TPP「大筋合意」弾劾する 米・アジアの労働者・農漁民とともに絶対反対で闘おう 革共同農民闘争組織委員会

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週刊『前進』06頁(2704号04面01)(2015/11/02)


TPP「大筋合意」弾劾する
 米・アジアの労働者・農漁民とともに絶対反対で闘おう
 革共同農民闘争組織委員会


 10月5日、TPP(環太平洋経済連携協定)参加12カ国の閣僚会議において行われた「大筋合意」に対し、農民の怒りは渦巻いている。これでTPPが順風満帆(じゅんぷうまんぱん)で動き出すわけではない。大恐慌の進展は、日米帝国主義の思惑も超えて危機を進行させるであろう。新自由主義攻撃のいっそうの激化を本質とするTPPの内容を暴くとともに、「大筋合意」で見えてきた問題点、そして今後の闘いの方向性を提起したい。

オバマ「中国に世界経済のルールを書かせない」

 9月末から始まった閣僚会議は、軍事、経済全面にわたる米中の対立・緊張の強まりの中で、「中国に世界経済のルールを書かせるわけにはいかない」、そのためにもTPPの合意をこれ以上いつまでも先に引き延ばすわけにはいかないという米帝・オバマの強い意向の中で、異例の延長、再延長で「大筋合意」となった。
 これは、この米帝・オバマの強い要求と、一方で中国の存在が大きくなる中で、日帝・安倍のTPPへの「大筋合意」を見届けた米帝が、日帝の「合意」をも最大限使って他のTPP参加国をねじ伏せた結果である。
 今回の閣僚会議で行なわれたのは「大筋あるいは原則合意」でしかなく「最終合意」とは違う。これから「最終合意」に向かって交渉課題が残っており、「最終合意」の文書もつくられていく。さらに、参加国の「最終合意」の国会承認(批准)がすんなり進む確証などない。米国でさえ、来年の大統領選挙の動向と重なり合い、民主党、共和党で賛否が入り乱れている状況だ。何よりも世界大恐慌の進展がこうしたTPPの手続きを打ち砕きかねない。
 そもそもTPPとはどのような攻撃なのか。
 第一に、米帝によるアジア、太平洋圏の巨大な経済ブロック化である。オバマ米大統領が「世界経済のルールはわれわれがつくる」と強調したように、中国のAIIB(アジアインフラ投資銀行)などと対抗し、欧州帝を排除して、アジア、太平洋圏の市場と資源を独占しようというのだ。米帝の最後の生き残り策と言ってもいい。
 参加国が世界のGDP(国内総生産)の4割を占めるTPPは、日帝抜きには成り立たないが、日帝への争闘戦も激しく貫かれている。ブリンケン米国務副長官が「(アジア太平洋地域で)われわれは安全保障面だけでなく、経済面でも米国のプレゼンスや関与を続けるつもりだ」と言うように、「アジア重視」戦略のもとに日帝を組み伏せ、米帝の利益のために動員していくものだ。

日帝は存亡をかけ合意推進

 第二に、しかしだからこそ、日帝・安倍は帝国主義としての存亡をかけてTPPにのめり込んでいる。甘利明TPP担当大臣が「米国の存在が東アジアに定着することが最も大事だ」と「大筋合意」を推し進めたのは、それが日帝の唯一の延命策だからだ。
 インドネシアの高速鉄道受注で日帝は中国に敗北した。このことが示したのは、自国の大資本のための戦争ができない帝国主義はますます没落していく以外にないということだ。日帝は、それが破滅の道だろうと日米安保やTPPなど米帝との軍事的経済的同盟関係を強める形で、敗戦帝国主義としての戦後的制約を突破するしかない。
 TPPはアジア・太平洋圏をめぐる大独占資本の市場、資源の争奪戦が、米欧日や中国などの帝国主義間・国家間の対立、戦争へと激化していることの証なのだ。
 第三に、TPPは各国農業や漁業の破壊と社会丸ごとの民営化の推進である。なおいっそうの新自由主義攻撃、すさまじい階級戦争である。
 特に農業・農民は米帝の巨大な農業資本に蹂躙(じゅうりん)され徹底的に切り捨てられる。国営事業の市場開放が求められ、民営化によって金融資本の食い物にされる。外国資本の参入障害や保護政策は、投資家が投資先の政府を訴えることができる「ISDS条項」によって撤廃か巨額の補償を求められることになる。
 これに対し、アジアの労働者と農漁民が巨万の規模でTPP絶対反対の闘い、ゼネストに立ち上がることは不可避だ。TPPは争闘戦を激化させ世界戦争の危機を加速させるとともに、プロレタリア世界革命への労働者階級人民の国際連帯を発展させることは間違いない。TPP絶対反対の国際連帯でアジア革命に突き進もう。

