ZENSHIN 2005/05/23(No2198 p06)

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第2198号の目次

“教育基本法の改悪をとめよう” 5・7全国集会の後、横断幕を持ってデモの先頭に立つ呼びかけ人。左から高橋哲哉 、大内裕和、三宅晶子、小森陽一の4氏(NHK横)

1面の画像
(1面)
中国への戦争叫ぶ石原打倒を
長谷川英憲氏の都議選勝利で「つくる会」教科書阻止しよう
全国の闘う労働者の力を杉並へ
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杉並先頭に採択絶対阻止へ 「つくる会」教科書を暴く (2)
弱肉強食の論理  ●侵略と植民地支配を居直り
「近代化」「解放」と正当化
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(2面)
「戦争は社会の原理」と石原  「つくる会」教科書導入の最先兵
“中国分裂させろ”と対中国戦争を叫ぶファシスト石原打倒へ
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都議選情勢 「石原知事に挑戦状」と長谷川氏が鮮烈に登場
かつてない激戦の杉並
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杉並住民の会総会&記念講演 “介護保健改悪許さぬ”
長谷川氏の勝利を誓う(5月5日)
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介護保険制度 改悪法案絶対阻止へ 記事を読む  
紹介 共産主義者144号  戦争・ファシストとの闘い
牟田論文 世界戦争政策と対決訴え  園田論文 都議選勝利へ全力決起を
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(3面)
教基法改悪法案 今国会提出許すな
小泉・石原に5500人の怒り  “つくる会教科書採択阻止を”(5月7日)
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5・7集会アピール(抜粋) 「子どもは『お国』のためにあるんじゃない!教育基本法の改悪をとめよう!全国集会」(東京・代々木公園)(5月7日) 記事を読む  
東京西部 国労臨大闘争弾圧 「許さない会」結成1年集会(4月22日) 記事を読む  
自治労中央委に向け訴える  検討委「最終報告」認めず改憲勢力化くい止めよう 記事を読む  
全力で都議選勝利へ  交流センター女性部大会 戦時下の闘う方針(4月23、24日) 記事を読む  
(4面)
伊丹 終日行動で式典ズタズタに 第6次イラク派兵を弾劾
隊員、家族に共感広がる(投稿/K・M)(5月7日)
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“国民投票法案は危険”
改憲阻止へ東京で集会 古関教授が講演(5月2日)
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広島 海田市駐屯地に抗議  “被爆地からの出兵阻む”(4月29日) 記事を読む  
女性差別の石原許さない
男尊女卑の暴言重ね家父長制復活を要求 〈投稿〉 高原奈津美
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大阪 連合メーデーで情宣  JR大事故を受け(5月1日) 記事を読む  
日誌'05 5月4日〜10日
イラクで日本人“傭兵”拘束  米が「海兵隊沖縄残留」報告
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(5面)
尼崎事故 107人は民営化によって殺された 事故は小泉=奥田路線の帰結だ 闘わなければ安全は守れない JR体制と腐敗労組幹部 打倒へ 記事を読む  
強制配転と郵政民営化許さぬ  近畿支社に抗議デモ(投稿・Y)(5月2日) 記事を読む  
資本攻勢&労働日誌 2005 4・15〜5・1
小泉内閣 郵政民営化法案を国会提出
金属労協FTA推進へ/連合・全労連中央が抗日デモ非難
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(6面)
団結ひろば 投稿コーナー
JR西4労組の共同声明は「共犯声明」だ 広島 魚住 徹
「運転士の資質問題」許せない石原の放言 東京・建設労働者 J・N
中野さん講演集会で元気もらった労働者 新潟・労働者 K
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共謀罪 廃案あるのみ
5月審議入り阻止 国会前で集会、座り込み(5月11日)
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障害者自立支援法阻止を  介護制度を介護保健制度化
生存権保障の歯止めを外す  関東「障害者」解放委員会
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改憲と司法改悪に反対  弁護士会館に570人 闘う力がわく集会(4月27日) 記事を読む  

週刊『前進』(2198号1面1)(2005/05/23)

 中国への戦争叫ぶ石原打倒を

 長谷川英憲氏の都議選勝利で「つくる会」教科書阻止しよう

 全国の闘う労働者の力を杉並へ

 「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校「歴史」「公民」教科書の採択を阻止する闘いは、戦時下に突入した日本の階級闘争の行方を左右する決定的な闘いとなった。全労働者階級人民の最も緊要な課題となったのである。すでに日帝が自衛隊のイラク派兵という形で侵略戦争に参戦し、さらに日米枢軸のもとに北朝鮮・中国侵略戦争に向かって米軍再編を行い、沖縄基地を強化し、憲法改悪、教育基本法改悪を具体的な日程に上せている。この中で、子どもたちを再び戦場に送るための教育に転換させるために、日帝支配階級が教育内容に対する本格的な攻撃を加えてきているのだ。とりわけ、東京・杉並での採択を狙って、ファシスト都知事・石原、杉並区長・山田が画策している。これと真っ向から激突して粉砕しよう。全国のすべての闘う力を杉並に総結集して必ず勝利しよう。

 第1章 イラク戦争に規定された内外の情勢

 内外情勢は帝国主義の基本矛盾の爆発と、革命的情勢の急接近過程の激しい進行を示している。
 石油資源の強奪と中東での勢力圏再確立を狙うアメリカ帝国主義によるイラクへの侵略戦争が続行されている。そしてその中で「イラク民主化」なるものを名目として、カイライ政権をデッチあげようとするプロセスが進行している。マスコミは今のイラクの戦争状態についてまともに報道していない。しかし、特に4月28日の「移行政府」の組閣を契機に、イラク侵略戦争とそれへのイラク・ムスリム人民の激しい民族解放戦争が連日、ますます激しく展開されているのだ。
 一方、北朝鮮をめぐる情勢も緊迫している。北朝鮮政府の「核兵器製造のため実験炉停止」「使用済み燃料棒取り出し」の発表、米政府による「北が核実験をする兆候あり」の発表など、情勢は日々緊迫の度を強めている。北朝鮮をめぐる6カ国協議がストップしている中で、ブッシュは金正日を「独裁者」と呼び、すぐにも攻撃できる準備をしている。北朝鮮・金正日スターリン主義の反人民的な核武装路線・瀬戸際政策を口実に、これを餌食として、米日帝の侵略戦争が狙われているのである。
 そして、対北朝鮮、対中国の侵略戦争のための米軍トランスフォーメーション(世界的大再編)が日米帝国主義の間で詰められている。神奈川県座間基地を米陸軍第1軍団司令部に、全土の基地を再編しようとしている。そして、その中で、「沖縄基地の価値がますます高くなっている」と米帝の側から意思表示が繰り返されている。
 こうした動きに真っ向から対決して辺野古の新基地建設阻止の実力闘争が闘われていることは、決定的な意味を持っている。日米枢軸による北朝鮮・中国侵略戦争の攻撃に対する最前線での激突であり、ますます緊迫化することは避けられないのである。
 日帝は小泉=奥田路線のもと、帝国主義間の争闘戦での生き残りのために、戦争と民営化、労組破壊と安全破壊をどしどし推し進めている。日本経団連・奥田(日帝ブルジョアジーの頭目だ)が先頭に立ってそれを提唱しているのである。それは、今日の帝国主義の危機のもとでは、憲法改悪、教育基本法改悪なしにはにっちもさっちもいかないことを真正面から叫び、暴力的に打開しようとする攻撃である。
 JR尼崎事故は、国鉄分割・民営化こそが最大の元凶であり、「闘いなくして安全なし」ということを悲惨な現実をもって教えている。このJRにおける安全破壊は、「小泉改革」=民営化(労組破壊)の攻撃とは何であるのかをも示している。全逓労働者の公務員資格を奪い、団結を破壊する郵政民営化法案を今こそ粉砕し、4大産別決戦を一層強化しよう。
 中国人民の反日帝闘争と連帯し、戦争と民営化で労働者の命を奪う小泉=奥田と石原に、労働者階級の腹の底からの怒りを断固たたきつけよう。

 第2章 子どもたちを再び戦場に送る大攻撃

 こうした内外情勢のすさまじい激動と緊迫の中で、その階級的激突の最大の焦点になっているのが、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書をめぐる闘いである。
 「つくる会」教科書には、この間暴露してきているように、恐るべき内容が詰め込まれている。その歴史教科書では、そもそも「歴史は科学ではない」というイデオロギーのもとに、マルクス主義、唯物史観への全面的な対抗を図っている。そこには奴隷制や封建制、資本主義という規定も完全に追放されている。万世一系の天皇中心史観が前面化され、支配階級の思想と行動の正当化をもって「歴史を学ぶ」ことだとしている。
 弱肉強食・優勝劣敗の社会ダーウィニズム的な戦争肯定思想が臆面(おくめん)もなく提起され、日本帝国主義の侵略戦争と植民地支配が朝鮮・中国・アジア人民に何をもたらしたか、それによって日本人民にどんな悲惨な結末がもたらされたかは、すべてばっさりと切り捨てられている。
 さらに「公民」教科書は、より露骨である。全編をとおして、マルクス主義への批判を核心に据え、改憲の必要や「国防の義務」をうたい、明治国家と明治憲法(大日本帝国憲法)を徹底的に賛美し、人権制限、差別を肯定し、「お国のために命をささげる」ことを要求するとんでもない反動的教科書である。
 歴史と公民をセットにして、戦時下に突入した中で子どもたちを再び戦場に送るための教科書であると言える。戦後的価値観を根こそぎ解体・一掃する、そして階級的なものの見方や団結の思想を抹殺することを狙っているのだ。
 要するに「つくる会」教科書とは、日帝がすでに新しい侵略戦争、新しい15年戦争、新しい世界戦争のプロセスに突入している中で、日帝にとって戦争教育への全面的突入の攻撃が、今や必須不可欠なものとなったことを表している。まさにこれは「戦争のできる国家」「戦争のできる国民」をつくるための大攻撃なのだ。
 それは一部の右翼の突出などというものではない。すでに、日本経団連が1月18日に改憲と教育基本法改悪を叫ぶ二つの提言を出していることが示すように、日帝ブルジョアジーの要求になっているのだ。
 靖国神社参拝を繰り返して平然としている首相・小泉。中国のデモを非難して逆に「謝罪と賠償」を要求するという盗人たけだけしい外相・町村。「つくる会」教科書を「バランスがとれている」と称揚する文科相・中山。彼らは中国人民、朝鮮人民からどれだけ弾劾されても、歴史認識の歪曲を改めるどころか、「内政干渉」と言わんばかりに開き直っている。これが小泉内閣である。
 これに加えて首都東京の知事は、「今こそ尖閣諸島に自衛隊を派兵せよ」「アメリカを日本の対中国戦略に巻きこ」んで中国に戦争を仕掛けよ、と叫ぶファシスト石原である。杉並区長の山田は、「特攻隊に感謝しなさい」と成人式で訓示し、「大東亜戦争は自衛戦争」と公言する超反動だ。これが今日ただいまの日本の現実だ。
 南北朝鮮、中国、アジアの人民から見た時、かつて15年戦争でアジアをじゅうりんし、虐殺を繰り返した日本、戦後はそれを反省して「平和憲法」のもとで二度と戦争をしないことを誓ったはずの日本が、今やこんなとんでもないことになっているのだ。このことを戦慄(せんりつ)をもって直視しなければならない。
 こうした日帝の戦争に向かっての動きを集大成したものが「つくる会」教科書採択の動きなのだ。「つくる会」は前回は全人民的な反対運動で、全国でわずか0・03%しか採択されなかった。それから4年、彼らは「リベンジ」を叫び、教科書をよりカラフルに、「受け入れやすい」ように手を加え、採択率10%をめざして大運動を展開してきている。その最大のターゲットとして東京・杉並を選んできているのだ。ここで突破されたら本当に戦争へと堤防が決壊するのだ。
 杉並区は、石原の先兵としての山田区長が率先して「つくる会」教科書を推進しており、教育委員も「つくる会」派が多数を占めている。さらに、石原・都教委の指示にもとづいて現場教員や区民の意見を重視する従来の区の教科書採択要綱も改悪した。このままでは7月に「つくる会」教科書が採択されてしまう情勢だ。強力な大衆運動が巻き起こらなければ、このすう勢は覆らないのである。
 敵の側が杉並を決戦場としてきている以上、これに対して全労働者階級の側からこれを阻止する大決戦に打って出なければならない。そして総力を杉並に投入し、教育労働者、保護者を始め、全区の労働者住民の決起を呼び起こすならば、この情勢を覆すことはまったく可能だ。この1〜3月の「日の丸・君が代」強制阻止のわれわれの全力の決起――それが教育労働者の偉大な不起立決起の勝利の原動力の一部を形成したことは明白だ――をさらに数倍するような決起を杉並に集中しよう。

 第3章 石原に挑戦し闘うのは長谷川氏だけ

 この杉並における「つくる会」教科書採択阻止の闘いは、時間的にも空間的にも、完全に杉並の都議会議員選挙戦と重なっている。
 「つくる会」勢力である自民党・石原一派は言うまでもなく、これを支え協力している公明党、民主党を労働者の階級的怒りで吹っ飛ばそう。
 民主党もまた、石原翼賛勢力だ。板橋区選出の民主党都議・土屋の言動(板橋高校の卒業式で「日の丸・君が代」強制のために騒ぎ回り、反対した藤田さんを権力に突き出す)、また民主党衆議院議員で石原の盟友・西村真悟の言動(教育基本法改正は、「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」ためと公言)を見れば、民主党もまた、石原とグルであることは明白だ。このことを暴いて闘うならば、民主党支持者の中に大きな分岐と流動をつくり出すことは可能だ。
 また、日本共産党は、もともと「石原都政には是々非々で」と称して、ファシスト石原と真っ向から対決することに反対し、石原との「一致点」を盛んに強調してきた。今日、石原批判勢力であるかのように振る舞っているが、「つくる会」教科書を問題にしようとしていない。9条改憲、消費税、「日の丸・君が代」などに対して「絶対反対」とは言わない。
 日本共産党以外の労組票などを集めてきた福士敬子(よしこ)都議も「私は別に反石原という立場ではありません」「面白いところもある石原都政」と「勝手連」のビラで公言している。「つくる会」教科書は争点にもしていない。戦争と民営化(労組破壊)の攻撃に対する闘う労働者の苦闘とともにある人ではない。要するに、日共も福士都議も生活ネットも、石原ファシストの攻撃に屈服しているのだ。
 こうした中で唯一、「石原都知事に挑戦状」「介護の長谷川」を旗印にして闘う長谷川英憲元都議の存在は決定的である。長谷川氏は、何よりも日帝・小泉=奥田路線の先兵である石原都政を真っ向から弾劾し、労働者階級人民の団結の力でこれを打倒することを呼びかけている。そしてその対決の最大の争点として「つくる会」教科書採択阻止を据え、同時に介護保険法改悪阻止を訴え、石原の社会保障制度解体攻撃との闘いを訴えている。今日の日本で、最も労働者階級の闘いの側に立ち、その先頭に立つ候補である。
 われわれのスローガンは、「ファシスト石原打倒」「石原・山田の『つくる会』教科書採択絶対阻止」「戦争ではなく社会保障を」である。このスローガンのもとにこの5〜6月、労働者と区民が主人公の大衆闘争の爆発をかちとり、その力で都議選勝利をかちとるのだ。
 「つくる会」教科書採択阻止の巨大な大衆運動をつくり出し、その力で長谷川英憲氏の勝利をかちとろう。全国の闘う労働者の力を東京・杉並に今こそ総結集しよう。

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週刊『前進』(2198号1面2)(2005/05/23)

杉並先頭に採択絶対阻止へ 「つくる会」教科書を暴く (2)弱肉強食の論理

 ●侵略と植民地支配を居直り

 「近代化」「解放」と正当化

 「自存自衛」論

 「歴史は科学ではない」とする「つくる会」の歴史教科書に貫かれているのは、万世一系の天皇中心史観と、もう一つは、社会ダーウィニズム的なあからさまな弱肉強食の論理である。人間の社会も自然界と同じく生存競争をその原理としており、いつの時代も弱い者を犠牲にすることによってしか生き残れない優勝劣敗の世界なのだと描き出す。それで帝国主義の戦争を「必要なこと」として平然と肯定していくのだ。
 とりわけ日本の近現代史について、「つくる会」教科書はその立場から日帝によるアジアへの侵略と戦争の一切を正当化している。韓国併合も、中国への侵略戦争も、太平洋戦争への突進もすべて、国家間・民族間の生存競争に勝ちぬくためには不可欠だった、ロシアと戦争しなければ「手遅れになる」ところだった、「日本の南方進出はもともと自存自衛のためだった」と全面的に正当化するのだ。むしろ当時の国家指導者がいかに偉大であったかを学ぶべきだ、などと叫んでいる。
 これは帝国主義者がその侵略政策、対外膨張政策を合理化するために持ち出す典型的な主張だ。「国家の生存がかかっている」などと言うが、その「国家」の正体は何か。現実の社会は階級的に非和解的に分裂しており、彼らが言う日本国家とは支配階級の国家である。その「生存」とは実際には、日本の帝国主義ブルジョアジーが世界の分割と再分割をめぐる他帝国主義との強盗的な争闘戦にいかにして勝ちぬき、生き残るかということでしかない。
 この本質を隠すために「つくる会」は、「国家=民族」とし、国家を階級を超越した「共同体」として、あたかも有機的な一個の生命体のように描く虚偽のイデオロギーをまき散らすのだ。そして一切はこの国家=民族の「生存のための闘争」だったのだと言い、日帝が行った侵略戦争とそこでの人民大虐殺を居直っている。

