ZENSHIN 2003/11/17(No2126 p06)

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第2126号の目次

2003年11・4都労連第4波集会

ストライキで闘うぞ!

 11月18日の2時間ストに向けて行われた11・4都労連第4波集会には、5000人の労働者が参加した(11月4日 都庁前) 記事を読む
1面の画像
(1面)
労働者国際連帯の新時代へ
闘うイラク・パレスチナ人民と連帯し自衛隊派兵阻止の大闘争を
日帝・小泉=奥田路線粉砕しよう
記事を読む  
石原の排外主義暴言許すな 「北朝鮮船は入れない」「日韓併合は朝鮮人の総意」
大リストラ攻撃粉砕! 都労連の攻防で反撃を(10月28日)
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(2面)
日本経団連「奥田ビジョン」粉砕へ
消費税18% 社会保障解体 不安定雇用化 アジア侵略
労働者犠牲に大資本延命狙う 〔高村 晋〕
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年末一時金カンパのお願い
新たなインターナショナルをめざす労働者党の建設へ 革命的共産主義者同盟
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(3面)
都労連11・18スト貫徹を 石原都政の大リストラ阻止へ
03秋闘を闘いぬこう〔革共同自治体労働者委員会〕
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写真 ストライキで闘うぞ! 記事を読む  
安全崩壊は民営化が元凶 JR東日本で事故続発 反合・運転保安闘争を 記事を読む  
世界の労働運動 ドイツ 10万人がベルリンデモ 社会保障解体に怒り噴出(藤沢明彦) 記事を読む  
[対角線] 民主党と連合が亀裂!?(S) 記事を読む  
(4面)
止めよう! イラク派兵 イラク人民と連帯し闘おう
米帝を追いつめるゲリラ戦 “侵略と虐殺の銃をとれ”と命令する小泉打倒せよ(早乙女優)
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“イラク占領反対” 10・26沖縄 熱気溢れ国際通りデモ(10月26日) 記事を読む  
自衛艦2隻の出兵を弾劾 10・28 広島・呉(10月28日) 記事を読む  
労働者の闘いを抑圧する 日本共産党の新綱領案(8)
ペテン的社会主義論 消された「労働者階級の解放」(西塚孝裕)
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日誌'03 10月28日〜11月4日
小泉「自衛隊は国軍」と公言 国連がバグダッドから撤退
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(5面)
機関紙拡大闘争に取り組み労働者細胞を建設しよう
『前進』を大胆に労働者の中へ
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改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略と戦争の歴史
第5部 アジア・太平洋侵略戦争(7) 南太平洋諸島
日米激突の戦場とされて犠牲(片瀬涼)
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(6面)
団結広場 投稿コーナー
強制連行の地下壕で反戦の思い強くする 兵庫・西宮 梶原義行
勾留停止の原田さんと中労委で固い握手 「許さない会」会員 堀河裕
教基法改悪を先取りする石原と闘う集会 東京・教育労働者 瀬田朋子
『前進』ホームページ 海外からのメール 非常に役立つ貴紙の情報 オーストラリアA・S
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全国連が狭山中央闘争 “寺尾差別判決を忘れない” 11・9集会全力結集を宣言 記事を読む  
社会保障解体阻止へ 生存権は譲れぬ F保育所民営化攻撃
高い保育料と劣悪な保育 「親の責任」論で福祉解体(林佐和子)
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紹介 共産主義者 138号 戦争・資本攻勢と闘う
●日本革命の現実性を喝破 島崎論文
●杉並区議選を総括 革共同中央選対
記事を読む  

週刊『前進』(2126号1面1)(2003/11/17)

労働者国際連帯の新時代へ
闘うイラク・パレスチナ人民と連帯し自衛隊派兵阻止の大闘争を
 日帝・小泉=奥田路線粉砕しよう

 11・9全国労働者総決起集会をもって、日本の階級闘争は新しい段階に入る。日本の戦闘的労働運動の画期をなすものとして、この集会の意義は計り知れないほど大きい。日本・韓国・アメリカの戦闘的労働者が一堂に会し、新しいインターナショナルといえる固い国際連帯のきずなを結ぶ日となるのだ。しかもそれは米・日帝国主義のイラク侵略戦争、北朝鮮侵略戦争に真っ向から対決する闘いの宣言の場でもある。この偉大な闘いを踏まえ、ただちに11・9の宣言を全身で受けとめ、それにふさわしい新しい労働運動の潮流を拡大するために奮闘しよう。国鉄、全逓、教労、自治労の4大産別を始め、すべての産別で闘いを強めよう。眼前に迫った自衛隊のイラク派兵を阻止する闘いに猛然と打って出よう。闘うムスリム人民と連帯し、日帝のイラク侵略戦争への参戦を全力で阻止しよう。

 第1章 動労千葉を先頭に新潮流運動発展を

 全日本建設運輸連帯労組・関西地区生コン支部、全国金属機械労組・港合同、国鉄千葉動力車労組の3組合の呼びかけによる11・9全国労働者総決起集会は、新たな国際連帯闘争の始まりである。それは平時の平和的な連帯・友好ではなく、まさにイラク侵略戦争の真っただ中で、かつ米日帝の朝鮮侵略戦争の切迫情勢のもとで、その「当事国」の労働者がかちとる闘う連帯である。
 それだけではなく、激烈な資本攻勢に対して血を流し命を懸けた大闘争を闘っている民主労総からの代表派遣に示されるように、労働者階級の生存をかけた戦闘的労働運動の大合流としてかちとられるのである。
 この闘う国際連帯は日本階級闘争にすさまじい衝撃を与えている。11・9労働者集会は日本の戦闘的労働運動の新しい潮流の歴史的な転機となる。この集会を起点として、労働者の階級的団結、労働者の国際連帯闘争の大発展をかちとろう。それは、日本の労働運動の政治地図を塗り替える意味を持ってくる。
 11・9集会はまた、奥田ビジョンの実行を競いあう翼賛選挙となった総選挙と真っ向から対決し、それを激突的に打ち破ってかちとられる集会である。
 そして帝国主義の危機と対決し、侵略戦争・世界戦争を国際的内乱に転化する闘いの出発点としての意義をもつ集会となる。
 動労千葉がこの間、7月に訪米、10月に訪韓したことは、素晴らしい国際連帯闘争を切り開くものであった。訪米報告、訪韓報告のパンフにはその中身が生き生きと記されている。
 また、中野洋動労千葉前委員長の『俺たちは鉄路に生きる2』は、動労千葉が階級的原則を貫いて戦闘的労働組合として前進してきたことの意義を指し示し、すべての労働者に優れた闘いの指針を与えている。
 動労千葉は、国鉄の分割・民営化という日帝国家の存亡をかけ全体重をかけた攻撃に真っ向から対決し、闘いぬく中に唯一の活路を見いだしストライキを決断して闘いとり、その精神を今日まで貫き通している。ここにこそ、プロレタリア革命の現実性、勝利性が示されているのだ。この闘いが、アメリカの戦闘的港湾労働者、韓国・民主労総の労働者の心をとらえ、歴史的な国際連帯を実現した。このこと自体が実に感動的なことだ。
 動労千葉労働運動をすべての労働者の中に広め、実践していく闘いはここから出発するのだ。
 連合は、日本経団連・奥田ビジョンと同じ主張をする連合評価委員会最終報告を10月大会で受け入れ、労組の階級性を一掃し、産業報国会化を一層進めている。これを内側から食い破り、階級的労働運動をよみがえらせなければならない。また、日共・全労連のもとの労働者に闘いを呼びかけなければならない。
 石原都政の4000人定数削減を始めとした「第2次財政再建推進プラン」と対決する都労連の闘い、名称変更=全逓解体を図る12月全逓臨時大会をめぐる闘い、教育基本法改悪をめぐる決戦に突入した日教組の教育労働者の闘いなどを全力で切り開こう。
 国鉄闘争は、前国労書記長の寺内らチャレンジグループが国労北海道エリア本部から集団脱走し、JR連合に合流するという裏切りが起こり、重大局面にきている。鉄建公団訴訟原告団22人を統制処分した張本人が自ら国労破壊の先頭に立っているのだ。許しがたい。また、これに加担した日共・革同の責任はきわめて重い。今こそ、裏切り者を打倒し、闘う国労を再生するチャンスである。
 こうした中で10月初めに開かれた動労千葉定期大会で@国際連帯、A第2の分割・民営化攻撃との対決、BJR総連解体・組織拡大の3大方針を決定したことは重要だ。国労が戦闘的再生を遂げ、1047名闘争をとおして動労千葉と団結し、ともにJR総連解体に向けて共闘するならば、国鉄労働運動は根本的転換をかちとれるのだ。
 国鉄決戦の当面の最大焦点として、5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いを発展させよう。8人の仲間を必ず年内に奪還し、その力で動労千葉労働運動と共闘する国鉄労働運動の戦闘的再編に突入するのだ。「許さない会」の賛同会員を拡大し、10万人保釈署名運動を展開し、必ず奪還しよう。

 第2章 11〜12月はイラク反戦闘争の正念場

 イラク情勢は、日に日に激しさを増している。米英帝国主義の3月以来の侵略戦争、虐殺戦争と軍事占領に対するイラク人民、ムスリム人民の怒りは爆発点に達している。米英帝は、すでに大量の劣化ウランを降り注ぎ、数万人ものイラク人民を虐殺し、新たな植民地支配を開始している。これが巨大な反撃を受けないわけがないのだ。
 8・19バグダッド国連事務所に対する爆弾ゲリラ、8・29親米的なシーア派指導部への爆弾攻撃以来、イラク人民のゲリラ戦争は激化の一途をたどっている。ウォルフォウィッツ国防副長官のいるホテルに命中した10・26ロケット弾攻撃、米軍ヘリを撃墜して米兵16人をせん滅した11・2ミサイル攻撃など、戦闘はとどまるところを知らない。こうした中でついに10月30日、国連はイラクからの要員の撤退を余儀なくされた。一方、マドリードのイラク復興支援国会議は、米占領軍の負担額の4分の3を米日が負い、独・仏・ロはゼロという帝国主義間対立の激しさを浮き彫りにした。イラク派兵予定国もパキスタン、トルコなど次々と撤回している。米帝にとってイラク占領が巨大な重荷となり、しかし絶対に退くことはできない袋小路に追い込まれているのだ。
 小泉は、このようなイラク侵略戦争の泥沼化の中で、国連などのバグダッド撤退にもかかわらず、「自衛隊の早期派遣の方針に変わりはない」と言明し、選挙が終わったらただちに派兵準備に取り掛かることを隠していない。イラクを訪問した岡本行夫首相補佐官は、「ここで退けばテロリストの思いどおり」と、イラク人民の解放闘争に対する憎しみもあらわに、自衛隊派兵方針を言明した。
 小泉は、14日にもイラク派兵の基本方針を閣議決定し、特別国会を開いて17日に国会で決議しようとしている。そして12月、1月に本格派兵しようとしているのである。事態はきわめて切迫している。
 イラク軍事占領がますます泥沼化し、新たな派兵国が名乗りを上げない中で、日帝がイラクに自衛隊派兵を強行し、「復興支援」と称して50億j(約5500億円)に上る資金を拠出しようとしていることは、世界的に見てもきわだって突出している。それはすでにビンラディン氏やアルカイダが、日帝の参戦を許さないと名指しで通告しているように、ムスリム人民の怒りの的となっている。
 だが日帝は、帝国主義であるかぎり、北朝鮮侵略戦争に米帝と共同=競合して乗り出していくためにも、イラク派兵を絶対に回避できない。そのために、殺し殺される侵略軍隊として、自衛隊の大転換を行おうとしているのだ。
 そもそもこのイラク侵略戦争が、「大量破壊兵器」などまったくの口実で、イラクの石油利権と中東支配を目的としたものであることがますます明白になっている。石油のためにイラク人民を殺し、イラクを破壊し続けることが許せるのか。この本質的な問いがイラク人民のゲリラ戦争によって突き付けられる中で、派兵された米兵の間にも動揺と不安が広がっている。脱走兵が相次ぎ、自殺者も続出し、戦闘疲労症などの発病で送還される兵士も増えている。アメリカ本国でのイラク反戦・兵士帰還の闘いも激化している。
 このような事実を徹底的に明らかにし、このイラクに日帝が軍隊を派兵しようとしていること、日本が戦後初めて戦場に展開して戦争に参加しようとしていること、こんなことをどうして許せるかと、自衛隊兵士とその家族に直接呼びかける反戦・反軍闘争を強化し、全国の自衛隊基地に向かって行動を起こそう。
 闘うイラク・パレスチナ人民と連帯し、自衛隊派兵阻止闘争の爆発をかちとろう。百万人民の決起をかちとる運動を前進させよう。

 第3章 社共に代わる労働者党が今こそ必要

 11月9日投開票の総選挙は、日本経団連・奥田ら日帝ブルジョアジーが主導して、戦争と恐慌の時代の日本帝国主義・資本主義の体制を守るための路線を競わせるという、かつてない露骨な翼賛選挙となった。「政党評価基準」を設けて日本経団連としてどちらが献金にふさわしい相手であるかを評定するとしたのである。これを受けて、自民党と民主党はそれぞれ「政権公約(マニフェスト)」を提出し、構造改革、消費税増税などでいかに奥田路線に合っているかを競いあったのである。民主党が小沢・自由党と合同したのもそれが目的だった。
 しかもそれは、超反動的な小選挙区制のもとで、小泉・自民党に終始有利に働いたのである。日帝・小泉への労働者階級の反撃を先頭とした闘いをただちに構築しなければならない。
 この中で日本共産党スターリン主義の議会主義政党としての破産もまた突き出されている。日共は今回の総選挙で、民主党との違いを強調する選挙戦を展開したが、ついこの間までは民主党との連立政権に入ることに腐心してきたのが不破指導部である。彼らは、民主党との「野党共闘」を拡大したと言って自慢してきたのだ。民主党「批判」をするなら、そのことをどう総括するのか。
 綱領改定に突き進む日本共産党は、労働者階級に徹底的に背を向け、その闘いを抑圧した上で、一切を選挙に絞り込み、労働者の力を選挙の一票に解消し抑え込み、議会選挙にのめり込むことを路線的に確定した。だが、この路線は、「自民党対民主党」という「二大政党制」のキャンペーンのもとで、決定的な行き詰まりに直面している。不破路線の破産が突き付けられているのである。
 社民党と日本共産党の屈服・転向と没落の中で、今や社・共に代わる闘う労働者党の建設が待ったなしに求められているのだ。
 日帝の朝鮮植民地支配を正当化し、北朝鮮への経済制裁を発動して、北朝鮮侵略戦争を扇動する石原暴言を弾劾し、徹底追及しよう。都労連攻防を闘おう。
 教育基本法改悪粉砕の12月闘争をかちとろう。改憲攻撃を粉砕しよう。20労組とともに、闘う自治体労働者を先頭に有事立法・国民保護法制を粉砕しよう。
 無実の星野文昭同志を取り戻すために、星野同志がとらわれている地元である徳島での集会が実行委員会によって呼び掛けられている。この闘いを心から支持し、11・14〜15徳島行動に全国から集まろう。
 闘う労働者の週刊政治新聞『前進』をすべての労働者に持ち込もう。
 とりわけ、日帝・小泉=奥田路線粉砕へ、戦闘的労働運動の前進の先頭に立つ革共同への年末一時金カンパの集中を心から訴える。

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週刊『前進』(2126号1面2)(2003/11/17)

石原の排外主義暴言許すな
 「北朝鮮船は入れない」「日韓併合は朝鮮人の総意」
 大リストラ攻撃粉砕! 都労連の攻防で反撃を

 「東京は北朝鮮の船を入れない」「日韓併合は朝鮮人の総意で行われた」――東京都知事・石原慎太郎がまたもや北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する露骨な排外主義をあおる暴言を吐いた。
 日帝・小泉に北朝鮮に対する経済制裁=戦争発動を要求し、東京都は、北朝鮮籍の船舶を東京湾に入れないなど経済制裁の発動を率先して行う方針を明言したのだ。まさに石原は、米日帝の北朝鮮侵略戦争を推進するために意識的、挑発的に日帝の朝鮮植民地支配を正当化し、賛美する暴言を吐いたのである。

 「救う会」講演

 10月28日に「救う会東京」が「同胞を奪還するぞ!全都決起集会」を池袋で開催した。そこで基調講演を行った石原は「このままでは拉致問題が風化する。都が朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)施設に対する固定資産税徴収に踏み切ったように、政府も経済制裁を行い、北朝鮮を動かすべきだ」とぶちあげた。
 さらに石原は、「たとえ訴訟を起こされても、東京は北朝鮮の船を一切入れない」とうそぶいた。
 そして、1910年の韓国併合について、「私たちはけっして武力で侵犯したんじゃない」「結局彼ら(朝鮮人)の総意で、ロシアを選ぶか、シナ(ママ)を選ぶか、日本にするか、近代化の著しい、同じ顔色をした日本人に手助けを得ようということで、これは世界中の国が合意した中で合併が行われた」「これは彼らの先祖の責任」と、日帝が武力をもって強制した事実を真っ向から否定し、歴史を偽造した。
 これに対し、在日諸団体や韓国外務省が一斉に怒りの声をあげ、発言の撤回と謝罪を求めた。しかし石原は、31日の定例記者会見で「日本がやった植民地主義というのはまだ人道的で人間的だった」と排外主義暴言を開き直り繰り返した。
 これら一言一言が万死に値する! 1875年、軍艦をもって江華島に侵攻して以来、日帝は一貫して武力をもって朝鮮侵略を推し進め、1910年には首都ソウルを武力制圧する中で韓国併合を強行したのだ。
 朝鮮総督府の植民地支配下で主権を奪われた朝鮮人民は、土地、文化、言語、名前をも奪われた。さらに日帝の中国侵略戦争の泥沼化の中で兵站(へいたん)基地として位置づけられた朝鮮は、強制連行・強制労働、日本軍軍隊慰安婦政策などにより、人と物の一切を奪われたのだ。石原は、この朝鮮民族抹殺政策を「人道的で人間的だった」と言い放ったのだ。
 敗戦時、日本国内に200万〜240万人もの朝鮮人がいた。そして戦後、在日を強いられた60万人の朝鮮人、この人びとこそ36年に及んだ朝鮮植民地支配の生き証人そのものだ。