農・漁業を破壊し、労働者には極限的な階級戦争が

 TPP「大筋合意」の内容が小出しに発表され、衝撃が広がっている。全国の農民、農業関係者が「こんな内容は受け入れられない」と怒りの声を上げている。
 第一に、自民党自身が選挙で掲げた「聖域の農産物5品目」が壊滅的打撃を受ける(表参照)。
 コメは、現関税を維持するため、主食用として米国とオーストラリアから7万㌧から7万8400㌧を無関税で輸入する。すでにGATT(関税および貿易に関する一般協定)で受け入れているミニマムアクセス米(主食用だけで年間10万㌧)と同規模が入ってくる。米価下落は避けられない。大麦・小麦は事実上の関税を45%削減。牛肉は大幅引き下げ、豚肉は関税撤廃。乳製品は米国、ニュージーランド、オーストラリアに低関税の輸入枠を設定した。これでは5品目の農家を守れないことは明らかだ。
 第二に、その他の農水産物は「5品目」以上の壊滅的打撃であり、農家の廃業や中小の食品業者が倒産に追い込まれることは必至だ。
 第三に、その一方で自動車産業など輸出産業は関税撤廃の恩恵を受ける。工業製品の99・9%の関税が撤廃されると発表されている。自動車部品では全品目の87・4%が関税即時撤廃となる。残りの品目も15年目までに関税をなくす。鉄鋼はベトナムで関税即時撤廃、ニュージーランドで9割の関税即時撤廃となる。マレーシアも10年以内に撤廃となる。
 第四に、投資分野など経済全体で規制緩和が進められ、参加国で大民営化攻撃が始まる。
 日本でも医療分野で自由診療開始や皆保険制度解体が激しく進められる。それだけでなく、新興国の国内経済が日米の巨大独占資本によってガタガタにされ、労働者への階級戦争が激化する。日米の巨大資本が新興国の公共事業を受注し、資本参入していこうとしている。

「生きさせろ!」の闘いで批准を阻止し安倍打倒へ

 国際的な連帯闘争と労働者と農民の団結でTPP絶対反対の闘いをつくり出し、プロレタリア世界革命に進撃しよう。そのために明らかにしたいのは以下の点だ。
 第一に、TPPに代表される今日の新自由主義攻撃は労働者・農民に対して「死ね」という攻撃だ。「TPPで輸入農産物が安くなるからいい」といった幻想を1ミリも持ってはならない。日帝・安倍が言う「農業を輸出産業にする」などは大うそだ。TPPは大資本のためのものであり、労働者階級と農民にますます生きられない現実を強制する。
 第二に、安倍打倒の巨大な大衆闘争でTPPを粉砕することである。全世界の労働者人民が「生きさせろ」の闘いを開始している。戦争・改憲へ突き進もうとする安倍政権打倒の闘いと一体で、TPP国会承認(批准)を絶対に阻止しよう。
 韓国・民主労総(全国民主労働組合総連盟)は、2012年に発効された米韓FTA(自由貿易協定)に対して2年間の大国民運動を農民団体とともに闘い抜いた。TPP阻止の闘いを安倍政権打倒の闘いとして、そして労農同盟を形成するものとして闘おう。
 第三に、安倍政権や体制内政党、JA(農業協同組合)は、農民のTPPへの激しい怒りを「TPP対策費の充実」方針にねじ曲げ、農民に屈服を強制している。これは体制的危機の日帝を手助けする最も悪質な害毒である。
 第四に、TPP阻止は三里塚闘争の勝利と一体である。来年で50年を迎える三里塚闘争は日帝に敗北を強制し続けてきた。「農地死守・実力闘争」の原則を貫き闘いぬいてきたからこそ、「法律ができたから」「国策だから」を打ち破ってきた。市東孝雄さんの農地取り上げを阻止しよう。「最高裁・緊急5万人署名」を全力で集めよう。「市東さんの農地を守る会」を全国につくろう。
 11・1集会の地平から階級的労働運動と労農連帯、国際連帯を発展させ、安倍打倒、TPP絶対反対で闘おう。
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