朝鮮有事=朝鮮侵略戦争阻止へ 作戦計画5015に日韓で反撃を

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週刊『前進』06頁(2701号04面01)(2015/10/12)


朝鮮有事=朝鮮侵略戦争阻止へ
 作戦計画5015に日韓で反撃を


 安倍政権による戦争法の9・19成立強行と米韓連合軍による新たな作戦計画「5015」の策定をもって、今や朝鮮半島における戦争の危機が急切迫している。それはかつての朝鮮戦争(1950〜53年)をも超える未曽有の大戦争=核戦争となる。これに対して韓国・民主労総は、戦時下の治安弾圧と闘いながら、戦争絶対反対を掲げてゼネストに決起している。この闘いと固く団結し、米日帝による「朝鮮半島有事」=朝鮮侵略戦争を絶対阻止するために、今こそ立ち上がろう。

北朝鮮スターリン主義の体制転覆狙う米日帝

 11・1全国労働者総決起集会を、何よりも「朝鮮侵略戦争阻止・安倍打倒」の労働者大集会としてかちとり、韓国・民主労総に続く日本のゼネスト情勢を切り開こう。
 切迫する朝鮮侵略戦争の基本的性格は以下の三つの契機の結合である。
 第一に、残存スターリン主義国家・北朝鮮の転覆を目的とした米日帝国主義と韓国パククネ政権(日米韓軍事同盟)による侵略戦争である。それは同時に、中国スターリン主義との軍事対決をも視野に入れた米帝の世界戦争戦略の一環である。
 今年7月1日、米国防総省は4年ぶりに「国家軍事戦略」を発表した。「米国の安全保障を脅かす国家」としてロシア、イラン、北朝鮮とともに中国を初めて名指しし、これらの国との「国家間戦争の脅威が高まりつつある」「紛争に入る可能性が高まっている」と踏み込んだ。さらに「米国の核兵器は更新が必要である」とし、「核能力の近代化」「信頼できる核打撃能力の維持」を明記した。北朝鮮・中国を相手に核戦争を構えるという宣言である。
 そもそも米帝は1991年のソ連スターリン主義の崩壊以後、一貫して北朝鮮と中国の転覆を狙い、戦争挑発をくり返してきた。94年には「核開発疑惑」を口実に北朝鮮への攻撃を画策し、米韓連合軍による「作戦計画5027」を実行する寸前まで行った。米国防総省は当時、「5027」を実行すれば、核兵器を使わなくても米軍5万2千人、韓国軍49万人、民間人100万人以上の死者が出ると予測した。
 以後、米帝は北朝鮮への脅迫や軍事的重圧を加えながら、「5027」の改訂と新たな作戦計画の策定を進めてきた。そして今年6月、従来の作戦計画を再編した新たな「作戦計画5015」を韓国軍との間で調印し、来年から本格的に適用するとしているのだ。

核で先制攻撃し全面戦争へ

 「作戦計画5015」とは、従来の「5027」の見直しを柱に他の作戦計画と統合して、より迅速かつ攻撃的な全面戦争計画として再編したものである。(表参照)
 これについて10月5日付朝日新聞は、「大規模作戦からシフト」「ゲリラ戦・局地戦に力点を置く」「戦線を広げずに犠牲者を抑え、戦費の負担を軽くする」などと、あたかも戦争が小規模化されるかのように書いているが、事態をまったく転倒させた描き方だ。
 従来の「5027」は兵員40万人、軍用機1600機、艦船200隻を投入し、圧倒的に優勢な空軍を主力に陸・海・空から北朝鮮を総攻撃して全土を制圧、政権を転覆して占領統治することまで作戦化した文字通りの全面戦争計画である。これに対して「5015」は、「5027」を継承した上で、それを従来より大幅に前倒しして発動できるようにしたものだ。戦闘が小規模化するのではなく、小規模の戦闘から一気に全面戦争へ拡大される。しかも核兵器の使用が当然のように作戦に組み込まれているのだ。
 民主労総を含む韓国の32の労働・社会団体は、今年8月の米韓合同軍事演習に抗議する声明文において「(5015は)逆に衝突の危機を実質的な戦争へ、通常型戦争を核戦争へ拡大させる危険千万な戦略」「局地的衝突を全面的に拡大させる無謀で挑発的な計画」だと弾劾している。

