川内原発再稼働阻止を 事故を前提にヨウ素剤を配布 「避難計画」など空論だ

週刊『前進』06頁(2632号04面01)(2014/05/19)


川内原発再稼働阻止を
 事故を前提にヨウ素剤を配布 「避難計画」など空論だ

生きる権利を奪う再稼働

 安倍首相は5月1日夜(日本時間2日早朝)ロンドンで講演し、原発の再稼働方針を明言した。
 安倍と原子力規制委員会は、今夏にも鹿児島県にある九州電力川内(せんだい)原発1、2号機の再稼働を狙っている。すでに鹿児島県は、甲状腺被曝を防ぐための「安定ヨウ素剤」を原発から半径5㌔圏の住民に事前配布する準備を進めている。県と薩摩川内市は4月25日、そのための打ち合わせ会合を行った。
 鹿児島県と薩摩川内市の動きは、川内原発の再稼働によって発生する恐れのある重大事故に備えてのものだ。安倍政権も規制委員会も川内原発の再稼働がきわめて危険なものと認識した上で再稼働を狙っているのだ。〝再稼働を目的としたヨウ素剤配布や住民説明会〟は、地元住民、労働者民衆の命と健康という、人間として生きる権利を真っ向から否定するものだ。そんなことは絶対に許さない!
 ヨウ素剤配布と言うなら、必要なことは、再稼働のためではなく今すぐ全国に配布することだ。現在、全国には54基の原発(廃炉を決定した福島第一原発1〜6号機を含む)があり、それ以外にも多数の原子力施設が存在している。運転停止となっている原発も、燃料プールに未使用や使用済みの核燃料を大量に冷却保管している。地震や噴火、津波などでこれらの冷却機能が破壊されれば、いつどこで福島第一のような大事故と放射能汚染が起こってもおかしくないのだ。

「本当に助けに来るのか」

 政府と規制委員会が進めているもう一つの策動が「避難計画」の作成だ。これも再稼働によって事故が起こることを前提にしており、作成自体が絶対に許されない。
 その上で、この避難計画は「計画」の名に値しない。最初から破綻しており、およそ住民の命も健康も顧みないものだ。各自治体が作成を進めている避難計画やシミュレーションは、地震や津波で道路が寸断された場合、連絡が途絶した場合、さらには夜間に事故が発生した場合を考慮に入れていないなど、現実離れした空論ばかりだ。
 具体例を挙げれば、政府と規制委員会が今、再稼働の一番手と狙う川内原発の避難計画は怒りに堪えないものだ。
 その中でも、特に自力で避難できない人たちへの「避難」の計画はないにも等しい。
 昨年10月、川内原発で原子力総合防災訓練が行われ、5㌔圏の予防防護措置区域(PAZ)にある6福祉施設から2施設が参加した。このうち1施設では入所者ら15人が救急車など9台で約10㌔離れた病院に避難する計画だった。しかしミスで1台の到着が40分以上遅れた。15人が10㌔避難するために救急車など9台が必要であり、それでもミスが発生し、施設管理者が「混乱する実際の事故で、本当に助けに来てくれるのか」と不安を語ったほどだ。この防災訓練が初めから世論へのアピールを目的としたアリバイ訓練であることは明白だ。

福島事故では多数の死者

 それだけではない。川内原発の5〜30㌔圏の緊急防護措置区域(UPZ)には約230の医療・福祉施設があり、病床数と定員は計約1万人。加えて、在宅の要援護者が最低約5900人いる。だが、今年3月段階で避難計画のめどが立っているのはPAZ内だけだ。それ以外は避難計画の作りようもないというのがまぎれもない現実なのだ。
 そこで持ち出してきたのが「屋内退避」という計画だ。それは、病院などに数日分の非常食と水を確保しておくだけというものだ。高濃度に放射能汚染された中で、ベッドに横たわる患者や高齢者が「非常食と水」だけでどう生きろというのだ! 医療・福祉施設の入所者は逃げようがないから、置き去りにする、見殺しにするということだ。今、全社会を覆う非正規雇用や解雇などと同じく、労働者民衆の生きる権利を根本から否定する新自由主義の攻撃そのものだ。
 福島原発事故ではそのむごい事態が実際に起こった。福島県の場合、原発から20㌔圏内には5市町に七つの病院が存在する。事故当時これらの7病院には合計で約850人の患者が入院していた。そのうち約400人は重篤な症状か、いわゆる寝たきりの状態にある患者だった。これらの人たちが取り残された。通信手段が限られ、十分な情報も入手できない状況の中、避難は困難を極め、病院関係者などの必死の努力にもかかわらず避難の過程で死亡する人が続出した。
 2011年3月末までの死亡者は7病院および系列の介護老人保健施設の合計で少なくとも60人にのぼった。双葉病院の場合は、長時間の移動で患者が体力を失い、避難途中の車内で3人が、いわき市内の高校に到着後、翌日の早朝までに11人が死亡した。
 この悲痛な現実はこれで終わったわけではない。福島では今年3月現在でも13万人を超える人びとが避難を強いられている。さらに福島県での原発事故などによる「関連死」は、認定されただけで1671人(今年3月10日現在)。さらに子どもの甲状腺がんの一層の多発など、さまざまな病気の発症が懸念されるのだ。
 「福島原発事故を絶対に繰り返させるな!」は労働者民衆の生きるための叫びだ。川内原発の再稼働をなんとしても止めよう。JRの労働組合である動労水戸は5月10日、楢葉町に住民を強制的に帰町させるためのJR常磐線の竜田駅(楢葉町)までの運転再開に反対しストライキに立ち上がった。労働組合と地元住民、労働者民衆の団結した闘いこそ、再稼働を阻止する力を持っている。
 薩摩川内市など地元の住民、鹿児島県・九州の労働者民衆と固く団結し、川内原発の再稼働を絶対に阻止しよう!
(北沢隆広)

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福島第一原発事故では犠牲者が続出した
◎本事故直後、避難区域とされた原発から半径20㎞圏内では、病院の入院患者など自力での避難が困難な人たちが取り残された。
◎通信手段が限られ、十分な情報も入手できない状況の中、入院患者の避難は困難を極め、避難の過程で病状が悪化、又は死亡する事例が続出した。
◎生活物資も医療物資も不足しており、照明器具はロウソクのみであった。医師らは治療を最大限施したものの、15日までに4人が院内で相次いで死亡した。
◎双葉病院においては……避難途中の車内で3人が、いわき市内の高校に到着後、翌日の早朝までに11人が死亡した。
(『国会事故調 報告書』より)
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