パクユハ著『帝国の慰安婦』について 元「慰安婦」を踏みにじる同書礼賛「声明」の撤回を

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週刊『前進』04頁(2749号04面04)(2016/05/23)


パクユハ著『帝国の慰安婦』について
 元「慰安婦」を踏みにじる同書礼賛「声明」の撤回を


 2013年に韓国で出版された朴裕河(パクユハ)著『帝国の慰安婦』が、日本で、朝日新聞出版から14年11月7日に出版されて以降、本書に対する日本の言論・出版界の論調は礼賛一色だった。
 しかし、元日本軍「慰安婦」被害者たちである「ナヌムの家」に暮らす9人の女性たちは、14年6月16日に本書の記述が名誉棄損にあたるとして民事上の損害賠償と出版禁止、女性たちへの接近禁止を求めて裁判を起こし、併せて刑事上の名誉棄損で告訴した。これを受けて韓国検察は15年11月に著者を在宅起訴した。
 日本のマスメディアは朝日新聞から産経新聞に至るまですべての全国紙が、起訴を言論の自由への弾圧であると批判した。
 そして、11月26日には日米の学者・ジャーナリストら54人が「朴裕河氏の起訴に対する抗議声明」を発表した。
 上野千鶴子、大江健三郎、河野洋平、島田雅彦、高橋源一郎、津島佑子、中沢けい、村山富市らが名を連ねる「声明」は、「『従軍慰安婦問題』について一面的な見方を排し、その多様性を示すことで事態の複雑さと背景の奥行きをとらえ、真の解決の可能性を探ろうという強いメッセージが込められていた」「何よりも、この本によって元慰安婦の方々の名誉が傷ついたとは思えず、むしろ慰安婦の方々の哀しみの深さと複雑さが、韓国民のみならず日本の読者にも伝わったと感じています」と記している。
 しかしこの「声明」は1カ月後の「日韓外相共同記者発表」と一体であり、朝鮮侵略戦争の露払いとなる絶対に許せない「声明」である。私はここに名を連ねている人のすべてが『帝国の慰安婦』を読んで名を連ねたとは思えない。私は本書を読んで「声明」を直ちに撤回するよう訴えたい。当事者が怒りに震えて本書を弾劾しているのに、なぜこのように言えるのか。
 鄭栄桓(チョンヨンハン)著『忘却のための「和解」』(世織書房・16年3月24日発行)から本書への批判の核心部分を引用する(133〜134㌻)。
 「被害者たちが朴裕河を訴えた最大の理由は、本書を通じて、自身らも含む『慰安婦』たちが日本軍の『協力者』であり『同志』であったという虚偽の事実を流布された、というところにあった。これまでみたように、本書は日本軍『慰安婦』の本質は戦争遂行に協力する『愛国』的存在であり、日本兵と『同志的関係』にあり『同志意識』を有していた、と主張している。日本軍の責任を過小評価する『日本軍無実論』の見解を踏襲するのみならず、『慰安婦』たちの主観的な意識にまで踏み込んだのが、本書の『帝国の慰安婦』論の独自性であった」
(東京 相馬修)

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