 「日本は解放軍」

 例えば日清・日露戦争について、「朝鮮半島が、東方に勢力を拡大しつつあるロシアの支配下に入れば、日本を攻撃する格好の基地とな」る、「日露戦争は、日本の生き残りをかけた戦争だった。日本はこれに勝利して、自国の安全保障を確立した」と言う。韓国併合についても「日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた」と言う。
 手前勝手な地政学的口実をつくって、日本を防衛するためには朝鮮を日本の支配下に組み入れるしかなかった、だから朝鮮を侵略し植民地化したのは正しかったと強弁しているのだ。
 そこには、歴史を検証する時に本来求められる、侵略された側に身をおいてその立場から歴史を見直し反省もするという態度は、当然ながら何ひとつない。逆に、日本が生き残るためだったら朝鮮人民や中国人民の意思など頭から踏みにじってよしとされている。
 しかも他国への侵略をこのように居直る一方で、日帝が朝鮮や中国に対してやったことは欧米列強による侵略や植民地支配とは違って、アジアにすばらしく良いことをしたかのように描いているのだ。
 例えば、朝鮮・台湾への日帝の過酷な植民地支配を「近代化を助けた」などと美化するばかりか、日本がロシアとの帝国主義戦争で「大勝利」し、その結果として朝鮮を植民地化し、中国に侵略していったことが、逆になんと「世界を変えた」「植民地にされていた民族に、独立への希望をあたえた」と正反対に描かれ、最大限に礼賛されている。中国侵略戦争と「満州国」デッチあげについても、「満州国は、五族協和、王道楽土建設のスローガンのもと、日本の重工業の進出などにより急激な経済成長をとげた」と、まるで理想の国を建設したかのような大ウソを公然と流している。
 その極め付きは、太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼んで、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍として迎えたインドネシアの人々」などと、日帝の侵略戦争がアジアを「解放」したというとんでもない主張をやっていることだ。そして、日帝が米英と同じ、否それ以上に凶暴な帝国主義として、アジア人民を徹底的にじゅうりんし、支配し、虐殺したこと、それが日本の労働者人民にも悲惨きわまる犠牲を強制したことを押し隠し、美化しているのである。

 他民族抹殺政策

 「つくる会」教科書を貫くもう一つの史観としての社会ダーウィニズム的な考え方、それが最後に行きつく先は何か。そのことを具体的に示すものが、1930年代から第2次大戦過程でのナチス・ドイツや日本の天皇制国家の姿だった。
 そこでは、資本主義・帝国主義の弱肉強食の論理に「民族の血」を重視する血のイデオロギーと優生思想とが結合され、被抑圧民族への排外主義と差別・抑圧がグロテスクなまでに拡大された。単に強い者のみが生き残ることがよしとされただけではない。ヒトラーが「戦争は文明の父」と言い放ったように、他民族の征服と民族的抹殺、社会からの「弱者の除去」こそが国家発展の原動力とされたのである。その結果が、ナチスによるユダヤ人や「障害者」の大量虐殺であり、日帝による朝鮮人民への民族抹殺政策そのものと言うべき強制連行や日本軍軍隊慰安婦政策であった。
 「つくる会」教科書はまさにそうした恐るべきファシスト的価値観に子どもたちを導くものである。こんな教科書を、絶対に許してはならない。

(検定合格した05年版「つくる会」歴史教科書より)
▼「日露戦争は、日本の生き残りをかけた戦争だった」「日露戦争後、日本は東アジアにおけるおしもおされもしない大国となった」
▼「日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた」
▼「大東亜戦争」「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍として迎えた人々」

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週刊『前進』(2198号2面1)(2005/05/23)

 「戦争は社会の原理」と石原

 「つくる会」教科書導入の最先兵

 “中国分裂させろ”と対中国戦争を叫ぶファシスト石原打倒へ

 日本帝国主義・小泉政権は、絶望的な体制危機の中で日米軍事同盟を強化し、北朝鮮・中国侵略戦争に突き進んでいる。その先兵となって「中国や北朝鮮への侵略戦争にうって出よ」と絶叫しているのが都知事・ファシスト石原だ。石原は帝国主義の危機と腐敗を一身に体現し、差別的でおぞましいファシストの正体をむき出しにして「北朝鮮を転覆せよ」「中国を分裂させよ」と叫び回っている。「つくる会」の「歴史」「公民」教科書はこの石原と同一のファシスト思想で全国の中学生を教育しようとするものだ。杉並を先頭に全国で「つくる会」教科書採択を阻止しよう。都議選決戦に勝利し、ファシスト石原打倒、山田杉並区長打倒へ突き進もう。

 “北京五輪をボイコットせよ”

 許し難いことにファシスト石原は、自らの公式ホームページを「宣戦布告」と名付け、露骨に戦争をあおっている。石原は前号既報のとおり『週刊文春』5月5・12日特大号で「今こそ尖閣諸島に自衛隊を常駐させよ」「アメリカを日本の対中国戦略に巻き込み中国と戦争しろ」と叫んでいる。同じ趣旨のことを『文芸春秋』6月号でも「北京五輪を断固ボイコットせよ」などというセンセーショナルな大見出しをつけて繰り返している。
 あらためて『週刊文春』での次の発言は重大だ。
 「あと10年もすれば中国は分裂国家になるでしょう。そうなれば少なくとも覇権主義はなくなるし、経済的にも効率がよくなるはずです。……われわれはその歩みを早める努力をするべきです」「そして、分裂した各地域に狙いを定めて先進国が進出し、彼らとともに経済効率を上げつつ自らの利益も上げるという形になっていく」
 これこそ帝国主義の侵略戦争の論理だ。全世界的な帝国主義間争闘戦の激化の中で、日帝が米帝とともに策動している中国・北朝鮮の残存スターリン主義政権の転覆−侵略戦争の狙いをあけすけに述べている。

 反日帝闘争は「幼稚で愚か」

 さらに石原は、中国人民に対して「民度が低い」「幼稚で愚かな反日暴動」「金への信仰。これは中国人の歴史的DNAだ」と、口汚い言葉でののしり、中国人民を排外主義的に「日本人よりも劣った民族」として描きあげて中国侵略戦争を正当化しようとしている。
 あろうことか都知事という強大な権力を持つ者が、かつての日帝の中国侵略戦争に対する謝罪も反省もなく中国人民を侮蔑し、再び「中国を分裂させよ」などと公言しているのだ。こんなことをどうして放置し許しておけようか。
 しかも、これは今やひとり石原だけの突出した右翼的主張ではない。日帝支配階級全体が、帝国主義間争闘戦の激化で危機を深め、石原的な帝国主義的イデオロギーで侵略戦争に突き進む以外になくなっているのだ。
 さらに同誌で石原は、「チープレイバー」などという侮蔑的な言い方で中国労働者の現状に言及し、「非人間的な過酷な労働条件で働かされている」「労働組合や労働基準法がない環境で働かされている」などと言って、ファシストよろしくこれを反共・反中国の宣伝材料にしている。
 だが、中国スターリン主義と結託して、「改革・開放」路線のもとで、中国の労働者を「非人間的な過酷な労働条件で働か」せ、「労働組合や労働基準法」もつくらせないで、日本人賃金の25分の1という超低賃金で搾取しているのは誰か。日帝資本ではないか! だからこそ、深せんを始めとして中国労働者が日帝資本に対してストライキ、反日帝闘争に立ち上がっているのだ。
 日帝資本をまったく免罪し、日帝資本による植民地主義的な過酷な労働条件を反中国の宣伝材料に使うなど、まさに強盗の居直り、極悪のデマゴーグぶりだ。
 石原は理屈が立たなければ居直る。米帝のイラク侵略戦争に何の正義性もないことが暴かれると、「戦争というのは昔から大義があるような、ないようなものでしょう」(『諸君』04年6月号)と開き直る。これがファシストの手口だ。

 「つくる会」と同一の歴史観

 石原は都立養護学校や、今春開校した都立中高一貫校で「つくる会」教科書を採択した。そしてこの夏には杉並区で、ファシスト山田区長を手先にして採択を狙っている。
 「つくる会」教科書は、日本が帝国主義として延命していくためには、侵略戦争と植民地支配も必要である、弱肉強食・優勝劣敗は社会の原理だというファシスト的な社会ダーウィニズム的な考え、価値観、歴史観を中学生に教え込もうとしている。
 この「つくる会」教科書と石原のイデオロギーはまったく同一だ。石原は自著『「父」なくして国立たず』でこう書いている。
 「戦争こそは社会の原理」「太平洋戦争までの二百年、つまりヨーロッパ近代主義の後半の二百年を支配した民主主義の政治原理というのは……食うか食われるかの、あからさまな弱肉強食の覇権主義、帝国主義でした。つまり植民地を持つか、植民地にされるかのどちらかで、他の選択肢はまったくありはしなかった」「あの日清、日露の戦争もそうですが、これに勝たなかったら日本は相手の植民地になっていたのですから」
 この論理は「つくる会」教科書のイデオロギーそのものである。まさにむき出しの帝国主義侵略戦争の全面賛美のイデオロギーである。この社会ダーウィニズム的な反革命思想を、労働者階級は、労働者国際連帯、「帝国主義戦争を内乱へ」、プロレタリア世界革命の思想と戦略で全面的に対決し粉砕しなければならない。

 都議選に勝利し採択阻止へ

 1929年の世界大恐慌後、帝国主義各国は破局的な経済危機、体制危機を深め、世界経済の分裂化・ブロック化を深めていった。「持たざる帝国主義」=日帝はドイツ帝国主義とともに、最も凶暴に植民地争奪の侵略戦争に突き進み、そして帝国主義同士の激突=第2次世界大戦へと突き進んでいった。今それと同じ帝国主義の争闘戦と戦争の論理が働いている。
 帝国主義戦争で犠牲になるのは、つねに労働者階級だ。「国家のために命を捧げよ」「公に奉仕する心を持て」とは、帝国主義支配階級の利益のために労働者はとことん犠牲になれということでしかない。
 帝国主義戦争の反人民性、残虐さ、悲惨さを覆い隠し、「スポーツより高揚感を味わえるのは戦争だ」「特攻隊は美しい」などと戦争をあおる石原と「つくる会」教科書を許してはならない。杉並を先頭に全国で「つくる会」教科書の採択を絶対に阻止し、ファシスト石原を打倒しよう。6月都議選に勝利しよう。

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週刊『前進』(2198号2面2)(2005/05/23)

 都議選情勢 「石原知事に挑戦状」と長谷川氏が鮮烈に登場

 かつてない激戦の杉並

 都議会議員選挙の告示まであと1カ月あまりとなった。杉並はかつてない激戦区となっている。6議席を12人の候補者で争う。安泰の候補は誰もおらず、これからの選挙戦に一切の勝敗がかかっている。
 自民党は、大泉時男(63)と早坂義弘(36)の2人の新人を公認した。都議候補を公募制にしたがギリギリまで決まらず、不満がくすぶっていると言われ、元区議の千葉昇(62)は、無所属で立候補する。
 公明党の松葉多美子(42)は森田安孝の後継として組織固めをしている。
 民主党は、現職の田中良(44)と新人の門脇文良(50)の2人を公認した。その一方で民主党杉並総支部幹事長だった木梨盛祥(55)が無所属で立候補する。
 日本共産党は現職の吉田信夫(55)を立てる。生活者ネットは藤田愛子の後継として新人の堀之内敏恵(32)が立候補。福士敬子(66)は現職である。急きょ出馬を表明した渡嘉敷奈緒美(42)は「つくる会」教科書派で、石原、山田の先兵だ。
 この中で石原打倒と「つくる会」教科書を最大の選挙戦の争点にし真っ向から訴えて闘う候補は「石原知事に挑戦状」を掲げる長谷川英憲・都政を革新する会代表以外に存在しない。他の候補は与党も野党もこの争点を隠そうと意図的に完全に逃げているのだ。
 今、日帝・小泉政権が自衛隊をイラクに派兵し侵略戦争に突入している中で有事体制の完成を狙い、「日の丸・君が代」の強制、「つくる会」教科書の拡大で戦争国家体制をつくろうとしている。自民党はまさにその戦争と民営化攻撃の中心勢力である。
 公明党は、その自民党支配を支える極悪の役割を果たしている。改憲、教育基本法改悪、福祉破壊など戦争と民営化の攻撃を自民党と一体で進めている。
 民主党も自民党と一緒になって改憲攻撃、戦争と民営化攻撃を進めている。許しがたいのは、労働組合のナショナルセンターである連合が、改憲勢力への転向と一体になって民主党を全面的に支持し、労働者を戦争に動員する攻撃を進めていることである。
 さらに重大なのは、日本共産党を始めとした「野党」の全面的裏切りと屈服である。
 「市民派」を名乗る福士敬子は「私は別に反石原という立場ではありません」「面白いところもある石原都政」と言い、石原とまったく対決しようとしていない。それなのに「日の丸・君が代」や「つくる会」教科書に反対する労働者人民の票だけは集めようとしている。
 福士は石原の「日の丸・君が代」強制攻撃にも完全に屈服しており、卒業式や入学式に来賓として出席しても不起立で闘おうとしない。処分などない来賓でありながら起立するなど絶対に許せない。しかも「つくる会」教科書について政策で言及さえしていないのである。
 この点では日共・吉田信夫も同罪だ。「つくる会」教科書とまったく闘おうとしていない。日共は口先で改憲反対を言っているが「つくる会」教科書に屈服して改憲阻止の道がどこにあるというのか。しかも日共の区議団は、卒・入学式に来賓として出席して「日の丸・君が代」に起立して屈服しているのだ。
 都議選決戦は総蜂起戦の段階に突入した。「激戦」は勝利のチャンスが訪れているということでもある。党と労働者人民、住民が全力で決起すれば勝利をもぎ取ることが可能な情勢なのである。長谷川氏の当選へ全力で決起しよう。

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週刊『前進』(2198号2面3)(2005/05/23)

 杉並住民の会総会&記念講演 “介護保健改悪許さぬ”

 長谷川氏の勝利を誓う

 5月5日、介護と福祉を要求する杉並住民の会の第6回総会&記念集会が杉並区西荻窪の勤労福祉会館で開かれた。介護が必要な高齢者からさらに介護を奪う介護保険法改悪案への怒りに燃えて高齢者を中心に210人が集まり、都議選で住民の会事務局長の長谷川英憲氏の勝利へ全力で闘うことを誓った。
 開会前にはビデオが上映され、プロの講談師による解説で介護保険制度改悪の内容をわかりやすく説き、厚労省交渉など住民の会の1年間の活動、長谷川さんの活躍が映し出された。
 1時半から始まった総会では、八木ケ谷妙子代表が「一人ひとり誰もが命いっぱいに生きている。そういう命に対して戦争をやるんだなんて言ってたくさんの人を殺しました。広島・長崎でたくさんの人が丸焦げに殺されました。なんでそれをまたやるというのでしょう」「わたしたちは生きているんだぞ。確かに生きているんだぞ。生きているということはなんてすばらしいことなんでしょう」と参加者を勇気づけた。
 続いて司会から杉並区高齢者施策課長や鹿児島大学教授の伊藤周平さんなどからのメッセージが紹介された。
 連帯のあいさつではまず、都政を革新する会のけしば誠一区議、新城せつ子区議、北島邦彦事務局長が登壇し、代表してけしばさんがJR尼崎事故で運転士に責任を転嫁しようとする攻撃を怒りを込めて批判し、すべての責任が分割・民営化にあることを弾劾した。そして「二度とこのような事態を許さないために6月24日告示の都議会議員選挙に私たちの代表・長谷川英憲を押し立てて労働者が職場の安全を取り戻す政治をつくりたい。介護・福祉を私たちの手に取り戻すために長谷川を勝たせていただきたい」と訴えた。
 佐野雄介くんと地域で共に生きる道を切り開く会の佐野さよ子さんから連帯のあいさつを受けた。
 活動報告では、副代表がこの1年間で2度の厚生労働省交渉や2度の杉並区交渉を行ったこと、4月20日の区交渉ではヘルパーの団体がともに担い抜き、ヘルパーとの連帯の新しい地平が開かれたことを報告した。そして「必要な介護を切り捨てる介護保険制度改悪が、自民・公明・民主の3党の賛成によって衆議院の委員会で可決され、5月10日に衆議院本会議を通り参議院に送られようとしている」と情勢の重大性を提起し、「われわれは主権者であることを認識して闘わなければならない」と訴えた。最後に「7月には東京都議会選挙が行われます。この都議選で、極悪知事の石原に反対してわれわれの仲間である長谷川英憲を候補として決戦を挑みます。一人ひとりが周りに声をかけ、小さな川を大河にしてぜひ長谷川えいけんを勝たしめて下さい」と訴えた。報告の途中に神奈川から駆けつけた「介護保険に異議あり、全国ネットワーク」の仲間を紹介した。
 地域からの報告では、会員が各地域の懇談会の様子を報告し、「一人ひとりはみんなさみしかったり不安があったり、だから心を寄せ合うのが住民の会」「懇談会に多くの人に参加していただきたい」と訴えた。
 介護保険制度改悪絶対反対と都議選での長谷川英憲勝利へ全力で闘うことを訴えた集会宣言、山田区長の「つくる会」教科書採択を許さない特別決議が読み上げられ、参加者の圧倒的な拍手で採択した。