 経済制裁発動

 すでに石原は、朝鮮総連への経済制裁の発動に踏み切っている。「外交機関に準ずる機関」として40年来、免税扱いにしてきた朝鮮総連の関連施設に対して固定資産税などの課税を7月に決定、9月4日には中央本部など3カ所の差し押さえ手続きに入った。
 今回の「東京は北朝鮮の船を一切入れない」との石原発言は、すでに東京都の方針として動き出している。そもそも国籍を特定した入港拒否は港湾法の平等の原則から禁じられている。それを東京都は北朝鮮船を閉め出すことを目的に、海難事故の保険に入っていない船や整備不良船の入港拒否などとして都港湾設備条例を改悪する方向で検討に入っており、来年2月の都議会での成立を狙っているのである。

 労働者の力で

 8月1日、元警察官僚・竹花豊副知事を本部長とする東京都緊急治安対策本部を発足させた東京都は、「東京都安全・安心まちづくり条例」に基づいて「(治安悪化の)現状を打開するため、警察のみに任せることはせず、都民の総力を結集して対処する」(竹花)と治安弾圧強化に走り出した。10月17日には「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」を法務省入国管理局・東京入管・警視庁とともに宣言し、「まずもって、首都東京の不法滞在者(外国人)を今後5年間で半減させる」と凶暴な攻撃に打って出ている。
 「東京から日本を改造する」という石原都政こそ、小泉=奥田路線の超反動的な最先兵だ。第2次財政再建推進プランなど石原の大リストラと民営化攻撃は、都職員のみならず、全都民の生活と生存をとことん破壊するものになろうとしている。その不満・怒りを排外主義的にからめとることで労働者人民に分断を持ち込み、戦時動員−北朝鮮侵略戦争へと駆り立てようとしているのが石原だ。
 卒業式・入学式で「日の丸は舞台壇上正面に」という都教委通達も、これと一体の攻撃である。右翼テロを「あったりまえ」と容認した石原に力を得て、日教組と多摩教組に対する右翼テロが凶行された。小泉と石原こそが戦争と右翼テロの元凶だ。
 石原の度重なる排外主義暴言と北朝鮮制裁の攻撃を弾劾・粉砕する闘いを、都労連の大攻防と結合し、ファシスト石原打倒、小泉打倒へ、猛然と闘いぬこう。

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週刊『前進』(2126号2面1)(2003/11/17)

日本経団連「奥田ビジョン」粉砕へ 消費税18% 社会保障解体 不安定雇用化 アジア侵略
 労働者犠牲に大資本延命狙う

 日本経団連会長・奥田碩(ひろし)は、今年1月に『活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして―日本経済団体連合会新ビジョン』(奥田ビジョン)を発表した。これは、資本家的強欲をむき出しにして、労働者階級への搾取と収奪を強める宣言であり、「東アジア自由経済圏」=新たな「大東亜共栄圏」づくりの侵略戦争宣言であり、労組解体宣言である。日帝・小泉は、今や露骨なまでに奥田ビジョンを日帝の政策化し、労働者人民への攻撃を強めている。来年5月に任期が切れる奥田の経団連会長留任が確定的となった。小泉=奥田路線との対決はいよいよ重大である。11・9全国労働者集会の地平を引き継ぎ、日本帝国主義の唯一の延命戦略、小泉=奥田路線徹底粉砕、日帝打倒、プロレタリア世界革命の勝利へ闘おう。

 資本家の激しい危機感と強欲むき出しに

 9月に日本経団連は政治献金の基準とする「政党評価10項目」を発表した。これは税制改革、社会保障改革(消費税大幅アップ)、不安定雇用化の推進、FTA(自由貿易協定)の推進など、奥田ビジョンの具体化策そのものである。これを受けて今回の総選挙は、自民党と民主党が奥田ビジョンの実行を競う、とんでもない翼賛選挙となった。
 奥田が会長を務めるトヨタ自動車は、昨年度1兆円近くの、そして今年度前半期も過去最高の5千億円超の純利益を上げた。生産コストの極限的削減で下請け企業や労働者を犠牲にし、独占資本だけが大不況期にも巨額の利益を上げる構図が浮き彫りになっている。トヨタは労働者の血を吸って栄えているのだ。
 このトヨタ会長の奥田が大銀行・大企業の生き残りのために打ち出したのが奥田ビジョンである。10月にはこれを新書版に仕立て、『人間を(資本家を、と読め)幸福にする経済』(PHP新書)を発刊した。
 奥田ビジョンは別表のような4章構成からなる全113nの提言である。
 何よりも特徴的なことは、資本家階級の激しい危機感である。帝国主義の全世界的な行き詰まりと争闘戦の激化の中で、°思い切った手を打たなければ、日本の資本主義は立ちゆかなくなる。米欧によってたたきつぶされる″という、激しい危機感が表明されている。
 「はじめに」では、「現在の日本は、崩壊の危機に瀕(ひん)した森」「経済も社会も混迷の度を深めている」「日本は『失われた20年』に苦しんでいる」「有効な対策がとられなければ、その先に待っているのは『崩壊していく日本』である」と危機感をあらわにしている。
 そして第4章では、「今日の日本経済の低迷は、20世紀終盤における国際制度間競争に敗れたことが一因である。……日本が21世紀の国際制度間競争に勝利することが何よりも必要である。このため、政治と経済双方が不退転の決意をもって立ち上がらなければならない」と叫んでいる。帝国主義間争闘戦に資本家階級が結束して参戦し、勝利すべきことを真正面から打ち出しているのである。
 こういう立場から「改革の遅れ」を嘆き、「それらが実行に移されないのは、政治のリーダーシップが十分に発揮されないことによる」と、改革諸政策の強力な実行を迫っている。
 さらに、「問題はそれだけではない」として、労働者階級と労働組合に矛先を向け、次のように言う。
 「経済や社会が危機的な状況に陥っているにもかかわらず、一方で既得権益に守られた、安定した小さな幸せがいまも厳然と存在し、それがあたかも未来永劫(えいごう)続くように誤解している人々がいる」「労働組合に対しては、既得権益を擁護する活動の是正を求める」
 奥田はこう言って、帝国主義間争闘戦に勝ち抜く最大のカギとして、労働組合、労働者を争闘戦の積極的な担い手に仕立てようと攻撃を強めている。連合中央・笹森は、今や奥田の手先となり、「労働組合が日本再生の牽引(けんいん)役を担おう」(連合会長選)などと叫んでいる。

 「東アジア経済圏」の侵略宣言

 奥田は以上のように支配階級の危機感を述べた上で、資本家的強欲さをむき出しにしたさまざまな改革提案を行っている。その内容は税制改革、賃金・雇用制度改悪、社会保障切り捨て、教育改革、政治改革、地方制度改革など全面的であるが、とりわけこれまでとも次元を異にする重大な攻撃は、次の言葉に表されている。
 「21世紀の競争力はグローバルな活動を通じて高まっていく。このため、国境という概念を積極的に打ち消し、オープンな環境の中で日本企業の活力を高めることが大切である」「グローバルな活動によってしか日本企業の国際競争力は高まらない。生産拠点の移転も、世界規模で行われている競争に勝ち抜くための手段であり、空洞化の懸念に圧(お)されて、海外投資を制限すれば……日本は、グローバル化のなかで孤立する」
 奥田ビジョンはこう言って「東アジア自由経済圏」構想を提唱しているのだ。これこそ、アメリカ、EUとの帝国主義間争闘戦に直面し、決定的に追いつめられている日帝のアジア侵略=勢力圏化宣言である。これまでは「MADE°IN″JAPAN(日本の国内でつくる)」だったが、これからは「MADE°BY″JAPAN(日本の資本でつくる)」だと言っている。「アジアに広がる日本帝国主義」の宣言である。
 日帝は、帝国主義である限り、独自の勢力圏づくり、侵略戦争、そして帝国主義間戦争に突き進むしかない。奥田ビジョンはその宣言なのだ。

 年金破壊、賃下げなど搾取と収奪の大攻撃

 1章、2章には、資本家的利害をむき出しにした攻撃の数々が列挙されている。すべては労働者階級への搾取と収奪を強め、資本家の利潤を最大限に追求する諸方策である。以下、主要な攻撃を暴露する。
 第一に、消費税の18%化と、法人税引き下げなどの税制改革である。
 「経済成長への影響が懸念される所得課税や社会保険料にこれ以上依存せず、より薄く広く負担を求めることが可能な消費税の税率引き上げで対応する。結果として、消費税率は18%となる」
 「経済の活力を生みだす(=資本家の利益を最大にする)ような税体系を構築する」「日本企業の国際競争力を高め(るために)……法人税について、地方税を含めた実効税率を大幅に引き下げていくべきである」「(労働者人民への課税にあたっては)各種控除制度を縮小・廃止し、課税最低限の引き下げによって課税ベースを拡大した上で、急激な累進税率構造を緩和し、よりフラットなものとしていくことが望まれる」
 このように言いたい放題のことを言っている。企業には税金をかけるな、金持ちへの課税を軽くせよ、消費税を大幅アップし、各種控除も撤廃し、累進課税もフラット(平ら)にして、低所得者層=労働者層からもっともっと搾り取れと、政府をあおっているのだ。

 高齢者抹殺の「安楽死」提言

 第二に、社会保障制度の解体、福祉の切り捨てだ。
 「最大の不安要因である社会保障制度の抜本改革を進める」と言っている。「最大の不安要因」とは、「資本の利益を圧迫する最大の不安要因」という意味だ。
 具体的には、年金、雇用保険、健康保険などについて、「給付内容を少子化・高齢化が進んでも維持できる水準まで適正化する(=下げる)」「最低限必要な給付にターゲットを絞る」と、給付額の削減、給付対象の絞り込み、給付期間の短縮などを提唱している。
 そして各種保険の保険料について、現在は労資折半が原則であるが、それを「企業の従業員についても、自営業者と同様、保険料を全額本人が負担する方法に改めることが考えられる」とまで言っている。さらに続けて、「これにより本来の受益者であるサラリーマンのコスト意識が高まり、安易な負担増に対する抑止力となることも期待できる」などと言っている。
 保険料を全額本人負担にすれば、家計に響くから医者にかかる回数も減るだろうというわけだ。労働者階級は、いま「安易」に医者にかかっているのか! まったく怒りに堪えない!
 こうした社会保障の解体、切り捨てを合理化するために、「個人の自立を前提とせよ」「自助努力社会」という、自己責任論を強く押し出している。失業するのも病気になるのも、全部自己責任だという、得手勝手な主張である。
 公的年金の目的について、これまでは「退職後の必要十分な所得の確保」であったが、これからは「予想以上に長生きした場合の生活資金不足の補填(ほてん)」にするべきである、と言っている。°労働力として役立たなくなった年寄りは、早く死ぬべきだ。高齢者への年金などは、金の無駄遣いだ″という資本家の本音がにじみ出ているではないか。
 この本音から「尊厳死=安楽死」を提言している。
 「寝たきりになっても……医学の進歩で生き続ける人々がふえるが、これが人の幸福につながるとは必ずしも言えない」「尊厳死は……選択のひとつであろう」と言っている。これは高齢者および「障害者」に対する絶対に許すことのできない国家的な差別・抹殺政策の提言である。

 生活給、8時間労働制も解体

 第三に、首切りと賃下げ、不安定雇用化の宣言である。
 資本家階級は95年に、日経連のプロジェクト報告『新時代の「日本的経営」』で「総額人件費の削減」を掲げ、大部分の労働者を不安定雇用にたたき落とす労働力政策の転換を打ち出した。これは、先行するアメリカ帝国主義の資本攻勢にならって、1割を終身雇用の幹部社員(正社員)とし、残り9割の労働者を昇給も退職金も年金もない、低賃金で使い捨ての不安定雇用労働者にするものである。この攻撃は今日、激しい雇用破壊、賃下げ攻撃として吹き荒れている。
 これは、大恐慌情勢下で資本家が利潤を最大限に獲得するための攻撃であるのに、奥田ビジョンは、まるで労働者人民が自らそれを求めているかのように押し出している。
 (1)「企業は、多様化する個人が、安心して自ら多様な働き方を選択でき、働きに応じて報酬を得られる仕組みを構築しなければならない」「企業の正社員としての道は、今後、選択肢のひとつに過ぎなくなる」
 「働き方によって人事や処遇が異なることは当然である」「報酬は成果に基づくものにシフトしていく」
 公表失業率は5%を超え、実際にはそれをはるかに超える数百万人の労働者が失業に苦しみ、さらに賃下げ、過労死、自殺者急増という深刻な現実が強まっている。奥田の提言は、こうした現実を一層、極限にまで強めるものだ。
 (2)「退職金への課税制度や企業年金制度の見直し、労働基準法や労働者派遣法の見直しなどを通じた労働市場の多様化」
 これは、長期に勤めてもろくろく退職金も企業年金も出ないシステムにし、高齢になっても死ぬまで資本のもとで働かなければ(60歳の定年退職後は、半分の賃金で再雇用!)食っていけない体制にするということである。これは、社会保障費の削減という狙いだけでなく、高齢者を首切り自由の低賃金労働力として活用していく労働力政策としても打ち出されている。
 (3)「企業においても、有期雇用や業務委託など多様な雇用契約を拡大させるとともに、社員の兼業禁止が解禁されていくこととなろう」
 これは、労働者に生活賃金すら保障しない、足りない生活費は夜間とか休日に別のところで働いてつくれ、ということである。アメリカで「ムーンライター」(複数の職を持つ労働者)が80年代後半から激増したが(90年代末で8百万人)、多くの労働者をそうした現実にたたき落とそうとしているのだ(富士ゼロックスは7月から、50歳以上を対象に週2日休んで副業を認める制度を導入した)。
 賃金は労働力商品の再生産費である。それすら労働者の団結した闘いがあってこそ、ようやく確保される。労働者の団結が弱まれば、資本家は賃金を生活費以下にさえ削り込むのだ。
 こんな攻撃をかけていながら、奥田は労働者に向かって説教を垂れている。「重要なことは、結果の平等を求めないことである。すべての国民に対して公平なチャンスを与え、それぞれの選択に委ねる。その結果は、選択した本人が受け止める」「生き方も働き方も異なる他人と自分とを比べても意味はない」「『隣の芝生は青い』とか、『他人の不幸は蜜の味』といった見方から脱し、お互いに違いを認め合いながら…」
 本当に、怒りなしに読めない。
 (4)「自己実現に結びつき、自身の成長にも資する仕事を与えられているのであれば、それは仮に労働時間が長くなっても、賃金が高くなくても、むしろ本人は好ましく思うであろう」
 なんという虫がいい資本家的「夢想」であろうか。こんな勝手な理屈で資本家はサービス残業(残業手当不払い)を強制し、「労働日」の概念すら解体する裁量労働制を拡大し、さらにもっと改悪してホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラーの労働時間規制の適用除外)を強行しようとしている。
 労働者階級が百年以上の闘いで獲得してきた8時間労働制を解体し、労働者が自由にできる時間をも奪い取り、生存すら危うくなるまで長時間労働させようとしているのだ。(注1)
 だが、資本家どもの「夢想」をぶっ飛ばして、労働者の怒りが必ず爆発するだろう。

