SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/02/01〜28    

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 2002年2月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(2月3日) 新型爆発物探知装置2台導入へ(2/3東京)

 昨年9・11以降、「フェーズE」と呼ばれる最高度の保安警備体制が続く成田空港で、手荷物などに隠されたダイナマイトやプラスチック爆弾を高感度で見分ける爆発物探知装置2台が導入される。
 空港公団は1994年9月、「EGIS3000」と呼ばれる爆発物探知装置を全国の空港で初めて導入した。この装置の耐用年数が過ぎたため、改良型の「EGIS2」2台の導入を決めた。18日から稼働の予定。これまでは第2旅客ターミナルビルにのみ配備されていたが、今後は各旅客ビルに1台ずつ配備されることになる。

 【本紙の解説】
 成田空港は民族解放闘争の最大の軍事的ターゲットである。「爆破」される可能性はいつもある。
 最近、新聞紙上でも問題にされたが、9・11の原点は、94年のフィリッピン航空機(マニラ発成田行き)の沖縄上空での爆破にあったとされている。これは、「ボジンカ(大爆発の意味)計画」と呼ばれ、大作戦の予行演習であった。同計画は、1995年1月に成田、ソウル、台北、香港、バンコク、シンガポールから米国へ向かう米旅客機11機に爆弾を仕掛けるという大規模なものだった。
 この情報自身が米国サイドのものであり、真偽のほどは不明だ。しかし、米国がアジア・中東で戦争を行う場合、成田空港は人員・物資輸送の戦略的拠点であり、朝鮮・中国への侵略戦争では戦域兵站作戦の起点となる(新安保ガイドライン)。その意味で、米国にとって成田空港の防衛は在外米軍施設と同じ重要性をもつ。そのために、成田空港は今も最高度の警備体制を続け、今回の新型探知機の導入となった。
 成田空港は軍事空港なのである。現代の空港は、民間空港と称していても、一夜にして軍事転用されるシステムになっている。空港とはそういうものだ。

(2月4日) 共生委/「地域づくり部会」設置(朝日、読売、毎日各千葉版、千葉日報)

 成田空港の運用や環境への影響を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)は4日、国や県、新東京国際空港公団、地元住民が一体となって空港周辺地域の活性化を図る「地域づくり部会」を設置すると発表した。
 同委員会はこれまで騒音や飛行機からの落下物対策など空港からの「マイナスの影響」を監視してきたが、暫定平行滑走路オープンという節目の年を迎え「プラスの影響」にも言及していくことになる。
 同部会は国、県、公団のほか周辺自治体の住民、学識経験者で構成し、経済的な恩恵をはじめ周辺地域を発展させるための提言や情報収集を行うという。山本代表委員は「これまで監視対象だった国、公団を、今後はパートナーととらえ、『実感できる共生』を目指す」と語った。
 また、この日の会合では、暫定滑走路オープン後、飛行機が上空40メートルを飛ぶことになる成田市東峰・天神峰両地区の住民の騒音被害も話題に上り、出席者から「大変な事態。放っておくわけにはいかない。公団は防音工事などもっと踏み込んだ対応を取るべきだ」とする意見がでた。

 【本紙の解説】
 共生委員会は見せかけの「第三者」性もかなぐり捨て、「プラスの影響」と称して空港建設協力機関となった。
 今年は暫定滑走路の供用開始で、住民の頭上40メートルを飛ばし、周辺住民への騒音被害が大々的に始まる年だ。にもかかわらず空港の「プラスの影響」をうたい、空港建設に協力しようというのが「地域づくり部会」の趣旨だ。その恥知らずは度を越している。
 頭上「40メートル飛行」が委員会で問題になったらしいが、国土交通省と公団から選出された委員が「残された時間、最大限努力する」と述べたとのこと。その意味は「頭上40メートル飛行は選択の余地がない。問題は住民の移転だ」ということである。残された時間に、農民切り崩しに全力をあげると言っているのだ。これが「第三者機関」なのか。怒りを禁じえない。

(2月6日) 国際線旅客4パーセント減/10年ぶりマイナス(2/6日経夕刊)

 世界の270を超す定期航空会社で組織する国際航空運送協会(IATA)は5日、2001年の国際線旅客の運送実績が前年比で4パーセント強減ったことを明らかにした。運送実績がマイナスを記録したのは、湾岸戦争のあった1991年以来10年ぶり。9・11直後の深刻な状態からは持ち直しつつあるが、9・11以前の水準にはまだほど遠い。
 IATAが公表したのは正規料金で何人の乗客を何キロ運んだかを示す総合指標。貨物輸送は8パーセント程度減った。旅客と貨物を合わせると、輸送能力は前年比1パーセント弱の減だが、輸送実績は6パーセント程度落ち込んだ。9・11があった昨年9月に旅客は単月で前年同期比17パーセント減、10月は23パーセント減と記録的なマイナスが連続。12月も12パーセント減と減少は続いた。
 IATAは12月の状況について、搭乗可能な座席数と運航キロ数などで見た輸送能力も11パーセント減だったことから「航空各社は市場の状況に合わせて対応した」と指摘。旅客の減少はほぼ予測の範囲内で底は脱したとの見解を強調した。

 【本紙の解説】
 IATAも「底を脱した」との見解を強調したということだが、回復には向かっていない。データでは底にはりついた感じである。問題は貨物の減少である。湾岸戦争の時は、旅客の減少はあったが、貨物の減少は顕著ではなかった。先月の日本航空貨物運送協会が出した統計では01年12月の輸出量は前年同月比25・7パーセント減になっている(02年1月26日付日誌参照)。経済そのものが収縮している。9・11のために、恐怖で旅行を控えているだけではない。経済が回復しなけば旅客数の回復はない。また、12月の旅客数が12パーセント減まで回復したのは、採算割れの安売りチケット効果にすぎない。