 長谷川英憲氏が特別報告

 第2部記念集会では、長谷川英憲さんが特別報告を行った。まずJR西日本尼崎事故について「運転士に責任を押しかぶせようとしているが絶対に許せない。JRは『安全はもうからない』と人を減らし、外注化し、予算を削った。運転士には遅れたら取り戻せと言明していた。分割・民営化がこの大量殺人を引き起こしたのです」と事故問題の本質を明らかにした。そして「運転士の資質が問題」と責任転嫁する石原知事こそ運輸大臣として分割・民営化を推進した当事者であり、107人の命を奪った責任者だと弾劾した。
 介護保険制度の大改悪について、「介護保険は介護を守るものではない。介護を民間企業に投げ出すものだ」と強調し、「絶対反対で闘わなければならない」と訴えた。さらに「石原知事は『中国と戦争をやれ。戦争をやらなかったので若者がだめになった』と叫んでいる。こんな石原都知事が都議会でなんの弾劾も受けない。本当に腐りきっている。絶対に変えなければいけない。福祉が切り捨てられ戦争への道が始まっている。こういう石原を倒す闘いが絶対に必要です。私はその代表として都議選を闘い、皆さんと一緒に勝利したい」と力強く訴えた。
 会員による新舞踊が会場を魅了し、ギター演奏では最後に会場全員で「四季の歌」を合唱した。和太鼓の演奏が参加者を激励し、団結がんばろうで闘う決意をうち固めた。

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週刊『前進』(2198号2面4)(2005/05/23)

 介護保険制度 改悪法案絶対阻止へ

 介護保険制度改悪法案が5月10日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。介護保険改悪をめぐって重大情勢に突入している。高齢者、労働者人民の生きる権利を守るために今こそ闘いぬこう。
 介護保険制度改悪案は、これまで生活援助介護を受けてきた要支援や要介護1の高齢者からヘルパー派遣を奪うものだ。厚労省は掃除や炊事、洗濯、買い物などの高齢者の生活にとって最も基本的で重要な介護を「家事代行サービス」とあたかも介護ではないかのように言いなして、訪問介護から切り捨てようとしている。さらに介護保険導入に当たっては「介護の社会化」と称していながら、すでに「同居の家族がいるから」と生活援助介護を認めない攻撃に出てきている。「必要なら自費でヘルパーを雇え」というのだ。
 また、施設で介護を受けている高齢者には部屋代や食事代を「ホテルコスト」と称して自己負担させようとしている。3〜5万円も自己負担が増え、払えない人は施設から追い出されることになるのだ。「金のない高齢者は死ね」というこの攻撃を絶対に許してはならない。高齢者、家族、介護労働者の一体となった闘いで介護保険制度改悪法案を粉砕しよう。

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週刊『前進』(2198号2面5)(2005/05/23)

紹介 共産主義者144号

 戦争・ファシストとの闘い

 牟田論文 世界戦争政策と対決訴え

 園田論文 都議選勝利へ全力決起を

 米日帝枢軸による侵略戦争政策に対して、ついに韓国・中国人民の歴史的な抗日デモが始まった。これと連帯し、日帝の改憲攻撃と対決する正念場がきた。

 ●帝国主義世界戦争の時代の米軍大再編

 巻頭の牟田論文は、「米帝の世界戦争政策とトランスフォーメーション」。
 2期目のブッシュは年頭以来、新たな侵略戦争に向けた政策を激しく打ち出している。今、全世界を戦争にたたき込みつつ進行している米軍の世界的な再編とは何か。その理念・戦略とは。それらを背後で動機付けている世界危機とは。これらの歴史的意味を根底でとらえた情勢分析である。
 第1章は、米軍再編の背後にある帝国主義の世界危機の内容を基本的・全面的に明解にした。まずイラク戦争の泥沼化こそ帝国主義の分裂を決定的に促進していることを強調している。中東(石油)・世界支配の再編をかけた米帝と拡大したEUの中心である仏・独帝。これらが熾烈(しれつ)に争い、非和解化していく様子を構造的に説得力豊かに展開している。まさに帝国主義世界戦争が不可避化していく現在的な論証といえる。
 第2章では、米軍再編が世界・東アジアの軍事情勢にもたらすものを具体的に迫った。「大再編」とは簡単にまとめると、@01年9・11を機に世界戦争を宣言したブッシュドクトリンの実行である。Aイラク侵略戦争の激化・拡大路線であるとともに、イラン、北朝鮮、そして究極的に中国スターリン主義の体制転覆を戦略的にすえた。B日帝がこれに全面関与することで成り立つ。2・19日米安保協での「戦略合意」とは、自衛隊が米軍と一体化し日本全土が北朝鮮・中国侵略戦争基地化になるというもの。ここから沖縄米軍基地の再編・強化は不可避だと言える。
 第3章は、以上からする戦後日米関係の結論的な論及。こうした安保の世界安保への実戦的飛躍は、日本の対米従属に根本があるのではない。逆に日米争闘戦の非和解的な激化を背景にして進行している。小泉=奥田の改憲攻撃もそうした歴史的な踏み切りとしてあることを徹底的に突き出している。
 米軍再編によって切迫する改憲阻止決戦を日本革命―世界革命の戦略的水路として闘おう。本論文はその現実認識と行動指針のための必須な土台だ。

 ●都議選勝利かちとりファシスト石原打倒へ

 園田論文は、6月都議選を水路に小泉=奥田路線の最悪の先兵=ファシスト石原を打倒するための路線と方針を訴えた重要論文。
 まず、石原都教委による「日の丸・君が代」強制と闘った1〜3月卒入学式闘争の勝利的地平を総括し、石原打倒の大衆的闘いの展望をとらえたことの意義の大きさを確認している。
 次にあらためてファシスト的実践的政治家としての石原の反革命的性格と弱点を掘り下げて指摘している。さらに石原都政の民営化攻撃、社会保障解体攻撃との闘いの基軸性もしっかり確認している。
 以上に立って現在、石原との激突で「つくる会」教科書の杉並区での採択に攻防の一大焦点があることを鮮明にし、闘う全国人民の総決起を強く訴えている。石原―杉並山田区長打倒の一大大衆行動を巻きおこそう。その力で長谷川英憲氏の都議当選をかちとろう。

 ●名護・辺野古の米軍新基地建設実力阻止へ

 大浜論文は、学生戦線の同志による渾身(こんしん)の名護・辺野古現地闘争レポート。人民決起のすばらしさと自己解放性、起伏に満ちた攻防過程をとおして米軍再編・日米安保同盟の新展開を揺るがす巨大な地平を、見事に活写しきった。写真・図も豊富で読者の心を辺野古に引きつけてやまない。
 マルクス主義原典学習講座の第4回目はレーニン『国家と革命』。腐朽し極限的に肥大化したリヴァイアサン(怪物)としての現代国家権力を打ち倒すことなしには、労働者階級は搾取・収奪から自らを解放できないという基本命題を鮮明に提起している。とりわけ、ネグリやハートの「帝国」論、さらに日本共産党・不破などの、横行する国家に対する日和見主義をイデオロギー的に批判し、それらとの対比で21世紀冒頭の現代革命論としてレーニン国家論の神髄をよみがえらせている。上下2回シリーズの前半である。
 革共同政治局の05年1・1アピールは、『前進』新年号掲載を再録。4大産別を軸に新指導路線の物質化の勝負の年である05年の戦略方針を繰り返し学習しよう。とくに労働組合の革命論的意義の明確化を軸とする階級的自己解放論の深化は一層重要である。

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週刊『前進』(2198号3面1)(2005/05/23)

 教基法改悪法案 今国会提出許すな

 小泉・石原に5500人の怒り

 “つくる会教科書採択阻止を”

“教育基本法の改悪をとめよう” 5・7全国集会の後、横断幕を持ってデモの先頭に立つ呼びかけ人。左から高橋哲哉 、大内裕和、三宅晶子、小森陽一の4氏(NHK横)

 5月7日、「子どもは『お国』のためにあるんじゃない!教育基本法の改悪をとめよう!全国集会」が東京・代々木公園で開かれた。雨上がりの晴天のもと、3〜4月「日の丸・君が代」強制拒否の卒・入学式闘争を闘った教育労働者を先頭に全国から5500人超の参加者が集まり、「教育基本法改悪案の今通常国会への提出を全力で食い止め、教育基本法改悪を絶対に阻止しよう」と誓い合った。
 大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子の4氏を呼びかけ人とする「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が主催した。
 午後2時からの決起集会は、加藤周一さんが憲法9条について特別発言、呼びかけ人と全国からの発言、さらに「つくる会」教科書問題や「日の丸・君が代」強制と闘う教育労働者の発言などが続き、最後に4人の呼びかけ人が集会アピール(別掲)を読み上げ、全参加者の拍手で採択した。その後、意気高く渋谷をパレードした。
 小森さんは、「かつての日本の侵略戦争を美化する『つくる会』教科書が検定合格した。靖国神社参拝しかり。ここに中国や韓国の人の怒りの原因がある」と断言し、「採択させない運動をそれぞれの地域で責任をもってやろう。それが全国的レベルで教育基本法を変えさせない底力となる」と訴えた。
 三宅さんは、「教育における労働と心と戦争」と題して、労働者の生存権、団結権、基本的人権を破壊して進行する労働再編を教育の場にも導入しようとしているのが教育改革であり、両者がいずれも労働者の戦争動員に向けての再編であることを力説した。
 高橋さんは、「子どもは『お国』のためにあるんじゃない!――これは私たちの合言葉だが、百年近く前にも『子どもを救え』と言葉を発した人がいた」と魯迅の『狂人日記』を紹介、「自由や平等、平和の中で生きたいという願いを私たちの中で目覚めさせよう」と語った。
 大内さんは、「日本経団連が1・18教育提言で新自由主義と国家主義を柱とする教基法改悪の方針を打ち出したことは、これが憲法9条改悪と結びついた国家的プログラムであることを意味している。国鉄分割・民営化以来の新自由主義の結果がJR西日本の尼崎脱線事故だ」と指摘。これと対決する労働者の闘いとして、国鉄1047名闘争、有事法制を拒否する陸・海・空・港湾労組20団体の闘い、10・23通達による「日の丸・君が代」強制拒否の教育労働者の闘いをあげて「これらの闘いを広げていくことが労働運動の再生につながる」「『日の丸・君が代』強制反対を軸に石原ファシズム体制打倒、小泉改憲内閣打倒の闘いをともにつくっていこう」と力強く締めくくり、圧倒的な拍手で確認された。

 辺野古から発言

 全国からの発言では、北海道の教育労働者が、自衛隊のイラク派兵に直面し「いま平和教育を行わなくていつやるんだ」と踏ん張っていると発言、愛媛からは10人余の大学生が並んで「教基法改悪阻止と一体で『つくる会』教科書採択阻止運動を進めている」と報告した。
 沖縄・辺野古からヘリ基地反対協の大西照雄さんが現地で闘う青年とともに立ち、「きょうで384日、24時間海上に座り込んでボーリング調査を阻止している。憲法、教育基本法を世界の宝にしていこう」。
 さらに、「つくる会」教科書と闘う教科書ネット21、卒業式で「先生をこれ以上いじめないでください」と訴えた戸山高校卒業生、声量調査攻撃と闘う町田市の保護者などが、次々と今春の闘いを報告した。
 闘う教育労働者とともに登壇した被処分者の会の近藤徹事務局長は、「正義は私たちの側にある。闘いの輪も広がっている。5月23日には昨年度の処分取り消しを求める東京都人事委員会審理も行われる。『日の丸・君が代』強制との闘いは、この国を戦争をする国に変えようとするどす黒い野望を持つ勢力との闘い。石原都知事が命懸けで憲法を破ると言うなら、私たちは命懸けで憲法・教育基本法改悪を断固として阻止しましょう。不当処分を撤回させましょう」と訴えた。

 「交流のひろば」

 午前から「交流のひろば」が開かれた。「日の丸・君が代」強制反対や「つくる会」教科書採択反対、沖縄・辺野古の新基地建設反対、国鉄1047名闘争などのテントが並んだ。全国各地で教育基本法改悪反対署名を進めている百万人署名運動は大挙して参加、動労千葉、動労水戸などの闘う労組旗も林立。
 中でも被処分者の会と被解雇者の会、予防訴訟を進める会の3者のテント前で行われたリレートークは多くの人でにぎわった。

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週刊『前進』(2198号3面2)(2005/05/23)

 5・7集会アピール(抜粋) 「子どもは『お国』のためにあるんじゃない!教育基本法の改悪をとめよう!全国集会」(東京・代々木公園)

 教育基本法の改悪が行われようとしているなか、本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まりました。教育基本法の改悪によって「愛国心」の強制、家庭教育への介入、教育行政による教育支配が進めば、教育は国家権力によって支配され、私たちの自由は奪われてしまうことになるでしょう。また改悪は、子どもが教育を平等に受ける権利を奪い、エリートとその他大勢に分ける差別を強化します。
 2005年1月18日、日本経団連は「これからの教育の方向性に関する提言」を発表し、教育基本法改悪の方針を打ち出しました。同日、同団体が発表した「わが国の基本問題を考える」で、憲法第9条第2項の「改正」、具体的には自衛隊保持の明確化と集団的自衛権の明記が提唱されていることは、教育基本法改悪と憲法改悪の一体性を示しています。
 東京都では、教職員への「君が代」起立・斉唱の強制はもとより、生徒に「君が代」の起立・斉唱を「指導せよ」との項目を加えた校長の教職員への職務命令が出されました。これに対して、保護者、市民、地域の労働組合による教育委員会、学校への申し入れ、校門前でのビラ撒きなどが、現場教職員の職務命令阻止・撤回の運動と連帯して取り組まれました。子どもたちからも、卒業式での「先生をこれ以上いじめないでください!」という発言など、強制や処分に対する批判の声があがりました。
 そして今年も、処分を覚悟で60名以上の教職員が不起立・不伴奏を貫きました。これらの運動は、教育基本法改悪の先取りを許さないたたかいであるとともに、自由と民主主義を否定する石原都政のファシズム的支配に対する貴重な抵抗運動であるといえます。
 北九州においては、既に20年前から強制が実施され、教職員によって「ココロ裁判」が続けられていましたが、4月26日、福岡地裁は、学習指導要領は「大綱的基準」に過ぎず、卒業式の細目にわたっての拘束力をもつものではない、教育委員会の細部にわたる指導と実施状況の監督は「教育基本法10条1項にいう不当な支配」にあたるとし、処分の取り消しを命じました。
 しかし、政府・与党は教育基本法改悪法案の国会上程をあきらめてはいません。また2005年4月5日には、近代日本の侵略戦争と植民地支配を賛美する「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書が検定を通過しました。私たちは「つくる会」教科書の採択に反対します。それは「つくる会」教科書の検定合格、小泉首相の靖国神社参拝、日本の急速な軍事大国化などに対して立ち上がった中国・韓国をはじめとするアジアの市民の訴えに誠実に応答し、彼らと平和に基づく連帯をつくっていきたいと考えるからです。そのためには過去における日本の侵略戦争の責任を明確にし、学校教育の場で子どもたちに教えていくことが必要不可欠です。2005年7月から8月にヤマ場を迎える「つくる会」教科書採択を阻止すること、それは教育基本法改悪法案の国会上程、さらには改悪そのものを阻止することにつながります。
 私たちは、教育における自由と平等と民主主義の理念を守り、実現し、今また繰り返されようとしている侵略の歴史にストップをかけるために、教育基本法の改悪を全力で阻止することを、ここに宣言します。
 2005年5月7日
 教育基本法の改悪をとめよう!5・7全国集会参加者一同