 奥田の手先=連合中央打倒し階級的反撃を

 第四に、奥田ビジョンは高齢者、女性、外国人を低賃金の労働力として搾取することを提唱している。
 日本経団連の03年版「経営労働政策委員会報告」では、「労働力人口の長期減少への対応策」として、「女性と外国人の活用」を提唱している。それを奥田ビジョンでは、オブラートにくるんで「女性などの就業を妨げている制度的・社会的障壁の除去」「多様性を受け入れる――外国人も活躍できる環境の整備」「日本社会の扉をより多様な外国人に開く」などと言っている。その本質は、女性や外国人を低賃金で使い捨て自由の、無権利の労働力として徹底的に活用し搾取するということである。(注2)
 第五に、労働運動・労働組合の圧殺宣言であり、連合に対する産業報国会化の誘導である。
 「労働組合も変革を迫られる。……労働組合は、経営側の幅広い提案を受け、多様化する職場の意見を集約し、それをもとに労使の話し合いによって決定し、実行に移していくという本来の役割に徹するべきである」
 「長期雇用の重視という画一的な発想から抜け出せていないところも依然としてみられる。……労働組合には、多様な働き方を受容する懐の深い組織となることを期待したい」
 これは労働組合の否定である。国際争闘戦の激化の中で、日本企業が生き残っていくために、労働組合は資本の意志を労働者に貫徹する推進機関となれ、「産業報国会」になれというものである。
 奥田ビジョンは、ほかにも公的部門の民営化(官製市場の開放)、教育改革を始め、重大な攻撃を列挙している。
 その上で、第3章で「東アジア自由経済圏」構想を提唱している。これは、戦前、日本が戦争の道を突き進んだ「大東亜共栄圏」構想の復活である(稿を改めて、次の機会に徹底的に批判したい)。
 奥田ビジョンに対する労働者階級の怒りを爆発させよう。いったい、奥田ビジョンに成算はあるのか? まったく否だ。経団連・奥田は連合中央を先兵にして労働者階級を積極的に動員していくことにその成否をかけている。だが、今や多くの労働者人民が連合中央の反労働者的正体に怒り、連合からの離反を開始している。さらに、「年金危機」を振りかざして「日本がつぶれてもいいのか」と恫喝する小泉=奥田の攻撃に対して、「労働者を食わせられない資本主義はつぶれてしまえ。労働者階級が社会を治めればいいのだ。われわれにはその力がある」という、自信と確信にあふれた力強い労働者の闘いが、11・9労働者集会に見られるように確実に前進しているのである。
 この道を断固として進もう。奥田ビジョンに屈服する連合中央を打倒し、労働者階級の国際的団結を強く固め、戦争と大失業攻撃を打ち破る労働運動の前進をかちとろう。
 〔高村 晋〕

 n(注1)「時間は人間の発展の場である。思うままに使える自由な時間をもたない人間、睡眠・食事などをとる純然たる生理的な中断は別として、その全生涯が資本家のための労働に吸い取られている人間は、牛馬よりもあわれなものである。……資本は、もしそれをおさえるものがないなら、たえずしゃにむに全労働者階級をこの極度の退廃状態に陥れることをやってのけるだろう」(マルクス『賃金・価格および利潤』)
 n(注2)奥田ビジョンは「台湾の受け入れシステムは参考となる」として、「(台湾では)外国人労働者は、台湾人の嫌う3K(=きつい、汚い、危険な)職場……などで就労するケースが目だつ」「こうしたアジアでの経験を踏まえ……」と言っている。「現代の強制連行・強制労働」の提唱である。同時に「不法滞在者の摘発の強化」を要求している。

奥田ビジョンのポイント

「はじめに」

 「崩壊していく日本」への資本家階級の危機感/2025年を改革実現の最終目標に設定

「第1章 新たな実りを手にできる経済を実現する」

 資本家優遇の税制改革/社会保障制度の抜本改悪/消費税18%化/「MADE “BY” JAPAN」戦略/産学連携(大学を企業の研究・開発機関化する政策)

「第2章 個人の力を活かす社会を実現する」

 「多様な働き方」=不安定雇用化/「労働組合も変革を」/尊厳死=安楽死/女性・高齢者・外国人の低賃金労働力化/学校に競争原理を導入

「第3章 東アジアの連携を強化しグローバル競争に挑む」

 「東アジア自由経済圏」の提唱/FTA(自由貿易協定)の積極的推進/「日本の強力なリーダーシップ」

「第4章 改革を実現するために」

 民間の動きを経団連がリード/政党と経団連の新たな協力関係・政治献金/経団連のために働く政治家の育成・支援

 

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週刊『前進』(2126号2面2)(2003/11/17)

年末一時金カンパのお願い
新たなインターナショナルをめざす労働者党の建設へ
 革命的共産主義者同盟

 世界史の新たな地平開いた03年

 すべての同志の皆さん。『前進』読者の皆さん。労働者の皆さん。革共同は年末一時金カンパへのご協力を心より訴えます。
 私たちは、11・9全国労働者総決起集会を呼びかけた全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉の3労組の訴えを全面的に支持し、集会の成功のために全力で闘いぬいてきました。
 日米韓の労働者が東京・日比谷野音に一堂に会し、大失業と戦争に立ち向かう労働者の国際的団結を宣言することは、本当に偉大な意義を有しています。ここから国際連帯・共同闘争の歴史的な第一歩が切り開かれるだろうことを心の底から確信するものです。
 革共同は、この感動的な闘いにこたえ、さらに発展させるために真に闘う労働者党=革命党への飛躍をかけて全力で闘いぬく決意です。「新しいインターナショナル」の壮大な展望をもって国際連帯闘争を発展させ、日本階級闘争の大地にしっかりと根を張った党を建設するために総決起します。そのために党の財政を強化・拡大することが死活的に求められているのです。
 03年の階級闘争は、世界史の新たな一ページを開きました。
 03年冒頭からのイラク反戦闘争の世界的高揚は、ベトナム反戦闘争以上の闘いです。米帝ブッシュの凶悪な世界戦争戦略の発動であるイラク侵略戦争は、ブッシュの思惑とは裏腹にベトナム戦争を上回る泥沼状態となっています。イラク人民の民族解放・革命戦争はついに国連を撤退させ、米軍に数百人の死者を強制し、完全に追いつめています。圧倒的な軍事力でイラクを制圧したかに見えた国際帝国主義は、完全に危機に陥ったのです。このイラク人民の命をかけた闘いが世界の労働者人民の一層の決起を促すことは間違いありません。全力でこの闘いにこたえようではありませんか。

 「万国の労働者の団結」を今こそ!

 ブッシュの足元でも、GDPの高い伸びが宣伝される一方で、巨額の「双子の赤字」、戦費負担の重圧がのしかかり、失業率は高止まりしたままです。戦争と資本攻勢、抑圧に対する反撃が始まっています。
 韓国の労働者の闘いはさらに壮絶を極めています。激しい労組弾圧に対する抗議自決が相次ぎ、民主労総は、11・9の10万人労働者大会から11・12ゼネストに上りつめようとしています。
 このような中で、米韓の最も戦闘的な労組の代表と日本の労働者の大合流が実現するのです。
 イギリスを始めヨーロッパでも民営化や社会保障制度の解体に反対するデモ、ストライキが巻き起こっています。
 数百年にわたる労働者階級の闘い――マルクス・エンゲルスが『共産党宣言』を著し、第1インターナショナル(国際労働者協会)を設立した闘い、そして何よりもレーニンを先頭としたボリシェビキが第1次世界大戦に際して、「帝国主義戦争を内乱へ」と訴えてロシア革命を実現した闘い――の伝統が、その後のスターリン主義的変質や第2次世界大戦の惨禍、戦後の国際的革命を絞殺し形成されたヤルタ・ジュネーブ体制とその崩壊を経て、21世紀の現代によみがえりつつあります。「プロレタリアは、この革命において鉄鎖以外に失うものは何もない。プロレタリアが獲得すべきは全世界である。万国のプロレタリア、団結せよ」――この『共産党宣言』の結語こそ、現代世界に新たな光を放っているのです。
 今回の総選挙で「マニフェスト選挙」が呼号されました。しかし、それは労働者の投票すべき政党がない翼賛選挙でした。マニフェストと言うのなら、そもそも『共産党宣言』こそ最初の労働者のマニフェストであり、労働者階級の自己解放―共産主義革命の道筋を明らかにしたのです。
 今、日本経団連=日帝ブルジョアジーやその御用学者、「連合評価委員会」、そして連合指導部どもは、口をそろえて「米ソ冷戦構造の崩壊によりイデオロギーの時代は終わった」と言います。°米ソ対決がなくなったから、階級対立もなくなったのだ。だから、労働者は資本主義体制を維持するために政府や資本家と共同して、国際競争に勝ち抜くために一生懸命に働くべきだ″と、躍起になって労働運動から階級性を一掃しようとしています。「共産党」を名のる日本共産党までもが「労働者階級」や「団結権、ストライキ権」などの用語を綱領から一掃しようとしています。
 冗談ではありません。富める者が富み、貧しい者がもっと貧しくなる。自殺者と失業者が急増し、世界中に飢餓が蔓延(まんえん)しています。これだけ国内の階級格差、世界の帝国主義国と新植民地体制諸国の格差が鮮明になった時代はないではありませんか。これが資本主義・帝国主義が生み出している現実であり、その末期が来ていることを示しています。

 革命の大事業を達成するために

 世界の労働者階級は、不断の賃金引き下げ圧力に抗して、ギリギリの生活の中から、団結して生活と権利を防衛し資本家階級を打倒するための費用を、労働組合や労働者党に拠出してきました。それは労働者階級の生活に必要な資金なのです。そうして労働者階級の闘いは前進したのです。
 革共同は今夏、この世界的な激動の時代に真に世界革命―日本革命を実現できる党への生まれ変わりをかけて〈新たな指導方針>を提起しました。91年5月テーゼ―01年第6回大会の路線を、この新たな国際階級闘争の時代に通用する路線として発展させ、労働運動・労働組合運動の実践を、中央指導部の変革を先頭にうまずたゆまず、ひるむことなく実践します。そのカギは、動労千葉労働運動を日本に世界に広げ、動労千葉のように闘うことです。
 自治労大会で「21世紀宣言」をいったん否決に追い込んだ闘いや国鉄1047名闘争の発展など、それは着実に始まっています。小泉=奥田路線と全面対決する労働運動の新潮流をさらに大きく発展させようではありませんか。自衛隊イラク派兵を阻止し、日米韓労働者の共同闘争で朝鮮侵略戦争を阻止しようではありませんか。
 革共同は、新生マル青労同の建設に向かって前進する若い同志たちのみずみずしい闘いを断固として支持します。革命的共産主義運動の次代を担う指導部をつくり出すために援助を惜しみません。
 革共同は、皆さんから寄せられるカンパを一円たりとも無駄にせず、この革命の事業に最も有効に役立てたいと考えています。
 昨年暮れに爆取裁判被告の3同志を奪還したのに続き、星野文昭同志、福嶋昌男同志、水嶋秀樹同志ら全獄中同志の早期奪還のために全力を挙げて闘います。
 国労5・27臨大闘争弾圧で1年を超えて獄に捕らわれ続けている8人の国労組合員・支援者を、獄中で年を越させては絶対になりません。「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」の皆さんともに、一刻も早く保釈奪還をかちとるために闘います。
 例年を上回る大カンパを寄せてくださることを重ねて訴えます。

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週刊『前進』(2126号3面1)(2003/11/17)

都労連11・18スト貫徹を 石原都政の大リストラ阻止へ 03秋闘を闘いぬこう

 都労連は10月20日に中央委員会を開催して、11月18日のスト戦術を中心に03秋闘の方針を確定した。03秋闘は、小泉=奥田路線、とりわけ公務員制度改革や、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太方針V)」の地方行財政を破壊し切り捨てる「三位一体」攻撃、市町村合併攻撃などと全面対決する闘いである。同時に、石原慎太郎東京都知事の「東京から日本を改造する」という東京大改革攻撃との正面激突は避けられない闘いである。そしてまた03秋闘は、都労連解体攻撃をはね返し、都の自治体と公営企業の労働者および教育労働者の生活と権利を防衛する闘いである。都労連、特区連、市町村職労に結集する公務員労働者の総決起を訴える。

 ダブル削減により5年間に109万円減

 東京都人事委員会は10月7日、都知事および都議会議長に対して都職員の給与などを勧告した。その概要は以下のとおりである。
 第一に、給与勧告について。「公民較差是正」として、すでに当初4%、引き続き2%の給与削減が実施されて4年になる上に、人事委は@例月給を3542円(0・8%)引き下げる(2年連続)、A一時金を0・25カ月削減する(5年連続)、と勧告した。年収では平均16万9千円カットで過去最大となる。さらに初任給調整手当、扶養手当、通勤手当の支給方法など、生活給を総合的に引き下げる内容である。
 第二に、実施時期について不利益遡及(そきゅう)を強行するとした。昨年は東京都は実施しなかったものの、全国的には4月までさかのぼって減額調整するという勧告が実施された。これは不利益不遡及の原則(一度支払われた賃金はさかのぼって削減できない)に反するため、各地で訴訟にまで発展している。
 これを見た人事院は、8月に「4月から改定の実施日の前日までの官民較差相当分の解消」を「12月期の期末手当で調整する」と勧告した。都人事委も、すでに実施されている2%の削減以前の給与について公民比較し、較差相当分を削減するよう勧告した。制度が変わっても実際の不利益遡及には変わりがない。実態とかけ離れた比較による一層大幅の賃金カットである。断じて看過できない。
 第三に、人事任用制度においては、主幹制度を口実とした職務職階別加算制度を導入する。業績主義・成績主義でまず「なか太り」の係長級の分断を図る。その上で現業職と行政職の賃金較差を拡大していこうという魂胆である。
 03秋闘の最大の課題は、人事委員会勧告による給与削減との闘いと並行して、行政的給与削減の期間延長を阻止する闘いである。
 労働基本権を制約する代償としての人事委員会勧告に基づかず、都が違法な超法規的行政措置として給与削減を実施してから、すでに4年になる。都が端緒を開いたこの攻撃は、瞬く間に全国の自治体に波及した。これをめぐる闘いは全国的な意味を持っている。
 都職員は「臨時的・時限的削減措置」で、賃金がすでに平均55万9千円カットされている。それに加えて今回で5年連続となったマイナス勧告によって、平均52万8千円が賃金カットされる。この「ダブル削減」の結果、合計で平均108万7千円の削減となる。100万円を優に超えているのだ。生計費原則を無視した政治的な削減である。
 この賃金カットは当初、2年間4%の削減とされたものだ。労使は「人勧制度の崩壊につながる」として「2年間で終了」でいったん妥結した。にもかかわらず、都議会の介入によってさらに2年間2%の削減となった。その期限は来年8月までである。都はこれを再延長しようとしているのだ。これ以上の削減を断じて許してはならない。
 東京都は03人勧と前後して、一層劇的で戦略的な政策を次々に発表した。

 4千人削減と民営化を狙う財政再建計画

 7月24日に「都政の構造改革の視点と方向」を3副知事名で依命通達し、9月になって「新たな都庁改革アクションプラン(中間まとめ)」、10月17日に「第2次財政再建推進プラン(3カ年計画)」を発表した。これらの石原行革リストラ攻撃を決定的に重視して、徹底対決して闘おう。
 第一に、「内部努力」とコスト管理である。
 @給与の削減では、退職金の見直し(当面62・7カ月を59・3カ月に削減)、退職特別昇給の廃止、A定数の削減では、統廃合とアウトソーシング、人材派遣の活用、管理部門の10%削減、都立学校事務の統廃合などにより、04年度から3年間で4千人削減、B人事制度では、能力・業績主義の全面的導入、Cコスト管理では、建築土木と管理事務の外注化、都営住宅と都立公園の区市町村への移管ないし民間委託、学校教育費の補助と助成の削減など「最小コストで最大サービス」をうたっている。
 第二に、「施策の見直し」である。@「費用対効果の原則」に基づくスクラップ・アンド・ビルドの徹底、A官民の役割分担、B区市町村との役割分担の基準の徹底、C都事業部門の廃止・民営化・区市町村への移管、公営企業の民営化・独立行政法人化を打ち出した。具体的には地下鉄、下水道、病院の公社化・民営化・独立行政法人化だ。
 第三に「歳入の確保」である。@受益者負担の適正化(高齢者や「障害者」などへの軽減措置の圧縮)、A使用料や手数料の値上げ、B徴税努力などである。
 第四に、「地方税財政制度の改善」である。税源移譲、地方交付税、国庫補助負担金の「三位一体改革」について、特に国に対して基幹税の税源移譲を求めている。また、東京都が唯一の地方交付税の不交付団体であることを確認して、@首都警察業務への国庫負担の増額、国道維持費用の地方負担分の廃止、A首都高速道路公団への補助を是正、B庁舎の一部を民間事業に貸し付ける――など、「首都東京機能」を再編成しようとしている。
 また石原知事は7月1日の都議会で所信として、03年度で期限が切れる「都庁改革アクションプラン(都政改革ビションT)」について言及し、新たなプランの策定を表明した。これに伴って東京都は9月に「新たな都庁改革アクションプラン(中間まとめ)」を発表した。これらのプランを、00年7月の「東京都における人事制度の現状と今後の方向(人事制度白書)」、02年7月の「人事制度白書U」と一体のものとして徹底批判しよう。人事給与制度の見直しは、04年通常国会に提出されようとしている公務員制度改革法案に先行したものだ。
 第一は「民間との協働」をうたった都立病院改革プログラム(02年7月)に基づく公社化・民営化方針である。
 第二は「交通局、水道局、下水道局の経営形態の抜本的な見直し」である。@都営地下鉄は04年4月から東京地下鉄株式会社へと民営移行する営団地下鉄との関係を検討する、A都営バスは管理委託による経営の効率化を図る、B水道事業に民間活力を導入する、C築地中央市場を豊洲新市場に移し、PFI(Private Finance Initiative「民間資金活用」)による経営形態に変更するなど、上下水道、都営交通、病院・福祉施設、中央市場などの大民営化方針が打ち出された。公務員労働者、とりわけ現業労働者の大量首切り攻撃である。

 首都治安強化と排外主義の扇動を許すな

 9月1日の東京都の「防災訓練」は、今や自衛隊の治安出動・有事出動訓練、都民=労働者人民の動員訓練など戦争動員の領域にまで踏み込んでいる。
 さらに石原都知事は9月、右翼による朝鮮総連や広教組などへの爆発物や銃撃による一連のテロ事件と軌を一にした右翼による田中均外務審議官への爆発物テロを称揚し、朝鮮総連の中央本部、東京都本部、朝鮮出版会館に対して地方税法を根拠に差し押さえ手続きを強行した。
 また、「『日韓併合』は(朝鮮民族の)先祖の責任」「セカンドベストとして日本につくことを選択したというのが正確な歴史」「日本の植民地主義というのは人道的で人間的」と暴言を吐き、日帝の朝鮮植民地支配を正当化し、北朝鮮侵略戦争に向けて排外主義を扇動した。
 そして石原は、「都職員の削減と警察増員の一石二鳥」として、組合にも諮らずに1000人の都職員の警視庁への派遣を一方的に提示した。任用も労働基本権もまったく別の公安職に都職員を派遣するという暴挙である。やがては、都職員であるかぎり行政職だけでなく現業職や教職の労働者も警察に派遣されるということだ。都民・都職員を犠牲にした行革リストラであり、首都治安・弾圧体制の強化であり、労働基本権や任用制度を無視する暴挙である。絶対に阻もう。
 都教委は卒業式・入学式で「日の丸は舞台壇上正面」という通達を出した。
 これらの石原の攻撃と闘う都の労働者の団結をつくり出そう。この闘いは日本労働運動の最先端の攻防である。

 団結した力で石原都政との全面対決を!