韓国のゼネスト決起を鎮圧する戦争でもある

 第二に、朝鮮侵略戦争は、北朝鮮への戦争を通じて、民主労総を先頭とする韓国労働者人民の革命的決起の圧殺を狙う反革命的な侵略戦争だ。
 かつての朝鮮戦争(50〜53年)は、米軍のじゅうたん爆撃と3年もの壮絶な戦闘で朝鮮半島全体を焦土と化し、南北で400万人とも500万人とも言われる膨大な死者、1千万人を超える離散家族を出し、その戦火の中で朝鮮における戦後革命を最後的に圧殺した(これは日本の戦後革命の圧殺とも一体)。
 今、民主労総は「朝鮮戦争の再来を許すな!」と訴え、パククネ政権による戦時下型の治安弾圧や労働者の戦争動員の攻撃と真正面から対決しながらゼネストに立ち上がっている。この決意と怒りを日本の労働者階級が共有し、ともに朝鮮侵略戦争阻止の闘いに立つことが求められている。
 ここで重要なことは、朝鮮侵略戦争は沖縄を始め日本全土を出撃・兵たん基地とし、また韓国と日本のあらゆる産業の労働者を丸ごと動員することなしには成り立たないということだ。

50年朝鮮戦争と労働者動員

 それは50年朝鮮戦争の歴史からも明らかだ。当時、在日・在沖米軍基地からの米空軍の出撃回数は72万回を超え、その投下爆弾総量は50万㌧に達した。米第5空軍最大の空輸基地とされた芦屋基地(福岡県芦屋町)は延べ兵員300万人、傷病兵30万人、物資70万㌧を空輸した。これらを支えるために日本のあらゆる産業が動員された。
 「戦争の開始と同時に、アメリカは日本の全産業を動員した。国鉄は軍隊と軍需品輸送のために徴用されたが、労働強化のため集団欠勤が続いた。......全逓労働者は建設作業に徴用された。軍工場や造船工場では強制出勤、連続徹夜が続いた。そのほかの民間産業でも残業と労働強化、臨時工などで軍注文をまかなった......。それは単なる労働強化ではなく、工場の軍事監獄化であった」(斎藤一郎著『戦後労働運動史』)
 特に国鉄は全国733カ所の米軍施設を結ぶ交通・輸送手段として徴用され、ピーク時の軍需輸送量は太平洋戦争時を上回った。基地労働や港湾での荷役などにも労働者が動員され、医療労働者には日本赤十字を通じて「赤紙」が出され野戦病院などに招集された。
 こうした動員は、レッドパージに伴う大弾圧と労働運動の解体(御用労組化)によって可能となった。だが、戦争動員と労働強化に対する現場労働者の怒りは組合幹部の屈服・裏切りをのりこえ、51年には総評の「左旋回」をもたらした。
 今日、安倍政権は戦争法のもとで労働者の戦争動員を狙っている(本紙第2696号5面畑田治論文参照。この戦争を阻止する鍵は労働運動が握っている。戦争法と戦争動員への怒りを団結の力に転化し、闘う労働組合をよみがえらせよう。

「存立危機事態」を叫び全面戦争を構える安倍

 第三に、朝鮮侵略戦争は、アジア支配をめぐる米帝と日帝の激しい争闘戦であり、日帝は対米対抗的に朝鮮侵略戦争の主導権を握ろうと狙っているということだ。
 それは安倍が成立させた戦争法の内容を見ても明らかだ。戦争法は、個別的・集団的の区別なくあらゆる戦争行為を「自衛の措置」の名で合法化するものであり、日帝政府中枢が「国家存立の危機」と判断すれば無制限の武力行使が可能になる。そしてこの判断は日帝自身が自らの「国益」に基づいて行うのだ。
 韓国の日刊紙ハンギョレ新聞は次のように指摘する。「日本が朝鮮有事を『存立危機事態』と見なした場合、日本は個別的自衛権を行使して敵基地打撃等の作戦で事態に介入できるようになる。日本はこの場合、韓国との事前協議をする必要はないという見解を何度も明らかにした」(8月27日付)
 つまり、日帝は「北朝鮮が日本を攻撃するおそれがある」として、場合によっては個別的自衛権の発動という形で北朝鮮を先制攻撃できるのであり、そこからなし崩し的に個別的自衛権の範囲を越えた作戦(朝鮮半島への上陸→北朝鮮の体制転覆→軍事占領)まで「切れ目なく」突き進むことができる。まさにイラク戦争型の侵略戦争が少なくとも法律上は可能な仕組みになっているのだ。そうである以上、これは「他国を守る戦争」でも「アメリカに巻き込まれる戦争」でもなく、日帝独自の侵略戦争にほかならないのである。
 「自衛戦争」を容認する日本共産党や、「個別的自衛権の拡大で対応すればいい」などと主張する民主党のような立場では、安倍の戦争政治とまったく闘えず、むしろそのお先棒を担ぐことにしかならないのだ。
 民主労総を先頭とする韓国労働者階級は、日本の労働者階級に向けて戦争阻止の共同の闘いを呼びかけている。パククネ政権との死闘のさなか、民主労総の代表団が大挙して日本の11・1労働者集会に参加する。この歴史的な決起に、労働者・学生は自らの血をたぎらせ、思いを一つに朝鮮侵略戦争阻止の闘いに立ち上がろうではないか!
 全学連4同志の即時奪還をかちとり、11月大結集へ力の限り闘おう!
〔水樹豊〕

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