(2月7日) 全日空/羽田チャーター便10倍に(2/8日経、朝日、読売、毎日、東京)

 全日本空輸は7日、羽田空港の深夜・早朝の国際チャーター便の運航便数を、2002年度は年間300便(往復)と、今年度の10倍に増やす計画を発表した。このうち羽田―ソウル便を年間を通じて毎週末に運航し、計270便と事実上の定期運航とする予定だ。
 国土交通省は昨年2月から、羽田の国際チャーター便を週2便、深夜と早朝に限定して認めてきたが、4月から週35便に大幅に増やす。全日空は今年度はグアム、ハワイ、ソウルヘ年間30便しか運航できなかったが、都心に近い羽田空港の利便性の高さから、座席の利用率はほぼ100パーセントで、今後も需要が増えると判断した。

 【本紙の解説】
 成田―ソウル便は週62便である。羽田―ソウル便を年間270便とは、週換算で約5便強である。成田発着のソウル便の1割弱だが、満席状態での運航実績が生まれれば、羽田国際化の事実上の突破口となる。そうなると昼間のチャーター便もOKとなり、定期便化する。
 成田の暫定滑走路は韓国・中国便しか事実上使えない。暫定滑走路の使用目的はなくなってしまいそうである。

(2月7日) 成田へ国内線誘致全国キャンペーン (2/8読売千葉版)

 空港公団は7日、4月18日の成田空港の暫定滑走路供用開始に先立ち、国内線誘致のため成田市観光協会などと協力し、名古屋や札幌などで大規模キャンペーンを実施することを決めた。空港公団によると規模は、開港以来の大がかりなものになるという。国際空港としてのナリタは活況だが、国内線空港としては人気が低いため、空港公団や近郊の市町村など関係者らはキャンペーンで国内線空港「成田」の知名度をあげたい考えだ。
 キャンペーンの実施場所は地元の千葉・東京と既に国内線が乗り入れたうえ増便が決まった福岡のほか、新たに乗り入れる仙台など計6都市。
 来月と4月には、福岡市天神の三越ライオン広場など行楽客が集まる場所で、週末または祝日に成田空港の展示コーナーを設け、アトラクションなどの催し物で成田空港をPRする。
 供用開始前に各都市のラジオでコマーシャルを流すほか、日本航空や全日空、日本エアシステムの機内誌にも広告や供用開始の特集記事の依頼を検討している。さらに供用開始直後に、各都市のラジオ番組の司会者と聴取者約30人が成田空港や空港近郊の観光地を巡り、クイズ形式で優勝まで競いあう様子を番組放送する地方局対抗のクイズ合戦なども予定しているという。

 【本紙の解説】
 ここまで「努力」して成田空港の国内線の需要を喚起するということは、暫定滑走路の長さでは、国際線としては通用しないことを示している。国際線での乗り入れ希望が多ければ、「開港以来の大がかり」なキャンペーンをやる必要もない。しかし、いくら宣伝しても「空港近郊の観光地を巡り」ではあまりにも魅力に乏しい。航空機を使って成田旅行にくるはずもない。

(2月7日) 成田出入国7・5パーセント減(2/8読売千葉版)

 東京入国管理局成田空港支局は、昨年の成田空港の出入国者数をまとめた。出入国者の総数は2181万5287人で前年に比べ7・5パーセント減少した。
 同支局では「9・11までは、史上最高の出入国者数を記録した2000年にせまる勢いだったが、9・11以降の落ち込みが激しかった」と説明する。
 特に、日本人が海外旅行を敬遠する傾向が顕著で、9月11日以降の日本人の出国者数は178万4626人と、前年同期に比べ、36・9パーセント減少した。

 【本紙の解説】
 9・11以降、前年比で4割近い日本人が出国を見合わせている。1月統計では若干回復したと報道されているが、この激甚な減少傾向はそう簡単には回復しない。そもそも、いままでの海外旅行での出国が異常に多かったのであり、これで適正になったとの声もある。
 公団は昨年の5月20日に、暫定滑走路建設供用開始の「カウントダウンボード」を京成上野駅コンコースなどに設置し、お祭り騒ぎを開始していた(01年5月20日付日誌参照)。この直後の6月16日に東峰神社の立ち木伐採という暴挙にでた。お祭り騒ぎと力ずくの軒先工事、有無も言わせぬ立ち木伐採で三里塚闘争を解体し地権者を屈服させることはできると考えていた。
 しかし、開港2カ月前だというのに、カウントダウン的お祭り騒ぎは姿を消している。暫定滑走路も2180メートルに止められ、本来の計画は完全に破産した。それ以上に9・11を契機とする航空需要の落ち込みの激しさで、華やいだ話はない。工事完成式も控えめであった。公団は「静かに」に開港を迎えたいようだ。何しろ航空神社であった東峰神社のご神木をぶった切ったのだ。祟(たた)りでも心配しているのだろう。

(2月8日) 成田新高速鉄道/三セク準備委発足/分担金・出資比率焦点に(2/9朝日、読売、毎日、東京の各千葉版、千葉日報)