 「第2次財政再建プラン粉砕、ダブル削減反対、給与削減期間の延長絶対阻止、都職員の警視庁への1000人派遣反対」を高々と掲げて、石原都政との全面対決に突入しよう!
 先の自治労大会において、自治労都庁職を中心に東京都本部の圧倒的多数の代議員が「自治労21世紀宣言」に「×」票を投じた。都下の公務員労働者には、石原・小泉への怒りと闘う意欲があふれている。
 都庁職を始め都労連に結集する6単組10万人の団結した力で、11・18ストに断固として突入しよう。すでに11・4都労連第4波5千人集会、都庁舎内座り込み、都庁包囲デモなど、多様で強力な戦術で闘争が開始されている。11・11東京地公労決起集会や独自課題を設定しての単組の都庁前集会などを駆使して、11・17の1万人集会(都庁中央モール)に上りつめよう。
 03都労連秋闘の中に断固とした新潮流派の運動を根づかせることこそ、03秋闘の戦闘的爆発の鍵(かぎ)である。11・9労働者集会に結集した自治体労働者の力で、03秋闘を闘おう。
 〔革共同自治体労働者委員会〕

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週刊『前進』(2126号3面2)(2003/11/17)

2003年11・4都労連第4波集会

 ストライキで闘うぞ!

 11月18日の2時間ストに向けて行われた11・4都労連第4波集会には、5000人の労働者が参加した(11月4日 都庁前)

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週刊『前進』(2126号3面3)(2003/11/17)

安全崩壊は民営化が元凶 JR東日本で事故続発 反合・運転保安闘争を

 保守外注化が最大の原因だ

 9月27、28日、JR中央線の高架化に伴う線路切り替え工事のミスにより、大規模な輸送混乱が発生した。線路分岐器(ポイント)と踏切の計9カ所もの配線ミスが見つかり、東京・三鷹―立川間で運転再開予定の28日午前6時から8時間近くも運休した。前代未聞の工事ミスである。
 配線工事を担ったのは、「日本電設工業」という関連会社だ。配線図そのものが誤っていたり、正しい配線を取り外して間違って付け直したりしていた。JRは点検もしていなかった。そもそもJRのマニュアルでは、工事後の点検を行うのは関連会社だけとなっている。「単純ミスが重なった」などというものではない。JR東日本という鉄道会社のあり方の根本にかかわる問題である。
 10月6日には、京浜東北線の大森―大井町間で線路補修工事の後にショベルカーのショベル部分を置き忘れ、始発電車が衝突するという事故も発生した。この工事を担ったのも関連会社の「東鉄工業」だった。
 「JRはリストラ策の一環で、自前の工事を減らし、次々と子会社を設立して工事を任せている。その子会社はさらに下請けに頼むといった構図で、責任の所在がはっきりしない。特にJR東日本で目立つ」(10・8朝日)といった学者らの指摘が商業新聞紙上にも多数載っている。
 10月7日にはJR東日本の大塚社長が謝罪し、21〜23日は国土交通省がJR東日本本社などへの立ち入り検査を実施した。特定の事故を理由にした立ち入り検査は、JRグループの中でも初めてのことだ。
 JR東日本の安全は崩壊的危機にある。これは何よりも国鉄分割・民営化がもたらしたものであり、保守部門の外注化を始めとする第2の分割・民営化攻撃が最大の要因である。鉄道輸送にとって根幹をなす工事や検査の一切を関連会社に丸投げする、JRの無責任きわまりない経営姿勢が招いた事故だ。
 01年末には、保線、電力・信号通信、土木・建築などの設備部門の業務の全面的な外注化が強行された。JR本体の社員3000人を削減し、2000人を出向に出した。東鉄工業は、約1600人の社員のうち約600人がJRから出向している。JRが工事費用を減らすため、出向先では労働強化が進み、「手抜きが当たり前」と言われる現実がある。

 安全切り捨ての「市場原理」

 こうしたJR東日本の経営を規定しているのが、00年11月に策定された中期経営計画「ニューフロンティア21」だ。それは「冷徹な優勝劣敗の市場原理と自己責任の原則に貫かれた真の意味での競争社会が到来している」として、徹底した効率化とコスト削減を叫び、5年間に1万人を削減する計画である。
 今回、ようやく国交省が立ち入り検査を行ったが、そもそも国交省は、「規制緩和」の名のもとに、こうしたJRのあり方を促進してきた。98年11月の運輸技術審議会(当時の運輸相の諮問機関)の答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」は、「当事者の自己責任のもとに市場原理に委ねられるべきものは市場原理に委ね、国の関与を縮小することが求められている」「低コスト化等による鉄道事業の活性化が期待されている」としていた。
 「市場原理」とは、利潤を上げ、競争に勝つためにどれだけコストを抑えるのかという原理だ。一方、安全の確保のためには、膨大な人的投資・物的投資を必要とする。それ自体は利潤を生み出さない。だから市場原理を優先すれば、安全はいやおうなしに切り捨てられるのだ。

 資本・カクマル結託が根本に

 さらに根本的な要因は、JR資本と松崎・JR総連カクマルの結託体制である。01年8月1日の「21世紀労使共同宣言」は、労資一体で「ニューフロンティア21」を推進することを宣言した。そして外注化推進の先頭に立ってきた。松崎は、安全について「責任追及から原因究明へ」と言ってきたが、これは労働者の責任が問われても、絶対に経営の責任を追及しないということなのだ。断じて許しがたい。
 また、国労中央は、国労組合員が標的とされた外注化攻撃に対して、何ひとつ闘おうとはしなかった。そればかりか、出向先の組合員から組合費を「チェックオフ」で会社に徴収してもらうことをお願いするという惨状を呈している。
 これに対して、動労千葉は、「闘いなくして安全なし」の原点に返って「反合・運転保安闘争」を強化して闘っている。構内運転や列車の検査・修繕業務の外注化をストライキで阻止しているのだ。
 鉄道の安全問題は、「新自由主義」による民営化攻撃の中で、イギリスや韓国を始め国際的な問題になっている。民営化されたイギリスの鉄道は、事故が相次いだために再国有化の闘いが巻き起こり、保線業務を事実上、国の管理下に戻すことが決まっている。
 安全の崩壊は、最近の「北米大停電」や、苫小牧の出光興産製油所のナフサタンクの2度の火災、新日鉄八幡製鉄所で溶けた鋼が流れて労働者1人が死亡、エクソンモービル名古屋油槽所の火災で6人死亡など、大問題となっている。
 動労千葉のように闘うことが求められているのだ。

JR東日本で起きた最近の事故など
9/27-28 中央線三鷹〜国分寺間で高架化に伴う線路切り替え工事。武蔵小金井駅周辺で、ポイントなど9カ所の配線ミスが見つかり、運転再開が8時間近く遅れる。18万人に影響
10/1 武蔵小金井駅付近で、別のポイント2カ所が故障。ネジの調整不足が原因
10/3 同駅で新設した架線のカバーが燃える
10/6 京浜東北線大森〜大井町間で、始発電車が工事器具と接触。東十条〜蒲田間が4時間以上区間運休。東海道線も一時運転見合わせ。業者の置き忘れが原因(同様の事故が過去5年で5件)
10/10 中央線三鷹〜国分寺間で、人や車が踏切を渡りきらないうちに遮断機が下り、電車の緊急停止が相次ぐ。線路切り替えで踏切が延びたため
10/17 上野駅で信号トラブルのため、宇都宮線、高崎線で一時運転見合わせ
10/23 成田線布佐駅で、保線点検車が無人のまま約6`走り、踏切15カ所を遮断機が下りていない状態で通過
10/24 常磐線取手〜天王台間で、快速列車のブレーキが突然作動し、緩まなくなるトラブル
*報道された主なもの

 

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週刊『前進』(2126号3面4)(2003/11/17)

世界の労働運動 ドイツ 10万人がベルリンデモ 社会保障解体に怒り噴出

 予想の10倍結集

 11月1日、ドイツ・シュレーダー社民(SPD)・緑連立政権の社会保障制度解体攻撃、「アジェンダ(計画)2010」に反対して、首都ベルリンで10万人の労働者がデモンストレーションに決起した。11・1闘争の予想を超えた高揚は、ドイツ労働者階級の戦闘性が健在であること、アジェンダ2010粉砕の闘いが開始されたことを告げ知らせている。
 11・1デモを呼びかけたのは、ドイツ最大の労働組合である公共サービス労組Ver.di(ヴェルディ)、反グローバリズム運動のATTAC、民主社会党(PDS――旧東ドイツ統一社会党=スターリニスト)、福祉団体などだ。もうひとつの巨大労組、金属労組IGメタルの旗を掲げた労働者の参加も目立った。主催者が当初予想した1万人を10倍する大結集となった。
 アジェンダ2010は、所得減税などによる不況打破と雇用拡大をうたっているが、その中身は、解雇制限の緩和、失業手当・年金支給の削減、医療費の患者負担増である。不安定雇用労働者が増大し、失業者・高齢者が困窮化する一方で、大企業や高額所得者がますます富裕化することは必至だ。
 労働者たちは「シュレーダーは泥棒だ」「すべての人びとに貧困を」などの批判と皮肉を込めプラカードを掲げたり、ゼネストを要求したりして行進した。
 10月中旬のIGメタルの大会でも労働者はシュレーダーの演説を激しくやじった。Ver.diの指導者も「すべての人は基本的な社会保障を受ける権利を持っている。金持ちがますます金持ちになり、貧乏人がますます貧乏になるのは許せない」と批判している。だが、他の多くの労組指導者は「政府の提案は福祉国家の解体につながる」と批判しつつも、「SPDと労組との伝統的な協力関係に亀裂が生じる」と牽制(けんせい)するにとどまっている。
 ここ10年、特にEU成立とユーロ導入の中で、ドイツにおいても社会保障制度の改悪、労働法制の改悪・規制緩和、リストラ・大量解雇などが激しく進められてきた。とりわけ、94年に政労資協議機関「雇用のための同盟」を設立して以降は、政労資の合意でそれらが実施されてきた。
 シュレーダー政権は99年に緊縮財政、社会保障削減、企業減税などの「ドイツ再生プログラム」を提案。ドイツ労働総同盟(DGB)は「雇用促進賃金政策」の導入と引き換えにこれを承認した。
 その上でシュレーダー政権は今年の春、3年におよぶゼロ成長=大不況の突破、争闘戦での生き残りをかけて、全面的な雇用・社会保障制度解体攻撃としてアジェンダ2010を提起してきたのだ。
 もはやSPDと結ぶDGBの「雇用のための同盟」などの欺瞞(ぎまん)政策すなわち労資協調主義、帝国主義的労働運動と決別し、帝国主義(資本と国家)と対決する階級的労働組合運動=新潮流運動を大きく登場させる以外に、ドイツの労働者が雇用と社会保障、生活と権利を守る道はないことは明らかだ。

 雇用政策の転換

 アジェンダ2010の目玉は雇用政策の改革だ。ドイツ経済を再活性化させ、440万人、10・5%に上る失業問題を解決することが目標だ。
 改革案のポイントは以下のとおり。@失業手当の支給期間が現行32カ月から12カ月に減らされる。A失業手当を受ける求職者は、ジョブセンターが紹介する仕事に就かなければならない。低賃金で労働条件が悪くて希望しない仕事でもだ。それが嫌なら仕事と失業手当を同時に失う。B小企業、創業企業はパートタイム労働者や一時雇用労働者の社会保障保険料を負担しなくてもよい。
 労働者にとって到底認められない大幅な権利剥奪(はくだつ)だ。しかも、全体として賃金引き下げ圧力が強まり、いわば賃金ダンピングが生じる。改革案は賃金コストの縮減で資本を助け、競争力を高めるためのものでしかない。
 そもそも、現在50万人しか求人がないのに、440万人の失業者がどうやって職を見つけられるのかという根本問題がある。
 このほか、生活保護の削減、年金受給年齢の67歳への引き上げ、医療費患者負担額の引き上げと医療保険料の引き下げなどがある。
 シュレーダーは、希望しない仕事に就くことを強制される労働者に各地域ごとの「慣習的賃金」を保証することで、反対派の社民党左派に譲歩した。
 その上でシュレーダーは、10月17日の連邦議会(下院)での法案採決を前に首相辞任の脅しをかけて社民党左派の6人を屈服させ、かろうじて社会・労働市場改革諸法案を可決に持ち込んだ(306対291)。これでアジェンダ2010の大半が承認された。
 だが、強硬な保守野党が過半数を占める連邦評議会(上院)の審議がまだ残っている。会期はクリスマスまでしかなく、法案成立は困難になっている。闘い方によっては廃案は可能だ。
 下院の法案可決を受けてシュレーダー政権は10月19日、来年の退職者年金支給凍結を発表した。国家の年金基金の実質赤字1030万ユーロ (1200万j)を解消するためだという。
 年金支給の実質削減はドイツ連邦史上初めてだ。高齢者の受ける打撃は深刻だ。ドイツの2千万人の年金生活者を代表して、VdK(年金生活者協会)のヒリンガー会長は年金凍結との対決を表明した。年金凍結は、11月1日の抗議デモの大結集を促す決定的な要因となった。
 現役労働者と年金生活者、失業者、被抑圧民族人民、ドイツの全労働者階級とシュレーダー政権・ブルジョアジーとの階級激突の構図へ持ち込むことが勝利の道だ。11・1はその突破口を開いた。
 (藤沢明彦)

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週刊『前進』(2126号3面5)(2003/11/17)

対角線民主党と連合が亀裂!?