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週刊『前進』(2198号3面3)(2005/05/23)

 東京西部 国労臨大闘争弾圧 「許さない会」結成1年集会

 4月22日、東京・中野区で開かれた「東京西部・国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」主催の「結成から1年―1047名の解雇撤回と8名の無罪を! 鉄建公団訴訟と5・27臨大裁判をむすび、勝利をめざす西部集会」に参加した。
 ビデオ上映後、鉄建公団訴訟と5・27裁判弁護団の大口昭彦弁護士が「7・1臨大での闘争団の決起、4党合意採決強行後の『闘う闘争団』の結成と鉄建公団訴訟は国労本部の『想定外』の事態であった。5・27弾圧でも国労の『想定外』の事態が進んでいる。4党合意は分割・民営化の総仕上げだったが、それへの公然たる反乱が国労内部から起きた。必ず未来を獲得したい」と、熱く語った。
 続いて、5・27弾圧の被告団長であり、鉄建公団訴訟原告の松崎博己さんがアピール。「本部派は、『中核派の破壊策動』と言えばすむだろうと思ってやってきた。そうはいかない。国労本部派の組合員は証人になると、5回も呼ばれてたまったものじゃない。その中で、いかに国労本部が腐敗しているのか、明らかになってきている。中曽根は『戦後政治の総決算』のため、国労、総評をつぶし、憲法9条・教育基本法・労組法・地方自治・社会保障をつぶそうとした。国鉄労働者は19年間、これと闘ってきた。4党合意を蹴って鉄建公団訴訟が起こり、闘う勢力が出てきた。これをつぶすのが5・27弾圧だった。でも8人は屈服するどころか、頑張った。出てきて、国労再生を掲げて闘っている。鉄建公団訴訟は9月15日に判決が出る。勝利をかちとるため、闘っていきたい」と決意を語り、「侵略戦争が始まっている中で、石原打倒のため、東京の労働者の力で、都議選に絶対に勝利してほしい」と、檄(げき)を飛ばした。
 「日の丸・君が代」強制に反対する教育労働者の報告を受けて、会場討論では地域で闘う合同労組などから、ともに闘う決意が述べられた。最後に、参加している国労組合員全員が前に出て発言。JRによる不当な乗務外しと闘う組合員、いまだに隔離職場で働く組合員などが、それぞれの現状を語り、勝利に向けた決意を表明した。
 最後に代表の花輪不二男さん(世田谷地区労顧問)が閉会あいさつ。「西部地区では憲法・教育基本法・国鉄の3課題での共闘も始まった。細々ながら、電車区をかかえる中野でずっと駅宣をやってきた。この裁判も今年が大きな山場。会員を増やし頑張って勝利を手にしたい」と訴え、団結ガンバローで今後の健闘を誓い合った。(投稿・N)

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週刊『前進』(2198号3面4)(2005/05/23)

 自治労中央委に向け訴える

 検討委「最終報告」認めず改憲勢力化くい止めよう

 自治労第131回中央委員会(5月26―27日、名古屋)に向かって、闘う自治体労働者に訴える。
 今次中央委員会は、自治労の改憲勢力化を阻止するか否かをかけた決定的な戦場となる。中央委員会に提出される自治労「国の基本政策検討委員会」(以下、検討委と略)の最終報告の承認を許さず、8月鹿児島大会での自治労改憲案提出・承認(採択)を阻止しなければならない。そして検討委の改憲論議を中止させなければならない。今、百万自治労に必要とされていることは、改憲論議に参加することではなく、日帝の改憲と戦争に反対する一大国民運動を創出し、その先頭に立つことだ。
 自治労が自ら改憲案を提出することは、自治労の戦争翼賛勢力への転落を意味する。それは自治労が労働組合として死に、労働者の権利や生活、生命を守れなくなるということだ。自治体労働者が日帝の侵略戦争のための「国民保護計画」を策定し、労働者人民に「赤紙」を配り、侵略戦争に動員する「天皇の官吏」となることだ。断じて拒否しなければならない。

 9条堅持うたいつつ改憲へ

 今夏の大会で日教組とともに自治労が「9条堅持」をうたいつつ改憲勢力に転落すれば、連合全体が改憲勢力となる。連合は10月末の大会で、連合の「国の基本政策検討委員会」が提案する個別的自衛権と自衛隊合憲論を承認し、集団的自衛権の行使を認める安保基本法の制定を方針化しようとしている。連合の戦争翼賛勢力化、労働運動としての自己解体の始まりだ。自治労本部は改憲案策定でこの連合の策動を決定的に加速しようとしているのだ。
 連合の改憲勢力化で日帝・小泉=奥田の改憲と戦争国家づくりは一挙に現実化する。改憲とは「主権在民、平和主義、基本的人権の尊重」の否定であり、戦後民主主義体制の破壊、労働組合の否定である。そして本格的な戦争国家・軍事大国・専制国家への大転換であり、米英日枢軸のもとでの侵略戦争拡大、世界戦争への突進である。
 検討委「最終報告」を許さず、改憲論議を中止させ、自治労の改憲勢力化=戦争翼賛勢力化を阻止しよう。闘わない自治労本部と対決し、日帝・小泉=奥田の戦争・民営化(労組破壊)と闘う階級的労働運動へと自治労を再生させるために奮闘しよう。
 今中央委員会での闘う自治体労働者の第一にして最大の課題は、以上のように、改憲案でしかない検討委「最終報告」を粉砕し、自治労を反戦・改憲阻止の大運動の先頭に立たせることである。
 そもそも今日、労働組合の側から改憲案作りを進めること自体が許されない。衆参両院の憲法調査委員会の憲法論議、与野党それぞれの改憲案作りは、日帝が北朝鮮・中国への侵略戦争を遂行できるよう、現行憲法による制約を取り払い、戦後民主主義を捨て、戦争国家に転換するために行われているのだ。そのような中で民主党主導の自治労本部5役が加わる検討委での憲法論議が改憲論議=改憲案作りでないわけがない。
 現に3月9日の検討委「中間報告」は、「前文および9条の堅持」と言いながら、▼個別的自衛権の承認と集団的自衛権の否認▼違憲状態にある自衛隊の縮小・分割・再編▼国連のもとで(自衛隊とは)別組織による国際貢献▼「平和基本法」の制定▼アジア安全保障体制の構築――をうたっている。
 「最終報告」の方向は▼個別的自衛権の認知▼自衛隊(違憲ではない)の縮小・再編▼「平和基本法」の制定▼別部隊の創設――と提起されている。連合の意向に合わせた事実上の改憲案だ。だが、これは自治労本部が最終報告を改憲案そのものとして出すことが困難になっていることを示している。本部の改憲案作りを徹底的に追及・暴露し粉砕することは可能だ。
 ところで「個別的自衛権の承認」とは自衛の名による侵略戦争の容認にほかならない。中間報告は、個別自衛権は国家の固有の権利として国際法にも国連憲章にも認められていると言っている。だが、今日の帝国主義のもとでは、自衛権の発動としての戦争は侵略戦争以外の何ものでもない。吉田茂の46年6月の国会答弁にあるとおりだ。
 また個別的自衛権とはすなわち集団的自衛権であり、両者に現実的な区別はない。81年の政府見解は、主権国家は個別的自衛権も集団的自衛権も有するが、日本は憲法上、集団的自衛権を行使しないというものだ。当面の現実的な政策として自衛隊の活動をいわゆる個別的自衛権の範囲に限定してきただけなのだ。
 「報告」で言う「平和基本法」とは何か。和田春樹(東大教授)、前田哲男(軍事評論家)、山口二郎(北大教授)らが94年3月発行の「世界」4月号で「自衛隊問題の解決のために」と称して提唱した安保政策が原型だ。これは▼個別的自衛権の承認▼自衛隊の最小限度の防御力としての承認▼国連平和維持活動など国際貢献のための別組織の創設――をうたっていた。彼らは今年5月発行の「世界」6月号で「憲法と現実の乖離(かいり)を埋めるため」と称し、この平和基本法を安保政策として再提起している。
 いずれも「9条維持」をうたいつつ個別的自衛権の承認で侵略戦争を肯定し、自衛隊の合法化で戦力保持を承認している。事実上の9条破棄論でしかない。自治労の「平和基本法」もこれと同様のものだ。
 中間報告の提唱する「アジアの安全保障体制」は、日本経団連のめざす「東アジア自由経済圏」を軍事的に保障する体制にあたる。自治労は帝国主義の侵略政策としてアジア勢力圏化政策を提唱しているのだ。

 民営化と闘わない産別統合

 自治労中央委員会での第二の課題は、指定管理者制度、市場化テストなど大民営化攻撃との対決を鮮明にさせることだ。
 自治労本部は、民営化攻撃を受け入れておいて、民営化で減った自治労の組織人員を他の産別との組織統合で補充し、数合わせを図ってきた。全競労、民間公共サービス労組、全国一般に続いて都市交、全水道を統合し、公務公共サービス産別として日教組まで飲み込もうとしている。だが、闘わない産別統合で組合員数減少、労組としての衰退を止めることは不可能だ。
 第三の課題は、戦争協力拒否の立場を明確にし、国民保護法に基づく自治体の国民保護計画策定に反対し、公務員、教員の政治活動禁止法案、憲法に関する国民投票法案の提出を阻止する闘いの方針を打ち出すことである。
 第四の課題は、新行革指針(3月29日総務省発表の人員削減、手当削減など新たな地方行革指針)、新賃金制度導入、公務員制度改革を阻止するために闘う方針を打ち立てることである。大型市町村合併に伴い発生する諸問題に対処し、職場と権利、組織を闘って守る方針を確立しなければならない。最大の戦場は大阪市である。「厚遇」を口実に自治労をたたきつぶそうとする攻撃に抗し、労働組合の存在と労働者の権利を守るために闘う方針を提起しなければならない。
 闘う自治体労働者の今春・夏の具体的な任務は、東京・杉並での「つくる会」教科書採択阻止の闘いに総決起し、6月都議選決戦に勝利することである。戦後民主主義的な価値観を破壊し、戦争と改憲を狙う「つくる会」教科書の採択を阻止する闘いは、自治労自身が取り組むべき課題だ。この闘いを爆発させ、長谷川英憲氏の都議当選をかちとろう。この高揚の中で8月自治労鹿児島大会決戦を闘い、自治労改憲案を最後的に葬り去ろう。
 改憲・戦争・民営化・労組破壊と闘う労働組合へ、自治労の階級的再生をかちとろう。

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週刊『前進』(2198号3面5)(2005/05/23)

 全力で都議選勝利へ

 交流センター女性部大会 戦時下の闘う方針

 全国労働組合交流センター女性部第12回定期全国大会は4月23、24日、千葉市内で開かれた。活発な討論が行われ、排外主義・国家主義をあおり、民営化を推し進める石原都知事と対決し、都議選に総決起することが大会決議として採択された。
 「女性部は、3・8国際婦人デー行動成功の大きな勝利をかちとり、戦時下の階級闘争に女性・女性労働者は必ず決起し、勝利できると確信した。国際連帯をかちとろう。女性部の組織拡大を実現しよう」という女性部長のあいさつで大会は始まった。北富士忍草母の会、解同全国連婦人部、三里塚反対同盟、婦人民主クラブ全国協のメッセージが寄せられた。
 全国労組交流センター本部から滝口誠常任運営委員があいさつし、来賓の新城節子杉並区議は「都議選に女性労働者の決起を」と力強く訴えた。
 大会議案を三役が提起した。「世界は戦争と民営化という激しい嵐の中にたたき込まれている。11月労働者集会で打ち出した『労働者の国際的団結でこれに立ち向かう』という大方針が05年の闘いの活力を生み出している」と確認し、04年度の活動を、@階級的労働運動の高揚、A戦争国家化阻止・改憲攻撃粉砕の闘い、B差別・排外主義との闘い、C組織強化・拡大の4点にわたって総括した。
 さらに05年度は、「帝国主義侵略戦争を阻止し階級間戦争にかちぬくために、4大産別決戦を水路に05年11月労働者集会の壮大な勝利へ! この鉄火の闘いの中で交流センターの階級的建設を実現しよう!」という全国労組交流センター方針を基底に据えて、「すべての女性労働者を組織していく女性部」「労働組合(支部・分会)執行部を取っていく闘い」「女性労働者の中に労働組合を組織していく闘い」を産別、職場・地域で具体的実績を積み重ねていく年であるとし、交流センター女性部運動をつくり出す課題と具体的取り組みを提起した。討論では、初めて参加した民間労組の女性労働者の報告に拍手が高まった。
 2日目冒頭、「日の丸・君が代」強制反対闘争の総括と今後の課題という視点から教育労働者が特別報告を行った。
 全国労組交流センターの中野洋代表が、「私たちはいかなる労働運動をつくるか、どうしたら戦争を止められるのか、労働組合は何をすべきか」という内容で講演した。「05〜07年こそ戦後最大の歴史的分岐の年だ。いま中国、韓国で抗日デモ・ストライキが爆発・続出している。戦後60年間の運動の試練の時。小泉−奥田−石原との一大政治闘争が都議選だ。石原と対抗できるのは労働運動、労働組合だ。全国からはせ参じ、ファシスト石原を打倒しよう。女性部の奮闘を!」と訴えた。
 事務局長が2日間の討議のまとめを行い、「杉並が『つくる会』教科書採択を阻止する闘いの焦点となった。女性部はこの階級決戦に猛然と決起していこう」と締めくくった。

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週刊『前進』(2198号4面1)(2005/05/23)

 伊丹 終日行動で式典ズタズタに 第6次イラク派兵を弾劾

 隊員、家族に共感広がる

 5月7日、陸上自衛隊第3師団千僧駐屯地(伊丹)で行われた派兵式典・壮行会に対して、「第3師団からの派兵をとめよう!関西実行委員会」に結集する仲間は、警察権力の大弾圧体制を打ち破り、終日にわたり派兵阻止の行動を繰り広げました。
 この派兵式典の日どりがわかるや、派兵阻止実の仲間は4月23日から2週間にわたる連続の申し入れ・抗議座り込みを第3師団に対して行ってきました。元自衛官を先頭とする1日の休みもない真剣な申し入れ行動と、駐屯地直近の関西合同労組の職場の大看板・ポスターなどを使った訴えにより、自衛隊の中からビラやポスターを受け取る隊員が生まれ、駅前の宣伝行動には家族が積極的に署名し、イラク派兵反対の機運が盛り上がりました。
 こうした動きに危機感を抱いた防衛庁と自衛隊当局は、隊員や家族の決起を抑え込むために、1週間前から連日派兵式典の準備を大々的に行い、3日前からは警察権力が伊丹市内をまるで戒厳令下のように徘徊(はいかい)しました。そして5月7日当日は第3師団正門の道路300bを封鎖し、車両以外は一般市民も通行させないようにして式典を行ったのです。
 私たちはこの弾圧をはね返し、関西各地から10時に昆陽池公園に結集して、終日の闘いに入りました。公園での11時からの全体集会と同時に、式典の行われる自衛隊グラウンド直近の関西合同労組の職場から、隊旗授与式・大野防衛庁長官のあいさつ(小泉のメッセージも代読)に対して、派兵阻止の熱烈なアジテーションを15分にわたって行い式典を引き裂きました。
 一方昆陽池公園の集会は、百万人署名運動奈良県連絡会の藤原好雄さんの開会宣言の後、元自衛官の三尾雅信さんや川村賢市さん(全日建連帯労組)からこの間の自衛隊に対する行動報告と自衛隊員への呼びかけが行われました。最新のイラク現地情勢を踏まえた西谷文和さんの発言、地元の伊丹市会議員や3・13行動の呼びかけ人の発言と、それぞれ自分たちの闘いの上に、今回のイラク派兵を徹底的に弾劾する発言が続きました。
 ついで5・15沖縄行動に参加する青年が多数演壇に並び、沖縄との連帯と派遣カンパを訴えました。またミニコンサートとして趙博さんの歌声が響き、闘いを盛り上げました。
 決意表明は、JR尼崎脱線事故を弾劾する国労の仲間や、百万人署名運動愛知県連絡会の代表、中国・四国地方から全国被青同の代表、医療労働者、部落解放同盟全国連、反戦福祉議員ネットの議員、全学連などの発言が続きました。
 最後に百万人署名運動兵庫県連絡会の梶原義行さんのまとめと行動提起を受けて、240人の力強いデモが出発しました。国道171号線の正門付近が封鎖されているため、デモ行進は西門を通り、家族との会食の行われる厚生センターを直撃しました。フェンス越しに敷地内の隊員・家族・隊友会・マスコミが熱い視線を注ぎました。
 デモは集会場の昆陽池公園に帰り、大型バスで関西空港に向かう自衛隊員に届けと、再び西門での申し入れ行動に入りました。途中自衛隊員が正門から大型バスで出発しようとしているとの情報が入り、別の仲間が正門近くから大型マイクで「イラクに行くな!出兵命令を拒否しよう」と訴えました。西門での出発後も続く訴えには、大型バスやマイクロバスに乗って自衛隊山本団地に帰る家族や近隣の隊友会の人びとも大いに注目していました。また千僧駐屯地周辺の市民は、機動隊が国道171号線の歩道やグラウンド周辺の道路を封鎖したことに対して、そこかしこで抗議の声を挙げ、戒厳体制下の自衛隊イラク派兵の現実にあらためて危機感と抗議の意志を表しました。また関西空港を使っての出発に対しては、地元泉佐野の住民がただちに泉佐野に引き返し抗議行動を行いました。
 防衛庁と自衛隊当局は、第6次派兵に際し、もはやほとんど反対運動などないという形で自衛隊を送り出そうとしたのですが、派兵阻止実の元自衛官を先頭とする粘り強い闘いが自衛隊員・家族の中に浸透し、何度も派兵反対の行動が起こり、最後は地元の自治労・教組を中心とする集会・デモも行われるなど、自衛隊当局・警察権力は厳戒態勢を敷かないと派兵式典が行えないという破たんに追い込まれたのです。
 私たちはさらに第2陣、3陣にも立ちはだかり、「自衛隊はイラクからただちに引き返せ」の運動を粘り強く行うことをあらためて決意しました。
 (投稿/K・M)

