解雇の「金銭解決制度」許すな 首切り自由と労組絶滅が狙い

週刊『前進』06頁(2706号03面03)(2015/11/16)


解雇の「金銭解決制度」許すな
 首切り自由と労組絶滅が狙い


 先の国会で戦争法とともに労働者派遣法の改悪を押し通した安倍政権は、さらに労働時間規制を撤廃する労働基準法改悪と、不当解雇の金銭解決制度の導入を狙っている。これらはいずれも、21世紀初頭以来、日本帝国主義ブルジョアジーが何度も導入をたくらみ、その都度、労働者の抵抗で阻まれてきたものだ。安倍はこれらを、来年の通常国会で強行するための準備に着手した。11・1全国労働者集会で打ち固められた労働者の団結を土台に、安倍の攻撃を絶対に阻もう。
 厚生労働省は10月29日、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在(あ)り方に関する検討会」と称する審議会を発足させ、不当解雇の金銭解決制度導入に向けての検討を開始した。

国鉄闘争継続が敵を追い詰める

 解雇の金銭解決制度とは、どんな不当な解雇でも資本が労働者にわずかな金銭を支払えば、解雇は合法になるというものだ。その導入で、安倍と資本は解雇撤回闘争を解体し、労働組合を絶滅に追い込もうとしている。
 それは何よりも、国鉄1047名解雇撤回闘争を断固として継続し、それを軸に階級的労働運動をよみがえらせ、戦争阻止のゼネストを切り開くことを宣言した11・1労働者集会への反動だ。
 国鉄1047名解雇撤回闘争の解体を狙って仕掛けられた2010年4・9政治和解は、戦後最大の争議となった国鉄闘争を、解雇撤回のないまま金銭支払いで終結させるとともに、100万人が結集した国鉄闘争支援陣形を解体し、労働運動の総体をつぶそうとした大反革命だった。
 動労千葉を先頭とする階級的労働運動派は、これと立ち向かい、「国鉄闘争の火を消すな」を合言葉に国鉄闘争全国運動を立ち上げた。以来、5年にわたる闘いは、解雇撤回・JR復帰の10万筆署名の達成を物質力に、今年6月30日、国鉄分割・民営化による解雇を不当労働行為と認定した最高裁決定をもぎり取った。不当労働行為を認定しながら解雇撤回を認めない6・30最高裁決定には、慰謝料だけで解雇撤回闘争を終わらせるという悪辣(あくらつ)な意図も込められていた。
 だが、動労千葉と階級的労働運動派は、不当労働行為を最高裁に認定させた歴史的勝利を土台に、実力で解雇撤回をもぎり取る新たな闘いに踏み出した。それは、外注化粉砕・非正規職撤廃の闘いとともに、JRが仕掛ける第2の分割・民営化攻撃に立ち向かう決戦攻防の軸になっている。
 この闘いはまた、戦争法に反対する1千万の労働者人民の決起の土台になった。
 これに恐怖する安倍は、解雇撤回闘争の根絶を狙う新たな攻撃を開始した。だが、安倍の「成長戦略」も「新3本の矢」なるものも、すでに破産しつくしている。

職場復帰拒否は不当労働行為だ

 安倍政権が6月30日に閣議決定した「日本再興戦略改訂2015」と「規制改革実施計画」は、「予見可能性が高い紛争解決システムの構築」だの「労使双方が納得する雇用終了の在り方」だのというペテン的表現で、解雇の金銭解決制度の導入を打ち出した。
 そのベースとなった6月16日の規制改革会議の第3次答申は、より露骨に次のように言う。
 「(労働者に)原職復帰の意思がある場合でも、その判断は企業に任されており、解雇無効の判決は必ずしも原職復帰を保証するものではない」「このため……解雇無効時において、現在の雇用関係継続以外の権利行使方法として、金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し、選択肢の多様化を図ることを検討すべきである」
 つまり、裁判で解雇が不当とされ、解雇無効の判決が出た場合でも、資本が金銭さえ払えば、解雇を撤回しなくてもいい仕組みをつくれということだ。許しがたいことに規制改革会議は、「原職復帰の判断は企業に任されている」と平然と言ってのけている。だが、解雇無効なら原職復帰は当然のことではないか。
 裁判で解雇無効が確定しても、賃金は払うが仕事はさせないという対応をとる企業も、中にはある。それは、労働組合の絶滅を確信犯的に強行する典型的な「ブラック企業」の場合だ。しかもそれは、労働組合の闘いに資本がとことん追い詰められた結果の対応であることがほとんどだ。
 労働組合を排除するため職場復帰を拒否すること自身、不当労働行為そのものだ。労働組合が不当労働行為を徹底的に追及して闘えば、賃金支払いだけでなく職場復帰を資本に強制することはできる。東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の闘いは、それを実証した。「原職復帰の判断は企業に任されている」というのは大うそだ。

攻撃をえじきに16春闘へ闘おう

 規制改革会議は労働組合法など初めから無視してかかっている。彼らの意思は、不当労働行為を追及する闘いは絶対に認めないということだ。労働組合を絶滅しなければ、解雇規制の撤廃も総非正規職化も戦争動員もできないからだ。だがそれは、不当労働行為を徹底的に追及して闘ってこそ、労働者は資本の攻撃をはねかえし勝利できることを示している。
 資本のやりたい放題がまかり通る時代は過ぎた。新自由主義への労働者の怒りは満ちている。11・1労働者集会は、世界の労働者と団結した5700人が、資本との不退転の闘いに踏み出していることを示したのだ。解雇の金銭解決導入の攻撃を階級的労働運動復権のえじきにし、16春闘に至る決戦に立とう。
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