「貿易赤字改善」を口実に原発の再稼働を叫ぶ葛西

週刊『前進』06頁(2660号04面04)(2014/12/08)


「貿易赤字改善」を口実に原発の再稼働を叫ぶ葛西

安倍の危機を救うために登場

 葛西敬之(JR東海名誉会長)が安倍・自民党の危機を救うために、読売新聞11月23日付「地球を読む」欄に登場し、「原発の再稼働」を強く主張している。
 ここで葛西は、反原発闘争の高揚によって原発が全部停止している現状に危機感とあせりをあらわにし、こじつけと大ウソをもって「原発を動かせ」と主張している。
 葛西は、「原発再稼働は貿易赤字の改善に即効性がある」と主張している。そして原子力発電を「グリーンで低コスト」「CO2排出を伴わないグリーンなエネルギー」と、使い古されたデマを性こりもなく繰り返している。
 その上で、中国との対決を打ち出し、「原発における日米の役割分担は......安全保障そのものである」と公言している。葛西は帝国主義的・軍事的な観点から、核武装の偽装形態として、原発の重要性を強調しているのである。

ウソにウソを重ねる葛西の主張

 葛西が言っていることはすべて、すでに粉砕されている大ウソである。
 第一に、日本の貿易赤字の原因は、葛西が言うような「原発が止まって天然ガスの追加輸入が増えたから」ではない。電機や造船、鉄鋼などの製造業をめぐる国際争闘戦で日帝が敗退してきた結果である。日本帝国主義の根底的な危機であり、「原発再稼働で貿易赤字改善」などというのは、まったくのウソである。
 第二に、「原発はCO2排出を伴わないグリーンなエネルギー」という大ウソである。原発は通常の運転でCO2よりも人類にとってはるかに有害で危険な放射能をまき散らし地球環境を破壊する。多くの原発労働者と周辺の住民を被曝させることなしに、原発は運転できない。
 そして原子力発電はウラン燃料をつくる工程で石油などの化石燃料を消費し、たくさんのCO2を排出する。その上で原発の運転で放射能をまきちらし、大量の熱水を海に放出し、自然環境を破壊する。だから、発電コストの問題以前に、原子力発電など絶対に認められないのである。
 その上で第三に、「原発は低コスト」という大ウソである。原発の運転を継続するための揚水発電の費用や、地元への交付金、開発費、使用済み核燃料の管理の費用など、原発は途方もなく巨額の費用をかけている。原発事故の補償費用をこれに加えたら、とてつもないコストになる。すべて人民が負担する電気料金と税金が使われ、電力資本と原発メーカー、大資本がこれで大もうけしている。

「放射能の遺伝的な影響はない」⁉

 第四に、何よりも許せないことは、「福島原発事故の放射能に起因する死者はゼロ」「チェルノブイリ、広島、長崎で放射能の遺伝的な影響は認められなかった」などと開き直り、反原発を闘う人びとを「非理性的な放射能恐怖症」とののしっていることである。
 これは、広島・長崎、チェルノブイリ、福島原発事故で殺された何十万人もの人びとと遺族の無念、怒り、悲しみを踏みにじる暴言である。そして、科学者や医師などの研究成果、努力をすべて否定するものである。
 新自由主義の破綻の行き着いた先が世界大恐慌と福島原発事故、そしてこのような科学と真実の否定である。葛西は11年3・11大震災―福島原発事故以後、たびたび読売新聞や産経新聞に登場し、「原発再稼働こそ日本の活路」「再稼働がリーダーの使命」「原発再稼働は人類の福利」などと主張してきた。葛西ら支配階級にとって、福島原発事故で大量の放射能がまき散らされ、数十万人が故郷を追われ、原発労働者が死に至る被曝労働を強いられている現実など、どうでもよいことなのである。
 国家と資本が延命するために労働者人民は命を差し出せ――これが安倍と葛西の本音だ。衆院選決戦で鈴木たつお候補の当選をかちとり、安倍・葛西体制を打倒しよう。

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