 成田新高速鉄道の事業主体となる第三セクターの設立準備委員会が8日、発足した。三セク設立を4月とし、準備委の運営や検討事項を決めた。資金計画では、新東京国際空港公団がすでに約334億円の支出を決め、同額分を地方の支出分と想定しているが、今後、補助金の分担割合や出資比率が焦点になりそうだ。
 準備委員会には県と公団のほか、空港周辺自治体の成田、市川、船橋、松戸、鎌ケ谷、印西、白井の各市、印旛、本埜両村の担当者らが参加。民間からは京成電鉄と大手航空3社が加わった。地方負担分334億円をどう県と沿線自治体で分けるか調整が難航しており、4月下旬の三セク立ち上げに向けて協議を続ける。
 同委員会は、新東京国際空港公団、県、沿線の7市2村、航空会社などで構成。資金計画は、空港内のインフラ整備281億円を除く事業費1286億円のうち、空港公団と同額の334億円(負担金30億円、出資金74億円、補助金231億円)を地方分として県と沿線自治体で負担する。有利子借入は359億円、国の補助金231億円で、残る28億円を民間の出資でまかなう。
 地方分の負担割合については、市や村が県負担の増加を求めており、合意には至っていない。民間からは、電車を運行する京成電鉄のほか航空会社3社が出資を予定している。同委員会にオブザーバー参加の都市銀行や千葉銀行にも、県が出資を要請している。今後は3月下旬に2回目の準備委員会を開いて資本金や発起人を決め、4月下旬の三セク発足を目指す。

 【本紙の解説】
 成田新高速鉄道は、昨年の5月17日に北総・公団線と成田新高速鉄道の両沿線市町村の首長などが、早期実現および北総・公団線の高額運賃見直しを求める要望書を国と県に提出した(01年5月17日付日誌参照)。
 この早期完成要求の背後には、建設事業費の大半を国が補助金でまかなってほしいとの事情があった。地方自治体の補助金を基本的にゼロにしてほしいという内容だった。堂本県知事と周辺自治体が羽田国際化を承認した代償として、補助金大幅アップを求めたのである。
 それが都市再生本部の第2次プロジェクトで取り上げられた。堂本知事はこれこそ自分の最大の成果と自慢している。しかし、地方自治体の負担金は変わらなかった。成田市では土屋駅の設置も見送られそうである。これでは財政難の各自治体が負担金を出すことはできない。
 結局、「県負担の増加」以外、解決の方法はないようだ。しかし、県も334億円のほとんどを負担するような力はない。成田新高速鉄道は船出前から難航している。

(2月13日) 成田未供用部分迷彩化粧(2/13読売夕刊)

 新東京国際空港公団は13日、4月から使われる成田空港の暫定滑走路(2180メートル)の南側にある未供用の平行滑走路部分を、上空から芝生に見えるように“擬装”することを決めた。航空機が間違って着陸することを防ぐためで、欧米の主要空港でも見られない異例の措置という。
 擬装が施されるのは、一部舗装済みの幅60メートル、長さ約430メートル。緑色のペンキをまだら状に吹き付けるのに加え、緑色の網をしま状にかぶせて迷彩模様とし、上空から見た際、操縦士が周辺の芝生と見分けがつかないようにする。
 暫定滑走路は、当初計画されていた2500メートル平行滑走路の中央部に位置する空港反対派農家の土地や家屋を避ける形で、北側に約800メートルずらして完成させた。
 このため、農家をはさんで反対側にできあがっていた擬装部分は、未供用のまま取り残されることになった。しかし、暫定滑走路の真南にあたり、悪天候や着陸誘導装置の故障、操縦士の見間違いなどから航空機が誤って着陸し、オーバーランする恐れがあると、国土交通省からも指摘されていた。
 最初は未供用であることを示す通常の×印のラインを路面に描く予定だったが、2年前に羽田空港で×印のついた運用前の新滑走路に日本エアシステム機が誤着陸した例もあるため、空港公団と同省はより効果的な防止方法を探っていた。

 【本紙の解説】
 公団が本当に安全を考えているならば、迷彩の芝生ではなく、滑走路のコンクリートをはがし、本当の芝生や林にすべきである。ここに暫定滑走路の地上げ屋的本質がある。工事を進めることで地権者を追い出す。それでも追い出せない場合は、頭上40メートルに航空機を飛ばす。人家から50メートルの誘導路があり、航空機を自走させ、ジェットブラスト音(爆噴射音)をまき散らそうとしている。この騒音と危険性で住民をたたき出そうとしている。これが国家が進める公共事業なのか。地上げ屋そのものである。
 それにしても誘導路の脇に一般道路があったり、横切っていたりの国際空港とは聞いたことがない。空港のセキュリティーはわれわれが関知することではないが、航空機運航の安全性には大いに問題がある。石を投げると軽く届くような距離に航空機が自走することをどう考えているのか。

(2月13日) 日航、全日空/中国路線を増強/旅客需要増大見込む(2/14毎日、朝日、東京)

 日本航空と全日本空輸は13日、それぞれ、今後の旅客需要増大が見込まれる中国路線を強化することを発表した。
 日航の兼子勲社長は記者会見で、4月の成田空港B滑走路の供用開始による発着枠拡大を受け「中国全土に路線を張り巡らすのは無理だが、隣国として確固とした路線を持ちたい」と、中国を軸にアジア路線を強化する考えを示した。その上で「中国の国内線との提携も視野に入れていきたい」とも述べ、現在、9社から3社への統合を進めている中国国内航空会社との提携協議に向けた検討をしていることを明らかにした。
 全日空も、同日発表した02年度の事業計画で、成田の発着枠拡大に伴い北京、上海などの中国路線を軸にアジア方面を強化することを明らかにした。計画では米国での同時多発テロ事件が起きた昨年9月以前の週32便から4月以降は3倍近い88便とし、成田発着国際線の約6割をアジア路線に振り向ける。
 国際航空運送協会(IATA)によると、99年の旅客数は日本の1億3949万人に対し、中国は6959万人だが、中国の成長率は8・3パーセントとハイペースの拡大が見込まれる。