 民主党と連合の間に亀裂が走った!? 民主党が作成したマニフェスト(政権公約)で、「連合との約束が後に回った」という。『月刊連合11月号』が、その経緯を弁解がましく説明している。
 民主党と連合は、政策担当者をとおして数回の調整を行い、「失業のない経済」などの「五つの約束」を確認した。ところが、印刷段階に入ったマニフェストには、この「五つの約束」とは別の「七つの重点政策」が前面に出されていた。それは「公務員の人件費1割削減」「基礎年金の財源には消費税を充て」などであり、「雇用」「失業」などは文字さえなくなった。
 連合は、これに仰天し、なんとか約束を守ってくれと懇願したが、論議は平行線のまま。結局、連合側が折れた格好で、10月10日に「政策協定」を結び、連合は「民主党を全面的に支援する」ことを誓った。
 当初の「五つの約束」は、七つの重点政策を再整理した「『脱官僚宣言』―五つの約束、二つの提言」の後に(要約版では裏表紙)、「国民のみなさんにお約束します」として並べられるという奇妙な構造となった。しかも、その「お約束」も、失業率を4%台前半まで容認し、「国際競争力強化」など日本経団連の主張を全面的に取り入れたものだ。そして、「『論憲』から『創憲』へ」という改憲論を盛り込んだのだ。
 『月刊連合』は「話しは、やや、ややこしいが、これで民主党と連合の関係が冷たくなったわけではない。その証(あか)しとして、連合は……マニフェストの理解を深めることを再確認した」と結んでいる。
 連合は結局、「組合員の疑問」に答えることなく、°労働組合の要求を入れるために努力したが、それが後回しになったのは「政権交代」のためには仕方のないことだ。民主党のマニフェストを理解して選挙運動をやれ″と言って、翼賛選挙への動員を押しつけたのだ。
 (S)

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週刊『前進』(2126号4面1)(2003/11/17)

止めよう! イラク派兵イラク人民と連帯し闘おう 米帝を追いつめるゲリラ戦
 “侵略と虐殺の銃をとれ”と命令する小泉打倒せよ

 イラク人民の民族解放・革命戦争が爆発し、国連や赤十字国際委員会すら撤退し始める中で、日帝・小泉政権は自衛隊のイラク侵略派兵を強行しようとしている。これを阻止することこそ、日本人民の最大の国際的な責務だ。11・9労働者集会で切り開かれた国際連帯闘争の地平の上に、11〜12月自衛隊イラク派兵阻止に立ち上がり、戦争突撃と改憲の小泉政権を打倒しよう。

 燃え上がる闘い 米軍ヘリ撃墜し36人をせん滅する大戦闘

 今や米帝はイラクをめぐりベトナムの時以上の危機に陥っている。
 11月2日、米軍のヘリコプターが撃墜され米兵16人が死亡、20人が負傷した。1回の攻撃で出た米軍の犠牲者としては最大規模だ。同日、バグダッドやファルージャなどでも米軍の車列が攻撃され、多数の米兵が死亡した。
 米テレビ局は、米軍ヘリ撃墜の喜びにわくイラク人民の姿を映した。地元の住民は「イラク人は米軍に出ていって欲しいと思っている。今にイラクはベトナムのようになる」と語っている。他方で、米兵の遺族は「こんなことはもうやめて!」と悲痛な叫びを米政府に突きつけている。
 ラムズフェルド米国防長官は「今日は悲劇的な日だ」と打撃感を露わにした。そして「戦争ではこのような日もある、ということを理解する必要がある」と居直り、アメリカ人民にこれからも犠牲を受け入れろと強要した。ブッシュはこのヘリ撃墜事件には一言も触れられず、翌日に「米国は決して逃げない」と言うのがやっとだった。
 9月以降、5月の4倍にあたる1日20件以上のゲリラ戦闘がたたきつけられ、最近では平均35件も起こっている。武装組織間の連携が強まり、計画性・組織性や戦闘の高度化が著しい。
 ブッシュは、「旧フセイン政権の残党か外国のテロリストか、おそらくはその両方(の犯行)だ」などと言って非難したつもりになっているが、イラク人民、ムスリム人民自身の反占領闘争への決起を見据えられないのだ。ゲリラ戦闘の大半はイラク人民によって行われている。ゲリラ戦闘に参加した26歳の理容師は「サダムのことはどうでもいい。おれたちの目的は、アラブに敵対する米国を追い出すことだ」と語っている。多くのムスリム人民が米軍と闘うためにイラク入りしているが、彼らが駐留軍に拘束されず、ゲリラ戦闘をたたきつけているのは、イラク人民から圧倒的に支持されているからだ。

 闘う労働者階級

 フセイン体制下で抑圧されてきた活動家が、公然と登場し労働者人民の闘いをけん引している。フセイン政権の打倒を歓迎した人びとも、米英軍が人民を弾圧・虐殺し、石油と資産の略奪を行っている現実に怒り、闘いに決起している。
 イラクの労働者階級は、IFTU(イラク労働組合連合)というナショナルセンターと、失業労働者組合(UUI)の2つの組合を結成し、反占領軍の組織的な闘いを行っている。IFTUは1980年にフセインによって非合法化された労働組合の活動家たちが、UUIはイラク共産党を批判して1991年に結成されたイラク労働者共産党が主導して作った。IFTUは労働者の権利や賃金などをめぐる職場闘争を闘い、UUIは暫定占領当局(CPA)に対して未払い賃金の支払いや仕事を要求して闘っている。
 ムクタダ・サドル師らのシーア派グループが10月10日、CPAが設立した統治評議会に対抗して新政府の樹立を宣言した。サドル師は「米国に支配された統治評議会と新政府のどちらを選ぶのか。国民に判断を求める」と訴え、米軍や親米的なシーア派勢力との衝突をくり返しながら、支持を拡大している。
 米英軍を震え上がらせるゲリラ戦闘は、こうしたイラク人民の米英占領軍に対する広範な怒りを土台に闘われているのだ。

 イラク人民の声 “ブッシュを助ける復興支援に反対だ”

 10月23、24日にイラク復興支援国会議がスペインのマドリードで開かれた。総額330億j以上の拠出表明(世銀などが必要と見積もった550億jの6割)があったことで、パウエル米国務長官は会議の成功を強調した。しかしその約9割がアメリカ、日本、世界銀行によるものである。参加国の多くはイラクの治安情勢の悪化を懸念する発言を行った。
 何よりもフランス、ドイツは外相も参加させず、フランス、ロシアは新たな資金拠出を表明しなかった。米帝と、フランス、ドイツ、ロシアとの対立と亀裂は深まるばかりだ。米帝はフランス、ロシア、日本に対イラク債権の放棄を要求しているが、今のところ応じようとはしていない。
 日帝は、10月16日に行った国連安保理決議「1511」の採択に続いて、最も悪らつに米帝を援護射撃した。日帝は「イラク復興」に名を借りてイラクの石油や産業上の利益のおこぼれを狙い、世界戦争の推進軸として登場しようと絶望的な突出を図っているのだ。
 バグダッドを拠点とするNGO「イラク占領監視国際センター」は22日、「資金が事実上、占領当局の監督下に置かれる限り、私たちはいかなる復興支援にも反対し、これを非難する」と、イラク復興支援国会議を批判する声明を発した。元ジャーナリストのイラク人女性所長、エマン・アフメド・ハマスさんは「この会議はイラク国民を助けるためではなく、ブッシュ米政権を助けるための政治ショーにすぎない」と弾劾した。
 米帝は「イラク復興資金」を米軍の占領政策を強化し、イラク人民の闘いを圧殺する資金として使うことを打ちだしている。アラン・ラーソン米国務次官(経済担当)は10月22日、アメリカが表明している203億jの「イラク復興資金」について、「緊急性の高い社会基盤整備や治安関連に直接投じる」と述べ、世界銀行と国連が共同管理する信託基金には組み入れず、直接CPAに与えることを明らかにした。ラーソンは、その理由を「アメリカはイラクで、まさに進行中の事業を抱えているためだ」と発言した。進行中の事業とは、対テロ戦争としてのイラク侵略戦争の遂行であり、民族解放闘争の圧殺とイラクの再植民地化ということだ。
 イラク復興支援国会議と一体のものとして23日に、イラクへの投資を狙う民間資本の会合がマドリードで行われ、日本企業8社など各国から225社が参加した。これらの企業を前に、スノー米財務長官が「みなさんがイラク国内のリスクを気にしていることは承知している。だが、ビジネス機会もまた存在する」と発言した。イラク統治評議会の代表は「法人税は15%、外資100%でもOK。本国への送金規制も緩やかで、国営企業も民営化する」と表明した。これが帝国主義強盗どもによるイラク資産のぶんどり合いでなくて何か。

 毎日百人殺され

 イラク人民が要求しているのは、「復興人道支援」などではなく、米英占領軍の撤退とイラク人民による国づくりだ。
 そもそも「大量破壊兵器」のデマで数万人の命を奪い、イラク全土を一方的に侵略し破壊しておいて何が「復興支援」だ。まず米英帝国主義の戦争責任を追及し、賠償することが先決ではないか。「人道支援」と言いながら、なぜ劣化ウラン弾(DU)の放射能除去やクラスター爆弾の撤去を行おうとしないのか。
 米兵の死者は報道されるが、イラク人民が虐殺されても見向きもされない。「占領に反対するイラク民主主義者同盟」のムニール・チャラビさんは、「イラクでは毎日百人が死んでいる。その半分が占領軍に殺されたと思われる。その相当数は10歳以下の子どもたちだ」と弾劾している。

 “世界変えよう” イスラエル兵役拒否者が米兵に呼びかけ

 米帝は米軍の解体的な危機に直面し、イラク侵略戦争の社会的財政的な負担に耐えられなくなっている。日帝・小泉政権はこうした米帝の危機につけ込み、米帝を支えることで、奥田ビジョンで打ちだした「東アジア自由経済圏」構想の実現と北朝鮮侵略戦争に向かって突っ込んでいる。
 防衛庁は11月4日、イラク現地に派兵される陸上、海上、航空の3自衛隊による統合連絡部隊を初めて編成し、3自衛隊の統合運用のテスト・ケースとすると発表した。これによって、イラクに派兵される総勢1200人の陸海空自衛隊が統一した指揮のもとで一個の侵略部隊として展開することになる。日帝はイラク侵略派兵を北朝鮮侵略戦争の突破口として使い切ろうとしているのだ。
 防衛庁・自衛隊は政府の派遣命令を待たずに、陸自北部方面隊の第2師団(旭川)を中心に要員選抜を始めるとともに、予防接種やアラビア語研修、イスラム文化の講義など、矢継ぎ早に派遣準備を進めている。
 こうした戦後初の本格的な侵略派兵を勝手に進めさせていいのか。自衛隊の侵略派兵をとめるために、今すぐ行動しよう。不安と動揺の中にある自衛官と家族に、侵略出兵の命令は拒否しなければならないし、拒否できるんだと訴えよう。
 イスラエルで兵役を拒否したマータン・カミネール君は、アメリカで兵役拒否に立ち上がった同じ世代の海兵隊員に手紙を送った。
 「他国の土地を占領し、人びとを弾圧している支配エリートの経済的・政治的利益を追求するための代償を支払わされるのは、縛られて顔を床に押しつけらたり、学校に行く途中で射たれたりする、イラクやパレスチナの子どもたち」「イスラエルやアメリカの兵士たちも、代償を支払わされる」「スティーブン、僕らくらいの年齢の人びとは、自由に学び、働き、世界を変えようとしなくてはいけない。僕らの年齢の人びとは、パーティーや抗議に参加し、人びとと会い、恋に落ちて、僕らの世界がどのようであるべきか議論しているべきなんだ」

 12月派兵阻止へ

 全世界で若者が新しい世界のために立ち上がっている。闘うイラク人民と連帯し、全学連と青年労働者を先頭に11・29ワールドアクションを始め、11〜12月の自衛隊派兵阻止闘争を闘い、世界戦争に突き進む帝国主義を打倒しよう。
 (早乙女優)

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週刊『前進』(2126号4面2)(2003/11/17)

“イラク占領反対” 10・26沖縄 熱気溢れ国際通りデモ

 10月26日、米ANSWERの呼びかけにあわせ沖縄でも世界反戦統一行動を開催した(主催・沖縄実行委員会)。「イラク軍事占領反対」と「米英軍の即時撤退」を要求し、「自衛隊のイラク派兵反対」を訴えようと県庁前広場に約100人が集まった。会場には劣化ウラン弾の放射能被害に苦しむイラクの子どもや軍事占領の様子を伝える写真が展示され、カップルや家族連れなどが見入った。
 フォーク歌手のまよなかしんやさんが「基地に苦しむ沖縄から大きくイラク占領ヤメロ、自衛隊はイラクに行くなの声をあげていきましょう」と開会を宣言、自作の歌や海勢頭豊さんによる反戦・平和を求める歌を披露した。
 沖縄から韓国へ反基地運動で交流にいく代表や沖縄を平和行脚する仏教者からのメッセージをうけ、100万人署名運動・沖縄の会を代表して北中城村議の宮城盛光さんが「自衛隊のイラク派兵を許さない運動を沖縄でしっかりつくっていきましょう」と訴えた。
 集会後、国際通りをピースウォークに出た。太鼓などの楽器をもった若者が先頭に立ち、ラップ調の掛け声で「自衛隊派兵やめろ」「DON,T ATTCKIRAQ!」と呼び掛け、高校生が飛び入り参加するなど熱気につつまれた。
 ピースウォーク後、ダグラス・ラミスさんが「アメリカ国内でも最初はイラク攻撃に異議を挟むことが許されない雰囲気がありましたが、今では今回の戦争は間違っていたと多くの人びとが気付き始めています。正義は私たちにあります。今後もねばり強く行動を積み重ねて行きましょう」と感想を述べた。最後に年明けのイラク反戦1周年統一行動に向けて沖縄でも今から準備を進めることを参加者一同で確認した。
 沖縄では9月には辺野古沖で米軍の強襲揚陸艦による無届け演習が強行され、10月に入って名護市レンジ10における実弾射撃演習が地元の反対を押し切って再開された。米軍は名護市辺野古への新基地建設の策動を強めながら、無法な演習を繰り返している。また自衛隊は今年末にも鳥島で次期哨戒ヘリのミサイル発射訓練を強行しようとしている。この日の闘いは、米軍や自衛隊の軍事演習を許さない闘い、イラクへの自衛隊派兵反対のうねりが大きく発展していくステップとなった。

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週刊『前進』(2126号4面3)(2003/11/17)

自衛艦2隻の出兵を弾劾 10・28 広島・呉

 10月28日、広島反戦共同行動委員会は、海上自衛隊呉基地で護衛艦「ひえい」「あけぼの」の侵略出兵阻止闘争に立った。政府は、「テロ対策特別措置法」の延長を強行し、アフガニスタン侵略戦争、イラク侵略戦争参戦のために今回の出兵を強行したのだ。
 午後1時、広島大学の学生を先頭にした抗議隊が、2隻が出港待機しているFバース直近のアレイからすこじま公園に結集した。「自衛官は出兵命令を拒否しよう!」と熱烈に呼びかけるシュプレヒコールが、港全体に響き渡った。動揺する自衛官が公園を気にする姿がはっきりとわかる。  
 2時40分から式典が始まった。広島大学の学生が次々とアジテーションを行い、「自衛官の皆さん。この出兵は一部の資本家や政治家の利益のためです。アフガニスタン人民、イラク人民はこの出兵を望んでいない。ともに侵略戦争を阻止しよう」と訴えた。
 3時、黒煙を上げながら出港して行く2隻の護衛艦にさらに激しいシュプレヒコールをたたきつけた。
 呉基地は、イラクへの自衛隊出兵で、「おおすみ」型強襲揚陸艦の出撃基地となろうとしている。広島反戦共同行動委員会は、11、12月イラクへの自衛隊派兵を阻止する呉現地闘争を全力で闘う決意だ。

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週刊『前進』(2126号4面4)(2003/11/17)

労働者の闘いを抑圧する 日本共産党の新綱領案(8)
 ペテン的社会主義論 消された「労働者階級の解放」

 日本共産党の新綱領案は、「労働者階級の解放」という立場・原点を完全に投げ捨てたものである。新綱領案は、労働者階級という用語を抹消した。スターリン主義的に歪曲されたものだとはいえ、これまでの綱領には、「労働者階級の解放」と書かれていた。しかし不破=志位指導部が、「資本主義の枠内での改革」路線を完成し、帝国主義の最後の番兵となって生き延びようとしている以上、「労働者階級の解放」は投げ捨てる対象となったのだ。
 それでもなお「共産党」を名のる以上、日本共産党は、「社会主義・共産主義の社会をめざして」(新綱領案第5章のタイトル)いるかのようにペテン的に振る舞わなければならない。だが、労働者階級の解放を投げ捨てて、共産主義を語ることは不可能である。

 「革命」の追放

 新綱領案第5章は、「日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる」で始まる。これは、現行綱領の当該個所、「日本人民の自由と幸福は、社会主義の建設をつうじていっそう全面的なものとなる。社会主義の目標は、資本主義制度にもとづくいっさいの搾取からの解放、まずしさからの最終的な解放にある」を書き換えたものである。
 現行綱領ではあいまいな表現であるとはいえ、一応、〈社会主義=資本主義の廃止〉が語られていると言える。新綱領案は、「社会主義的変革」が「課題となる」という客観主義的な言い方で、しかも「革命」ではなく「変革」にわざわざ言い換えたことにはっきり示されているように、社会主義革命の最終的放棄・完全な否定である。
 また、新綱領案では、「社会主義・共産主義の日本では、…『搾取の自由』は制限され、改革の前進のなかで廃止をめざす」と言われている。社会主義でも「搾取は存在する」というのだが、搾取とは何か。それは、資本による賃労働の搾取のことだ。つまり、「社会主義日本」でも資本と賃労働の階級関係が基本的に存在しているのである。これは、資本主義の永遠化であり、労働者階級を永遠の賃金奴隷につなぎとめるものだ。
 さらに、新綱領案では、「市場経済を通じて社会主義に進むことは、日本の条件にかなった社会主義の法則的な発展」とされている。革命を否定した上に、「日本の条件にかなった」と言っているのだから、この「市場経済」は完全に資本主義のことである。
 つまり、資本主義の枠内での改革をやっていれば、いつかは社会主義に移行していくと言っているのだ。
 このことを不破は、現在の中国やベトナムの「市場経済的社会主義」の存在をもって、もっともらしく現実的な話であるかのように打ち出している。だが、中国やベトナムは、スターリン主義的国有計画経済が破綻(はたん)して、「市場経済」を導入しているのであって、革命なしの資本主義から社会主義への移行を証明しているわけではない。しかもそれ自身、このままでは破綻必至なのだ。
 要するに、社会主義革命を否定した「資本主義の枠内での民主的改革」に一切を絞り上げているのだ。

 なし崩し移行

 新綱領案では、「生産手段の社会化」がキーワードとなっている。それは、「国民多数の合意」「国会の安定した過半数を基礎として」行われると言う。
 不破議長はこれを、“マルクス、エンゲルスにもとづいている”と押し出している。だが、マルクス・エンゲルスが晩年になって議会をとおした革命路線に転向したという説は、まったくのデタラメだ。
 「生産手段の社会化」とは、ブルジョアジーの財産(資本)を、労働者階級が革命をとおして奪い取り、社会的所有に移す(最初はプロレタリア的国有化)ということである。それは、労働者階級がブルジョアジーの支配(国家権力)を粉砕し、プロレタリアートの独裁(労働者の自己権力)を樹立して、社会主義を建設していくということだ。こうした社会主義革命を抜きに、「生産手段の社会化」を語ってもそれは無意味だ。資本主義社会の議会の討論をとおして、「生産手段の社会化」が次第に進んでいくことなどありえない。生産手段が革命もなくなし崩しに社会的所有に転化していくことなどありえないのだ。

