて闘おう。
 教基法とは、前文が「日本国憲法の理想の実現」「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示」と明記したとおり、憲法と不可分の法律である。明治憲法と、その精神的な支柱であった教育勅語(およびそのもとで遂行されたアジア侵略戦争)を全否定して制定された法律なのだ。それゆえ、日帝支配階級は戦後一貫して教基法を憲法第9条と並んで憎悪の的としてきた。
 教基法改悪の急先鋒(きゅうせんぽう)である河村建夫文科副大臣(=自民党教育基本法検討特命委員会事務局長)は、4月2日の衆院文教科学委員会で「教育基本法が先に決まれば、この精神こそ今度は憲法の中に当然入っていく」「憲法見直しの問題が出た時、それ(教基法)が一つの方針になって、その中に逆に入っていく価値を持つと考え、(教基法)見直しを検討している」と述べた。先に教基法を改悪し、それと整合性を持たせるように憲法を改悪するというのだ。教基法改悪は改憲の先取り、実質上の改憲である。
 しかし、制定直後の1950年代から、常に憲法改悪策動と対をなして幾度となく登場した教基法改悪のたくらみを阻み続けてきたのは、60年安保闘争、70年安保・沖縄闘争や、教育労働者の勤評・学テ闘争、主任制闘争など教育の権力支配に対する闘いであった。これを日帝支配階級は、有事法制定と一体となって、なだれのように押しつぶそうとしているのだ。
 有事立法が戦争に向けて「ヒトとモノを動員」する攻撃であるのに対して、教基法改悪とはいわば「子どもと精神を動員」する攻撃である。有事法制定と一対で教基法改悪を押し通そうとしていることの中に、日帝の「新たな戦争への突進」が示されている。そしてこの二つが強行された時に、「次は憲法改正へ」という衝動が一挙に噴き出してくることは間違いない。
 今、有事立法阻止・教基法改悪阻止(=改憲阻止)の闘いをどれだけの規模と鋭さでつくり出すことができるかどうかが今後の歴史を決するという、重大な決戦を迎えている。米日帝の北朝鮮侵略戦争絶対阻止を貫き、有事立法・教基法改悪阻止、憲法改悪阻止の闘いを巻き起こそう。

 「たくましい日本人」の育成を掲げる答申

 教基法改悪で何が狙われているのか。その核心は、@教基法の教育目的を愛国主義・国家主義の育成に大転換し、A能力主義教育を徹底し、B教育労働者の抵抗を根絶する、という3点にまとめることができる。
 中教審答申の内容を見てみよう(別掲)。「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」が最大のキーワードであり、その実現のために、「21世紀の教育が目指すもの」(A)が5点、「教育基本法改正の視点」(B)が7点、「具体的な改正の方向――新たに規定する理念」(C)が8点、打ち出された。
 AのCDとBのCD、Cの(V)(W)が、国家主義教育に重心を置いたものだ。そしてAのBとBのA、Cの(T)が、国際競争にうち勝つエリート育成をめざすものである。そして教育労働者の抵抗を排除するために、BのF「教育振興基本計画の策定」が打ち出されたのである。

 「国家のために有為な国民」

 第一に、教育を国家主義教育と愛国心の育成に大転換しようとしている。
 現行法第1条(教育の目的)は「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」とうたい、「天皇に忠義を尽くし命をささげる臣民」を育成するための戦前教育を否定した。憲法26条の「すべて国民は……ひとしく教育を受ける権利を有する」という規定と一体で、国のために人民に課された「義務としての教育」ではなく、人民の「権利としての教育」としたのだ。
 中教審答申はこの根本的な転換を打ち出した。「今日、我が国社会は、大きな危機に直面して」おり、「我が国が、国際社会の一員としての責任を自覚し、国際社会において存在感を発揮し、その発展に貢献することが一層重要となっている。こうした国内的、国際的な大きな変化の中で……教育において重視すべき理念も変化してきている」と、主語をすべて「我が国」に置き換えたのだ。
 答申の「21世紀の教育が目指すもの」では、「教育には……国家や社会の形成者たる国民を育成するという使命がある」とした。この個所は、昨年11月の中間報告ではより露骨に「教育には……国家や社会の構成員として有為な国民を育成するという役割があり」となっていた。現行法の「個人の尊厳」「人格の完成」「個人の価値」という条文への対立概念として、「国家のために有為な国民育成」を打ち出したのだ。
 こうした視点から、目指すべき教育を「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」とし、そのために「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神」「道徳心や倫理観、規範意識」「国を愛する心の涵養(かんよう)」などを打ち出したのである。

