JR体制 破産と崩壊⑰ 総合車両製作所の危機的現実 国内用電車もまともに造れずダイ改前に大幅な工程の遅れ 「海外輸出」は基盤から崩れた

週刊『前進』10頁(2680号02面03)(2015/05/04)


JR体制 破産と崩壊⑰
 総合車両製作所の危機的現実
 国内用電車もまともに造れずダイ改前に大幅な工程の遅れ
 「海外輸出」は基盤から崩れた


 アベノミクスなるものはついに大崩壊しようとしている。株価と国債の大暴落は時間の問題だ。中国スターリン主義が独自の経済圏の構築を狙って創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐっても、日本帝国主義は中国や欧州各帝国主義に完全に出し抜かれた。日帝・安倍政権は成長戦略の柱に原発と並んで鉄道の海外輸出を据えた。だが、その基盤そのものが崩れているのだ。

全面外注化を狙う会社再編

 JR東日本は12年10月に「グループ経営構想Ⅴ」を策定し、鉄道車両製造事業を「経営の第4の柱」に位置づけた。それは、海外の鉄道プロジェクトに参画し、海外市場で日本製鉄道車両を売り込むというものだ。
 これに先立つ同年4月、JR東日本は東急車輛(横浜市に本社)の鉄道車両製造事業を買収し、総合車両製作所(J―TREC)と名前を変えて100%子会社とした。その2年後の14年4月、JR東日本が車両製造部門として持っていた新潟市の新津車両製作所を分社化し、総合車両製作所と統合した。この過程で新津車両製作所のJR社員250人がJ―TRECに、70人が東日本トランスポーテック(E―TEC)に強制的に出向させられた。
 E―TECは車両の検査・修繕部門などの外注会社だったが、新津車両製作所の業務を請け負っていた新潟交通機械を12年4月に吸収合併して、車両製造部門にも業務範囲を拡大した。
 分社化されたJ―TRECやE―TECへの出向は帰る道のない片道出向だ。やがては労働者に転籍を強い、労働条件を大幅に切り下げるという資本の狙いも明らかだ。
 さらに今年4月1日、E―TECと、郡山総合車両センターや仙台の新幹線総合車両センターなど東北地域で車両の検修業務を請け負っていた東北交通機械が合併し、JR東日本テクノロジー(JRTM)がつくられた。これは全面外注化に向けた外注会社の大再編だ。これを機にE―TECは、退職金切り下げの攻撃をかけてきた。
 こうしてJRは、徹底した外注化とコスト削減により、鉄道車両の海外輸出に本格的に乗り出そうとしている。だが、3・14ダイヤ改定は、J―TRECが国内で使う電車の製造能力さえ大幅に失っているという現実を突き出したのだ。

三セクの開業に間に合わず

 北陸新幹線開業により信越線の直江津―妙高高原間と北陸線の直江津―市振間はJRから切り離され、第三セクターの「えちごトキめき鉄道」に移管された。
 えちごトキめき鉄道はねうまライン(直江津―妙高高原間)は、JR東日本が使っていたE127系車両を譲り受けて発足した。JRはE127系の後継車両としてE129系を導入することとし、その製造をJ―TREC新津車両製作所に行わせた。だが、その製造は大幅に遅れた。
 JRはダイ改ぎりぎりまでE127系車両を使わざるを得ず、トキめき鉄道への車両譲渡も遅れた。そのため、トキめき鉄道は「JR」のマークをつけたE127系の塗装を塗り替える時間もなくダイ改を迎え、そのまま車両を運用せざるを得なくなった。
 新津車両製作所でE129系の製造が遅れた直接の原因は、車両の設計が遅れたことにあった。
 新津車両製作所は、国鉄時代から車両の検修業務を行っていた新津工場を車両製造工場に改組して94年に発足した。車両製造のノウハウを持たないJRは、東急車輛から技術供与を受けて車両製造事業に着手した。東急車輛がJRに買収された後、設計部門はより強く横浜事業所(旧東急車輛)に集約される形になった。だがそれは、製造現場との情報伝達を妨げトラブルを続発させた。
 しかも、製造現場での外注化も進んでいる。工程の遅れによる矛盾はすべてJ―TRECと外注会社の現場労働者に押し付けられ、時間外労働や休日出勤が常態化した。

無謀な受注が完全に裏目に

 新津車両製作所では今、首都圏で使うE235系車両の製造が行われているが、その製造工程もトラブル続きだ。
 他方、J―TREC横浜事業所は鉄道車両の海外輸出の拠点に位置づけられている。しかし、J―TRECが受注したタイの首都バンコクの都市鉄道「パープルライン」用の車両の横浜事業所での製造も難航している。
 J―TRECは海外で使われる車両の製造を本格的に行った経験はない。にもかかわらず海外市場獲得を至上目的とし、無理に無理を重ねて大量受注を強行した。その矛盾はすべて、長時間残業の強制などで現場労働者に押し付けられる。
 JR東日本が「グループ経営構想Ⅴ」の第4の柱に掲げた鉄道車両製造とその海外輸出は、もはや破綻した。だが、そうであればあるほど、JRは徹底した外注化の強行でその危機をのりきろうとしてくる。だから、反合・運転保安闘争路線を実践し、JRと徹底対決する動労総連合を全国に建設することが必要だ。
 12年4月の新潟交通機械のE―TECへの吸収合併に際して、JR総連系の新潟交通機械労組は「合併先に労組がない」という理由にもならない理由で自ら解散した。外注化とは、御用労組の存在すら許さないという資本の攻撃だ。
 また、JR東労組は新津車両製作所分社化直前の14年3月に「東労組新津車両製作所支部」を結成したが、その組織対象者はJRからの出向者だけで、外注先の労働者や非正規職は排除されている。外注化・非正規職化の反革命的先兵になった東労組の姿は、ここにも露骨に表れている。
 他方、動労千葉は昨年の3人に続き、新たに8人のCTS(千葉鉄道サービス)労働者の組合への結集をかちとった。この大勝利をてこに動労総連合を全国に建設し、全面外注化攻撃を粉砕しよう。国鉄闘争全国運動の6・7集会に大結集し、国鉄決戦を軸に日本でのゼネスト情勢を押し開こう。
(長沢典久)
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