 私有財産保障

 新綱領案では、社会主義・共産主義への発展のあらゆる段階を通じて、「生活手段については」「私有財産が保障される」と新たに書き加えられている。そうすることで、「生産手段のみの社会化」であることを強調している。
 だが、社会主義革命は、労働者階級の搾取の上に成立しているブルジョアジーの存在そのものを廃止し、ひいては階級の存在そのものを無くしていく。それは、ブルジョアジーの生活手段を含むすべての私有財産(資本)を廃止するのだ。それによってマルクス共産主義論における「生産手段の社会的共有を基礎とした個人的所有の復権」がなされていくのだ。この場合、社会の主人公としての労働者の生活手段の「獲得」が、共同的な生産の結果として豊かに保証されるのは当然である。
 日本共産党の「生活手段は私有財産として保障する」論の本質は、ブルジョア的私有財産への侵害は行いません、という誓約でしかない。こうして、日本共産党は、ブルジョア的私有財産=資本関係の存在を永遠化しているのだ。
 日本共産党の新綱領案は、帝国主義と結託し、労働者階級解放の闘いを抑圧し、放棄することの宣言である。
 (西塚孝裕)
 シリーズおわり

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週刊『前進』(2126号4面5)(2003/11/17)

日誌'03 10月28日〜11月4日
小泉「自衛隊は国軍」と公言 国連がバグダッドから撤退

●石原都知事「韓国併合は人間的だった」 石原慎太郎都知事が、「救う会東京」主催の「同胞を奪還するぞ!全都決起集会」で講演し、日本の朝鮮植民地化について、「わたしたちはけっして武力で侵犯したんじゃない。日韓合併を百パーセント正当化するつもりはないが、どちらかといえば彼ら(朝鮮人)の先祖の責任であって、植民地主義と言っても、最も進んでいて人間的だった」と発言した。(28日)
●ブッシュ「イラクは危険な場所」 ブッシュ米大統領がホワイトハウスで記者会見し、イラク情勢について「イラクは危険な場所である」との認識を示した。(28日)
●終結宣言後の戦死米兵116人 イラク中部バラド付近で米軍兵士の乗った車両が爆破され、兵士2人が死亡した。5月1日のブッシュ大統領の戦闘終結宣言以降、攻撃を受けて死亡した米兵の数は計116人となり、終結宣言までの115人を上回った。(28日)
●国連がバグダッド完全撤退 バグダッドで起きた赤十字国際委員会(ICRC)などへの連続自爆テロを受け、アナン国連事務総長はバグダッドから国連の非イラク人要員を完全撤退させると決めた。(30日)
●中朝、6者協議継続で合意 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問中の中国の呉邦国全国人民代表大会常務委員長が金正日総書記と会談し、6者協議の継続で原則的に合意した。(30日)
●退避指示、知事も 国民保護法制について政府は、緊急の際に市町村長が行うとされていた住民に対する一時的な「退避」指示を、都道府県知事も出すことができるようにする方針を固めた。政府は11月にまとめる法案の「要旨」に盛り込む。(30日)
●「改憲国民投票法案出したい」と小泉 小泉首相が改憲に向けた手続きを定める国民投票法案について「自民党内で検討してまとめているが、できれば、早く国会に出して議論した方がいい」と述べ、来年の通常国会に提出したいとの考えを示した。(30日)
●政府、早期派兵の方針変えず 国連のバグダッド退去について、小泉首相は「戦闘地域ではないところで安全に配慮し、状況を見て派遣したい」と述べ、自衛隊早期イラク派兵の方針は変えないと強調した。(31日)
●「核武装すべき」自民30%、民主11% 毎日新聞の総選挙の候補者アンケートで、日本の核武装について、自民党候補の30%と民主党候補の11%が「国際情勢によっては検討すべき」と回答した。(11月1日)
●米ヘリ撃墜で16人死亡 バグダッド国際空港に向けて飛行中の米軍の輸送用大型双発ヘリコプターCH47チヌーク1機が地対空ミサイルによるとみられる攻撃を受けて撃墜され、16人が死亡した。1回の攻撃で出た米軍の犠牲者としては、5月の戦闘終結宣言以降、最大規模。(2日)
●小泉「自衛隊は国軍」 小泉首相が報道番組で「自衛隊は国軍というか、侵略を阻止する基本的な集団だ。自衛隊が軍隊だというのは常識でしょう」「(自衛隊が)憲法違反だと議論が出るような表現は改めた方がいい」と改憲を主張した。(2日)
●核燃サイクル、廃止に21兆円 国内の原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理・燃料への加工・最終的な廃止措置など核燃料サイクルにかかる総費用が、06年の再処理工場操業から廃止までの72年間で約21兆7千億円にのぼるとする電気事業連合会の試算が明らかになった。(3日)
●イラク派兵、統合部隊が連絡・調整 防衛庁は、イラク復興支援特措法に基づき自衛隊を派兵する際、陸上、海上、航空の3自衛隊による統合連絡部隊を初めて編成し、同行させる方針を固めた。(4日)

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週刊『前進』(2126号5面1)(2003/11/17)

機関紙拡大闘争に取り組み労働者細胞を建設しよう 『前進』を大胆に労働者の中へ

 以下のアピールは、9月に開催された全国機関紙担当者会議での基調報告の核心部分の要旨である。全国で熱烈な読み合わせと討論を行い、機関紙活動の飛躍的な改革と実践に取り組むことを訴える。

 〈新たな指導方針〉の環こそ機関紙活動である

 われわれがいま迎えている世界史的情勢、すなわち01年9・11―03年3・20下の情勢は、巨大な可能性を示すとともにわが革共同に重大な試練を課している。
 帝国主義の基本矛盾が爆発し、帝国主義が世界戦争へ突入を開始している情勢は革命的情勢への端緒的突入を意味している。超反動的な小泉・奥田との全面激突を迎えている。自国帝国主義=日帝のイラク侵略戦争、北朝鮮(中国)侵略戦争に加担するのか、それとも日帝を打倒するのか、一大資本攻勢と治安弾圧に屈服するのかそれを打ち破るのか。すべてが問われる歴史的決戦が迫っている。
 そして全世界人民は歴史的決起を開始した。イラク人民(イラク・パレスチナ人民)の反米(反英)決起はベトナム解放戦争の総反攻直前を想起させる。そして全世界の反戦闘争が新たな巨大な波を迎えている。
 この時、11月労働者集会として結晶した3労組(動労千葉、港合同、関西生コン支部)とILWU、そして民主労総という日米韓の最も戦闘的な労働組合が闘う労働組合としての連帯を形成したことは世界史的な出来事である。
 こうした中で革共同の位置と責任は巨大である。われわれの存在は現在その実体がいかに小さかろうと侵略戦争を遂行する帝国主義支配階級にとって絶対に容認できないのである。逆に言えば、われわれが勝ち抜き、生き残り、階級的労働運動を基盤にした革命党建設に成功するならば、帝国主義の危機を内乱=革命に転化することができる。
 ここにわれわれは〈新たな指導方針〉として、労働運動・労働組合運動を全力で実践し、労働者細胞を建設する方針を打ち立てた。
 その環は機関紙活動である。機関紙を党活動の中心に据え、機関紙活動を全活動の中心に据えよう。ここに唯一の勝利の道がある。
 そして今日の飛躍の環は、職場での拡大である。労働者細胞の建設が最大の軸をなす。
 資本との日常的攻防を闘いぬき、労働者の組合的団結を固める闘いの先頭に立って全力で闘わなければならない。しかし、その闘いを行っていれば自然に労働者細胞が建設されるのではない。労働者をマルクス主義で武装し、階級的自覚を促し、党に結集する独自の闘いなしに、労働者細胞は建設できない。その環は職場の労働者に機関紙『前進』を持ち込むことだ。

 職場での拡大

 全労連内には、労働者階級の立場に立って闘うことを否定した日本共産党スターリン主義への怒りが渦巻いている。また、今度の翼賛選挙では、連合傘下の多くの労組、組合員が連合の選挙動員を拒否する事態が各地で生まれた。権力・資本の手先に転落した連合中央がどんどん求心力を失っているのである。また、JR総連の中からも闘いを求める青年労働者の声が強まっている。労働運動が大流動、大激動の過程に入っているのだ。
 11月労働者集会への結集運動は、すばらしい展望を押し開いた。われわれが結びつくべき労働者活動家が膨大に存在していることを実感した。働きかけなければならない対象が膨大に存在しているのだ。これらのすべての労働者に『前進』を持ち込み、獲得しよう。
 先進的な労働組合活動家は、必要な党派選択は断固行う用意をもっていることを確信しよう。真の闘いの道を求めて苦闘する労働者は、革命党の機関紙を読むことをちゅうちょするものではない。拠点職場の労働者同志は自己の党派性を鮮明にし、職場で『前進』読者会を組織し、公然・非公然を駆使し、労働者細胞を建設しよう。5月テーゼ以来の実践が実を結ぶかどうかがここにかかっている。
 実践上は、細胞会議で討論し、その判断のもと組織戦術をち密化し、労働組合の原則、統一戦線の原則を踏まえ、さらに職場の労働者と同志を権力・資本・反動的労組幹部から守るための配慮を必要とする。
 しかし職場で労働者細胞を建設しようとするなら、獲得すべき労働者に自分が何者であり、何を目指して闘っているかをはっきり提起しなければならない。革共同の機関紙『前進』を読み、労働者細胞をともに建設しようと呼びかけなければならない。ともに闘ってきた労働者を信頼し、この飛躍を大胆に実現しよう。
 〈新たな指導方針〉は、三全総路線へのラセン的回帰として提起されている。
 三全総路線とは、「第一の任務」=労働運動の実践を通しての労働者階級の組織化、「第二の任務」=反戦政治闘争への決起を提起し、その上で「第三の任務」=蜂起に勝利する(産別委員会建設と一体の)地区党の建設を、それらの前提であり帰結をなす核心として提起している。そしてそのための環をなすものとして「第四の任務」=機関紙活動の抜本的な改革・確立を提起しているのだ。他方で学生運動の高揚と爆発に一切をかけたのである。

 機関紙の改革

 三全総路線において、機関紙活動は決定的環として据えられている。実践的には、党派性を鮮明にもって、機関紙『前進』で独自の系列に労働者を組織するということである。労働者との結合の環として機関紙を位置づけたがゆえに、機関紙の抜本的改革も死活的課題となったのだ。〈新たな指導方針〉下のわれわれにとってまさにこの課題が真っ向から提起されるに到ったのである。
 激動情勢は機関紙活動の抜本的改革を求めている。革命党の機関紙が今日ほど注目されている時はない。国際労働者階級が、社会の主人公として歴史の前面に登場し、巨大な歴史のるつぼに階級全体がたたき込まれているからである。だから関心と支持と共鳴が集中し、他方での反対・反発・疑問・批判も最大になるのである。
 そうした中で、拡大への意欲に満ちた労働者同志の意見に傾聴し、誰もが拡大できる機関紙へと変革することがカギである。このなかから真の機関紙改革の方向性がでてくる。
 自分たちで、自分たちに必要な『前進』、先進的労働者にとって「自分たちの機関紙」と思えるものを創り出すということである。
 機関紙が全党員とすべての闘う労働者の共同の努力で創られるものであるということ、それこそが機関紙を全労働者の真の武器に作り替え、拡大を爆発的にもたらすのである。
 『前進』の紙面改革は、〈新たな指導方針〉の実現の核心をなす全党の共同の一大事業である。
 三全総の提起もまさにそこが核心であったし、レーニンが論文「多数派機関紙の発刊にあたって」で全労働者同志に呼びかけたこともそれであった。
 この間の機関紙改革の大胆な推進が拡大闘争に拍車をかけている。『前進』に「団結ひろば」が設定され、生きたものになってきたことも重要である。全党同志の努力でこれをさらに充実させることがカギである。

 労働者の主体的決起が03年前期総括の核心だ

 今期の総括で第一に重要な点は、現場の労働者同志の積極的決起が事態の決定要因となっている点だ。
 今期の機関紙活動の最も大きな特徴は、〈新たな指導方針〉のもとに、全党の熱い討論がかちとられ、現場の労働者同志が決起を始めたことである。
 その結果は従来の常任の決起に限られていた場合とひと回り違う。そして、実際に労働者の拡大数が常任の拡大数を上回ったことが、今期の最大の出来事である。これがいま一歩進むとひとけた違いの伸びを始めると考えられる。さらに、若い青年労働者・学生の行動の開始で一けた違う展開が見えてくる。
 03年前半期の機関紙活動は、増勢を堅持している。しかし、今求められていることの大きさから言えばとうてい満足できるものではない。しかし、その中で突出した典型的な成功例が幾つか出てきている。これは次の大飛躍への兆候である。この労働者細胞建設を第一にすえ機関紙活動を軸にした典型的な成功例をすべての細胞で可能なものとしてとらえ、実現に挑戦することが重要だ。
 〈新たな指導方針〉の第一歩は、産別委員会が現場の労働者を議長として再確立したことである。労働者同志が党の指導者として自己確立したのである。その下での労働者同志の自己解放的決起が核心である。
 A地方委A県の今期の拡大は特筆事項である。重要なことは、機関紙活動を軸としたオーソドックスな組織活動の確立の結果として拡大していることである。それが万景峰号闘争への決起と自治労大会決戦での拡大として結実した。
 しっかりとした組織的討議、取り組みが大きな拡大をもたらした、実にオーソドックスな活動の勝利として価値が高い。しかもその内の4分の3を労働者同志が拡大している。
 「3月方針」の実践についての報告は、@方針討論○、A方針決定○、B決定方針○、とすべての項目がマル印であることにも注目したい。そしてB決定方針は「メンバー1人が最低1回機関紙拡大オルグをやることを決め、各会議で対象者を出しあい、その実践と結果を会議で点検確認した。地区の総会でも、情勢については話すが、まったく実践について語らないということが往々にしてあり、そのスタイルを変えなければならない。自ら一人ひとりが組織者、実践者になろうと強烈に意志一致した」ということである。
 首都圏のC細胞の活動は、多くの同志が参考にすべき典型的なものである。C細胞は、前期において機関紙活動を軸にした細胞活動の確立が機関紙拡大をもたらしている典型例として紹介したものであるが、そうしたオーソドックスな確立は今期においても、さらにその後も拡大が持続していることが特徴である。
 月1回の学習会を基本とする職場フラクヘの組織化が基礎をなしている。職場拠点建設の闘いとして、青年労働者を中心に、沖縄ツアー、交流会、そしてマルクス主義の学習会、『前進』読者会を積み重ねてきた。それを職場フラク建設―職場細胞建設へと進め、拠点職場を中心に読者を5割拡大した。夏季特別号の日本共産党系労組組合員への販売の活動実績もある。同志○人を含めほぼ○○人ほどの戦闘的政治勢力を形成している。なによりも労働者が主体的に決起していることが最大の特徴だ。
 9月の職場フラクで『前進』2116号室田論文の読み合わせ・討論を行い、朝鮮人・中国人虐殺を初めて知った青年労働者が2日後に職場で定購となった。
 「今後の課題」について、「第一に、さらに『前進』拡大を進めること。倍増の次も倍増が目標である。第二に、その『前進』フラクヘの組織化である。この転換、ステップアップが、困難であると同時に、飛躍台となる。第三に、そこからマル青労同結成へ向かう。そして、「マル青労同旗揚げにあわせて、『○○支部』といえる陣形をつくり出す。要するに機関紙活動を基軸にした党建設を、あくまでオーソドックスに進めることである」と全党への教訓となる報告が寄せられている。

 意識的な指導

 ここで、指導部の意識性の特別の重要性について触れておきたい。
 B地方委は拡大を持続している。そして成功例が多い。今期は1県を除く全県委が拡大している。B地方委全体として一貫して増勢を堅持し、毎期の機関紙活動の創造的前進がかちとられている。そこには何があるのか。
 核心的には、この地方委の責任者とすべての県委員長が、常に全活動の中心に機関紙活動を据えつけているということにある。さらに機関紙拡大闘争の提起をけっして一般的提起にとどめないのが核心ではないか。県委員長自身が、具体的に誰と誰に拡大するのかを労働者組織の同志の闘いを熟知して、ともに方針化する努力をしている。これこそ三全総路線の核心であるし、〈新たな指導方針〉の実践的な環でもある。
 さらに、わが党の最大の労働者細胞が、今期も継続して拡大を続けている。ここにも同質の教訓が示されている。
 学生戦線は激動期の機関紙活動を実践し、この数年間で最大の拡大を実現した。あらゆる意味で決定的で、全党が学ぶべきものである。いかに意識的機関紙活動が政治的組織的に考え抜かれて展開されているかを示している。また、党の決定した方針を字義通り貫徹している点も重要だ。