 「教育の機会均等」を排除する

 第二に、能力主義を徹底し、教育に公然と差別と格差を持ち込むことである。
 答申は「我が国が世界に伍(ご)して競争力を発揮する……ためには、『知』の世紀をリードする創造性に富み、実践的能力を備えた多様な人材の育成が不可欠」として、少数の「優秀な」頭脳資源(超エリート集団)を確保する教育を徹底しようとしている。そしてその具体化として「義務教育制度の弾力化」を掲げ、就学年齢の弾力化、小中・中高一貫校設置による複線化、学校選択制など、エリートの早期選別・養成制度の確立を打ち出した。
 しかもこれらの施策については、すでに5月15日、遠山文科相が中教審に「今後の初等中等教育改革の推進方策について」を包括的に諮問し、教基法改悪を待たずにどしどし実施に移そうとしている。
 能力主義教育の徹底は、「エリート」の早期選別と同時に、その枠からはずれた大多数の子どもを従順な労働力資源(徴兵予備軍でもある)として育成するということである。「できない子」には、愛国心や犠牲を甘んじて受け入れる精神をたたき込もうというのだ。それゆえ、この間教育現場に強制されている「日の丸・君が代」や「奉仕活動」「自衛隊体験入隊」、さらに02年度に始まった文科省作成の「心のノート」による道徳教育の徹底(子どもの「心」の支配)、「愛国心」を評価する通知票などが不可欠なのだ。
 差別・選別教育への大転換は、日本経団連経労委報告や「奥田ビジョン」が教育改革に多くのページを割いたように、財界・資本家階級の強い要望である。95年に日経連「新時代の『日本的経営』」が打ち出した「長期蓄積能力活用型グループ」(終身雇用の基幹社員)を労働者全体の10%とし、残りの90%の労働者は低賃金・非正規の有期雇用に突き落とすという、労働力政策の大転換に対応した教育への転換である。
 こうして現行法第3条の(教育の機会均等)を解体して、労働者階級の子どもたちをあらかじめ使い捨ての労働力として選別しようとしているのである。

 教育行政への「制限」を撤去

 第三に、教育の大転換のために教育労働者の抵抗を根絶しようと、教基法に「教育振興基本計画」を盛り込もうとしている。
 答申は「教育基本法に規定された理念や原則を実現する手段として、教育振興基本計画を教育基本法に位置づける」とし、「教育基本法の改正後、……直ちに教育振興基本計画の策定作業に入る」「今後おおむね5年間に重点的に取り組むべき分野・施策を明確にするとともに、具体的な政策目標と施策目標を明記する」という。これは現行法第10条の最終的な解体という重大な意味を持つものだ。
 第10条(教育行政)は1項で「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と、教育への国や政党の不当な支配を排除すると規定した。それゆえ2項で「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」、つまり教育行政の役割は「諸条件の整備確立」に限定され、教育内容に介入してはならないと制限を加えたのだ。
 教基法に教育振興基本計画を盛り込めば、教育行政への「制限」は完全に取り払われる。しかも国会答弁では、同計画は閣議で決定するとされている。閣議が中長期的な教育目標などを決定しただけで法的な拘束力をもって教育現場を支配する、強力な国家統制システムを確立しようというのだ。教育振興基本計画とは「国家戦略としての教育改革」の実行計画であり、改悪教基法の具体化計画だ。
 さらに答申が同2項について「『必要な諸条件の整備』には、教育内容等も含まれる」としたことも重大である。国が「教育内容」に無条件に介入していい、それどころかどんどん介入すべき、ということだ。
 もう一つ、教育労働者への攻撃として重大なのが、第6条(学校教育)に盛り込もうとしている「教育の資質向上」問題である。
 答申は「学校教育における教員の重要性を踏まえて……研究と修養に励み、資質向上を図ることの必要性について規定する」とした。具体的には「教員に対する評価の実施と、それに応じた適切な処遇の実施」「不適格な教員に対する厳格な対応」「養成・採用・研修や免許制度の改善」が打ち出されている。
 すでに東京を皮切りに全国で、「指導力不足等教員」「不適格教員」を「研修」の名で学校現場から排除する制度や、「人事考課」=新勤務評定制度、「主幹」制度の導入が始まり、さまざまな抵抗闘争が闘われている。これらを改悪教基法に盛り込むことで、教育労働者の思想を統制し、従わない者は無条件に排除していこうとしているのである。

 日教組は戦争反対の原点を忘れたのか!

