崩壊するJR体制② 安全破壊のJR北「経営計画」 JR東に続き鉄道は外注化し商業展開と不動産開発に熱中 安全な運行は投げ捨てられた

週刊『前進』06頁(2632号02面03)(2014/05/19)


崩壊するJR体制②
 安全破壊のJR北「経営計画」
 JR東に続き鉄道は外注化し商業展開と不動産開発に熱中
 安全な運行は投げ捨てられた

補修費も出ず改ざんが横行

 JR北海道での重大事故の続発は、JR体制の崩壊を突き出す象徴的事態だ。2011年5月27日の石勝線トンネル内での特急列車の脱線・炎上事故は、乗客が自ら脱出して死者こそ出なかったものの、JR西日本・尼崎事故に匹敵する大惨事になっていてもおかしくない事態だった。
 さらに、昨年9月19日の函館線・大沼駅構内での貨物列車脱線事故をきっかけに、JR北海道が約300カ所ものレール異常を放置していたばかりか、レールの検査データ改ざんが日常的に行われていたことが発覚した。これらは民営化と外注化の結果だ。
 そもそも北海道で、民営化された鉄道会社が成り立つ条件はなかった。必要な設備の補修を行う経費もまかなえず人員もない中で、データ改ざんが常態化していった。

グループ経営で丸投げ委託

 JR北海道による業務全面外注化のマスタープランになったのが、02年3月に公表された中期経営計画「スクラムチャレンジ21」だ。同計画は冒頭で、「旅」と「くらし」を同社の事業領域とすると言う。「くらし」とは、商業展開や不動産開発ということだ。
 JR東日本が00年11月に打ち出した中期経営計画「ニューチャレンジ21」の後を追い、鉄道事業ではなく商業や不動産開発を収益の柱とするとぶち上げたのだ。その象徴が札幌駅前にそびえ立つJRタワーだ。
 鉄道事業についても、「旅」という言葉が象徴するように、観光客誘致に重点が置かれた。安全で堅実な鉄道運行は投げ捨てられ、航空会社と対抗するためのスピードアップが強行された。ディーゼルカーを曲線でも高速が出せる振り子式に変え、時速130㌔で高速運転するという無謀なことさえ行われた。
 「スクラムチャレンジ21」の最大の特徴は、「グループ経営ビジョン」として打ち出され、「グループとしての成果の最大化」が叫ばれていることだ。グループ会社への業務の徹底的な外注化が、その核心をなしている。そのもとで同計画は「鉄道のコスト削減をさらに進めます」と述べ、「グループ内ローテーション人事の実施による技術・ノウハウの継承」「グループ一体となった安全管理体制の充実強化」を強調した。保線や検査・修繕などのメンテナンス業務を全面外注化するという意味だ。
 同計画の基本的内容は、石勝線事故後の12年11月に策定された「中期経営計画2016」にも受け継がれた。それどころか「中期経営計画2016」は、「株式上場による完全民営化」を公言して、外注化をさらに加速させた。
 JR北海道の車両の検査・修繕業務は「北海道ジェイ・アール運輸サポート」に委託されている。特に構内入換は05年4月以降、全面的に同社が請け負った。昨年秋段階で構内運転士の4割がJRからの出向者ではなく同社のプロパー社員に置き換わった。車両の検査・修繕に携わるのは時給750円で募集された非正規職労働者だ。
 石勝線事故は、車輪がレールに接する踏面が40㌢も剥離(はくり)したまま補修もされずに使われて脱線に至ったことが判明している。検査も修繕も形だけのものになっていた。これが外注化の現実だ。
 「スクラムチャレンジ21」以来の経営戦略を先頭で進めてきたのは、今年1月に自殺した坂本真一元社長だ。彼はJR総連カクマルとの結託体制を維持し続けた中心人物でもあった。JR総連カクマルこそ、外注化攻撃の最先兵だったのだ。そしてJR連合も国労幹部もそれを容認した。
 JR北海道は検査データ改ざんの責任を23歳の青年労働者と59歳の退職間際の労働者に押し付けて懲戒解雇した。JR体制下で二十数年にわたり行われてきたデータ改ざんの責任が青年労働者にあるはずがない。外注化がどんな事故を引き起こそうと、経営者は絶対に責任を取らない。こんな理不尽なことがあるか! 青年労働者を始め現場労働者の怒りを解き放ち、JR体制を打ち倒す時は来た。
 他方、安倍政権と国土交通省、JR資本は、16年春予定の北海道新幹線(新青森―新函館〔仮称〕間)開業に向けての大キャンペーンにのめりこんでいる。「安全問題はもう終わった」という許しがたい攻撃だ。自民党は35年予定とされる新函館―札幌間の開業前倒しさえ叫んで、利権あさりに熱中している。

新幹線開業で地域切り捨て

 だが、新幹線開業はJR北海道の経営をさらに圧迫する。北海道新幹線を保有するのは鉄道運輸機構であり、JR北海道は鉄道運輸機構に新幹線使用料を払わなければならない。新幹線開業によるJR北海道の収益増は全額、新幹線使用料に消える。新幹線開業は、JR北海道にとって増収源にはならないどころか、収益が見込みを下回れば直ちに赤字拡大要因に転化する。それは、一層の安全破壊を引き起こす。
 16年春の新幹線の開業に伴い、江差線・木古内―五稜郭間は第三セクター化されることになっている。これにより他のJR線との接続が断たれる江差線・木古内―江差間は、5月11日に早々と廃止された。
 JR北海道社長の島田修は、赤字路線廃止をさらに進める姿勢をあらわにしている。JR北海道では、採算ラインを割り込む路線が全体の87%を占める。安倍とJR東海名誉会長・葛西敬之の意向で送り込まれたJR北海道の新経営陣は、札幌周辺のごく一部の黒字路線を除き、あとはすべて切り捨てる暴挙にさえ踏み込みかねない。民営化は安全とともに地域を崩壊させたのだ。
 5月2日の動労千葉のストライキ、5月10日の動労水戸のストライキは、このJR体制を打ち倒す展望をこじ開けた。国鉄闘争全国運動の6・8全国集会は、その闘いをさらに発展させる決定的な集会だ。JRを始め全産別から6・8大結集を実現し、JR体制打倒に突き進もう。
(長沢典久)
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