 マルクス主義の学習運動を

 いま一つ確認すべき総括は、イデオロギー活動は党建設の核心であるとともに、機関紙拡大闘争にとって必須不可欠だということである。マルクス主義の大学習運動を全党と先進的労働者の中に巻き起こさなければならない。学習会の定例化をかちとり、労働者階級の中にマルクス主義の復権をかちとらなければならない。
 街頭で国家権力と対峙しつつあらゆる大衆と切りむすび、他方、職場で資本の攻撃と闘う中で、われわれ一人ひとりの主体性が検証される。6回大会路線、20世紀の総括、21世紀冒頭の世界情勢の分析――これらを確信をもって提起し、あるゆる疑問を全身で受け止め、考え抜き、解答し、オルグし獲得するまでやり抜こう。その武器はマルクス主義である。
 マルクス主義での日常的武装・学習が死活的に重要である。これこそ労働者細胞建設と機関紙拡大闘争の力の源泉である。「マルクス主義基本文献学習シリーズ」を今こそ全面的に活用しよう。

 財政活動の確立のために

 機関紙活動と党財政活動の一体性について押さえておきたい。
 機関紙の部数と党財政の組織的力量は驚くほど一致している。財政闘争の前進は、不断の機関紙拡大闘争の中に最大の根源的な力を見いだす。機関紙活動と財政活動は党会議とならんで党活動の三原則とされている一体的活動である。いずれかが「不得意」な組織、指導部は、もう一方も「不得意」となっている。
 機関紙活動こそが党建設の核心であることを自覚して、全党的に確立しよう。
 特に、不定期購読(ばら売り)の労働者を大切にすることを位置づけることである。この不定期読者の中に巨大な可能性がある。
 今期の総括で第二に重要な点は、マル青労同建設の爆発的威力がすでにその一端をかいま見せたことだ。
 B地方委D県で、青年労働者同志が決起し、1部拡大した。20歳の自治労労働者の新たな定購化である。マル青労同建設にむけて『前進』でのオルグが開始された。7〜8月で2人に対して実行し1人を定購化、もう1人は『共産党宣言』新訳本での学習会を始めることになった。青年労働者同志が決意してオルグ―学習会を始めたという点で画期をなしている。
 マル青労同が威力を示し始めた。この1部拡大は、これから巨大に起こる端緒である。いま現在は数例にとどまっている。しかし、われわれがそういう自覚でこの事態を捉えるかどうかで、未来が決まる。事実、この県では9月に20代の医療労働者に労働者同志が拡大し、次々と拡大に向かっている。
 さらに、拡大の世代動向では、30代までが増の大半の63%である。また、新規と回復の比率では、新規が92%で9割を超えた。これらのことも、われわれの展望を切り開くカギがどこにあるかを示している。
 今期の総括で第三に重要な点は、『前進』街宣、その他の創意あふれる活動がかちとられたことである。
 『前進』街宣が209回行われ、ばら売りが1193部(うち街宣が506部)である。機関紙活動の活性化を示す。全国全組織での『前進』街宣の定着により、激動期型に転換しつつある。
 『前進』街宣の有効性と意義は今期を通じて全面的に明らかとなった。
 今日街頭は、イラクへの侵略派兵の問題や、北朝鮮への排外主義キャンペーンをめぐる侵略翼賛勢力との制圧戦・宣伝戦の戦場である。この闘いから身を避けたところで反戦闘争も党建設もありえない。この場を右翼、反革命どもに明け渡してはならない。
 街頭で『前進』を買い、定購者になった人、活動家になった人、同志になった人がいる。街頭で出会う度に購入する「街頭定購者」もいる。
 労働者、人民大衆そのものが揺れ動く激動期には、特に重大である。すべての大衆と直接に対面する場であり、大衆がどのような政治的な問題意識を持っているかを知った。また、『前進』がどんな人にも売れることを知った。『前進』が誰に求められているか、『前進』がどのように思われているかを知ることができた。そして、『前進』街宣の参加者は見方が変わったのである。
 『前進』街宣は基本組織の拡大闘争のテコとなり、地区党建設に必ず結びつく。E地方委からは「街宣に取り組んでいる組織は、『前進』拡大闘争にも、意欲的になっている。逆に、街宣に取り組んでいない組織は、拡大闘争も計画されない状況です」と報告されている。
 今期、『前進』街宣でも労働者同志の決起によって従来の壁を打破するものとなった。労働者同志が決起するとき波及力は巨大である。今までは、誰かがやるという活動として考えられていた。それを転換し、労働者同志が主体的に担うと倍増する。
 『前進』街宣、キャンパス販売にもあふれるような創意性が出てきている。職場での『前進』の販売にもいろいろな方法があることも分かった。各労組の大会に来る代議員に売る意識性をもって代議員が通っていく駅で売るという方式は、コロンブスの卵のような画期的な創意工夫である。
 創意工夫というのは、強固な実践的意志が生み出すものなのである。

 三全総に学んで原則的な機関紙活動の確立を

 要は党としての機関紙活動の原則的なあり方、オーソドックスなあり方を完全に闘いとることである。そのためには、党活動における機関紙活動の位置づけの高さが決定的であり、それは具体的には会議での取り扱いがどうなっているのかが核心である。
 最後に三全総の実践過程の機関紙活動を『前進』200号の論文「機関紙活動を組織活動の中心に」から引用し紹介したい。
「以上の諸点にふまえ、機関紙活動の改善は、当面、同盟の全ての組織が、最低次の諸点を会議のたびに方針化し、点検する、という活動スタイルを非妥協的に打ちたてていくことから始めるべきである。
 @『前進』の配布活動は同盟と支持者・活動家を系統的に結びつける基本的な組織活動であって、いわゆる“雑務”と同一視するのは全く間違っている。配布は全員が分担しておこない(同盟員一人ひとりが自分の、接触する読者を持つ)、その結果を定期的に会議で点検する。
 A読者は、できる限り何週分かをまとめて前払する固定読者にする。集金は全員が分担して行う。紙代上納の状況は会議で報告し点検を受ける。
 B闘いの成果はまず読者の拡大として狩り取るという活動の貫徹。定期的に会議で読者オルグ表をつくり、全員でオルグを分担し結果を点検する。(=部数拡大を同盟の目的意識的活動とする)
 C『前進』の内容を会議の政治討議の材料として消化するよう努力し、また『前進』に関する意見や批判、さらに闘いの報告はこまめに編集局に送り付ける。
 そして繰り返していうが、こうした機関紙活動の改善の成否は組織の責任者、または指導部が、自分が直接『前進』担当者であるかどうかにかかわらず先頭に立って取り組み、機関紙活動を会議の議題として系統的にとりあげていくかどうかにかかっているのである。
 全同志諸君! 機関紙活動を軽視したり、自然成長のままに放置したりするあらゆる日和見主義を断固として粉砕し、機関紙活動を日常的組織活動の中心にすえるために闘おう。こうした全同盟の主体的実践を内在的根拠とすることによってこそ、『前進』発行部数の躍進をたたかいとり、紙代会計を黒字に転化し、月一回4ページ化をかちとっていくことができるのだ。『前進』編集局と経営局は、同盟の先頭に立ってそのために闘う決意を表明するものである」
 この生きた指針は、今日の9・11―3・20情勢の中で巨大な可能性をさらに引き寄せている。
 11月労働者集会の成果のすべてを対象化し、全計画を確立し、各機関、細胞ごとに目標を定め、機関紙拡大のために大闘争をやり抜こう。

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週刊『前進』(2126号5面2)(2003/11/17)

改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略と戦争の歴史 第5部 アジア・太平洋侵略戦争(7)
南太平洋諸島 日米激突の戦場とされて犠牲

 「海の満鉄」南興

 第1次世界大戦中の1914年10月に日本海軍は、ドイツ領ミクロネシア(マリアナ・カロリン・マーシャル諸島)を占領し、戦後の領有を前提とした軍政を実施した。日帝はこれらの島々を「南洋群島」と呼称し、敗戦までの約30年間、この地域を南方への経済的進出と軍事拠点として植民地支配した。
 これらの島々は1919年、ベルサイユ条約によって日本の委任統治下に置かれた。日本は統治のため、パラオ諸島のコロール島に南洋庁をおいた。
 この地域では、南洋庁長官が最高権限を持ち、産業開発、教育・日本語の普及を行った。主産業は製糖、水産物、リン鉱業などで、21年3月、東洋拓殖株式会社(主として朝鮮半島の植民地支配を担った国策会社)や台湾の製糖会社の関係者らによって「南洋興発株式会社(南興)」が設立された。
 南洋興発は、この地域の製糖業を独占した。サイパンやテニアン、ロタ島では総面積の7割が官有化され、さとうきび畑に一変した。サイパン島には全島をほぼ1周する形でさとうきび運搬用の鉄道が敷かれ、西海岸には巨大な製糖工場が建設された。
 南興は、製糖業で巨額の利益をあげ、リン鉱・水産・農園の経営も始めた。後に事業範囲は、製酒業・交通運送業・油脂工業・貿易業と広範囲に及んだ。31年にはニューギニア、37年にはティモールに進出し、「北の満鉄、南の南興」とか「海の満鉄」といわれる日帝の南方侵略と一体の国策侵略会社だった。
 南興の募集に応じて日本から多数が移民として渡り、現地でさとうきびの栽培と砂糖の生産、トロピカルフルーツ栽培などの農業・漁業、リン鉱業に従事した。43年時点で在住日本人は約10万人を数え、現地住民人口を上回った。
 産業の「発展」と移民の増加に伴ってサイパン島の中心地ガラパンは「南洋の東京」と呼ばれ、サイパン戦(44年)の5年前には全島で2万2千人あまりの日本人が住んでいた。南洋庁支庁や地方法院、郵便局、学校から、旅館、映画館、銭湯、寿司屋、豆腐屋まであった。移民には沖縄出身者や朝鮮人も多く、階層的な支配体系がつくられた。

 皇民化教育

 1914年に海軍が軍事占領してすぐに教育機関として「島民学校」がつくられ、「これから人となろうとする未開無知のものを教化するため」と称して日本化教育を実施した。現地の習慣を無視し、キリスト教を反日思想を宣伝するものとして弾圧した。
 公学校では皇民化教育が徹底された。3年生以上の生徒は、「島の言葉」を使うことが禁止され、日本語の使用が強制された。子どもたちは「宮城遙拝」が強要され、毎朝神社に参拝させられた。パラオ諸島のコロール島には1940年、「紀元2600年」を記念した官幣神社「南洋神社」が建立された。42年にはこの地域に26神社があった。
 日米対立が激化する中、「南洋群島」は西太平洋地域の戦略軍事拠点として重要性が増していった。海軍はトラック諸島に大規模な海軍基地を建設し、「大和」「武蔵」などの連合艦隊主要艦艇の泊地とした。軍事施設建設に多数の住民や朝鮮人が動員され、過酷な労働で多くの人が死んだ。
 日米開戦半年後の1942年6月5日、米太平洋艦隊の基地があったハワイ近くのミッドウェー海戦で日本は大敗北を喫し、戦局が逆転した。43年2月のガダルカナル島撤退以後、連合軍は、ニューギニア北岸を経て北進するコースと中部太平洋諸島を通って西進するコースをとり、フィリピンのルソン島を合同の目標とする作戦をとった。
 日帝は、連合軍の反攻に対処すべく、千島、小笠原、中南洋および西部ニューギニア、ビルマなどを含む地域を「絶対防衛圏」とする方針を立てた。海軍はこの地域を「日本防衛のために死守すべき要衝」と考えた。このため南太平洋諸島は激しい戦闘の舞台となり、多数の犠牲者を出すことになった。
 日本軍守備隊が続々と上陸し、守備隊の食糧確保のために住民が犠牲になった。食糧は配給制になり、住民の米の配給はうち切られ、他の物資も日本人の3分の1以下に削られた。ガラパン島の住民には、すべての家屋を軍に明け渡し即刻退去せよという命令が出され、住民は家を失った。公学校の生徒たちは飛行場の建設・整備に動員され、青少年たちは軍需物資の運搬や島内外の監視にあてられた。
 しかし、絶対防衛圏はたちまち破られ、11月にはギルバート諸島のマキン、タラワ両島の日本守備隊が壊滅し、翌1944年2月、マーシャル諸島の太平洋最大の海軍基地トラック島が急襲されて大被害を受け基地は放棄された。ついで同年6月には連合軍はマリアナ諸島を攻撃した。

 沖縄戦の原型

 44年6月、サイパン島で米軍機約250機による空襲が始まった。「南洋の東京」と呼ばれたガラパンの市街地は2日間の空襲で完全に壊滅した。13日には米軍艦艇がサイパン島をぐるりと取り囲み一斉砲撃。2昼夜で1万4千発の弾丸を無差別に浴びせた。15日に上陸が始まった。サイパンには3万人の陸海軍と約2万人の日本人、4千人の現地住民がいた。圧倒的な米兵力のため、島は分断され、戦線は山中へ後退した。大本営は、サイパン放棄−守備隊の「玉砕」を決定、降服することを許さず日本軍、民間人、現地住民も含めて軍事的にまったく意味のない犬死を強制したのである。
 7月6日、海軍の南雲忠一中将は「止まるも死。進むも死……米鬼に一撃を加えて太平洋の防波堤としてサイパン島に骨を埋めん」と訓示して自決した。7、8日に最後の総攻撃が行われ約4千人が「玉砕」した。民間人も「生きて虜囚の辱めを受けず」と教えられ、手りゅう弾で自決したり、断崖から身を投じた。後に沖縄戦に典型的に見られる多数の民間人が犠牲に、そして日本軍によって死を強制された最初の激戦であった。
 その後、日本軍は、テニアン島、ペリリュー島、フィリピン、硫黄島で次々敗退し、45年3月以来の沖縄戦に至るのである。南太平洋諸島の戦場化によって、人民の生命を奪い、生活と権利を破壊したのである。
 (片瀬 涼)

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週刊『前進』(2126号6面1)(2003/11/17)

団結広場 投稿コーナー

 強制連行の地下壕で反戦の思い強くする 兵庫・西宮 梶原義行

 10月19日、この間、西宮で「イラク写真展&現地報告会」を行ってきた私たちのグループの呼びかけで、西宮市甲陽園にある地下壕(ごう)の見学会を行いました。終戦まぎわに朝鮮青年を酷使してつくられた地下軍需工場跡の見学会には、西宮内外の40人が参加しました。私たちの身の回りに存在する強制連行と戦争の事実を目の当たりにして、あらためて反戦の思いを強くしました。
 私たちは、6月と9月に西宮と伊丹でイラク写真展を開催しました。この写真展は、イラク戦争の真実を伝えるだけでなく、拉致問題をテコにして北朝鮮敵視政策が進められていることに対し朝鮮侵略・強制連行のコーナーもつくり、大きな反響をよびました。その継続の企画として今回の見学会を、甲陽園地下壕をずっと調べて案内を続けてきた徐元洙(ソウォンス)さんにお願いして、実現したのです。
 甲陽園駅に集まった人たちは、トンネルの1号壕から4号壕の見学へと進みました。真っ暗なトンネルの中で徐さんは「戦闘機・紫電改の部品をつくるために、また本土決戦に備えて、多くの朝鮮人を徴用して、危険なトンネル掘削作業に従事させた。しかし、これらの事実については、ほとんどほおかむりして、国や行政は自ら調査をしようとはしない。誰がここで亡くなり、その後どうなったかもわからないありさまである」と訴えられました。その後小さな記念碑のある公園に移り、地下壕全体の位置と大きさを確認し、また事実の大きさに比しあまりにも小さな碑に行政の冷淡さを感じました。
 近くの公民館での交流会で、三里塚百万人動員全関西実行委員会の山本善偉さんは「十数年前に知った沖縄チビチリガマの時と同じように衝撃を受けた」と発言されました。また各地から参加した教職員は、この事実を平和学習に生かしたいと口々に語りました。今後も引き続き取り組んでいくことの必要性を強く感じました。

勾留停止の原田さんと中労委で固い握手 「許さない会」会員 堀河 裕

 昨年10月の国労5・27臨大闘争弾圧から1年。私もしばしば公判を傍聴したが、刑務官にさえぎられて被告たちと言葉を交わすことはできない。だが、被告の一人が、しばしとはいえ「自由」の身となる機会が訪れた。
 第14回公判翌日の10月28日、24日から勾留執行停止をかちとっていた国労弾圧被告の原田隆司さんが、中労委の審問に出席し証言した。昨年10月7日、彼は中労委での証言後、玄関を出た途端に私たちの目前で逮捕された。奇しくもそこが彼との再開の場になった。
 弾圧された国労組合員の被告には、それぞれに国鉄分割・民営化攻撃やJR体制との苦闘を重ねてきた歴史がある。原田さんは、国労が01年1月の大会で4党合意を受け入れた直後の2月に、国労バッジ着用を理由に運転士科入学試験の会場から排除された。それを不当労働行為としてJR西日本と争ってきたが、彼の逮捕後に京都地労委は理不尽な棄却命令を下した。原田さんは獄中から再審査を申し立てたが、長期の勾留が続く中で中労委の審査は中断されていた。しかし、代理人との面会が認められ、手続きが進行した。
 刑事事件で勾留中の被告が中労委の審問に出席したことは、前例がないという。不当労働行為からの救済を求める労働者の権利を実現するために当然のこととはいえ、勾留執行停止をかちとった意義は大きい。
 審問廷で原田さんは、バッジ事件に関する証言の後、弾圧に対する思いを聞かれ、涙で声を詰まらせながら「1年の勾留は不当だ。国労をつぶすための弾圧だ」と語った。
 彼の闘志はいささかも揺るがない。「弾圧されて家族はようやく自分の活動を理解してくれるようになった」と笑顔で言う。だが、長期勾留が容易なものであるはずがない。翌日には東京拘置所に戻らなければならない彼と握手を交わして別れた時、私たちは彼らの年内奪還を固く決意した。