 教育をめぐる最大の決戦が到来している今、日教組本部の転向と変質が極まっている。日教組本部の転向を突き破り、闘う日教組の階級的再生をかちとることは、教育基本法改悪阻止闘争の全人民的な発展のために欠かせない課題である。
 中教審答申が提出された3月20日、日教組の榊原委員長が記者会見を行い、「中教審答申に対する日教組見解」を発表した。「見解」は、「この答申にもとづいて教育基本法の改定作業に入ることは容認できない」と言いつつ、すぐ続けて「教育振興基本計画などと合わせ全体構想を示し、あらためて改定すべきかどうかを再検討すべきである」とした。そして「(文科相の)諮問は、教育振興基本計画の策定と教育基本法の在り方についてであった。しかし、教育振興基本計画の具体的内容は例示にとどまり……教育基本法の見直しだけが突出した」のが問題だとして、「教育振興基本計画の策定と、これによる財政措置は重要」と表明した。
 要するに、「教育振興基本計画」の具体化がなされれば教基法改悪を容認することもありうるという表明である。そのことが、教基法見直しの中止を求めるのではなく「中教審での再検討」と「憲法調査会同様の機関の設置」を求めるという結論にも示されている。
 教育振興基本計画とは、それ自身が国家による教育支配の道具である。しかし日教組本部は、完全にこれを促進する立場なのだ。
 さらに4月25日付日本教育新聞のインタビュー「中教審答申・教基法改正/教職員組合委員長に聞く」の榊原委員長の発言が重大である。「改正法案が今国会に提出された場合、どのような態度をとるか」との問いに対し「解決すべき教育問題は山積しており、(教基法改正)法案が上程されても、文科省との参加・提言・改革の協調路線を変更する考えはない」と答えたのだ。教基法が改悪されても文科省との「パートナーシップ」路線は変更しないということは、改悪教基法のもとで愛国心教育・能力主義教育の先兵に成り下がるという歴史的な大転向の宣言にほかならない。
 中教審答申に屈服した日教組本部を許さず、闘う日教組の再生をかちとろう。

 有事立法阻止の闘いと一体

 5・23明治公園を始め、全国で教育労働者が有事立法闘争に立ち上がっている。有事法案衆院通過という大反動を突き破り、反転攻勢は始まった。今、教育労働者が本気で立ち上がるならば、教基法改悪を阻むことは絶対に可能だ。
 有事立法闘争を全力で闘いぬき、そのただ中から、教育労働者を先頭にした全人民の教基法改悪阻止闘争を巻き起こそう。

 教育基本法改悪の主要点(中教審答申より)

21世紀の教育が目指すもの(A)
 教育の普遍的な使命と新しい時代の大きな変化の潮流を踏まえ、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を目指すため、これからの教育は、以下の五つの目標の実現に取り組み、多様な個性や特性を持った国民を育成していく必要がある。
@自己実現を目指す自立した人間の育成
A豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成
B「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成
C新しい「公共」を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成
D日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成

教育基本法改正の必要性と改正の視点(B)
 21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる以下のような教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正すること、が必要である。
@信頼される学校教育の確立
A「知」の世紀をリードする大学改革の推進
B家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進
C「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養
D日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
E生涯学習社会の実現
F教育振興基本計画の策定

具体的な改正の方向――新たに規定する理念(C)
  法改正の全体像を踏まえ、新たに規定する理念として、以下の事項について、その趣旨を前文あるいは各条文に分かりやすく簡潔に規定することが適当。
(T)個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養
(U)感性、自然や環境とのかかわりの重視
(V)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養
(W)日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
(X)生涯学習の理念
(Y)時代や社会の変化への対応
(Z)職業生活との関連の明確化
([)男女共同参画社会への寄与

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週刊『前進』(2104号7面2)

教基法改悪許さぬ 文科省フォーラムを弾劾

 5月17日、文部科学省の主催する「教育改革山口フォーラム」が山口市の山口南総合センターで行われた。小泉政権は有事立法の強行成立を急ぐ一方、教育基本法改悪案提出のための与党協議に入った。山口を皮切りに全国5カ所で「フォーラム」と称して改悪のためのキャンペーンを行い、教基法改悪を一気に強行しようとしている。
 いわゆる「公聴会」がペテン的にも「賛成、反対の意見を聞く」という形を取るのとも違い、「フォーラム」は文科省が選別した改悪賛成派のパネリストだけが意見を述べることを許された。傍聴者には入り口で手荷物検査を行い、カバンの中まで開けさせるというものものしさだった。
 「フォーラム」では、中教審の委員が基調講演を行い、PTA連合や前山口大学長の広中平祐などがパネリストとして賛成意見を述べた。そのすべての意見が改悪を前提としたものであり、おぞましい翼賛の場となった。広中は「°愛国心″という言葉を使うべきだ。国が守ってくれる以外に自分を守れない。バカ(ママ)みたいに反対する奴がいるが、日本の旗を掲げてどこが悪いのか」などとまくしたてた。
 「フォーラム」の中身にも明らかなように、教基法改悪とは、さし迫る北朝鮮侵略戦争を想定し、労働者人民を全面的に戦争動員していく攻撃である。「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」「大競争時代に世界に伍して競争力を発揮すること」(中教審答申)と称して、°憲法の平和主義・民主主義を実現するため″という戦後教育の精神を解体し、教育労働運動を全面的にたたきつぶそうとしているのだ。
 この日、「とめよう戦争への道!百万人署名運動」の山口・広島両連絡会が呼びかけ、多くの参加者によって抗議行動が行われた。会場入り口には大きな横断幕が掲げられ、「フォーラム」参加者ほぼ全員にビラがまかれた。警察権力の度重なる妨害をはね返して宣伝カーによる宣伝活動も繰り広げられた。「フォーラム」参加者がうれしそうに手を振る姿も見られた。