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週刊『前進』(2198号4面2)(2005/05/23)

 “国民投票法案は危険”

 改憲阻止へ東京で集会 古関教授が講演

 5月2日、「戦後50年を問う8・15労働者市民の集い全国統一実行委員会」の主催で「5・2憲法集会」が東京・中野で開かれ、180人が集まった(写真下)。国民投票法案の今国会提出をめぐる攻防を軸に改憲攻撃が具体的な日程に上ってきている緊迫した状況の中で、これに反撃していくための重要な集会になった。
 開会あいさつを同実行委員会の葉山岳夫弁護士が行った。中国人民の闘いに深い連帯感を表明し、改憲攻撃に対して「労働者市民が団結して粉砕するのみ」と訴えた。「本日の集会を学習と連帯を強める集会にしよう」と呼びかけた。
 まず、今春卒・入学式で「日の丸・君が代」強制の攻撃と真っ向から闘った教育労働者が現場からの報告を行い、この闘いが教育基本法改悪・憲法改悪を阻止する闘いにつながることを確信を込めて述べた。労働者が現場で闘うことが大事だと強調し、ファシズムの攻撃に対して労働者はゼネストで闘わなければならないと力説した。
 メインの講演を獨協大学教授の古関彰一氏が「国民投票法案と9条改憲」と題して行った。
 古関氏は、全面改正と言われているが、中心は9条改憲であることがはっきりしてきたとして、改憲勢力が「9条の平和主義は不変」と言っていることのペテン的な意味を明らかにし、第1項に手を付けなくても第2項に自衛権を定めることによって、戦前のような戦争が可能になることを鮮明に提起した。第2次大戦になだれ込んだのと同じことが法的に可能になるのだ。
 また、国民投票法案について、何か直接民主制で良いものであるかのように宣伝されているが、情報操作によって国民投票が組織される危険があることをドイツやチリの歴史を説きながら明らかにした。そして、公務員や教育者にも意見を言わせないということの恐ろしさも暴露した。私立大学の講義で教えている自分自身も発言を封じられてしまうとして、言論、学問の自由も奪われる悪法であることを弾劾した。国民投票法案が実質的に改憲そのものの攻撃であることが明らかにされた。鮮明で重要な提起で、改憲阻止闘争の大きな武装になった。
 講演を受けて、現場からの報告として、元NHK労働者が「今、NHKで何が起こっているのか」と題する報告を行い、労働者、労働組合の立場からNHK番組改ざん問題を報告した。有事放送体制に放送労働者を動員するNHK「倫理行動綱領」が、都教委の10・23通達に匹敵する攻撃であることを弾劾した。
 平和遺族会の西川重則氏が「国会憲法調査会最終報告」を批判した。5年間の衆参両院の憲法調査会のほとんどすべてを傍聴し、憲法調査会とは何だったのかをつぶさに見た経験を語った。「初めに改憲ありきだった」とその本質を暴き、「有事法制ができた中での改憲の策動」であることを強調した。改憲が具体化してきた中で、「力いっぱい必要なことをやろう」とアピールした。全参加者が改憲攻撃と全力で闘う決意をあらためて固めた。

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週刊『前進』(2198号4面3)(2005/05/23)

 広島 海田市駐屯地に抗議

 “被爆地からの出兵阻む”

 4月29日、百万人署名運動広島県連絡会が呼びかけて、「イラク派兵を止めよう!海田行動」が行われた。陸上自衛隊海田市駐屯地からは、イラクへの第6次派兵の部隊の出兵が狙われている。「被爆地ヒロシマからの侵略出兵を絶対に止めよう!」という思いを込めて、広島県内の約60人の労働者・学生が海田市駐屯地へのデモと申し入れ行動を行った。
 JR海田市駅南側からデモに出発し、午後0時30分に駐屯地前に到着。ただちにその場で抗議集会を行った。広島大学の学生が司会を務め、まず広島の教育労働者が発言した。「教え子たちが戦場に送られて行くのを見過ごすことはできない。私たちは体を張ってこの戦争を止めよう」と力強く訴えた。さらに動労西日本の労働者は「尼崎の大事故は国全体が戦争に突進する中で起こった事故だ。資本の利害のためにこれ以上人を殺してはならない」とアピールした。
 また、元自衛官の家族は「あなたたちには戦争協力を拒否する権利があります。勇気を出して、ともに反対の行動に立ちましょう」と熱烈に基地内の自衛官に訴えた。
 午後1時、大野防衛庁長官と陸自第13旅団の内田旅団長に対して申し入れを行った。セイブ・ザ・イラクチルドレン広島の大江厚子さんは、イラクレジスタンスからのメッセージを読み上げ、「このメッセージをすべての自衛官に伝えてください」と訴えた。

 岡山市でデモ

 この日、中四国各地でも一斉に街頭行動が取り組まれた。とくに日本原と三軒屋の二つの自衛隊基地からのイラク派兵が策動されている岡山では、百万人署名運動岡山県連絡会が呼びかけて岡山市内デモが表町繁華街で行われた。

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週刊『前進』(2198号4面4)(2005/05/23)

 女性差別の石原許さない

 男尊女卑の暴言重ね家父長制復活を要求

 〈投稿〉 高原奈津美

 戦争と民営化攻撃が進む中で、差別と排外主義の動きがかつてないほど強まっています。日帝は今、小泉政権と奥田を会長とする日本経団連のもとで、再び侵略戦争・世界戦争の道を突き進み、労働者階級の階級性を解体して戦争に動員する攻撃を強めています。
 その最悪の先兵となっている東京都知事・ファシスト石原は、極悪の排外主義をむきだしにして、北朝鮮や中国に戦争を仕掛けろと叫び、憲法をも公然と破ると宣言しています。石原打倒は、労働者階級の当面する最も重要な闘争課題です。

 レイプや暴力をそそのかす

 そのためにも、私はとくに、石原のファシスト的な女性差別発言、女性差別思想と全力で闘うことを強く訴えたい。何よりもまず、石原が何を言っているのかを、すべての女性、労働者に知らせなくてはなりません。長くなりますが、あえて引用します。
 「“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ”なんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪ですってね」「女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害」(『週刊女性』2001年11月6日号)
 「年をとったそのおばあさんを、その部落の貧困のゆえに、あえて生きている人間を捨てに行くという、これは年とった女の人が、他の動物の生存の仕方に比べれば、かなり横暴な存在であるという表現の、実は逆説的な一つの証左でありまして……」(01年12月11日都議会での発言)
 「男の浮気性がなかったら男は発想力が出てこなくて、いい仕事ができないんだってね。男のくせに一夫一妻で、女房のけつにしかれっぱなしの人間てのはね、政治家としては最低」「伊藤博文が日本の近代化に成功したのは、あの人はほんとに浮気性でね。芸者の水揚げ好きでね。また奥さんが平気でそれを許してね、……結局それが人間の発想力だけじゃなくて文明・文化をすすめていく、活力の源泉なんじゃないのかな」(ビデオメッセージ「男と女について」、石原のホームページに掲載)
 まだまだある。石原のホームページや著書は民族差別とともに、女性差別の発言のオンパレードだ。
 「我が家の個性、性格を決めるものは父親である、おやじである。おやじでなくてはならぬと、わたくしは信ずる。なんといっても父親は家族の支柱であり、その家の主宰者である」「日本はかつてそういう(家父長の権威を重んじる)国家・民族であったのです。そういう美徳といおうか、優れた特性を私たちはまず自分自身のために取り戻す時期にきているのではないだろうか」(石原のホームページから)
 本当に怒りなしには聞けない発言ばかりです。石原は「家族も国家も男が中心で、女は黙って男に従うべき」「子どもを産まない(産めない)女は生きている価値がない」と本気で考えている根っからの差別主義者です。
 ここにあるのは、戦前の天皇制国家を支えた家父長的家族制度とまったく同じ考え方です。戦後の男女平等を真っ向から否定し、家長である男性が絶対的な権力を握って他の家族全員を支配していた時代を賛美して、その復活を公然と要求するものです。また、人間とその社会を生物学的な「種の繁殖」の観点からのみとらえ、弱者の除去や女性へのレイプを「種の発展に必要」として正当化したナチス、ヒトラーの考え方とも変わるところがありません。この女性差別が石原の国家観の根底にあり、民族差別と結びついて、侵略と排外主義をあおるものになっています。
 これを「1人の傲慢(ごうまん)な男のたわごと」としてあしらうわけにはいきません。石原は首都・東京の知事という大きな権力を最大限使って、こうした差別を「言って当然」「やって当然」のこととして意識的に全社会に持ち込み、差別と分断をあおっています。女性への差別賃金や出産解雇や、介護・福祉の切り捨てを正当化し、さらにはセクハラやレイプを公然とあおり、男性が職場でのストレスを妻や恋人への暴力に向けるようにそそのかしているのです。
 現に石原「ババア」発言のあと、自民党の国会議員が、大学生らによる女子大生集団強姦事件について、「集団レイプするのは元気があるからいい」などと堂々と発言することまで起きています(03年6月、太田誠一・元総務庁長官)。こんなことを許して労働者階級の団結はありません。

 憲法24条破壊の攻撃と一体

 石原発言は今や、小泉政権と日本経団連・奥田による現実の攻撃と一体となって、女性と女性労働者の労働と生活に襲いかかってきています。
 自民党はその改憲案で、憲法9条の撤廃とともに、両性の平等を規定した憲法24条を「日本の文化・伝統に合わない」として削除を狙い、教育基本法でも、男女共学の条項を削除しようとしています。さらに、文部科学省は、歴史をゆがめ侵略戦争を賛美する「つくる会」教科書を検定合格させました。そこでは、中国・朝鮮への排外主義と弱肉強食のイデオロギーが公然とあおられるとともに、「男らしさ・女らしさ」が「日本の伝統」と強調され、社会には差別があって当然とされているのです。
 また、労働法制を解体して「工場法以前に戻せ」と叫ぶ奥田・経団連と小泉政権による大民営化攻撃のもとで、労働者のあらゆる権利が奪われ、社会保障が解体され、その矛盾と犠牲の一切が女性労働者と労働者家族にしわ寄せされようとしています。「女性の能力の活用」の名のもとに女性労働者を徹底的な低賃金・不安定雇用労働に動員していく一方で、保育所民営化による公的保育の解体が進められ、「少子化対策基本法」制定など、「少子化」を国家の危機とあおって、個々の家庭と女性に子を産み育てる責任を押しつける攻撃が始まっています。介護保険制度改悪は、高齢者から介護をますます奪い、家族とりわけ女性にその全矛盾を転嫁するものです。
 石原都政こそ、その最先兵です。石原のもとで、都の教育委員会は04年、「日の丸・君が代」強制と並んで「ジェンダー・フリー」教育の排除と男女混合名簿の廃止をうちだしました。そして侵略戦争と差別を当然と教える「つくる会」教科書を、杉並区を突破口に全都で採用させようとしています。この石原をこのままにしておいては、女性の権利も解放も、子どもたちの未来もありません。

 女性議員も石原に総屈服

 これに対して、日本共産党を始めとする野党も、女性議員も、都議会で抗議の声ひとつ上げず、闘いを放棄しています。この総屈服こそが石原の差別暴言とファシスト的横暴を許し、背後で支えているのです。杉並選出の福士敬子都議などは、「私は別に反石原という立場ではありません」と言ってファシスト石原との対決を拒否するばかりか、「面白いところもある石原都政」などと、逆に石原を持ち上げさえしています。こんな人に、およそ「女性の代表」を名乗る資格などまったくありません。
 すべての女性は、こうした既成野党や名ばかりの「女性議員」の石原への屈服を厳しく批判し、のりこえて、労働者階級の団結の力を基礎に、今こそ石原打倒の先頭に立つべきです。
 石原の差別暴言は、石原がどんなに女性の階級的決起を恐れ、労働者階級の団結を恐れているかの裏返しの表現です。何より女性労働者には、子育ての重圧と低賃金・不安定雇用のもとであらゆる矛盾が集中しています。石原の主張がまかりとおる中では、生きていくことができません。職場で、地域で、怒りが充満し、すでに多くの女性労働者が真っ先に怒りの決起を開始しています。
 この決起し始めた女性労働者と団結し、差別者・石原を打倒しよう! 中国・韓国の労働者・学生の闘いと連帯し、杉並での「つくる会」教科書採択を絶対に阻止しよう! 石原の女性差別を暴き切り、女性と全労働者階級の未来をかけて、長谷川英憲さんの都議選当選をかちとろう!