教基法改悪を先取りする石原と闘う集会 東京・教育労働者 瀬田朋子

 11月2日、「石原知事・横山教育長のファッショ行政糾弾―教育基本法改悪を先取りする東京の教育改革を撃つ」集会が、教育基本法の改悪に反対する教職員と市民の会の主催で開かれました。石原の言動と施策は本当に許しがたいものです。石原知事は「北朝鮮拉致キャンペーン」をあおり、日本の朝鮮併合は武力ではなく、朝鮮人(先祖)の責任で、日本の植民地主義は人間的だったなどと歴史歪曲、民族差別発言をくり返しています。その一方で、それと一対の「日の丸・君が代」の強制に象徴される民族排外主義、国家主義の徹底をその行政の柱のひとつに置いています。そして、その具体的施策として、10月23日に都教委は「卒・入学式等での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」の通達を出しました。
 それは冒頭で「本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる」と言い、教職員の懲戒処分を打ち出しました。そして直ちに適用された都立高校の「30周年記念行事」の報告は、驚くべき内容でした。それはまさしく上意下達の服従を強いた「戦前・戦中」教育そのもので、教育基本法改悪=教育勅語教育の先取りでした。
 教育基本法改悪の先取りとして、もう一方では、日本帝国主義の生き残りをかけて新自由主義・能力主義の徹底が目指されています。この現実について、「定時制高校つぶし」「『卓越した能力をもつ子どもの受け入れのため』の中・高一貫校の設立」「学力テストと学校選択制によるできない子どもと学校の切り捨て」「75項目にわたるLD(学習障害)調査による『障害児』、問題児の洗い出し」「七生(ななお)養護学校(日野市)の性教育攻撃と関係者116人の処分をテコにした教育内容(週案提出)への踏み込み」などが報告されました。
 さらに教職員に対しては教員評価制度、主幹制、官制研修の徹底の上に、「定期異動要綱の改悪」を行い校長の教職員支配権限を強化し、教育労働者をメッタ打ちにしようとしている攻撃実態が報告されました。
 この集会は教職員・保護者・市民の貴重な交流の場となりました。心強かったことは、多くの人たちがすさまじい攻撃に負けずに元気よく闘っていて、その力こそ日教組・多摩教組への右翼の攻撃をはねかえす力であることを確信できたことです。私も闘います。

『前進』ホームページ海外からのメール 非常に役立つ貴紙の情報 オーストラリア A・S

 私は、貴紙の新たな「テロとの戦争」についての情報を好ましく思ったので、この手紙を書いています。アメリカ合衆国によってヒロシマとナガサキに落とされた原子爆弾についてのあなた方の情報は、私が書いている随筆に非常に役に立つと思います。
 私が考えるには、アメリカ合衆国は過去も現在も彼ら自身がテロリストだからです。
 私は今、「テロとの戦争」についての随筆を書いています。ですから、あなた方の提供する情報はたいへん有益なのです。

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週刊『前進』(2126号6面2)(2003/11/17)

全国連が狭山中央闘争

“寺尾差別判決を忘れない” 11・9集会全力結集を宣言

 10月26日、寺尾判決29カ年糾弾!特別抗告審勝利!狭山中央闘争が部落解放同盟全国連合会の主催で行われた。全国から部落大衆、労働者、学生ら320人が東京・桧町公園に結集して集会とデモを行った。
 74年10月31日に東京高裁・寺尾正二裁判長が下した無期懲役の有罪判決=差別判決を絶対に許すことができない。忘れない。石川一雄さんとともに闘い、あのときの怒りと悔しさ、無念を晴らす――こうした気迫に満ちた闘いとなった。
 「差別裁判うちくだこう」を全員で歌って集会が始められた。主催者として解同全国連の村上久義副委員長が「寺尾判決を忘れることはできない。心をひとつにして差別裁判をうち砕こう。10・31狭山中央闘争を放棄した本部派に代わって狭山闘争の責任を引き受けよう」とあいさつした。
 連帯のあいさつを都政を革新する会の長谷川英憲代表と動労千葉の滝口誠共闘部長が行い、狭山闘争の決意を表明するとともに11・9労働者集会への大結集を呼びかけた。
 特別報告として、9月の選挙で初当選をかちとった阪口克己東大阪市議(全国連荒本支部書記長)が拍手の中を登壇、勝利の報告を行った。「皆さんの力で勝利することができた。荒本支部の団結を固め、住民の団結と大衆行動をつく出した。この人たちの先頭で闘う。石川さんを切り捨て糾弾闘争を放棄した本部派に代わって、全国連が狭山闘争の責任をとろう」
 次に、滝口敏明支部長ら4人が5月22―23日の逮捕以来5カ月以上も勾留されている大阪・寝屋川支部の飛山利光書記長が弾圧との闘いを報告した。「本部派、警察、市行政の3者が一体となった全国連つぶしの弾圧。狭山闘争と結合して闘い、跳ね返す。裁判費用と4人の保釈金のカンパを」と訴えた。逮捕・勾留されている島田洋司青年部長のお母さんと婦人部からも4人の早期奪還が訴えられた。特に公判で裁判所が検察側証人を遮蔽(しゃへい)幕で被告・傍聴人からさえぎり、隠すという差別的な措置をとったことに怒りで体が震えたという怒りの報告がなされた。
 さらに、同住連の大橋昌広事務局長が立ち、「国土交通省と本部派が一体となって、全国14万戸の同和住宅の家賃を10倍、20倍に(9―12万円に)大幅値上げしている。部落大衆を追い出し、部落を解体する攻撃だ。狭山10万人闘争のような闘いで住宅闘争に勝利しよう」と呼びかけた。
 全国連の小森勝重狭山闘争本部事務局長は、毎月の最高裁・最高検要請行動について報告。部落民の訴えを聞く姿勢のまったくない最高裁・最高検を厳しく糾弾した。そして、特別抗告棄却情勢の切迫を警鐘乱打し、本部派が証拠開示ルール作りに狭山闘争を歪曲していることを弾劾、国家権力に対する差別糾弾闘争として闘うと強調した。
 基調報告を全国連の中田潔書記長が行った。「石川さんの不屈の決意、闘いと連帯して闘おう。最高裁は寺尾判決維持の姿勢を変えていない。弁護団が9月30日に補充書を提出した。最高裁はいつでも棄却決定を出せる状況にある。闘いの正念場だ」と情勢の切迫を明らかにした。「本部派は29年目にして10・31狭山中央闘争を放棄した。綱領を変え、狭山闘争―差別糾弾闘争を闘わない団体に転向した」と厳しく弾劾した。
 そして「最近の差別事件の急増、激発、寝屋川支部弾圧は狭山事件が40年前の事件ではないことを示す。狭山闘争を原点からつくり、高松差別裁判糾弾闘争のような全国行進、10万人闘争を実現しよう」と強く訴えた。最後に「3組合を始め労働運動の新潮流と連帯し、世の中を変えよう。11・9労働者集会に全力結集しよう」と結んだ。
 全国連の各県連・支部、東西の部落解放共闘会議などが決意表明を行った。集会宣言を採択した後、全国連と解放共闘は六本木から日比谷公園までのコースを「狭山勝利、再審貫徹、部落解放、差別糾弾」のシュプレヒコールを上げながら意気高くデモ行進した。

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週刊『前進』(2126号6面3)(2003/11/17)

社会保障解体阻止へ 生存権は譲れぬ F保育所民営化攻撃
高い保育料と劣悪な保育 「親の責任」論で福祉解体

 保育サービスの買い取りへ転換

 日本の社会保障制度は、〈医療・年金・介護・雇用〉4つの社会保険制度と〈生活保護・「障害者」施策・児童福祉など〉(措置制度による)公的扶助で組み立てられている。
 戦後保育所政策は、児童福祉と労働政策の結合点で独自の道を歩んできたが、いま大きな転換点を迎えている。97年に介護保険法が成立し、生活保護を除く高齢者扶助が社会保険制度に転換した。福祉切り捨て―「措置から契約へ」の流れである。この介護保険法に先立つ97年児童福祉法改悪は、保育所入所を一部(所得額による)契約制度に転換した。それまでの児童福祉法による「保育に欠ける児童」の市町村による措置制度の入所ではなく、「保育が必要な児童」が必要に応じて選択して保育サービスを買い取るという制度への転換である。
 だから、初めに措置制度に手をつけたのは児童福祉・保育所政策であった。それから6年、「子育て支援」の名のもとで児童福祉法を解体し、親の所得による子の選別と圧倒的多数の児童を劣悪な条件にたたきこむ攻撃が進行している。そして03年成立の少子化社会対策基本法と次世代育成支援推進法は、児童福祉解体を劇的に推し進めようとしているのである。
 小泉政権の「待機児ゼロ作戦」は強引な規制緩和、保育条件の劣悪化と急速な民営化を推進してきた。01年5月、小泉構造改革の一環としての少子化対策の柱が「母親の就労実態に見合った保育と学童保育を充実させるためにはあらゆる規制を緩和する」「待機児ゼロ作戦」にすえられた。

 学童保育待機児は全国で百万人

 小泉は「数値をだせ!」の号令で、保育所に規制を無視して定員以上つめこみ、保育士の人員増なしに「母親の就労実態に見合った」延長保育・夜間保育などを拡大してきた。石原都知事の始めた無認可保育所の認証制度を見本にして、遊び場もない日の差さない規制外の駅前ビルの保育所が奨励された。東京都の認証保育所は、福祉としての認可保育所ではなく企業との契約による保育サービスの売買だからと、保育料に消費税を上乗せしている。女性労働者は、働き続けるために高い保育料を負担しても子に劣悪な保育しか与えられない。無認可保育所「ちびっ子園」での保育児虐待は氷山の一角なのである。
 日本政府は90年代から少子化対策をかかげ、92年育児休業法改定、94年「エンゼルプラン」、99年「新エンゼルプラン」を策定したが、出生率は73年2・14をピークに毎年最低記録を更新し続けてきた。01年度は1・33にまで低下している。
 30年間で生まれる子の数は40%減少している。にもかかわらず、労働者家族を襲うリストラ・賃下げ・増税攻撃によって共働きが増加し、出産・育児期の女性労働者の労働力率は増加し続けている。一人っ子家庭が増え、食べていくための両親の都合で、まさに児童福祉法でいう「保育に欠ける子」が急増している。
 15万人の保育所待機児の「ゼロ作戦」は、2年半で1万人減少させたが、学童保育待機児は全国で100万人といわれている。

 〈幼保一元化〉で国庫補助を放棄

 少子化社会対策基本法第11条は「保育サービス等の充実」「病児保育、低年齢保育、休日保育、夜間保育、延長保育及び一時保育の充実、放課後児童健全育成等の拡充」「保育において幼稚園の果たしている役割に配慮……幼稚園と保育園との連携の強化」などを規定している。
 少子化対策法による「子育て支援」施策は、「保育は親の責任」として、保育所補助金削減、民営化促進、福祉解体である。現在、公立保育所の運営費は、株式会社に委託する公設民営や無認可保育所の2倍前後といわれる。規制緩和による民営化で公務員保育士を切り捨て、非正規雇用に切り替えようとしている。
 さらに〈幼保一元化〉である。現在、幼稚園は保護者負担と自治体の一般財源で運営されている。保育所には、児童福祉法による最低基準保障のために運営費と施設整備費を国庫で補助する制度がある。保育所補助金は年間約4000億円になる。〈幼保一元化〉は補助金4000億円を地方自治体の一般財源化し、保育所への国庫責任を放棄する施策である。さらに、保育園に義務づけられた調理室設置義務を廃止し給食の外注化に道を開く。保育士の人員配置(2歳児で保育所では6人に1人、幼稚園では35人に1人)を低くするなどが策動されている。
 11・9労働者集会の地平の上にイラク反戦と04年春闘の総決起をつくりだそう。年金改悪と消費税増税攻撃、社会保障全面解体攻撃への階級的反撃の一環として保育所解体攻防に勝利しよう。
 (林佐和子)

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週刊『前進』(2126号6面4)(2003/11/17)

紹介 共産主義者 138号 戦争・資本攻勢と闘う
 ●日本革命の現実性を喝破 島崎論文
 ●杉並区議選を総括 革共同中央選対

 日帝は最弱の環

 日米韓連帯の11・9労働者集会の高揚は、国際・日本の階級闘争の新たな時代の到来を示すものである。各産別・職場などで奮闘してきた人びとに、闘いの指針として本号を送る。 
 巻頭の島崎論文「日帝の危機と没落」は、経済を中心に戦後日帝を全面的に総括し、小泉=奥田路線の背後にある日帝の体制的危機の最深部をえぐった。日帝打倒を根底的に展望した重要論文である。すべての労働者に闘いの歴史的進路を明快に指し示している。
 全体の総論にあたる第1章は、ずばり「世界革命のチャンス到来」と労働者の世界観・時代観を核心的に提起。01年9・11から3・20イラク開戦にいたるプロセスを第3次世界大戦の過程と29年型世界恐慌の突入過程と規定し、世界革命の現実性を浮き彫りにした。
 第2章および第3章で、日帝の歴史的行きづまりを全面的に解明した。奥田ビジョンが主唱する資本攻勢と東アジア自由経済圏構想、イラク派兵・北朝鮮侵略戦争、有事立法制定の攻撃が、日米争闘戦での日帝の敗勢と戦後日帝の延命策の破綻(はたん)に規定されており、その根底に敗戦帝国主義としての歴史的制約があることを全面的に展開している。
 したがって、労働者人民が生き抜くためには、戦争と資本攻勢に対する闘いをひとつの闘いとして帝国主義打倒に立ち上がらなければならないということが、確信をもってとらえられる。この立場から、日本共産党新綱領案の反革命性を鋭く斬(き)っている。
 第4章は、没落した日帝の「生命線」であるアジア侵略の驚くべき実態を怒りを込めて暴露している。こうした日帝のアジア侵略戦争と闘うことと、連合幹部打倒の闘いがひとつであるという提起が実践的核心である。切り開かれた日米韓の国際連帯の地平を、帝国主義を打倒する労働運動の新潮流へと発展させよう。
 最後に第5章で、アジアをめぐる対米争闘戦での日帝の致命的なまでの敗勢を鮮明に暴露し、日帝こそは帝国主義の最弱の環であると言い切っている。対米帝、対アジア人民、対日本労働者人民それぞれとの関係で、革命的情勢の急速な成熟、日本革命の現実性を力強く結論づけている。本論文は、革共同第6回大会路線、新たな指導路線の物質化の決定的武器だ。

 都議選の勝利へ

 4月杉並区議選は、今年前半のイラク・春闘情勢を始めとする重大な政治情勢のもとで、闘う区民と革共同が新しい反戦と福祉の政党を生み出し、労働運動を始めとする大衆運動の決定的前進に転化するという革命的な挑戦であった。
 杉並区議選総括論文は、この闘いの意義を再確認し、その敗北の徹底的な総括を行った重要指導論文である。今春3大決戦の全体的総括の立場から選挙戦を総括し、現在の党に求められている飛躍と自己変革の課題を中央指導部の立場から痛切なまでにえぐりだしている。激動的時代観と激動的活動律の問題として、その核心点が厳しく突き出されている。
 「新指導方針」の意義をしっかりと理解する上においても必読の論文であることを強調したい。3大決戦、とりわけ労働運動の大前進をもって05年都議選の勝利をかちとろう。

 星野同志奪還を

 反弾圧論文は、昨年来、革共同の党組織や労働運動・部落解放運動など戦闘的大衆運動全体にかけられている治安弾圧の現実が、帝国主義の体制的危機の激化のもとでの帝国主義戦争突入情勢に規定されていることを鋭く突き出した。国労5・27臨大闘争弾圧を軸に、治安弾圧との闘いが労働運動・反戦運動の正面課題であることを提起している。とりわけ、星野同志を奪還する闘いがその最前線であることを徹底的に確認したい。
 沖縄闘争論文は、海兵隊移転問題と地位協定問題をとおして、米帝の世界戦略と北朝鮮侵略戦争切迫情勢下における沖縄基地再編過程の実像を描き出した。名護新基地をめぐる攻防を軸とした沖縄闘争の戦略的位置と勝利の指針を提起している。
 今西論文は、03年の労働法制改悪攻撃を整理し暴露するとともに、04年労組法改悪攻撃との闘いの決戦性を強く訴えている。奥田ビジョンに沿った労働法制改悪への反撃の戦略的課題を意欲的に論じた論文だ。
 反軍アピールは、自衛隊兵士に対して、イラク派兵命令を拒否しようと熱烈に呼びかけている。同時に、兵士の闘いがプロレタリアート自身の闘いであることを明らかにし、断固たる自衛隊包囲の共同闘争を訴えている。この渾身(こんしん)のアピールにこたえて直ちに行動を起こそう。
 書評は『北富士入会の闘い』(忍草母の会事務局著)を取り上げた。故渡辺喜美江・忍草母の会会長の闘魂を受け継ぎ、北富士闘争を発展させよう。帝国主義打倒の国際的内乱へ。

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