 【本紙の解説】
 欧米便の運休が続いていることと暫定滑走路が供用開始されることが重なって、夏ダイヤから内外の航空会社では一斉にアジア便を新設、増便する計画を発表している。現行の成田発着の中国便はすべての航空会社の合計で週95便だが、倍する勢いである。昨年の日中航空交渉で「日中双方で737機換算では67.5単位を増便」を確認している。これはB767クラスでは1.5単位、B747クラスは2単位と計算するので、B767では45便になる。
 これを日本エアシステムがB767型機で週7便、日本航空・全日空はそれぞれ同型機で週19便と配分された。
 日本の航空会社だけでも、週45便がほとんど成田発着で増便されそうだ。中国も各航空会社も同じ便数が乗り込んでくる。それにアメリカのノースウエスト航空、ユナイテッド航空も参入するといわれている。
 中国便だけで200便近くになりそうだ。しかし、中国への旅客数は昨年並みの横ばい状況。欧米便の激減に対して減っていないということだけだ。つまり、実需の倍近い便数が供給されようとしている。
 その理由は、減便している欧米便の機材をアジア便に回すためである。それと、暫定滑走路は中型機が最大積載重量の場合は燃料を半減しないと離陸できない。そのため、暫定滑走路では中国、韓国しか直行便は飛べない。旅客と貨物も最大積載では香港にも直行できない。
 それが中国便が「倍増」している理由である。中国の経済成長を見込んだ旅客の増加率8・3パーセントという数字を見込んでの中国便の増便だが、この数字通りに増加したとしても数年間は大赤字である。またここ10年で経済予測数値がその通り実現したことはない。
 以上のように中国便は供給過剰なので、2〜3ヶ月か夏休みまでで息切れするだろう。増便分の大半が運休になるのが関の山だろう。

(2月15日) IATA、成田空港着陸料値上げ反対「むしろ値下げを」(2/16朝日)

 世界各国の航空275社からなる国際航空運送協会(IATA)は15日、成田空港を運営する新東京国際空港公団による着陸料値上げ案に反対を表明した。同日、公団との交渉で「4月の暫定平行滑走路供用開始による増便で、離着陸1回あたりのコストが下がることが考慮されていない。むしろ大幅値下げを期待する」と述べた。成田空港の着陸料は世界でも最も高額とされる。

 【本紙の解説】
 空港公団は、国際線着陸料値上げ(航空機重量1トンあたり2400円の現行水準を、2600円に引き上げ)を国際航空運送協会(IATA)に提示していた。ボーイング747型(ジャンボ)機で、着陸1回あたり約95万円が103万円になる値上げ案である。
 値上げは近隣国の空港との競争力をそぐものであり、公団も積極的ではなかった。また、日本の航空会社の競争力もそぐので国土交通省も賛成していなかった。にもかかわらず、値上げ申請した理由は、暫定滑走路の建設とその供用開始にある。暫定滑走路が2180メートルとして固定化されると国際空港の滑走路としては早晩使えないことがはっきりする。そのために、暫定滑走路の使用は国内線を優先したいということなのだ。そのために国際線の値上げと同時期に、国土交通省と公団は国内線着陸料を値下げ(トン当たり現行2400円を1800円)することを決めている。羽田空港の着陸料と同じ水準に下げて、成田空港への国内線誘致をはかるつもりだった。しかし、それでも国内線誘致は失敗している。
 ただし、IATAが暫定滑走路の供用開始でコストが下がるといっているのは間違いである。使い勝手の悪い暫定滑走路は、結局のところ便数も予定の半分もいかず、成田空港の運用コストをむしろ上げることになる。成田空港が赤字空港に転落する要因にすらなろうとしている。

(2月17日) 反対同盟が暫定滑走路内外の一坪共有地を調査

 反対同盟は17日、顧問弁護団とともに暫定滑走路用地の内外にある数カ所の同盟一坪共有地について、形状の不当な変更などが公団によってなされていないかどうかの実地調査を行った。調査活動は今回で4度目。(詳細は本紙に)

(2月16日) 発着枠「満杯」週860便/成田暫定滑走路 予想上回る人気(2/7読売)

 4月から運用開始する成田空港暫定滑走路の国際線発着便数の見通しが16日、明らかになった。国土交通省によると、週860便程度と全体枠(週882便)の95パーセントを超える見通しで、事実上の満杯。発着便の中には関西国際空港からのシフトもあり、関空の地盤沈下を引き起こす要因にもなりそうだ。
 成田空港は暫定滑走路の運用で、発着枠は年間13万5000回から20万回に増える。ただ、暫定滑走路は縮小してつくられたため、ジャンボ機の使用が不可能。中型機が主力となり、目的地も香港、東南アジアなどに限定される。当初は「枠が埋まるのか心配」(新東京国際空港公団)との声が出ていた。
 ところが、予想に反して航空会社から国際線の要望が殺到。発着枠を大幅に超える週1029便にも達し、調整の結果、夏ダイヤ(3月末―10月末)期間中のピーク時で週860便程度になる見通しとなった。
 国交省では「プレミア商品である成田の発着枠は、順番待ちがつづいていた。将来2500メートル滑走路になったときを考えると、『今取っておかないと』という意識が働いたのではないか」と分析している。