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週刊『前進』(2104号7面3)

改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略と戦争の歴史 第4部 日帝の中国侵略戦争(12)
 731部隊の犯罪 中国で細菌兵器を実践使用

 731部隊は、生物(細菌)兵器の研究・製造・使用、そのための人体実験を行ったいわゆる「悪魔の部隊」である。731部隊の目的は、細菌を実用兵器として研究開発・実戦化することにあった。捕虜を使った人体実験とその「医学」的研究の実態のすさまじさ、類をみない残酷さとともに、日帝の国策としての細菌戦を実戦した部隊として徹底的に断罪されなければならない。
 日本政府は731部隊をいまだに公式に認めておらず、責任を回避している。
 1932年、東京新宿区戸山の陸軍軍医学校防疫部に防疫研究室が開設された(この跡地から89年に数多くの人骨が発見された)。
 開設者は軍医の石井四郎、後の731部隊長。石井は中国東北部・デッチあげ「満州国」に赴き、「東郷部隊」なる秘密部隊を設置、ペスト、コレラなど数種の細菌研究を始めた。当初から中国人捕虜を使った人体実験が行われている。

 国策として設置

 36年には軍令(天皇の統帥権に基づく軍事命令)によって「関東軍防疫部」がハルビンに設置された。同年6月、ハルビン郊外の平房(ピンファン)で農民を強制的に追い出し、巨大な研究実験施設を建設した。ここで敗戦までに3千人を超える中国人捕虜が人体実験の犠牲となった。
 40年8月に「関東軍防疫給水部」と改称され、同年12月には6`四方の敷地に建つ巨大本部と4支部で総勢3千人近い細菌戦部隊となった。41年8月以降は秘密保持のため「731部隊」と呼ばれた。
 731部隊は8部から編成されていた。1部が細菌研究部で、ペスト、赤痢、コレラ、チフス、ウイルスなどを実戦使用するための研究をした。この部は捕虜の収容監獄でもあった。2部は細菌戦の実戦研究、細菌兵器開発、3部(防疫給水部)は石井式濾水器(ろすいき)を製造するとともにペスト菌などを入れる陶器製爆弾の容器も製造、4部(細菌製造部)は各種細菌の大量生産、貯蔵、ワクチン開発を行っていた。
 人民の抗日戦争が激化し、中国侵略戦争が泥沼化する中で、日本軍は兵員消耗と物資補給不足に直面、これに対応する兵器として、細菌兵器が重視されるようになる。
 さらに日本軍は、38年から42年にかけて北京、南京、広東、シンガポールに「防疫給水部」を編成し、計5軍の細菌戦部隊を設置した。

 コレラ菌の散布

 中国の記録では38年に初めて「日本軍機数十機による細菌爆弾の投下」「飲料用井戸へのコレラ・チフスの投下」「鉄道沿線へのコレラ菌の散布」などの記述が登場する。翌39年のノモンハン事件で731部隊による細菌攻撃が行われた。(89年8月24日付朝日新聞には「ノモンハン事件の戦場の川に、私たちの手で大量の腸チフス菌を流した」との3人の731隊員の証言が掲載された)。
 40年9月以降、日本軍は浙江省各地にペスト菌に感染したノミを空中散布した。中国側資料では「11月27、28日日本軍の飛行機が金華上空でペスト菌を放っていた。その年になってペストを感染して死亡した人が160人あまりに達した」と記録されている。
 43年には、石井四郎指揮下のハルビン731部隊が貯水池、井戸、建物などをチフス菌、パラチフス菌、コレラ菌などで汚染するという「細菌謀略作戦」を展開した。玉山周辺でチフス菌とパラチフス菌の入った水筒を貯水池、河川、井戸、家屋に投げ込んだ、という当時の衛生兵の証言がある。また、3千人の中国兵捕虜に細菌入りのまんじゅうを食わせて釈放した。
 死者は2千人に達し、以後、菌の撲滅まで9年の歳月を要した、との報告があるが、被害の全容は解明されていない。