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週刊『前進』(2198号4面5)(2005/05/23)

 大阪 連合メーデーで情宣

 JR大事故を受け

 第76回連合大阪メーデーが5月1日、大阪城公園・太陽の広場で開催され、8万人が参加した(主催者発表)。中核派は、「民営化と戦争」攻撃との闘いを訴える大横断幕を掲げ、『前進』宣伝隊を先頭に会場入口で宣伝活動を行った。
 JR西日本の福知山線脱線事故でまさに労働組合の存在意義が問われている中で、「闘いなくして安全なし」と真っ向から主張し、伊丹からの陸自イラク出兵阻止、教育基本法−改憲決戦へのアピールとともに、階級的労働運動の復権を訴えた。他方、連合大阪幹部は、国鉄分割・民営化とその後の大合理化に率先協力してきた連合自身の責任が問われているにもかかわらず、闘いの路線なしに「労働組合のチェック機能を」と言うのみであった。
 国労共闘と許さない会、関西労組交流センターなども宣伝を行い、中核派ビラを始めとする闘う勢力のビラ約8千枚がまかれた。

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週刊『前進』(2198号4面6)(2005/05/23)

日誌'05 5月4日〜10日

 イラクで日本人“傭兵”拘束

 米が「海兵隊沖縄残留」報告

●海兵隊の沖縄残留を勧告 沖縄を含む海外米軍基地の閉鎖・再編を検討している米連邦議会設置の「海外基地見直し委員会」(アル・コーネラ委員長)が中間報告をまとめブッシュ大統領に提出した。同報告は朝鮮半島情勢や台湾海峡での紛争の危機を強調し、沖縄を東アジアの「戦略上の要衝」と位置づけた。普天間飛行場移設について「嘉手納基地か岩国基地へ移転・統合すべきだ」とし、それ以外の海兵隊は、ほぼすべて沖縄に残すべきだと勧告している。(5日)
●日本に空母2隻展開も 西太平洋の空母2隻体制を表明している米海軍が、長崎県佐世保基地を空母寄港地として活用し、山口県岩国基地に空母艦載機の乗員宿舎建設を日本に求めることを検討していることがわかった。東京新聞が報じた。(5日)
●自民総務会長が米軍機整備などに日本企業参入求める 自民党の久間章生総務会長(元防衛庁長官)が米シンクタンク「ヘリテージ財団」で開かれた安全保障問題のシンポジウムで、在日米軍再編協議で検討されている日米の基地共同使用に関し、米軍の艦艇や航空機などの整備に日本企業が参入できるように、武器輸出3原則の適用を緩和すべきだとの考えを明らかにした。(5日)
●「日本は謝罪の意思に反しない行動を」と韓国大統領 韓国の盧武鉉大統領が、訪韓中の武部自民党幹事長らと会談し、日本は過去の軍国主義的行動に対する謝罪の意を、心からの後悔の念を反映した適切な行動で示す必要がある、との考えを示した。(6日)
●陸自6次部隊、イラクへ出発 陸上自衛隊のイラク派遣で、第6次復興支援群約500人のうち、指揮官の鈴木純治1等陸佐ら第1波約200人が関西空港からチャーター機で出発した。6次部隊は陸自第3師団(兵庫県伊丹市)を中心に近畿、中国・四国地方の隊員らで構成。残る隊員も今月中に2回に分け派遣される。(7日) 
●日中、対話強化を確認 町村信孝外相と中国の李肇星外相が京都市のホテルで会談し、抗日デモで悪化した日中関係の修復へ向け対話を強化することで一致した。李外相は「台湾は日米安全保障条約の対象」とした町村外相の発言を強く批判、小泉首相の靖国神社参拝も中止するよう強く求めた。(7日)
●米軍死者1600人超す 米CNNテレビ(電子版)は、独自の集計として2003年3月のイラク戦争開始以来の米軍死者が1600人に達したと報じた。(8日)
●鹿児島に空中給油機 移設作業が難航している米海兵隊普天間基地について、空中給油機部隊12機を鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地に移転する案を日米両政府が検討していることがわかった。東京新聞が報じた。(8日)
●イラク武装勢力が日本人拘束と声明 「アンサール・スンナ軍」を名乗るイラクの武装勢力が、駐留米軍の警備を行っていた日本人を拘束したとする声明をインターネット上で流した。声明文によると、武装勢力は、バグダッド近郊の米軍基地を出て西方約150`のヒートへ向かった車列を待ち伏せ攻撃した。拘束された日本人は英系民間軍事企業(PMC)「ハート・セキュリティー」勤務の元自衛官で、習志野駐屯地(船橋市)の第1空挺団に所属していた人物。(9日)
●岩国から墜落同型ヘリ普天間に 昨年8月に沖縄国際大学に墜落した米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリの同型3機が山口県の岩国基地から普天間飛行場に飛来した。在沖米海兵隊外交政策部(G5)は「第31海兵遠征部隊(31MEU)の任務支援のための一時的な追加配備」と説明し、帰還の時期は明らかにしていない。宜野湾市の伊波洋一市長はG5に強く抗議し、@CH53Dヘリの追加配備の撤回A普天間飛行場の即時運用中止と早期閉鎖・返還―を要求した。(9日)

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週刊『前進』(2198号5面1)(2005/05/23)

 尼崎事故 107人は民営化によって殺された

 事故は小泉=奥田路線の帰結だ 闘わなければ安全は守れない

 JR体制と腐敗労組幹部打倒へ

 JR西日本の尼崎事故は107人の命を奪う大惨事となった。本紙前号の弾劾声明に続き、この事故を引き起こした国鉄分割・民営化体制=JR体制を徹底弾劾する関西の闘う国労組合員からの投稿が寄せられた。(編集局)

 JRの強権的・非人間的な労務支配が大惨事を生んだ

 JR福知山線(宝塚線)上りの塚口−尼崎間で、国鉄分割・民営化以来の最大の脱線・転覆事故が発生した。
 高見隆二郎運転士(23歳)と一瞬にして命を奪われた乗客・その家族の怒りと悲しみ・悔しさを思う時、われわれは分割・民営化=JR体制の打倒、JR資本とJR連合・西労組、JR総連・西労の結託体制の打倒をあらためて誓う。
 この事故をどうとらえるのか。JR西日本のように「運転士の個人責任」論や「置き石」説を唱え、責任を他に転嫁する醜態をさらすのか。ブルジョア・マスコミや御用学者のように、真の原因が分割・民営化による闘う労働組合の破壊と利潤追求にあることを隠ぺいしようとたくらむのか。
 JR西労組やJR西労のように、国鉄分割・民営化に賛成し、労働強化・安全無視の合理化に率先協力してきたことには口をぬぐい、「会社の危機」の救済者づらをして資本の手先として立ち振る舞うのか。
 国労の革同上村一派のように「JRに法的責任なし」として分割・民営化反対の旗を降ろし、事故責任の追及をも放棄して恥じないやからに転落するのか。
 労働者としての階級的立場が鋭く問われている。
 107人はJR西日本によって、国鉄分割・民営化によって、戦争と民営化に突き進む小泉=奥田によって、そして労働者を裏切ったJR西労組やJR西労などの腐敗した労組幹部によって殺されたのだ。
 国家的不当労働行為の限りを尽くした分割・民営化以来、積もりに積もった矛盾が、小泉=奥田体制のもとで激化する戦争と民営化の攻撃のただ中で、絶対にあってはならない大事故として噴出したのである。
 小泉政権はこの事故の直後に郵政民営化法案を閣議決定し、あくまでも民営化路線に突き進もうとしている。日本経団連は9割の労働者を無権利状態にたたき込むとした95年「プロジェクト報告」の本格的な貫徹に乗り出している。それが労働者にもたらすものが何であるかは、今回の事故がはっきりと示した。
 労働者は闘わなかったら殺される。2度とこのような大事故を起こさせないために、すべての労働者は団結して闘うべきだ。全職場から安全問題を点検・摘発し、改善を要求し、会社が放置するならそれを暴露し、闘いを組織しよう。民営化を阻む闘いに立とう。
 05春闘で動労千葉は、運転保安確立へ72時間ストを貫徹した。動労千葉とともに、JR体制=分割・民営化体制と対決し、反合・運転保安闘争に立とう。

 責任を棚に上げ締め付けを強化

 今、JR西日本の職場では緘口(かんこう)令がしかれ、社員を休日出勤に駆り立てて沿線警備・踏切警備を行わせている。JR西日本は、自らの責任を棚に上げ、「職場の外で食事をするな」「お客様に聞こえるような笑い声を立てるな」などと、ひたすら労働者への締め付けを強めている。
 またマスコミは、事故直後にJR西日本の社員がボウリングをしていたとか宴会をしていたと書き立て、「JRは国鉄時代の体質をいまだに引きずっている」などとして事故の原因が分割・民営化にあることを必死に押し隠している。分割・民営化前の「ヤミ・カラ」キャンペーンと同様の風潮がつくり出されようとしているのだ。
 だが、そうであればこそ、分割・民営化が一切の元凶であることを明確にさせなければならない。国鉄時代は、事故に際し全職員が職務を超えて救助活動に当たるのは当然のことだった。分割・民営化による競争原理の蔓延(まんえん)と安全基準の規制緩和こそが、労働者を分断し、人の命や安全よりも管理職の顔色をうかがうことを優先させるような職場をつくり出してしまったのだ。

 卑劣な責任逃れ図るJR西日本

 JR西日本は事故直後、「置き石」があったとして責任逃れを図った。事故発生から2時間後の記者会見では、「自動車との衝突」と発表した。その発表に従って救助活動に向かったJR社員は、事故現場ではない踏切に行かされた。JR西日本社長の垣内らが自己保身のために流したウソの情報で、1分1秒を争う救助活動が妨害されたのだ。
 またJR西日本は、記者会見でのっけから高見運転士の事故歴をあげつらい、この日も伊丹駅でオーバーランし1分30秒の遅れを出していたことなどを発表し、「運転士の技量不足・未熟」として事故責任を高見運転士に全面転嫁しようと躍起になった。
 JR西日本は、事故が起きるといつもウソの事故情報を流し、醜い責任逃れをやってきた。99年新幹線トンネル崩落事故の時も「架線事故」と発表した。42人を虐殺した91年信楽高原鉄道事故では、遺族に対して事故原因の解明を拒んだ。
 大量の労働者を虐殺しておきながら、卑劣な責任逃れを図るJR西日本に対し、徹底的な責任追及を突きつけ、JR体制打倒の闘いに総決起しなければならない。

 事故発生までに何が起きたのか

 伊丹駅到着から事故発生までの4分間に何が起きたのか。
 宝塚9時03分発、207系快速電車に乗り込んだ高見運転士の脳裏を「今日も1秒も遅らせてはならない。ストップウオッチを持った調査員が尼崎駅で待ち受けている」という不安がよぎった。乗降客がスムーズに乗り降りしてくれなければ5〜10秒の遅れは出てしまう。伊丹駅に近づいたころ、すでに数十秒遅れている。勢い加速した。「やってしまった。40〜50bのオーバーランだ」
 去年6月、片町線下狛駅で100bオーバーランし、13日間の「日勤教育」と訓告処分、「今度ミスしたら、乗務を降ろされても構いません」という「決意書」を強制的に書かされたことがよみがえった。彼の全身を恐怖が襲った。「オーバーランはなかったことにしてくれ」と高見運転士は車掌に電話口で叫ばずにいられなかった。昨日と早朝からの乗務の疲労がピークに達した。運転席で倒れそうになるのをこらえ、必死の思いで所定の停車位置にバックした。1分30秒の遅れだ。
 ノッチを勢い強く握りひたすらスピードを上げていく。「いつも、どの運転士もやっていることだ。この直線区間を制限速度120`で走り、遅れを取り戻すのだ」。8年前の東西線開通によって作られた「魔のR=300カーブ」にさしかかる。「速度を落とさなければ……」、車体が大きく左に浮き上がった。次の瞬間、車両は左に浮き上がったまま、線路をまたぐように空中を飛んだ。車体角が電柱にぶつかる。白いマンションが魔物のように迫ってくる。激突だ。……高見運転士の遺体は、下半身を運転席と運転台にはさまれ、ブレーキをしっかり握ったままだったという。

 日勤教育と処分による恐怖支配

 JR西日本の中期経営計画「チャレンジ2008」には「列車の遅れはお客様の信頼を裏切るものです」とあり、列車を1秒でも遅らせれば運転士を制裁する体制がとられている。それが乗務を降ろしての「日勤教育」だ。JR西日本は「ミス」を犯した運転士、オーバーランや「遅れ」を出した運転士を「日勤教育」と称してさらし者にし、駅の先頭車両付近で「私はミスをしました」と他の運転士に頭を下げさせ屈辱を味わわせていた。
 これは「ミス」の再発防止のための教育でも何でもない。運転士の人格をとことん破壊し、資本の奴隷となることを強制する一種の「拷問」だ。
 その発端は、国鉄分割・民営化時、国労役員・活動家1万5千人を本来の職場から隔離し、来る日も来る日も「草刈り・文鎮作り」の苦役を強制し、国労脱退攻撃を加えた「人材活用センター」にある。それが今日まで続いているのだ。
 JR西日本は、オーバーランした距離により「厳重注意」−「訓告処分」−「戒告処分」とランク分けしている。高見運転士の所属する京橋電車区では、20b以上は「訓告」処分だ。
 また、「執務態度の厳正」と称して、日常的にJR当局は乗客に紛れ込んで運転席の背面から乗務員を監視し、「(信号の)指差換呼をしていなかった」「駅で他の乗務員と立ち話をしていた」「ジュースを買っていた」など、ささいなことで処分している。まさに、背面監視に戦々恐々とする「監獄のような職場」になっている。
 さらにJR西日本が08年4月に導入しようとしている新賃金制度は、今の必罰制度をさらに徹底化し、資本への絶対服従を迫る能力主義賃金制度だ。それは労働者間の競争を激化させ、他人を蹴落として自分だけ生き延びようとする人間を大量に生み出すことになる。今回の事故だけでなく、会社全体における事故隠し・虚偽報告の多さを知り、最も驚いているのがJR西日本当局ではないか。分割・民営化体制がそのような、間違っていることを間違っていると正々堂々と言えない現実をつくり出してきたのだ。

 超過密ダイヤとスピードアップ

 競合する関西の5つの私鉄との激烈な乗客争奪戦の結果が、スピードアップと列車の増発による過密ダイヤだ。JR西日本の「経営理念」には、「同業他社をしのぐ強い体質づくり」のために「持てる全ての力を発揮します」とあり、それを毎朝点呼で全社員に唱和させている。
 JR西日本は、営利第一主義のもと、並行して走る競争相手の阪急電車から乗客を争奪するため、東西線開通に伴い今回の事故現場となった「魔のカーブ」と言われる線路構造をつくり出した。
 一方、今年3月のダイヤ改正で福知山線の伊丹〜尼崎間は1分間短縮された。これにより平均時速は約57`から約67`へのアップが必要となった。最高速度120`からカーブの手前で一挙に70`に急減速しなければならないような走行を全運転士に強制してきたのだ。
 また、スピードを優先するため、強度が弱いステンレス車両を導入し、そこに満員の乗客を詰め込んで、安全を無視して列車を運行させてきたのだ。
 急加速・急減速を繰り返さなければ定時運転を確保できない無謀なダイヤを組みながら、線路の構造も車両の構造もそれに耐えられるものではなかったのだ。
 今回の事故で車両はマンションに激突して大破、アルミ缶のように押しつぶされた。それが大量死につながった。
 列車自動停止装置=ATS−P型が設置されていなかったことも、利益第一主義から生まれた。スピード制限を加えたら超過密ダイヤは維持できないから、JR西日本はその導入を拒否してきた。
 安全をないがしろにしてスピード競争に駆り立てる分割・民営化体制が、この事故を引き起こしたのだ。

 徹底した要員の削減が背景に

JR西日本社員の年齢連構成 JR西日本は徹底した要員合理化を強行してきた。発足当初5万1千人いた要員は3万2千人に減っている。人員構成表を見れば明らかなように、やがては45歳から55歳までのベテラン労働者が大量に退職する時代に入る。合理化、人員削減と労働強化は一層激しく労働者を襲うことになる。
 しかも82年、国鉄再建監理委員会から出された「新規採用停止」により、8年間も「採用ゼロ」が行われた。これに追い討ちをかけたのが、国労組合員の運転職場からの排除と解雇・配属差別だ。技術の間断なき継承によって維持される鉄道輸送業務の破壊がこの時から始まっていたのだ。
 また92年には乗務員に対し「待ち合わせ時間の廃止」が強行された。まさに「乾いたタオルから、水を搾り出す」(当時の社長・井手正敬の言)ような生理的限界ぎりぎりの強労働が強いられてきた。

 分割・民営化を推進した裏切り者に事故責任がある

 労働組合の存在意義が厳しく問われている。労働組合は資本と闘う団結体である。資本と癒着し、人減らし合理化、安全無視の強労働・過密ダイヤに賛成し、労働者を抑圧しているようでは、労働組合ではない。
 権利を主張し、安全確保を要求して闘う労働組合が運転職場から一掃され、JR当局の人を人とも思わない強権的労務支配がまかりとおり、それと一体となって労働者を強労働に駆り立てるJR西労組、JR西労が職場を支配するようになっていた。誰も高見運転士を守ってくれないことが、彼に強烈なプレッシャーを与えていたのだ。労働組合が労働者を守らなかったら誰が守ってくれるのだ。
 JR総連カクマルこそ、分割・民営化を率先推進し、資本と結託してJRの強権的労務支配を築いてきた張本人だ。彼らは自らの延命のために、「必要な合理化は積極的に推進する」「争議権の行使を自粛する」とした「労使共同宣言」を締結し、スト絶滅を誓って安全闘争を解体してきたのだ。その「労使共同宣言」を修善寺大会で拒否した国労を、資本と一体となって解雇・追放してきた連中なのだ。
 JR総連・西労は、そのことに口をぬぐい、「やられています」「ひどいです」と言うだけだ。彼らは「分割・民営化に賛成し、合理化と国労つぶしに協力してきた私たちにエサをくれないのはひどい」と泣き言をたれているのだ。
 しかもJR総連は、「安全を軽視するJR西日本の企業体質」には問題があるが、東日本は「安全哲学を築いてきた」などと、でたらめきわまることをほざいている。東労組カクマルが率先推進したメンテナンス外注化で、レール破断が続発しているのは、ほかならぬ東日本管内ではないか。
 JR連合・西労組は、JR総連カクマルによってつくられた分割・民営化体制に乗っかり、カクマル以上にストレートな資本の手先として労働者を抑圧してきた。107人の命を奪った「利益優先」「安全無視」を支えてきたのは、JR西労組とJR西労だ。