 【本紙の解説】
 話の前提だが、この記事で「860便」うんぬんというのは「860回」の間違い。1便で2回の発着である。
 暫定滑走路の発着便は2月26日(同日付日誌参照)に発表されたが、4月末時点の運航状況は57パーセントとなった。「満杯」とはほど遠い状況である。朝日新聞、読売新聞は、昨年の秋にIATAが受け付けた各国の航空会社の発着希望が週1129回集まっていることだけを根拠に、国交省と空港公団の提灯持ち記事を何度も書いてきた。暫定滑走路が暫定のまま終わってしまうと、国際空港としては使い物にならない。にもかかわらず、このような一種のデマ記事を掲載する両紙の意図は、暫定開港の騒音被害で敷地内農民と周辺住民をたたき出そうとする公団のお先棒を担ぐことだ。
 航空関係者も、また国土交通省自身も、当初はIATAの乗り入れ希望はあくまでエントリーにすぎず、実際に乗り入れるかどうかは別問題だといっていた。事実がその通りなので、本紙でもその点は強調した(01年11月10日付日誌参照)。にもかかわらず、このような記事を何度も掲載する新聞社の意図は、きわめて政治的で悪らつである。

(2月18日) 堂本知事/「騒音が心配」/暫定供用開始控え(2/19千葉日報)

 成田空港暫定平行滑走路の供用開始まで2カ月と迫った18日、供用された場合に滑走路南にある農家の上空40メートルを航空機が飛行する状況となることについて、千葉県の堂本暁子知事は定例記者会見で、「知事として騒音による影響を心配している」とあらためて騒音への懸念を示していた。
 また用地交渉については「国と空港公団が直接交渉している」として、現段階では静観する考えを示した。

 【本紙の解説】
 堂本知事は騒音による影響を心配しているそうだが、移転交渉が進んでいないことを「心配」しているにすぎない。知事は現在「最強」の平行滑走路完成主義者だ(当初計画の2500m化を強く主張)。周辺住民の騒音被害を理由に暫定滑走路供用に反対しているわけではまったくない。何とか移転を強制しようとしているだけだ。国や公団の「直接交渉」が遅れていることを批判し、四者協議会で県が用地交渉から外されたことに抗議しているくらいなのである。

(2月20日) 観光客誘致へ県などPR/韓国の旅行者を招く(2/21読売、日経)

 成田空港の暫定平行滑走路の供用開始に伴い千葉県と成田市など周辺2市2町は20日、韓国の旅行会社の関係者を招いて県のPR活動を始めた。空港を生かした観光振興策を促進し、地域のイメージアップや経済の活性化につなげる。
 韓国のハナツアーなど3社の担当者を22日までの期間中、成田山新勝寺(成田市)や国立歴史民俗博物館(佐倉市)などに案内する。
 21日にはホテルなど県内18社も参加して商談を開き、旅行ツアーなどの企画を話し合ってもらう。
 20日には県主催で観光振興に関する会議を開催。成田空港周辺の14市町村などに対し、県側が4月18日から3日間の日程で実施する新滑走路のオープニングイベントなどについて説明。各自治体の協力を呼びかけている。
 この会議で県観光コンベンション課の内田芳雄課長は会議の冒頭、「暫定滑走路供用を契機に、空港を核とした観光振興に地元と連携して取り組みたい」とあいさつ。成田空港を利用する観光客に空港周辺の文化財や観光施設を訪れてもらう方策を説明した。具体的には、(1)地域の伝統工芸品を空港内で展示する、(2)成田空港と国内線で結ばれる仙台などに観光キャラバンを派遣する、(3)英語、韓国語、中国語と日本語を併記したモデルコースガイドブックを作成するなどを提案した。

 【本紙の解説】
 国土交通省が中心になって行った成田空港国内線の拡充・強化キャンペーンは失敗した。目標は国内線の発着を年間2万回まで充実させることだったが、実際はその半分にも達しなかった。それで千葉県が中心になって「魅力ある成田空港推進協議会」を発足(1月7日)させ、引き続き国内線拡充に努めることになっていた。
 それが今度は、韓国を中心に中国、アジアからの旅行客誘致を始めた。暫定滑走路は滑走路が短すぎて国内線しか使えないと考えていたが、その国内線拡充策に失敗したので、今度は東アジア近距離便の開拓というわけである。暫定滑走路はまるで千葉県所轄の空港のようだ。
 ところで航空需要が切迫していることを理由に、住民の反対を押し切って建設を始めたのが、この暫定滑走路ではなかったか。完成間近になって、需要の掘り起こしに県や国が躍起にならなければ経営が成り立たない空港ならば、造る必要はまったくなかったはずだ。
 建設強行の最大の動機は空港反対闘争の解体だった。航空機の爆音で地権者を追放し、あわよくば当初計画の2500〜3300メートル滑走路にしてしまおうとの思惑だった。しかし、このふたつとも失敗し、暫定滑走路はあらゆる意味で存在価値がなくなった。その中で反対農民追放に最も執念を燃やしているのは千葉県と堂本知事である。

(2月21日) 成田空港/暫定滑走路発着ルート公表(2/22毎日千葉版、2/21読売夕刊)