 人体実験を凶行

 さらに恐るべき731部隊の所業に、人体実験、生体解剖の凶行があった。
 日本の憲兵と警察隊は、反満抗日運動の関係者や思想犯と見なした者を捕まえると、組織的に731部隊に送った。「丸太」「マルタ」あるいは「材木」などと呼ばれ、人間としての尊厳の一切を奪われ、生体実験の「材料」として殺されていった。日帝の侵略に激しい怒りを燃やして民族解放戦争に立ち上がった中国人民が被害者だった。
 731部隊の90%は技師、医師、科学者だった。京大、東大などの医者たちは競って731部隊に赴いた。細菌を身体に注入する、生きたまま脳を開いてどこを刺激するとどこが反応するか、空気注入にどこまで耐えられるのか。真空の部屋に入れ、高速で回転させ、胃と腸を入れ替え、馬や猿の血と入れ替える。人道上けっして許されない実験を試み、殺害した。毒ガス実験も行われた。
 日帝が医学界をまき込んで行った国家犯罪そのものなのだ。731部隊に従事した医師や技師は戦後、研究成果とともに東大医学部、京大医学部、あるいは製薬会社でその経験を重用されたのである。

 一切隠蔽された

 45年8月9日にソ連軍が国境を越えて「満州国」に進攻する。直ちに証拠隠滅の指令が出され、石井四郎は部隊に破壊を命じた。部隊の建物、人体標本などを破壊、収容されていた中国人など約400人を全員毒殺し、死体を焼いて、ハルビンを流れる河に投げ捨てた。地下の細菌貯蔵室や焼却炉、ボイラー煙突、吉村班の凍傷実験室などは現在も残っており、野外博物館、展示室として731部隊の罪状を告発している。
 石井四郎は45年暮れに潜伏中の千葉で捕まり、GHQに連行されたが、人体実験については口をつぐんだ。その事実をソ連がつかむ中で、アメリカ国防総省は、「石井四郎たち731部隊の高官たちに戦犯免責をせよ。その代わり731部隊で得た人体実験のデータをすべてアメリカが独占入手せよ」との決定をマッカーサーに伝えた。
 731部隊の細菌戦による被害者180人が日本政府に謝罪と賠償を求めた裁判の控訴審が東京高裁で行われている。一審の東京地裁は、日本軍の細菌兵器の実戦使用とその被害事実を認定し「非人道的」と述べながら「国家無答責」、2国間条約で賠償問題は決着済みなどと原告の請求を退けた。真相究明と謝罪、賠償、責任者処罰を推し進めることは、日本人民の歴史的な責務だ。
 (室田順子)

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週刊『前進』(2104号8面1)

弾圧と闘う 解同全国連寝屋川支部 4人の差別不当逮捕弾劾
 未払い賃金支払い要求に 「脅迫・恐喝」デッチあげ

 許せぬ警察の部落差別襲撃

 5月22日深夜11時から翌23日の午前1時にかけて、大阪府警は部落解放同盟全国連合会寝屋川支部の滝口支部長、伊地知副支部長、木邨(きむら)事務局長(全国連中執)、島田青年部長の4人の執行委員を、「脅迫」と「恐喝」なる容疑で不当逮捕した。
 警察権力は家のドアをたたき壊して乱入し、木邨中執を暴力的に逮捕するという許し難い差別襲撃を行った。ちょうど40年前のまさにこの日、警察権力は石川一雄氏をデッチあげ逮捕した。それとまったく同じことを繰り返したのだ。われわれは腹の底からの怒りをおさえることができない。
 第一に徹底糾弾すべきことは、4人に対する「脅迫」や「恐喝」容疑が、まったく事実無根のデッチあげだということである。
 警察が4人の逮捕の口実とした「事件」は、3月に行われた島田君を不当解雇したA社に対する抗議の申し入れである。
 滝口支部長らはA社の違法行為に抗議し、正当な権利を補償するように求めた。ところがA社は仕事中のケガを労災と認めるように要求したことを「脅迫」だとし、未払い賃金と解雇予告手当を請求したことを「恐喝」だとデッチあげたのである。こんなことがどうして許されるだろうか。
 しかも、A社は島田君に「労災は第三者が見ていないと認定されない」などとウソを言って、労災認定を断念させようとした。それだけではない。労災であれば疾病が回復するまでに解雇することは完全に違法であるにもかかわらず、ケガによる休業を本人の責任に転嫁して解雇を通告し、しかも解雇予告手当すら支払わないという、二重三重の違法行為を重ねたのだ。
 これに対して、島田君らはA社に労基署の見解をつきつけてウソを暴き、あらためて労災として認めることを要求した。このどこが「脅迫」なのか! さらに不当な解雇を弾劾し、解雇予告手当と未払い賃金を払えと要求することはあまりにも当然のことだ! 何が「恐喝」だ! ふざけるのもいいかげんにせよ!
 警察権力と資本は、部落の労働者が資本に「法律を守れ」「おれたちを人間として扱え」と主張すること自体を「脅迫」や「恐喝」だ、としているのである。
 戦前の水平社の糾弾闘争に対する弾圧も、ほとんどの罪状が脅迫か恐喝罪であった。当時の検事長・長谷川は、「糾弾事件の存する所、必ず犯罪あり」として糾弾闘争の根絶を治安政策のかなめにすえた。われわれは部落民の人間的権利を踏みにじり、冒涜(ぼうとく)するこの権力犯罪を断じて許さない。