 JRの救済者と化した上村革同

 他方、国労西日本エリア本部はこのJR西労組、JR西労と一緒になって共同申し入れ書をJR西日本に提出した。
 国労西日本本部が出した事故についての見解は、JR資本を擁護するとんでもない裏切り文書だ。
 そこには、「たとえ一人の労働者によるミスであっても、そのミスが原因で重大事故に至ってはなりません」と書かれている。さらに、マスコミがこぞって批判する「日勤教育」についても、「『日勤教育』について国労は否定しません」と言うのである。
 “運転士がミスを犯した”ことは前提にされ、JRによって殺された運転士と乗客の怒りを体現して資本と闘う姿勢はまったくない。労働者を守るどころか、労働者をいけにえに差し出しているのだ。過密ダイヤをやめろという要求もまったくない。
 全組合参加の「労使安全会議」で「安全第一」の体制をつくると言うが、“労資一体の安全”などというものはあり得ない。
 革同上村一派は、分割・民営化反対の旗を降ろし、1047名闘争も裏切って闘争団員の統制処分に手を染め、組合員を警察権力に売り渡すことさえやってきた。ついにはイラク侵略戦争に協力し、「闘争団員をイラクの復興支援に出す」とまで言い出している。
 だからこそ彼らは、事故の責任追及を投げ出し、JR西日本の救済者に成り下がったのだ。
 殺された107人の怒りと悔しさを真に体現する者こそ国労の指導部になるべきなのだ。国鉄分割・民営化絶対反対・JR体制打倒=国労再生へ闘おう。

 動労千葉の反合・運転保安闘争に学び労働者は闘おう

 尼崎事故に、労働者はどうこたえるのか。その回答は動労千葉の闘いの中にある。
 動労千葉は、05春闘を反合・運転保安闘争として闘った。安全運転闘争(順法闘争)を闘い、72時間ストライキを打ち抜いた。
 JR東管内で続発するレール破断を始め、国鉄時代には考えられなかった異常な事態が続発している。
こんな現実をもたらした最大の要因は東労組カクマルと結託した労務政策だ。
 組合つぶしにばかり身をやつし、鉄道会社としての使命すら忘れ、18年が経過し、その行き着いた先が今のJR東日本の現実だ。鉄道輸送の根幹をなす線路や保安装置、電車の保守・メンテナンス業務を全面的に外注化し、検査周期を延伸した。東労組は、会社との結託体制を守るためにこれを丸のみし続けた。
 この現実に真っ向から対決し、動労千葉は国鉄分割・民営化絶対反対を貫き、反合・運転保安闘争を闘いぬいている。
 85−86年の2度にわたる分割・民営化反対のストライキを打ちぬき、28人の公労法解雇・12人のJR不採用を受けながら、団結を維持して闘いぬいた。そして今日に至るまで、JR体制打倒の闘いを職場実力闘争・ストライキ闘争として貫いている。
 03春闘では、ストライキを闘いぬいて電車区検修部門の外注化を阻止した。04春闘ストでは、運転業務から外され不当配属を受けてきた組合員を、本務に戻す一歩が切り開かれた。それ以降も続々と組合員の不当配属からの原職復帰をかちとっている。
 高見運転士と107名の怒りを思う時、われわれ労働者・労働組合こそ「闘いなくして安全なし」の原点に立った闘いを巻き起こさなければならない。
 職場から反合・運転保安闘争を闘わない労働組合はすべてインチキであり、安全輸送を語る資格はない。
 労働者と乗客の命を守り、鉄道労働者としての誇りをかけて、動労千葉とともに運転保安闘争・安全闘争に決起しよう。

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週刊『前進』(2198号5面2)(2005/05/23)

 強制配転と郵政民営化許さぬ

 近畿支社に抗議デモ

 郵政公社は近畿において900人に及ぶ強制配転を4月25日に発令した。職場の業務運行を無視した暴挙である。折りしもこの日、JR西は尼崎の大事故を起こした。民営化、効率化=生産性優先が、どれほど労働条件の劣悪化をもたらし、要員不足と職場の強権的労務支配が行われるのかが突き出された。
 5月2日、郵政公社近畿支社に隣接するエル大阪で午後6時半から「強制配転に反対する近畿郵政労働者の会」主催で決起集会が行われた。冒頭、司会者が、人事交流とJR宝塚線尼崎事故を弾劾し、引き続き「反対する会」副代表が基調を提起した。
 「郵政民営化法案が閣議決定された。公務員身分の剥奪(はくだつ)で、首切りやりたい放題、労組破壊が核心だ。分社化、外注化で職場はズタズタにされる。そもそもいったん全員解雇、再採用だ」「合理化、リストラ、労働強化、非常勤化で職場は不安と怒りに満ちあふれている。2月のJPU中央委では本部批判の大合唱で、専従執行委員すら『これでは現場は納得しない』『闘う方針を』と批判している。本部の民営化反対のペテンを暴き、職場から郵政民営化反対運動をつくり出そう。今日の人事交流反対闘争を出発点に不屈に闘おう」
 続いて管理職ユニオンが連帯あいさつを行い、さらに職場報告として、3月に3泊4日で「接遇マナー研修」を受けさせられた兵庫の労働者が以下のような研修の実態を報告した。
 「これは4級未取得者に対する見せしめ制裁だ。3けたといわれる近畿の対象者から8人を選抜し、それに管理者が付き添った。最初の起立から私ともう1人が一切を拒否して闘った。2日目からは『40キロ夜間行進』『駅頭歌唱』など“地獄の訓練”を売り物にする『管理者養成学校』の講師による研修だった。発声練習と『共感論争』など、その内容は反労働者的で、とても認められないものだ。『素読』と『行動力基本動作10カ条』では8番目の『時が深夜に及ぼうとも』のくだりで講師が“毎日深夜に及んでもやれ”と言うので、“そんなことをしたら過労死だ”と口をはさむと講師の反応はなかった。労働者としての誇りをかけてこれからも闘う」
 JR宝塚線を毎日利用している労働者が発言しJRの安全無視、利益最優先の過密ダイヤの実態を報告した。そして「事故は人ごとではない。民営化攻撃では郵政も同じだ。労基法無視の諸施策が当たり前、サブロク協定もオーバーしてくる。本当に労働者は闘わなければ殺される。郵政民営化に反対し、職場を労働者のもとに取り戻そう」と発言した。
 集会後、郵政公社近畿支社に向けてデモを闘った。公社をぐるりと一周し「強制配転粉砕」「郵政民営化阻止」「イラク占領反対」「JR事故弾劾」のシュプレヒコールを上げながら、天満橋まで元気いっぱいのデモをした。
 (投稿・Y)

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週刊『前進』(2198号5面3)(2005/05/23)

資本攻勢&労働日誌 2005 4・15〜5・1

 小泉内閣 郵政民営化法案を国会提出

 金属労協FTA推進へ/連合・全労連中央が抗日デモ非難

金属労協がFTA推進へ 金属労協(IMF−JC)は「2005年政策・制度中央討論集会」を開きFTA(自由貿易協定)の推進を重点要求に設定。(4月15日)
「心の病抱える社員増加」企業の過半数 メンタルヘルス(心の健康)に問題を抱える社員の増えている企業が過半数に。労務行政研究所の調査で判明。(15日)
関西合同労組が中労委で勝利命令 全港湾分会を脱退して関西合同労組に加入した組合員への不当労働行為の救済を求めた事件で、中労委は労組側の主張をほぼ認める勝利命令を出した。(15日)
経済財政諮問会議、FTA推進へ数値目標 経済財政諮問会議はFTAの推進策を協議した。奥田日本経団連会長ら民間議員は、FATの協定締結加速へ数値目標を掲げるよう要請。(19日)
航空連が日航に事故対策を要求 航空労組連絡会は日航に対して「根本的な対策をとらなければ、新たなほころびが出てくる」と指摘する声明を発表した。(19日)
連合が抗日デモに「憂慮」表明 連合は中華全国総工会に、抗日デモについて「日本人に危害を加えたり、建物を傷つけたりする事態をきわめて憂慮。適切な措置を」などと発言。(19日)
全労連、抗日デモへの批判声明 全労連は「『愛国無罪』などと暴力を行使することを容認するものでない」とする坂内事務局長の談話を発表した。(19日)
経団連、国家公務員制度改革を提言 日本経団連は「さらなる行政改革の推進に向けて−国家公務員制度改革を中心に」と題する報告書を発表。(19日)=要旨別掲
JR西日本で脱線事故 福知山線で死者107人の大事故。(25日)
3月の完全失業率4.5% 総務省は3月の労働力調査の結果を発表、完全失業率は4.5%で前月に比べて0.2ポイントの低下。厚労省が発表した一般職業紹介状況によると、3月の有効求人倍率は前月と同水準の0.91倍だった。(26日)
政府、郵政法案を国会提出 政府は郵政民営化関連6法案を決定し、国会に提出した。(27日)
重大労災事故が77年以降最悪 昨年、一時に3人以上が死傷する重大労災が274件発生し、1977年以降最悪だったことが厚労省の集計で分かった。厚労省は「リストラで安全管理を熟知した担当者がいなくなり、災害回避の知恵が後輩に伝承されていない」と原因を分析。(28日)
連合メーデー 連合の中央メーデー大会が東京の代々木公園で開かれ、約3万6600人の組合員が参加した。(29日)
全労連系などが中央メーデー 全労連系および全労協系のメーデーが東京・代々木公園と日比谷公園で開かれた。(5月1日)

 日本経団連の行政改革提言要旨

●行政改革の必要性
 「競争力のある国づくり」に向けて「縦割り行政のもとでの官僚制」を改革し、抜本的な行政改革を進める。
●国家公務員制度改革に関する基本的考え
 政府のこれまでの能力等級制の導入などを柱とする改正案だけでは不十分。
 人件費抑制と民間準拠徹底の観点から
@総合的な人事評価制度の確立
A身分保障のあり方の見直し
B処遇面における官民のイコールフィッティング
C人事マネジメントのあり方の見直し
Dさらなる官民の交流促進
E新たな人事行政担当部局の体制整備
F非公務員化の推進と公務員の雇用・労働条件のあり方の検討

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週刊『前進』(2198号6面1)(2005/05/23)

団結ひろば 投稿コーナー

 JR西4労組の共同声明は「共犯声明」だ 広島 魚住 徹

 5月6日の昼下がり、尼崎の事故現場を訪れた。小雨降る中、JR尼崎駅に降り立った。北口を出て、中央市場を横切ると、福知山線の高架が見える。その上に、事故で急停止した列車がいくつも止まったままになっている。その間隔が100bにも満たない。超過密ダイヤの様子がありありとわかる。
 高架に沿って北上すると踏切があり、その向こうにマンションが見える。その横が事故現場だ。踏切の所に設けられた献花台に向かう。花束を手向け手をあわせた。とたんに20人ばかりのマスコミに取り囲まれ、取材をうけた(当日、尾辻厚生労働大臣が視察に来てそそくさと帰って行った後だった)。動労西日本の「緊急声明」を渡して「この事故の全責任はJR西日本にあり、分割・民営化の帰結だ」と訴えた。
 JR西日本内の他労組(JR連合・西労組、JR総連・西労、国労西日本本部、建交労鉄道本部西日本本部)は共同声明をだして事故原因の解明を会社に申し入れたりしているが、一番の元凶である分割・民営化には一言も言及せず、安全無視の経営施策である「中期経営目標〜チャレンジ2008」を容認している。彼らこそ尼崎事故の共犯者だ(共同声明はまさに「共犯声明」だ!)。
 JR連合・西労組は、旧鉄労を中心として、修善寺大会で国労から脱落・逃亡した鉄産労グループと、動労千葉とともに闘うことから逃亡し動労カクマルから排除され会社当局に庇護(ひご)を求めて生き延びた旧労運研グループ(米子労、近畿労、広島・運転士会)で結成された御用組合だ。一方、JR総連・西労は、委員長の田村や書記長の安田がマスコミに登場して、唯一の「左翼」組合であるかのように振る舞っているが、正体は分割・民営化に率先協力して労働者を資本に売り渡した動労カクマルそのものである。
 今回の事故は、JR西日本の安全無視と効率化優先の経営施策が生んだものであるが、それを容認し推進してきた御用組合と、それに随伴する翼賛勢力の責任が厳しく問われなければならない。動労千葉は運転保安の確立を求めて、05春闘をストライキで闘った。動労西日本も、3月ストライキに立ち上がった。この闘いをJR西日本の職場に押し広げていくことが、尼崎事故を二度と繰り返させない道であると思う。
 動労西日本の仲間は、亡くなった高見隆二郎運転士の職場である京橋電車区へ「緊急声明」を配布し、弔い合戦に立ち上がっている。亡くなった107人と負傷した460人は、まさに戦争と民営化の中でJR資本によって殺傷・虐殺された。大半は労働者とその家族である。とくに若者が多い。小泉−奥田によって殺されたのだ。事故現場を訪れて、闘う労働運動の再生に向けて、西日本の地で動労千葉とともに闘う決意を新たにした。

 「運転士の資質問題」許せない石原の放言 東京・建設労働者 J・N

 東京都知事石原は、JR尼崎事故の翌日の記者会見で、「運転士はもう死んでいるかもしれないが、運転士の資質の問題だと思いますよ。私は車庫の中で電車の運転というのを体験させてもらったけど、そんなに難しいものじゃない」などと言い放った。
 石原のこの発言を怒りなしに聞くことができない。この発言は、鉄道運転士の仕事を「簡単だ」「複雑な作業じゃない」などと言って、その労働そのものを侮辱するものであり、JR西日本に虐殺された高見運転士を侮辱するのみならず、すべての鉄道運転士、国鉄労働者、鉄道労働者、そして今回の事故で犠牲になった労働者を含め、誇り高きわれわれ労働者全体を侮辱し、おとしめる許しがたい発言だ。
 絶対に許せない。
 JR西日本当局は、高見運転士の運転経歴等をあげつらい、この大虐殺を一運転士の責任に転嫁しようとしている。その姿はおぞましく、まさに腐れ切った資本の凶暴さとみにくさをあらわにしている。JR西日本社長の垣内や会長南谷の発言を怒りなしに聞くことはできない。
 そして、この虐殺事故の最大原因の国鉄分割・民営化を強行したもう一方の張本人が中曽根はじめ、歴代の自民党政権であり、当の石原はその自民党の衆議院議員から運輸大臣になり、国鉄分割・民営化推進に手を染めた当事者だ。そのA級戦犯が自己の責任を棚に上げ上記の発言だ。怒りがこみ上げてくる。
 私は都民として、首都東京の労働者として、このような人間を首長に据え、都庁に居座られている現実を深く恥じる。絶対に、都知事の座から労働者の団結と力によって引きずり下ろさねばならないと心底思う。
 石原打倒! 小泉打倒! 国鉄闘争勝利!
 これが高見運転士はじめ、今回の事故により虐殺された犠牲者への唯一の手向けである。

 中野さん講演集会で元気もらった労働者 新潟・労働者 K

 4月17日、動労千葉前委員長・中野洋さんを招いて新潟市で講演会を開催しました。もともと昨年10月24日に企画したのですが、中越大地震で講師が来れませんでした。しかし、ぜひ中野さんの話を聞きたいという強い要望があって今回、再企画となりました。
 集会の賛同には、自治労、高教組、国労の現職とOBが名を連ね、郵政ユニオンも加わりました。さらにマスコミなどの中小労組が機関賛同し、闘う弁護士も加わりました。新潟の労働運動ではかつてない陣形です。参加オルグは、県内の単産・単組、動労千葉物販を取り組んでくれている組合を対象に集会賛同人を先頭に取り組みました。当日は、連合・全労連をのりこえようとする労働者・活動家など80人が参加し、文字どおりの「分岐・流動」を示すものとなりました。
 集会は教組と地域合同労組の労働者の司会で始まり、新潟市職労書記長が「労働組合こそ元気を出さないといけないという思いで企画した」と開会あいさつ。全金本山労組のメッセージ紹介の後、地元の郵政ユニオン支部と県職労支部から闘いの報告を受けました。
 中野さんは、「労働者の団結こそ、時代を切り開く原動力だ」と題して1時間半にわたって、時代認識から4大産別での闘いなどについて熱弁をふるいました。特に「マルクスは労働者に光を当ててくれた」「労働運動は路線と“義理と人情”だ」「労働組合は1人ではできないが、1人がいないとできない」「労働者は労働運動、ストライキをやって誇りをもてる」という講演は、会場をわかせ、大いに元気づけるものでした。郵政民営化などの質疑を受けたあと、国労新潟駅連分会長が「ネットワークの形成めざし、11月集会へ」というまとめを行い、自治労の仲間の団結ガンバローで閉会しました。
 この集会は05年階級決戦へ向けて、4大産別と新潟県下の労働運動に階級的労働運動の心棒を通す企画として成功しました。