 国土交通省は21日、2本目の滑走路「暫定平行滑走路」がオープンする成田空港について国際公示するAIP(航空路誌)を発行した。暫定路の形状や新たに設ける発着ルートなどを図示したほか、運航のための注意事項を記載し周知を図った。この日発行のAIPは4月18日から有効となるため、暫定路オープンも同日となる予定だ。
 AIPでは暫定路の2180メートルという「短さ」や2カ所で「への字」に曲がる誘導路について図解。暫定路南側の未買収地の立ち木6本が、航空法で定める飛行機の「着陸進入表面」を越える高さであることも明記し、イラスト付きで説明した。
 このAIP発行は暫定滑走路の供用開始を4月18日であることを世界の航空関係者に通知したことになり、今後、サッカーW杯などに合わせた国際テロやゲリラの標的になる恐れもあるとして、千葉県警は警戒を強めている。
 県警の伊藤哲朗本部長は「暫定滑走路の供用開始や、W杯などで成田空港がゲリラの標的になる恐れがある」として厳重な警備を指示。空港周辺のパトロールや、管制塔周辺の排水溝のマンホールの施錠確認など地道な警備がつづいている。これに対し、一部の空港反対派は「暫定滑走路開港阻止」をスローガンに、来月末から現地への動員を呼びかけ、4月14日に大集会を予定している。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の情報を世界の航空会社に公表したわけだが、惨めなものになった。滑走路の「短さ」や「への字」に曲がる誘導路は周知の事実だが、暫定路南側の立ち木問題を国土交通省が明らかにしたのは初めてだ。この立ち木は南端から約400メートル地点にある。立ち木の高さは正確ではないが目測で約12メートルくらい。400メートル地点の「着陸進入表面」の高さは8メートルなので、約4メートル突き出ている。したがって実際に運用できる滑走路長は約200メートル削られ、1980メートル分しか使えないことになった(南側進入と南側離陸)。
 やはり、暫定滑走路はきわめて使い勝手の悪い滑走路であり、国際空港として完全に失格である。
 国土交通省と公団は、開港さえすれば、すぐにも延長して2500メートルから3300メートルになると世界の航空会社にアピールしている。それでジャンボ機が使えるようになった時の発着枠を確保するために、大赤字覚悟で暫定滑走路での路線開設を決めた航空会社も現れた。
 4月14日の開港阻止全国集会に集まろう! 暫定は暫定にとどまり延長は絶対に不可能であることを全世界にアピールしていこう!

(2月21日) 空港公団/防音機能調査へ(2/21読売千葉版)

 空港公団は今月下旬から、防音工事を施して10年以上経過した住宅330戸を対象に、経年変化の実態調査を実施する。工事後の年数の経過に伴って、防音機能が低下している実情を調べるためで、6月までに調査結果をまとめ、今後の対策に生かしたい考えだ。
 騒音地域の住民から昨年秋以降、「テレビの音が聞こえにくくなった」など、機能低下に関する指摘が寄せられ、空港の建設や運用によるマイナス影響を監視する第三者機関の「成田空港地域共生委員会」(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)からも調査を求める意見が出されたため、実態を調べることにした。調査には、共生委や騒音対策を求める住民団体のメンバーらが立ち会い、調査手法や結果の公平性を確保することにしている。

 【本紙の解説】
 騒防法による防音工事の目的は空港反対闘争の破壊にあった。すでに空港周辺の住宅に、平均800万から1000万円ぐらいの防音工事補助を一期開港前後に行った。闘争破壊のための金のバラまきなので、一時の補助であり、経年による防音効果の低下や家屋の建て替えを前提にしていない。20年もたてば、家の増改築や立て替えも問題になる時期だ。
 しかし騒防法にその規定はない。わずか20年間の防音効果と引き替えに反対闘争を裏切らせ、その後永久に航空機騒音に悩まされることになる。また、内陸や人口密集地の空港騒音は巨大な生活破壊をもたらす。成田空港は廃港にしなければならないのである。

(2月25日) 飛行機飛ばし安全性検査/不可侵区域監視装置(2/26読売、毎日各千葉版)

 成田空港で暫定滑走路の供用が開始された後、平行するA滑走路と同時に旅客機が着陸する際の安全性と効率性を高めようと、国土交通省は同空港に「不可侵区域(NTZ)監視装置」を導入し25日、実際に飛行機を飛ばして検査を行った。
 この装置は、旅客機が2本の滑走路へ同時に着陸コースをたどったとき、あらかじめ決められた左右の間隔を取っているか、地上のレーダーで見守るもので、2機の間に目に見えない“壁”を設定し、旅客機が壁に触れた場合、空港内のレーダー室に警報が表れ、管制官が旅客機に決められたコースに戻るように注意を促す「同時平行ILS(計器着陸装置)進入」という方法が取られる。国内では昨年3月から羽田空港で運用されている。25日の検査では、同省の検査機が羽田空港から飛来し約4時間「見えない壁」のへりを飛び、地上のレーダー室で管制官が警報が表れるか注意深く見守った。

 【本紙の解説】
 同時平行進入はオープンパラレル管制方式と呼ばれ、同時離発着ができる。この同時離発着方式は、昨年3月から羽田で導入され、成田ではそれにつぐ日本で2番目の導入。羽田空港は1日の発着が700回を超え、1分、2分の間隔で航空機が飛びかい、新Aと新Cの滑走路が同時に離発着する方が安全になるので導入された。過密空港での管制方式なのである。
 しかし、成田のA滑走路と暫定滑走路では無用な方式である。暫定滑走路は、誘導路がくの字に曲がっているために、着陸機が進入体制に入っているときに、誘導路の航空機がこのくの字部分に進入していると、滑走路の方向を錯覚して大事故を引き起こしかねない。そのため、着陸機があるときは、くの字部分の誘導路の信号機が赤になり、航空機を待機させるようになっている。
 そうした事情で、暫定滑走路は最大限使っても10分弱に1台しか発着できない。また、成田の場合には銚子沖に通称成田トンネルという空域管制トンネルがあり、その狭いトンネルを航空機は通過してくる。ここで航空機が渋滞するといわれている。オープンパラレル管制の場合、進入路も2本なけば効果は薄い。

(2月25日) 三里塚闘争支援連絡会議が現地でテスト飛行阻止闘争と監視行動/26日も(記事は本紙参照)

(2月26日) 「団結街道」拡幅整備、市議会で市長答弁(2/27千葉日報)