 部落解放闘争への政治弾圧

 第二に、このデッチあげは寝屋川の部落大衆の自主解放の闘いに対する不当な権力の介入であり、全国連つぶしの政治弾圧である。
 寝屋川の部落大衆はこの間、逮捕された4人を中心にして団結し、差別行政徹底糾弾の闘いに立ち上がってきた。寝屋川市は同和住宅の家賃を何倍にも値上げしながら、修理は三十数年にわたって放置してきた。その結果、手すりは腐り、アスベストが室内の天井からはげ落ち、ガス管はさびて穴があきそうになっており、爆発の危険すらある状況であった。そこに住む部落民の命を何とも思わない、この扱い自体が部落差別である。
 それだけではない。失業者が増大し、生活苦で部落大衆があえいでいることを知りながら、市は同和対策事業を全廃した。かろうじて部落産業として残っていた産業廃棄物処理業のための市営処理場を廃止し、さらに診療所も風呂も廃止するなど、住民の命綱を次々と切り捨ててきた。
 こうした差別行政に対して、寝屋川の部落大衆は人間としての権利の叫びをあげて、断固として立ち上がったのだ。警察権力はこの部落大衆の激しい自主解放の闘いの前進に恐怖し、これをたたきつぶすために、闘いの先頭に立っていた4人を逮捕したのである。絶対に許せない。
 第三に、この弾圧はすべての労働者にかけられた攻撃でもあり、国労臨大弾圧と並ぶ一大労働弾圧事件である。

 部落の労働者の労働基本権を守れ

 資本の違法な権利侵害に対して、労基法に基づいて労働者が正当な権利を要求することはあまりにも当然のことだ。それを「脅迫」や「恐喝」として権力が介入し弾圧することを許していては、労働運動は成り立たない。今回の弾圧は、この間の労働法制改悪攻撃を先取りして暴力的に貫こうとするものである。
 いま日帝は、北朝鮮侵略戦争法案=有事立法の制定と、それに対応した国内階級支配の反動的転換に全力をあげている。国労臨大弾圧に続く寝屋川弾圧は、そのためのまさに戦時下の階級戦争そのものである。
 われわれは、日本階級闘争の歴史的弱点である部落差別による差別分断支配を今こそうち破り、全労働者階級が今回の寝屋川弾圧を自らにかけられた弾圧としてとらえ、全国連と固く連帯して絶対に粉砕しよう。
 この弾圧への大反撃をバネに、逆に全国連寝屋川支部の不抜の拠点化と、全国連5万人建設の突撃路を切り開き、階級的共同闘争の新たな発展を切り開こう。全党全人民は総決起しよう。

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週刊『前進』(2104号8面2)

弾圧と闘う 福嶋裁判 筆跡鑑定の破綻つく 福嶋同志保釈奪還へ闘おう

 5月26日、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧の福嶋昌男同志の裁判闘争が東京地裁刑事第3部(服部悟裁判長)で闘われた。警視庁科学捜査研究所の小島直樹への弁護人の反対尋問が3年間も継続して闘われた結果、小島はボロボロに破綻(はたん)している。その取り戻しのために、前回公判では検事が異例の長時間の再主尋問を行った。今回の公判は、これに対する弁護人の反対尋問だ。
 小島「筆跡鑑定」は、岩手借家から押収したとされるメモ類が福嶋同志の筆跡であるとデッチあげたものである。
 小島の第1の筆跡鑑定は、「メモ45枚」(押収場所も、紙質も筆記用具も記載内容もバラバラのもの)を、同一人が記載したものだと瞬時に決めつけ、「メモ45枚」を一体のものとして福嶋同志の文字と比較し、福嶋同志の筆跡だと結論づけたものだ。
 第2の筆跡鑑定は、その「メモ45枚」を基礎資料とし、またまた同一人の記載であると決めつけた別の「メモ35枚」を一体のものとして、その両者で鑑定を行ったものである。
 筆跡鑑定の結論とはあくまで推論にすぎない。ところが小島は、第1の鑑定で鑑定対象にした「メモ45枚」を、第2の鑑定では、別のメモを鑑定するための基礎資料にしてしまっている。これは「二重の推論」にほかならず、あまりにもデタラメなやり方だ。
 小島は以前、「メモ45枚」が一体であるという判断は半日で行ったこと、異同識別のための「筆跡鑑定」と比較して、その基準は緩いと証言していた。この証言のいい加減さに危機感を持った検事は、前回公判の再主尋問で「一体性の判断も厳格に行った。メモ45枚が同一人筆跡だと判断したのは百パーセントの確信をもったものだ」と言い換えさせたのである。
 弁護人は、コロコロと証言を変える小島を怒りをこめて弾劾した。小島「筆跡鑑定」には、科学的、論理的基準は一切ない。自己の主観で決めつけているだけのデタラメなものだ。
 福嶋同志は無実だ。傍聴席を満杯にして、デッチあげ「筆跡鑑定」を粉々に粉砕し、無罪戦取へ闘おう。

