崩壊するJR体制⑧ 経営破綻状態続けるJR貨物 鉄道部門黒字化は達成不可能 大幅賃下げが唯一の延命策に 分割・民営化の矛盾の集中点

週刊『前進』06頁(2640号02面04)(2014/07/14)


崩壊するJR体制⑧
 経営破綻状態続けるJR貨物
 鉄道部門黒字化は達成不可能
 大幅賃下げが唯一の延命策に
 分割・民営化の矛盾の集中点


 JR貨物は6月16日、夏季手当1・25カ月分という超低額回答を出してきた。経営破綻をひたすら労働者への賃下げ攻撃でのりきろうとしているのだ。
 昨年、JR貨物は基本給の10%削減を画策した。これが動労千葉を先頭とした闘いによって阻まれる中で、JR貨物は一時金の大幅カットという形で人件費大幅削減に踏み込んだ。昨年の夏季手当は1・1カ月分、年末手当は1・3カ月分だ。国鉄分割・民営化以来、JR貨物は旅客会社と比べても極端な低賃金を労働者に強いてきた。その歴史の中でも、昨年の一時金削減はすさまじいものだった。それを今年も強行してきたのだ。
 基本給についても、今春闘でJR貨物はベアゼロを押し通した。貨物のベアゼロはこれで15年連続だ。こうした攻撃により、13年度の人件費総額は前年度と比べて36億円も減少した。13年度のJR貨物の経常利益は34億円だが、それはすべて賃金削減によってひねり出されたのだ。
 これに加え、JR貨物は福利厚生の全面剥奪(はくだつ)にも手を着けてきた。貨物の社員には、旅客会社の社員とは異なり社員乗車証はない。その不利益をわずかながらも緩和するためにあった、宿泊券などを割安に購入できる制度も全廃するというのだ。

「経営計画」は初めから破産

 JR貨物が今年3月に打ち出した「中期経営計画2016」は、16年度までに鉄道事業の黒字化を実現するとぶち上げている。国鉄分割・民営化以来、鉄道部門は一貫して赤字だ。その赤字を、国鉄から引き継いだ土地などの資産売却で埋めてきたのがJR貨物の実態だ。国鉄分割・民営化の枠組みのもとで、鉄道部門が黒字になることなどありえない。にもかかわらず「黒字実現」を叫びたてることで、JR貨物は徹底した賃下げと強労働を労働者に強いようとしているのだ。
 「中期経営計画2016」が何よりも強調しているのは、「働き度の向上」「人事管理制度の見直し」だ。具体的には「各現業機関の業務の精査と体制の見直し」「運転士の勤務体制見直し」「賃金の抜本的な改定」「要員計画の見直し」などが挙げられている。同計画のもとに策定された14年度の事業計画は、「働き度の向上を今年度の最重要課題として取り組む」と叫んでいる。収益拡大の見込みなどまったく立たない中で、これまでとは比べものにならない賃下げ、労働強化に踏み込むということだ。
 同計画はまた、「マトリクス経営管理の導入」を唱えて、支社別・部門別の収支管理を徹底するという。とことん競争をあおるこのやり方の行き着く先は、安全の全面的な崩壊だ。6月22日にJR江差線で起きた貨物列車脱線事故は、線路を管理するJR北海道側の要因とともに、機関車や貨車を管理するJR貨物側の要因も絡んでいると見て間違いない。
 JR貨物の攻撃は労働者の生存を奪うものになっている。87年4月の発足時に1万2千人だった社員数は、今年4月には5990人と半分以下に減らされた。7月に入ってJR貨物は、来年度の新規採用を中止すると発表した。「中期経営計画2016」は16年度に人員を5285人に削減するという。
 こうした人員削減は、すさまじい強労働をもたらしている。事故が起きてダイヤが乱れれば、矛盾は自前の線路を持たないJR貨物に押し付けられる。旅客列車の運行が優先され、貨物列車の運転士は2泊も3泊も足止めされる。今でさえ貨物労働者の労働はきわめて過酷だ。それに加えての大幅賃下げの中で、青年労働者が次々に退職する事態も起きている。

戦争に備えた石田会長体制

 昨年6月、JR貨物は会長に元日本郵船副社長・元日本貨物航空社長の石田忠正を据えた。そのもとでJR貨物は「民間手法」と称する大合理化に乗り出してきた。
 11年度以降、鉄道運輸機構がJR貨物に7年間で計700億円の無利子融資をすることになった。このことをも盾に、国土交通省はJR貨物に「経営自立化」を迫っている。石田体制は、国家を挙げてそれを強行するためにつくられたのだ。
 石田が言う「マトリクス経営管理」は、日航に乗り込んで組合つぶしの解雇を強行した京セラ元会長の稲盛和夫が唱える「アメーバー経営」と同根だ。だが、石田が稲盛と同じことをやればJR貨物を再建できるとはならない。合理化が極限まで進んだJR貨物には、さらにリストラできる余地などほとんどない。
 しかも、不採算だからといって鉄道貨物輸送を全面的に切り捨てることもできない。安倍が集団的自衛権行使の閣議決定を強行し、戦争に突き進んでいる中で、日本帝国主義は軍事輸送手段としての鉄道貨物輸送を手放すわけにはいかない。だからJR貨物は、労働者を犠牲にして会社を延命させようと必死なのだ。

戦争協力拒み日貨労解体へ

 国鉄分割・民営化の矛盾と戦争の犠牲を集中的に背負わされる貨物労働者の中から、安倍打倒・戦争協力拒否の闘いは必ず起こる。それは、JR総連・日本貨物鉄道労組(日貨労)を解体する時が来たことを意味する。
 日貨労カクマルは昨年末の年末一時金をめぐる交渉過程で、「石田会長は『我が社の存亡をかけた本当の改革は、今、始まったところです』と語っている。まさにそのとおりである。われわれは石田会長の意を実現する」と言い放った。資本の攻撃をすべて受け入れると表明したのだ。
 JR総連カクマルの原点は、改憲を最終目標に中曽根が強行した国鉄分割・民営化を率先推進したことにある。JR総連カクマル最高幹部の松崎明は、分割・民営化の過程で「自衛隊を認めるんだったら核だって(認める)」と叫んだ。戦争に突進する安倍への怒りの噴出は、JR総連解体の好機を引き寄せている。
 国鉄10万筆署名を達成し、貨物に矛盾を集中させた国鉄分割・民営化体制=JR体制を打倒しよう。
(長沢典久)
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