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週刊『前進』(2198号6面2)(2005/05/23)

 共謀罪 廃案あるのみ

 5月審議入り阻止 国会前で集会、座り込み

 5月11日、破防法・組対法に反対する共同行動は共謀罪法案の5月連休明け審議入りを絶対に阻止する決意を固め、早朝の国会前ビラまき、昼集会、衆院第2議員会館前での座り込みなどに立ち上がった。
 共謀罪法案は、いまだに衆院での審議入りもできないままである。4月中旬には自民党が民主党に修正案を提示した(週刊『法律新聞』)と言われているように、水面下の攻防は激しさを増している。それだけ日帝・法務省も追いつめられているのだ。
 共謀罪法案は、日帝の戦時下への突入に対応して出された治安法だ。革命党を解体し、労働組合を始めとするあらゆる団結体を破壊し、労働者人民を侵略戦争に翼賛させるための「現代版治安維持法」である。
 核心は、国家権力が労働者人民の思想・信条の内容に立ち入り、恣意(しい)的に振り分け、反体制的な思想を一掃することが可能となる点にある。戦後憲法体制の根幹をなす「思想・信条の自由」を破壊することで、日帝の改憲攻撃の先陣を切ろうとしている。修正でどうにかなる余地などない。廃案あるのみだ。
 国会前昼集会は「共謀罪を廃案にするぞ」のシュプレヒコールで始まった。
 破防法・組対法に反対する共同行動の事務局が共謀罪法案の現状を報告し、「5月末からの審議入りが必至の情勢です。1ミリの油断もなく闘争態勢を強化しよう」と呼びかけた。
 憲法と人権の日弁連をめざす会の長谷川直彦弁護士は、共謀罪を「日常会話が成り立たなくなる悪法、治安維持法の再来」と批判し、「絶対に廃案しかない」と訴えた。
 争議団連絡会議からの争議勝利の報告、立川自衛隊監視テント村からの「反戦ビラ入れ」裁判の報告、「障害者自立支援法」の廃案を求めて国会前でハンスト決行中の「障害者」からのアピールに続いて、国労5・27臨大闘争弾圧被告の富田益行さんが発言した。
 富田さんは「尼崎事故の107人の尊い命と高見運転士は分割・民営化で殺された。現場の急カーブは分割・民営化(利益優先)で無理やりつくられたもの」とJR資本を弾劾し、「労働組合の団結を破壊する共謀罪を廃案へ」と訴えた。
 三多摩労働者法律センターからのアピール後、刑事司法改悪に反対する全国弁護士アクションの鈴木達夫事務局長が発言した。
 鈴木弁護士は「共謀罪は19世紀イギリスで労働運動(組合)弾圧法として初めて制定された」と暴露し「日本の共謀罪法案は個人の意志まで処罰する悪法」と弾劾した。さらに日弁連が修正案の協議の先頭に立っていることを弾劾し、修正案の内容を批判しつつ「闘う弁護士の総力を挙げて共謀罪を廃案に追い込む」と決意を述べた。
 最後に山谷労働者福祉会館活動委員会から行動方針が提起され、5・27国会前行動を全力で取り組むことが呼びかけられた。
 共謀罪廃案への不退転の決意を日帝・法務省にたたきつけた集会であった。

 5・27行動に結集を

 共謀罪法案は現代版治安維持法である。このことを鮮明にすることが廃案を推進する力となる。
 治安維持法は1925年に制定された。内容は「国体を変革」「私有財産制度を否認」することを目的とする結社の組織・加入・扇動・財政援助を弾圧することであった。「国体」とは天皇制、「私有財産制度を否認」とは共産主義の思想や運動のことだ。28年に「結社の目的遂行のためにする行為」一切を禁止する「目的遂行罪」が加わり、ブルジョア民主主義的な研究・言論・出版や、宗教団体の教義・信条さえも「目的遂行」につながるとして厳しく弾圧された。これが労働者人民の侵略翼賛化の最大の武器となった。治安維持法下最大の言論弾圧と言われる横浜事件はその端的な例である。
 今、日帝は小泉=奥田路線を推進し、米帝とともに北朝鮮・中国侵略戦争を策動している。そのために労働者人民を侵略翼賛化することに必死になっている。この状況下で出されてきた共謀罪法案が治安維持法の役割を担うことは明白だ。
 実際に、自民党は「修正案」で共謀罪の成立に必要な要件として、共謀したうちの一人が「準備のためにする行為」をしたことを加えると提案している。これは修正などではない。「結社の目的遂行のためにする行為」と同じ目的遂行罪の導入であり、共謀罪適用の際限なき拡大を狙うものだ。
 現代版治安維持法である共謀罪を廃案に追い込むためにすべての労働者人民は5・27国会前集会に立ち上がろう。

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週刊『前進』(2198号6面3)(2005/05/23)

 障害者自立支援法阻止を

 介護制度を介護保健制度化

 生存権保障の歯止めを外す

 関東「障害者」解放委員会

 審議入り弾劾

 障害者自立支援法(以下「支援法」)は、2月10日に国会に提出され、5月11日から衆議院厚生労働委員会で審議入りした。この法案は「障害者」の介助制度を介護保険制度と同じ仕組みに変更しようとする内容である。「障害者」への実質的な介護保険適用の攻撃であり、絶対に阻止しなければならない。
 もともと日帝は、介護保険制度の1期目(00年〜5年間)は保険料徴収の対象を40歳以上、介護が受けられるのは65歳以上としてスタートさせ、2期目(05年〜)において、両方とも20歳以上に拡大する計画だった。厚労省は、介護保険法をつくる過程では「障害者」に対して「『障害者』と保険制度はなじまないから、今後も税財源で対応する」と偽ってきたが、本当は2期目に対象年齢を20歳に引き下げることで、当初から「障害者」を介護保険に統合する予定だったのである。         
 しかし昨年、この2期目の介護保険の柱である20歳以上への拡大が、連合の屈服にもかかわらず「障害者」の激しい反対運動と保険料の企業負担を払いたくない経済界の右からの反対によって阻止されるという事態がおこった。
 そこで急きょ、厚労省が持ちだしてきたのが、この「支援法」だ。日帝は「社会保障制度の持続可能な財源」について支配階級内部でも一致していない。日本経団連の奥田会長が消費税の16%へのアップを主張するなかで小泉政権は、財界との一致が得られない財源問題を棚上げし、両者の利害が一致する「障害者」介助の切り捨ての方だけ先に実行しようとしているのである。「障害者」に介護保険を適用するという2期目のプランを「支援法」によって事実上、予定どおり貫徹しようという狙いだ。これに対しても「障害者」や家族から強い反対の声があがっている。

 生存権の侵害

 反対の声を3点にしぼれば、次の点があげられる。
 第一に、1割の利用料という応益負担の導入に対する反対である。支払い能力がなければ利用料が払えず介助が受けられない。しかし「障害者」に対する所得保障は障害基礎年金以外にない。厚労省が掲げる所得対策は就労のみだ。しかし大半の「障害者」はそれが不可能な現実におかれている。応益負担が導入されれば、生きるために不可欠な介助さえ受けられなくなる恐れがある。それは憲法25条の生存権の侵害である。
 第二に、ホームヘルプやガイドヘルプが大幅に切り下げられ、地域自立生活が成り立たなくなることへの反対である。憲法25条の生存権にもとづく公的保障制度としての措置制度が「重度障害者」に「保障」した生存権は隔離施設への収容だった。これに対して70年以降「障害者」は生存権の中身を問い、人間らしく地域で生活できる介助保障を要求して運動してきた。「支援法」では「障害者」運動が30年かけてかちとってきた「地域で生きる生存権」が侵害される。
 第三に「精神障害者」に対する通院医療費公費負担の縮小・廃止、自己負担の10%化に対する反対である。「支援法」では、これまで福祉の対象から除外されてきた「精神障害者」を「身体障害者」「知的障害者」と合わせて「3障害統合」するということが画期的なこととして宣伝されてきた。「精神障害者」に対しても日帝はこれまで精神病院への隔離政策をとってきた。これを改めると言いながら厚労省が掲げた「社会復帰政策の車の両輪」は保安処分(医療観察法)と「7万の社会的入院患者の退院促進」である。そして後者の受け皿をつくるはずの「支援法」の中身が通院医療の公的保障の切り捨てなのだ。

 凶暴なやり方

 しかも「支援法」は応益負担導入を来年1月から、「精神障害者」の通院医療費の公費負担の縮小・廃止に至ってはなんと今年の10月から施行するとしている。通常では考えられないスピードだ。法律の成立から施行までの準備期間がまったくと言っていいほどない。厚労省は法案の6月成立を完全に前提に法案審議にも入らないうちから地方自治体との打ち合わせを強引に進めている。当の「障害者」には説明もなく詳しい中身を隠したままである。こうしたやり方自体が許せない。
 しかし、このあまりに凶暴なやり方の中に日帝が陥っている危機の深さが現れている。昨年の介護保険統合に続いて、今国会に上程されている「支援法」と介護保険改悪案の成立が阻止されるなら、日帝の戦後福祉制度解体攻撃が戦略的破産に陥る。廃案はもちろん会期末の6月に予定どおり成立しないだけで致命的打撃をうけるほど日帝には余裕がない。
 この「支援法」に対して民主党は修正、社民党は廃案という態度をとっている。共産党は今のところ反対を表明しているが絶対阻止の立場ではなく、関係団体はすでに法案成立を前提にした要求闘争に入っている。こうした中で先に述べたように「障害者」や家族からは強い反対の声があがり、国会前では廃案を求める「障害者」の命をかけたハンスト闘争も始まった。
 最近、厚労省は自民党障害者問題特別委員会(委員長・八代英太)の場で「障害者」団体の賛成を取りつけるために、応益負担の「扶養義務者」の範囲から「親、兄弟、子どもを除く」などの取り込み案を示し始めた。このままでは自民党系の御用団体までが反対に回って断念に追い込まれた介護保険統合の二の舞いになりかねないからだ。介護保険統合を阻止した力で「支援法」の成立を絶対阻止しよう。

 生命切り捨て

 そもそも日帝は87年国鉄分割・民営化以降、中曽根の行政改革・規制緩和路線のもとで公共部門の民営化を推進してきた。福祉部門については、介護保険制度の導入を突破口に、00年には高齢者、03年には「障害者」の措置制度を廃止し、契約制度に転換する「福祉の民営化」を進めてきた。
 従来は区別されていた「障害者」と老化によって機能低下などの「障害」をもった高齢者を「介助が必要という意味では同じ『高齢障害者』だ」とひとくくりにし、1期目の介護保険では65歳以上をみんな対象に組み込んだ。その結果「障害者」は65歳で分けられ、64歳以下の「障害者」に対しては03年、措置制度にかわって支援費制度という契約制度が導入された。介護保険は、最終的には0歳にまで対象を広げ、介護保険と医療保険の一元化も計画されていると言う。
 介護保険は、1期目の過程だけでも利用料が払えないなどの理由で、高齢者の孤独死や家族による無理心中などの事件が続発している。これ一つをとっても介護保険はすぐにも廃止しなければならない。
 しかし2期目の介護保険は、高齢者にとっても「障害者」にとっても、この比ではない。1期目の介護保険や支援費制度は、日帝の側からは利用者や労働者の抵抗を避け、契約制度にスム−ズにのせるための「激変緩和措置」という面をもっていた。2期目の介護保険は、混合診療など医療制度のさらなる改悪や年金改悪とともに、生存権保障の最後の歯止めを外す「本番」とも言うべきものだ。
 そしてこうした福祉切り捨ては、人間の生命の切り捨てに必ず行き着く。アメリカ型競争原理が支配する社会への転換をめざす03年奥田ビジョンは、「尊厳死」の法制化を主張した。これをうけて今国会に「尊厳死」法案を提出する動きがある。「支援法」−介護保険改悪案と「尊厳死」法案はまさに一体だ。
 奥田の95年日経連報告の貫徹が自民党でありながら「自民党をぶっ壊す」と叫ぶ小泉の登場を必要としたように、03年奥田ビジョンの貫徹は「『障害者』には『安楽死』を」と叫ぶファシスト石原を突撃隊として必要とする。
 「支援法」との闘いは「戦争と民営化」に突き進む小泉=奥田=石原による社会保障解体攻撃との重要な対決点となっている。障害者自立支援法を「障害者」の総力で廃案にしよう。民営化と対決する4大産別決戦を推進し、ファシスト石原打倒の都議選決戦に勝利しよう。

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週刊『前進』(2198号6面4)(2005/05/23)

 改憲と司法改悪に反対

 弁護士会館に570人 闘う力がわく集会

 4月27日、東京・霞が関の弁護士会館大ホール「クレオ」で「改憲と司法改悪に反対する大集会」(主催/憲法と人権の日弁連をめざす会)が開かれ、570人が参加した。組合決定で参加した労働者の姿も目立った。「めざす会」呼びかけの集会は今年で5回目という。多くの発言者から、今日私たちが直面している課題への鋭い批判が提起された。闘う力、展望がわいてくる集いだった。
 集会では、改憲国民投票法案の国会提出に反対する会長声明を発した第二東京弁護士会の朝倉淳也副会長、共謀罪廃案をめざして闘う辻恵衆院議員(民主党)、ファシスト石原と都教委による「日の丸・君が代」強制と闘う都高教の教育労働者がアピールした。
 また多くの弁護士が不当弾圧を許さないために都立高校にかけつけ、教育労働者と連帯して卒・入学式闘争を闘ったことが報告され大きな拍手が送られた。
 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネットジャパン)共同代表の西野瑠美子さんは「NHK/消された4分間」と題して特別報告を行った。女性国際戦犯法廷を扱ったETV特集「問われる戦時性暴力」に対する安倍・中川ら自民党政治家による事前検閲問題を告発し弾劾した。
 続いて、鈴木達夫弁護士がコーディネーターとなってパネルディスカッションが行われ、示唆に富む刺激的な内容が提起された。鋭い石原批判を展開するジャーナリストの斎藤貴男さん、この日アメリカから帰ってきたばかりの映画監督・崔洋一さん、東北大名誉教授の小田中聰樹さんが、今の政治状況を鋭く批判した。各氏それぞれ内容豊かな提起だった。
 斎藤さんは、日本企業の海外進出が今日の日本の戦争国家化、自衛隊の海外派兵、「軍産複合体」化の背景としてあることを指摘した。また「つくる会」教科書が侵略の歴史の美化にとどまらず、差別、不平等を積極的に正当化・合理化する社会的ダーウィニズムの思想に貫かれていることを具体的に暴露した。
 崔さんは「お上が表現に手を突っ込んでくる時代はロクな時代じゃない」と、今日の状況への危機感を率直に表明した。
 小田中さんは「戦前、戦争に至る過程は言論が消えていく過程だった。最後的に言論を奪う役割を果たしたのが司法(裁判所)」と提起した。連休明けにも審議入りが狙われる共謀罪は、「共謀」しただけで処罰というものであり、近代刑法の原則からも大きく逸脱したとんでもない悪法であること、また、戦前の治安維持法の「目的遂行罪」に当たる規定が共謀罪に導入されることで処罰の範囲がはるかに広がる危険性が指摘された。
 裁判員制度は殺人事件など重大犯罪に導入され、裁判の名に値しない「時代の空気」で人を極刑・重刑に処すものである。南野法相の「法律知識なんかなくていいから、日常の正義感でやってほしい」との一言が、裁判員制度の反動的本質を示している。
 また憲法9条2項の改悪で国家の自衛権を認めれば、集団的自衛権までほとんど距離がないこと。対決のかなめは「集団的自衛権を認めるか否か」ではなく、「国家の自衛権」を認めるか否か、「軍事力で国を守る」立場に立つのか否かであること。「自衛」という名で侵略戦争を繰り返してきた歴史を見るならば、「現在の憲法9条を一字一句たりとも変えてはならない」と言われたことは重要であると思った。
 最後に高山俊吉弁護士が「支配者は戦争をやろうとしているからこのようなさまざまな攻撃を掛けているのだ。このことをしっかりと見抜こう」「私たちの背後には私たちと心を同じくする多くの人びとがいる。そのことを確信して私たち弁護士は闘う」と決意を語り、会場全体を勇気づけた。
 司法改悪は改憲と直結しており、日弁連を屈服させ、改憲勢力に引き込む攻撃が強まっている。この攻撃は、弁護士会を解体し変質させ、闘う弁護士を一掃する狙いをもって進められている。そうした中で、労働者階級とともに闘う弁護士が呼びかけたきわめて有意義な集会だった。
 (投稿/NK)

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