 保釈要望の署名を提出 十万人保釈署名運動

 5月13日に行った保釈請求に続き、「不当な長期勾留をやめさせるために! 十万人保釈署名運動」は5月22日、2万4423筆の「保釈要望署名」を地裁刑事第3部に提出した。
 福嶋同志の家族と、保釈署名運動の呼びかけ・賛同人が先頭に立ち、さらに昨年末に16年の未決勾留をうち破って奪還された須賀武敏同志も参加した。
 東京地裁刑事第3部の書記官室に行き、13冊分の署名簿を積み上げた。
 申し入れにかけつけた人たちが次々と、「福嶋さんは、10年2カ月も拘禁されている。裁判所による人権侵害をこれ以上認めるわけにはいかない」「服部悟裁判長は署名にこめられた市民の批判を正面から受け止めよ」と、怒りの声を発した。福嶋同志の弟さんは「兄は健康を害している。一日も早く獄から出してほしい」と訴えた。
 訟廷管理官もこの迫力の前になすすべもない。森山つとむ代表が「申入書」を読み上げ、署名簿を提出した。
 昨年秋、福嶋同志と弁護団が日弁連人権擁護委員会に申し立てていた「人権侵害救済」に関して、日弁連が調査を開始した。裁判所による権力犯罪を断じて許さず、無実の福嶋さんの即時保釈を要求して、十万人保釈署名達成めざし全力で闘おう。

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週刊『前進』(2104号8面3)

弁護士ら反戦集会 有事治安法に反対し650人

 5月22日の夕方、東京・霞が関の弁護士会館講堂「クレオ」で「有事治安法と司法改悪に反対する集い」が開かれた。憲法と人権の日弁連をめざす会と刑事弁護ガイドライン反対運動が主催し、650人が参加した。(写真)
 「『共謀罪』とんでもない! 『裁判員制度』おかしい!」のテーマで繰り広げられる、さまざまなアピールや講演に感動し、弁護士劇に思わず笑いこけ、あっという間に2時間半が過ぎた。
 主催者あいさつに立った高山俊吉弁護士は、「司法改革とは、民衆を徹底的に管理する司法とすること。人の心の中を処罰する共謀罪は許せない」と熱烈に訴えた。
 村中哲也さん(航空労組連絡会副議長)は、「有事法制反対の声をつぶす権利が国会議員にあるのか。ここであきらめるわけにはいかない。参院での闘いに死力を尽くそう」と訴え、23日の明治公園集会と6月10日の日比谷野音集会を呼びかけた。
 川田悦子さん(衆議院議員)は、「民主党議員の(有事3法)賛成討論に、私は『恥を知れ』という声を発した」と報告し、拉致問題について「加害者をのろう気持ちは分かります。だからと言って制裁すべき、戦争をすべきとはなりません」と北朝鮮への排外主義キャンペーンに危機感をもって訴えた。
 全金本山労組の中野七郎さんは、「労働組合は一人の首切りも許してはならない」と争議勝利への決意を述べた。
 藤田正人弁護士、長谷川直彦弁護士、鈴木達夫弁護士からは、日弁連総会でのヤジなどを口実とする懲戒請求を完全に粉砕した勝利の報告が行われた。
 宮島尚史さん(元学習院大学教授)の「軍事・治安・弾圧体制としての『共謀(独立化)罪』」と題した講演は、とても分かりやすかった。
 また、弁護士有志が熱演した劇「恐るべき裁判員制度(VerV)」は、共謀罪と裁判員制度が結合して冤罪が生み出されていく姿を浮き彫りにした傑作だ。
 土屋公献さん(元日弁連会長)の反戦の誓い、小川原優之さん(第二東京弁護士会副会長)の「弁護士は平和を求める一つの勢力」という決意、小田中聰樹さん(専修大学教授)の「国民参加の司法とは、司法における戦時体制への国民動員にほかならない」などの話を心にしっかりと刻んだ。
 この集いをバネに、有事立法阻止闘争と一体で6月5日の共謀罪反対国会デモ(午後6時、日比谷公園霞門)と国際的組織犯罪条約反対の国際共同声明に取り組む決意だ。
 (投稿 Y・N)

