青年・学生を戦場に送るな 安保法制懇報告と安倍会見 改憲=9条破棄そのもの 集団的自衛権許さない

週刊『前進』06頁(2633号06面01)(2014/05/26)


青年・学生を戦場に送るな
 安保法制懇報告と安倍会見
 改憲=9条破棄そのもの
 集団的自衛権許さない


 5月15日、安倍の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、集団的自衛権の行使容認などを求める「報告書」を提出した。安倍はこれを受けて、政府の「基本的方向性」を示す記者会見を行い、憲法解釈の変更へ踏み出すことを表明した。
 これは日帝・安倍による9条破棄=戦争国家化宣言であり、何よりも青年労働者や学生を戦地へ送り、他国の人民と殺し合いをさせるという宣言だ。「改憲への第一歩」というレベルの攻撃では断じてなく、事実上の改憲そのものだ。
 だが、この日帝・安倍の突出した策動は、一方では日米間の対立・矛盾の激化と日帝のさらなる国際的孤立を不可避とし、他方では日本と世界の労働者人民の怒りと闘いを爆発させずにはおかない。それにもかかわらず安倍は、支配階級内部での強固な一致もなく、与党内での意思統一もないまま、戦争・改憲へ絶望的に突き進むしかない。ここに安倍の危機が露呈しているのだ。
 集団的自衛権は、歴史的にも現在的にも、帝国主義の侵略戦争を正当化するための口実以外の何ものでもない。再び徴兵制や学徒出陣の道を絶対に許してはならない。今こそ怒りを倍加し、安倍打倒へ立ち上がろう。

日米間の矛盾と対立が非和解化

 安保法制懇の「報告書」は、①集団的自衛権の行使容認、②国連多国籍軍などの集団安全保障への自衛隊の参加と武力行使、③日本への武力攻撃まで至らない「グレーゾーン」への対処、④自衛隊による「在外邦人の保護・救出」――など、日帝の安保・軍事面における戦後的無準備性をあらゆる点で突破するよう要求している。このうち②については、安倍は批判の高まりを恐れ、記者会見の直前になって一部不採用とした。
 安倍の記者会見は、30分ほどの間に「日本人の命を守る」というフレーズを20回以上も連発する異様な場となった。安倍が自ら指示して用意させたイラスト入りのパネルには、乳児を抱いた母親と子どもが不安げな表情で米海軍の艦艇に乗っている様子が描かれ、安倍はそれを用いて「お父さん、お母さん、おじいさんやおばあさん、子どもたちが乗っている米国の船を、私たちは守れなくてもいいのか」などと何度も声を張り上げた。
 だが、そもそも有事に際して戦闘を最優先任務とする米艦艇に避難中の民間人が乗っているなどという状況は、現実にはあり得ないデタラメな話である。
 その上、自衛隊が米艦艇を防護することなど、純粋に軍事的観点から見てもまったく成り立たない。対艦ミサイルや魚雷による攻撃は、米艦隊が密集し防護体制をとって自ら迎撃する以外に打つ手はなく、それさえ技術的に非常に難しいとされる。他の艦艇からの迎撃など不可能だ。会見での安倍の主張は徹頭徹尾、非現実的な印象操作で人びとを欺くことを目的とした悪質なペテンであり、デマゴギーだ。
 その上で安倍は、「在留邦人を乗せた米艦艇の防護」という言い方で日米同盟の体裁をとりつつも、実際には米帝の思惑をも超えて日帝独自の判断で自衛隊が武力行使することを想定し、それを憲法解釈の変更というクーデター的手段で可能にしようとしているのだ。こうした策動は日米同盟強化どころか、日米争闘戦を非和解化させる。米主要マスコミの論調にもそれが現れている(左の記事参照)。

自衛隊が「戦争をする軍隊」に

 安倍は会見で「日本が再び戦争をする国になるという誤解があるが、そんなことは断じてありえない」と強調した。だが、安倍がどんなに言い繕っても、安保法制懇が示した内容は戦争行為以外の何ものでもない。このことを最もあけすけに語っているのが、安保法制懇の一員で元駐タイ大使の岡崎久彦である。
 岡崎はニュース番組のインタビューで「日本が攻撃されていないのに、戦争や地域紛争に自衛隊が加わるのか」との質問に答え、「(自衛隊が)鉄砲を撃つかどうか、これは結局、総理大臣が決める」「権利はあるけど行使ができないとか、そんなことで国の利益を誤ったら大変だ。そういうつまらない議論を払拭して、全部総理の決断を仰ぐ」と主張した。さらに「自衛官が血を流す可能性があるのか」と問われ、「そうです、その通りです。自衛隊は戦争をする軍隊になりますよ。国が危機にさらされて自衛隊が戦争しなかったらどうするんですか」とまで言い放った。
 また別の番組では「武力行使に歯止めはないのか」との質問に対し、岡崎は「歯止めは総理大臣です。それ以外ないですね」「総理大臣が間違ったとしても、それは選んだ国民が悪いんですよ」と吐き捨てた。
 まさにむき出しの戦争宣言ではないか! この卑劣で無責任な言い草こそ、日帝・安倍の本音なのである。どれほど「国民の命を守る」などと記者会見で連呼し、美辞麗句を並べ立てて見え透いたペテンを弄(ろう)したところで、到底ごまかせるものではないのだ。

労組拠点建設し解釈変更を阻め

 安倍の戦争衝動の背景にあるのは、世界大恐慌の深刻化と帝国主義間・大国間の争闘戦の果てしない激化、そしてそれが一線を超えて軍事化・戦争化していることだ。日帝・安倍は、結局は対米対抗的な力がなければ帝国主義として生き残れないという危機に追い詰められ、絶望的な改憲策動に突進しているのだ。改憲攻撃は、労働者階級が安倍の国家主義・排外主義と恐れず対決し、日帝打倒のプロレタリア革命へ向けて不屈に決起していくならば、日帝の最大の破綻点となる。
 今や「戦争か革命か」をかけた1930年代型階級決戦の時代が到来した。勝利の鍵は、労働組合をめぐる攻防にある。6・8国鉄闘争全国集会の成功をかちとり、杉並区議補選決戦から安倍打倒の8・17集会へ攻め上ろう。闘う労組拠点建設と国際連帯闘争の大発展をかちとり、改憲阻止・安倍打倒の巨大なうねりをつくり出そう。
(水樹 豊)
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