セウォル号惨事から1年 新自由主義を根底から打ち破る日韓労働者のゼネスト決起を‼ 〝これは事故ではなく虐殺だ〟

週刊『前進』06頁(2679号04面01)(2015/04/27)


セウォル号惨事から1年
 新自由主義を根底から打ち破る日韓労働者のゼネスト決起を‼
 〝これは事故ではなく虐殺だ〟

(写真 セウォル号惨事1周年の4・16追慕祭の後、ソウル光化門の桜台前で真相究明と船体引き揚げを求めて遺族70人が座り込みに突入。不当逮捕に抗議するデモ隊を警察部隊は放水銃・催涙弾で襲撃した【4月18日夜 ソウル光化門前】)

 昨年4月16日に韓国で発生した旅客船セウォル号の転覆・沈没、修学旅行中の高校生ら304人の犠牲という大惨事から1年がたった。この転覆事故は、日本の福島第一原発事故と同様、「命より金」の新自由主義のもとで資本と国家によって引き起こされた犯罪である。だが韓国パククネ政権は遺族の真相究明・責任者処罰の要求を拒否したまま、資本と癒着した政権の生き残りをかけて、一層の民営化・外注化・総非正規職化と安全破壊の攻撃を強めている。民主労総(全国民主労働組合総連盟)はこれに対し、遺族の怒りを自分自身の怒りとして体現し、あらゆる弾圧をはねのけてパククネ打倒のゼネストに真っ向から立ち上がっている。日本でも求められているのは同じ闘いだ。セウォル号と福島、沖縄、そして相次ぐJRの重大事故への全労働者の怒りを一つにつなげ、この社会の根底的変革をかけたゼネストに向かって突き進もう。

外注化・非正規化が犠牲を拡大

 セウォル号惨事はなぜ起きたのか。歴代の政権が推進した新自由主義による規制緩和と民営化・外注化・非正規職化が船の安全を根底から崩壊させていたからだ。
 現場の韓国南西部・珍島(チンド)沖は、従来から海難事故の多発する危険水域だった。しかし船会社は最低限の安全対策もとらないばかりか、逆に船の転覆を防ぐために設けられていた基準の3・6倍もの積み荷を積んで運航させていた。船自体も20年の使用期限を30年まで延長した規制緩和のもと、日本で廃船となった老朽船を買い取ってより多くの客と積み荷を載せられるよう改造し、重心が極端に上にいっていた。これで転覆が起きないはずがない。
 しかも決定的には、船員の大半が非正規職で何の安全教育も受けていないという、恐るべき状態にあったことだ。船長までが1年契約の非正規職であり、実際の指揮権限など持たない、船会社が当局から認可を得るためだけのお飾りの船長だったのだ。会社は広告宣伝費に年間2億3千万㌆(約2600万円)も使いながら、船員の研修費にはわずか54万㌆(約6万1千円)しか支出していないことも暴露された。
 それだけではない。遺族が「これは事故ではない。虐殺だ!」と弾劾する最大の理由は、現場に到着した海上警察が船内に閉じ込められている高校生たちを救助せず、見殺しにしたことである。
 その原因はなんと、国家が行うべき海難救助活動さえもが民間会社に丸ごと外注化されていたことにある。1人でも多く助けようと現場に駆けつけた多数の漁船は、救助を独占的に請け負ったオンディーンという会社の邪魔になるとして、逆に海上警察により転覆した船に近づくことを禁止された。だがこのオンディーン社は、海難救助に関する何のノウハウも持っていなかった。訓練された潜水士もおらず、事故当日、あわてて日当50万㌆(約5万5千円)で潜水士をかき集めるというありさまだったのだ。
 政府・行政機関と船会社・外注会社のすべてが利権を求めて癒着し、人間の生命がかかった救助活動さえも金もうけの対象にしていた。この恐るべき腐敗! その結果、死なずにすんだはずの多くの若者が無残に殺された。今もなお9人が行方不明のまま海に沈んでいる。これに対する遺族の悲しみと怒り、韓国労働者人民の怒りはとてつもなく深い。