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週刊『前進』(2104号8面4)

5・15沖縄闘争に参加して

 基地と共存して平和はない

 今回、沖縄を訪れて確認したことは、米軍基地の全面撤去なくして沖縄に本当の平和はありえないということ、過去の沖縄戦について、今日われわれがこの凄惨(せいさん)な地上戦を引き起こしたものすべてを怒りをもって糾弾しなければならないということ、今こそ沖縄の人びとと連帯して、有事法制粉砕の闘いを爆発させなければならないということです。
 17日に訪れた辺野古の浜辺には有刺鉄線が張られ、その向こうでは、米軍の装甲車が徘徊(はいかい)していました。辺野古の「美(ちゅ)ら海」には、あまりに不釣り合いなものだと思いました。この海に新たな米海兵隊基地が建設されようとしていることに対し、「命を守る会」を先頭に、住民の反対運動が闘われています。米軍基地と共存して平和などありえないということを沖縄の人びとは確信して闘っているのだと知りました。
 18日に、ひめゆり平和祈念資料館を訪れました。女学生たちを戦場へと駆り立て、凄惨な死を強制した天皇制イデオロギーに基づく当時の教育に対し、激しい怒りを禁じ得ませんでした。「米軍の捕虜になるのは末代までの恥である」と教え込み、彼女らを集団自決へ追いやった、この許しがたい事実を前にして、その元凶を絶対に見落としてはならないと思いました。
 今こそわれわれは、沖縄の人びとの闘いに連帯し、有事法制断固粉砕を闘いぬくことが絶対に必要なのだとあらためて確信しました。
 (広島大1年 M)

 沖縄の闘いに必ずこたえる

 初めて沖縄を訪れた。在日米軍基地の75%をかかえている沖縄。実際に行き、見た基地と街のあり方は想像以上のものだった。基地の外側に向かって広がっているフェンス、基地の間を縫って進む道路。まさに基地の中に街があるといった感じだった。「日本のパレスチナ」と言われる意味を重く体で感じた。
 そして、5・15。沖縄に行って、より一層有事立法の悪質さを知った。この法案が労働者や市民に死を強制するものでしかないこと。そして15日の衆院通過から、とくに沖縄でもう一度「沖縄戦」を繰り返そうとしているのではないかということ。
 今、日本が、少数の人間の利益のために多くの人びとを紙くずのように扱い、命を踏みにじる「戦争」に突き進んでいる。それを合法化させるための有事立法が衆院を通過した。絶対に止めなくてはならない! 人を人として見ないあり方。自分の利益のためには労働者や市民の命、そしてまた沖縄を犠牲にすることを平然と表しているあり方。なぜ戦闘機の飛び立つ基地のために、自分たちの生活が抑圧されなければならないのか。こんなことを許しておけない。
 沖縄でたくさんの人たちが、声を上げ、体を張って立ち上がっている。そこにたくましさと、大きなパワーを感じた。その一方での「沖縄」を知らなかったことのやるせなさ……。“うちなんちゅ”の闘いにこたえたい。一緒に闘っていきたい。有事立法を廃案にする闘い、この非人道的なあり方を許さない闘い。ここ富山で、ヤマトで爆発させていきたい。
 (富山大 佐々木緑)

 基地押しつけは沖縄差別だ

 辺野古へ行き、そこで「基地の島」の現実をあらためて強く突き付けられました。米軍・自衛隊が突如来て住む場所を追いたてられ、米軍による事件や軍事演習により自分たちの生活が危険にさらされています。さらには北朝鮮侵略戦争情勢で、危険はますます強まっています。基地により苦しめられているのです。しかし一方で、「返還」から31年たった今でも差別され続けている沖縄にとって、「生活していくためには基地は必要」「基地があるから職がある」という声が多くあります。
 基地は必要なのでしょうか。そもそもいまだに差別され続け、「生活が人質に取られている」ということが異常に思います。基地の押しつけによる沖縄人民抑圧・差別を許すことはできません。日本が有事立法によって北朝鮮に侵略しようとしていることや、日本が出撃拠点となり人民や基地労働者に戦争協力を強制すること、第二の沖縄戦を許すことはできません。「基地の島」の強制を粉砕しよう。沖縄奪還、すべての基地撤去、そして有事立法阻止へ、仙台で闘っていく決意です。
 (東北大 K)

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週刊『前進』(2104号8面5)

 公判日程

☆迎賓館・横田裁判
福嶋同志裁判
6月10日(火)午後1時15分
☆水嶋同志裁判
6月11日(水)午後1時30分
☆6・12私文書弾圧裁判判決公判
7月24日(木)午後1時15分
 ※いずれも東京地裁

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