 成田市議会3月定例会は26日も一般質問を行った。その中で成田空港暫定平行滑走路の供用に関連し、谷平稔氏は地元住民から要望されている騒特法防止特別地区の森林等の土地買い上げについて質問。実現するまでの間、市が借り上げて保全林とするよう求めた。
 小川市長は「市としても土地買い上げの制度化をあらゆる機会をとらえて要望している」と地元要望に沿って取り組んでいることを強調。
 しかし、市による借り上げについては「成田市側だけで約1千ヘクタールあり、市単独での借り上げは財政的に難しい」と答弁。「当面の措置として、空港公団の協力の下、市民参加による地域の森林形態に応じた整備を研究していく」として、共生財団を活用した里山整備などを挙げた。
 また、国道51号から県道成田小見川鹿島港線を結ぶ、いわゆる団結街道を生活道路として拡幅整備するよう求めたのに対し、小川市長は「空港公団と協議していく」と前向きに答えた。

 【本紙の解説】
 一昨年の8月の郡司さんの葬式の時に、成田市と公団は団結街道を封鎖し破壊しようとした。理由は、団結街道が暫定滑走路と平行ではないためだ。夜間に団結街道を走る車のヘッドランプ等が滑走路の角度と交差する形になる。それで計器着陸ではない有視界飛行時に錯覚が起きないように、団結街道(正確には成田市道・天神峰―十余三線)を破壊し、空港外周道をもって置き換えようとの攻撃だった。しかし反対同盟は、成田市への弾劾行動を弁護団と共同でたたきつけ反撃、公団と成田市の攻撃を打ち破り、団結街道を元の通りに復活させた経緯がある。
 今回成田市は、「生活道路として拡幅」というペテンで団結街道の破壊、空港外周道への置き換えを再び策動し始めたわけである。
 しかし、団結街道を生活道路として使っている住民は、天神峰の市東孝雄さんだけだ。他は成田パブリックゴルフ場への通路であり、通過者でしかない。当事者は市東孝雄さんなのだ。市東さんが望んでいないにもかかわらず、保守反動の谷平稔市議が質問で「生活道として拡幅」うんぬんとは見え透いている。谷平市議は、大室地区が選出基盤であり、天神峰、十余三地域の住民を代表する立場にはない。
 成田市はみずから失敗した団結街道破壊攻撃に、市議から要請という形で再び手をつけようとしている。絶対に許すことはできない。
 また、空港周辺の里山の崩壊問題(騒音下で土地資産価格が暴落し、荒れ果てた山林問題)について、成田市は財政難を理由に不誠実な対応に終始している。

(2月26日) 成田新滑走路 利用率57パーセントでオープン(2/27毎日千葉版、千葉日報)

 国土交通省は26日、成田空港・暫定平行滑走路のオープン後の発着枠利用状況について、オープン時は利用率57パーセントにとどまるものの半年後の10月には74パーセントに達するとの見通しを明らかにした。またオープンに伴い成田の国内線に新たに乗り入れる航空会社3社が固まった。国内線は現在の週38便(往復扱い)から同105便(往復扱い)に増え、仙台便が新たに就航する。オープンまで51日。徐々に「オープン後」が明らかになりつつある。
 同省の見通しによると、オープン直後の4月末時点の暫定路発着数は週703回(内訳は国際線555回、国内線148回)。総枠は同1232回で、利用率57パーセントでのオープンとなる見込みだ。
 半年後の10月末時点では、航空会社からの認可申請数を基に、同912回(国際線736回、国内線176回)に増え、利用率は74パーセントに達すると予測している。また同日、運輸審議会はフェアリンク、ジェイエア、中日本エアラインの3社の成田の国内線乗り入れを認めた。フ社は札幌、仙台空港へ1日各2便、伊丹空港へ同1便。ジ社が同1便、中日本が同2便、それぞれ名古屋空港へ就航予定だ。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の発着枠は、4月末時点で57パーセントの運用にとどまることになった。4・18の供用開始時点では総枠の約半分の運用でしかない。
 国内線枠の拡充は50人乗りの小型ジェット機だけである。後は日航の名古屋経由台北便を、名古屋まで国内線として売り出すだけだ。供用開始時点で1日6便が50人乗りの小型機であり、週42便、発着回数で84回となる。703回から小型機の84回をのぞけば619回。スロット総枠の約半分だ。これが暫定滑走路の実情である。
 国際線も飛行距離から暫定滑走路は東アジアが中心になる。ソウル、釜山、台北、高雄、北京、上海の増便が目立つ。この6路線で現行が週243便のところ128便も増え、総計371便になる。このうち現行便のかなりの数は、いままで通りA滑走路を使うとみられる。増加便はすべて暫定滑走路である。この6路線にアモイ、青島、大連など東アジアへの近距離便が2倍化する勢いである。
 しかし「大手旅行代理店などは、思ったほど利用客が増えずに秋以降減便となるケースが多くなるのでは、と航空各社の動向を冷静に注目している」(2/23産経)という。
 明白な供給過多である。欧米便の旅客激減がつづいており、休止している航空機をアジア便に振り向けているだけなのだ。さらに暫定滑走路では、ボーイング767機が旅客と貨物を満載すると、燃料を満タンにできず直行便では香港にも行けない。それで韓国、台湾、中国の増便になっているのだ。
 ジャカルタやモンゴルにも直行便を飛ばすとしているが、旅客と貨物を制限し、燃料を多くして運航させるようである。ハノイ便は途中給油するらしい。これらをみても、暫定滑走路は使い勝手の悪い滑走路なのである。
 「採算性よりも発着枠確保が最優先」で無理やり中国便を中心に運航便をつくったが、それでも暫定滑走路のスロット総枠の半分しか埋まらない。半年後の10月末の利用率は「74パーセントになる」としているが、これこそ「航空会社からの認可申請数を基にした」計算であり、スロット枠の確保である。また各航空会社は、今年後半には航空需要の落ち込みは回復するとの甘い見込みを立てているが、絶対にそうはならない。それどころか中国便とソウル便は格安チケット合戦が必至の情勢だ。航空会社の体力が削がれることも必至で、最後は撤退が相次ぐ公算も大である。