政権崩壊寸前であえぐパククネ

 セウォル号惨事1周年の4月16日、全国各地で追悼集会が開かれ、ソウルには5万人が集まった。責任追及から1年間逃げ回ってきたパククネは、ここにきて公然たる居直りに転じた。昨年秋のセウォル号特別法制定により真相調査委員会が設けられたが、その活動を調査対象となる政府機関の統制下に置いて、逆に真相究明を妨害する「施行令」を3月末に突如として出してきたのである。遺族の怒りは爆発し、施行令撤回とともに沈没した船体の即時引き揚げを求める声がわき起こった。
 権力はデモ鎮圧に大量の機動隊を動員し、18日には座り込み闘争中の遺族をも逮捕し投獄するなど、暴力的弾圧に出ている。激突は今や完全に非和解化し、パククネ政権打倒までやむことのない一大闘争へと発展した。
 パククネにとって、「子どもたちはなぜ死ななければならなかったのか」というセウォル号遺族の血の叫びは、その存在自体が恐怖と圧殺の対象なのだ。セウォル号問題は、今日の韓国における支配体制の反人民的本質とその腐敗を白日のもとにさらけ出す。責任追及の声を暴力的に圧殺して一切を隠蔽(いんぺい)することなしに、パククネは一歩も進めないばかりか、権力の座を維持できない。原発再稼働に突き進む日帝・安倍が福島第一原発事故そのものを「なかったこと」にしてしまおうと必死になるのとまったく同じ構図が、そこにある。
 パククネはとりわけ、セウォル号遺族のこうした闘いが民主労総のゼネスト決起と固く結合して進んでいることに恐怖している。世界大恐慌の深まりは韓国経済を崩壊のふちに立たせており、韓国を支配する巨大財閥は、労働者人民にこれまで以上に極限的な犠牲を強いることで生き延びようと必死になっている。労働者階級に大失業と総非正規職化、飢餓賃金、過労死を強制し、社会保障をも全面解体して人民の最低限の生存権すら奪う攻撃に出ているのだ。これに対して民主労総は、「生きさせろ!」のゼネストをもって、この資本と国家を根底から打ち倒す闘いに先制的に突入した。
 セウォル号遺族の不退転の決起はこのゼネストに、腐りきった現体制の転覆と人間社会の共同性の奪還をかけて最後まで闘いぬくという、労働者階級としての魂を吹き込むものである。ハンサンギュン民主労総委員長は、今回のゼネストを「財閥の腹を肥やす政権、われわれの子どもたちを見殺しにした虐殺政権を終わらせ、敗北と屈従の歴史を終わらせるゼネストだ」と宣言し、4月24日を突破口に一層巨大な闘いに突き進む決意を表明した。

労働者国際連帯の行動を今こそ

 この韓国労働者階級人民の闘いは、パククネ政権のみならず、米帝や日帝、さらに全世界をも揺るがす闘いに発展しつつある。とりわけ米帝と日帝は、この決起の中に1945年の日帝敗戦直後の東アジアにわき起こった戦後革命の嵐の再現を見て、激しい危機感をつのらせている。北朝鮮や中国の残存スターリン主義政権も同じだ。彼らは、パククネ政権の倒壊が21世紀のアジアにおいてプロレタリア世界革命の歴史的突破口に転化することを恐れ、朝鮮半島における新たな戦争への突入をもってこれを阻止しようとする衝動を日々強めている。
 日帝・安倍の戦争・改憲攻撃への突進と日米首脳会談は、この韓国危機・朝鮮半島危機をにらんで行われているのだ。労働者階級の国境を超えた団結をもって戦争への道を絶対阻止し、逆に今こそ帝国主義とスターリン主義をともに打倒し、全世界を根底から変革する革命に向けて突き進む時だ。日韓労働者の連帯した闘いこそ、その核心である。
 民主労総ゼネスト連帯! 5・1メーデー、5月沖縄闘争と東西入管集会、そして6・7国鉄集会への大結集を、民主労総との連帯をかけてかちとり、階級的労働運動の大前進をつくり出そう。
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