(2月26日)反対同盟、3・31〜4・14の全国集会へ招請状発出(本紙に先んじて、以下全文を掲載)

招請状
 三里塚芝山連合空港反対同盟

 全国の闘う仲間のみなさん。
 小泉内閣は成田空港暫定滑走路の開港を四月十八日に強行します。国会は有事法制の立法化に動きだしました。反対同盟は三月三十一日に三里塚現地闘争に決起し、四月十四日に全国総決起集会を敷地内・天神峰で開催し闘いを挑みます。全国の皆さんが総結集されるよう訴えます。
 小泉内閣はアフガン侵攻への自衛隊派兵、東中国海における「不審船」撃沈で、衝撃的に憲法が禁止する戦争への道に踏み込みました。イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指して世界に戦争を拡大するブッシュに対して、支持を表明しました。すでに日本は戦争当事国です。
 不況は深刻さを深め、リストラと賃下げ、増税と社会保障制度の改悪が私たちの生活を脅かしています。すべてが戦前に舞い戻るかのような状況の中で、言論を統制し、労働運動を弾圧し、土地を徴発して人民を戦争に駆りたてる有事法制の立法化が強引に進められているのです。戦争を絶対に繰り返さないために、私たちは今こそ立ち上がらなければなりません。
 暫定滑走路の開港は、この暗黒の政治を先取りするものです。東峰神社の立木盗伐の上に、民家上空四〇メートルのジェット飛行と、軒先から五〇メートル先誘導路のジェットブラスト(爆燃噴射)の直撃で農家を追い出そうとする暴挙をどうして許すことができるでしょうか。
 「国策」を掲げ、家を壊し土地を収用した七一年の強制代執行や、成田治安法による反対同盟財産の強奪、四・一八開港(騒音・生活破壊)による農家の追い出し攻撃は、有事法制下の土地強奪と同じことなのです。また成田空港はふたたび朝鮮・中国を侵略する兵たん・出撃基地として位置づけられています。
 反対同盟は、政府の土地収用に対して体を張って闘うことで戦後闘い取った人民の基本的権利を守り続けてきました。沖縄、北富士を始めとする全国の反戦・反基地闘争、動労千葉を先頭とした闘う労働者と連帯し、軍事空港建設に反対する反戦・反核の砦として発展してきました。
 暫定滑走路の開港は、殺人的な滑走路の運用で農家を追い出し、破産した平行滑走路を復活させようとするものです。これによって三里塚闘争をおしつぶし、全国の住民闘争、反戦闘争を押さえ込み有事法制に道を開くものなのです。
 私たち反対同盟は絶対に負けません。暫定滑走路はぶざまの一語に尽きます。農地、家屋、共有地を残したままの短縮滑走路は国際空港失格です。誘導路が「へ」の字に曲がり、滑走路わきには三カ所の巨大な落とし穴(一坪共有地と開拓組合道路)が存在し、管制塔に死角のある空港など世界のどこにもありません。危険な欠陥空港=成田の姿が、開港をもって全世界にさらされることでしょう。三里塚には体を張って闘う人民の勝利があるのです。
 四・一四全国集会は開港による追い出し攻撃を粉砕し、暫定滑走路の延長を阻止して、空港を廃港に追い込む総決起集会です。小泉内閣の戦争と強権政治に対して全国の農民、労働者、学生、人民は総決起しよう。三・三一三里塚現地闘争―四・一四全国集会に多くの皆さんの結集を呼びかけます。
  二〇〇二年二月二十六日

   記
【集会名称】暫定滑走路開港阻止、有事法制粉砕 4・14全国総決起集会
【日時】四月十四日(日)正午
【会場】成田市天神峰 反対同盟員所有地(道路が変わりましたのでご注意下さい)
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟

3・31三里塚現地闘争
【日時】三月三十一日(日)正午
【会場】成田市天神峰 反対同盟員所有地(四月全国集会と同じ会場です)
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟

(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚一一五
               TEL 0476(35)0062

(2月27日) 成田空港/ビジネス機発着倍増へ(2/27読売千葉版)

 国土交通省は、成田空港の暫定滑走路が供用開始になることに伴い、これまでA滑走路(4000メートル)で1日2回に限定していたビジネス・ジェット機の発着枠を、暫定滑走路に移し、最低でも5、6回に増やすことを決めた。
 ビジネス機はこれまで、ジャンボ機と同じA滑走路に発着していた。しかし、5―20人乗りと小型で、暫定滑走路での運用が可能なため、国交省はビジネス機の発着を暫定滑走路に移し、国内線の発着枠を使って運用することにした。
 成田空港の国内線は、1日当たり約55回確保されているが、今のところ、30―35回程度が使われるだけで、20回以上が空き枠として残っている。このため、国交省は「ビジネス機は国内線枠の中で発着させ、年間約2000回程度を確保する」とし、「駐機場数も限られるため、空き枠をすべて使えないが、最低でも1日5、6回をビジネス機に充てる」という。
 国交省もビジネス機の重要性を見越して昨年2月、羽田空港で早朝・夜間に海外からのビジネス機の受け入れを決めている。

 【本紙の解説】
 国際線も国内線もがら空き状態の暫定滑走路。不定期のビジネス機の拡充で採算を取ろうという算段だろうが、はたしてビジネス機の発着需要がそれだけあるか疑問だ。しかも残念なことに、駐機場が狭く、1日5、6便しか受け入れられないらしい。

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