アメリカで教員スト拡大 低賃金と公教育破壊に〝NO〟

週刊『前進』02頁(2942号02面02)(2018/05/24)


アメリカで教員スト拡大
 低賃金と公教育破壊に〝NO〟

(写真 アリゾナ州の教育労働者は議事堂前を占拠して抗議活動を続け、州議会に教育予算の増額を認めさせた【5月3日】)

(写真 ノースカロライナ州115学区中52学区でスト。議事堂に向けてデモ【5月16日】)

(写真 全米の闘いの口火を切ったウェストバージニア州の教育労働者の闘い【3月5日】)

現場組合員が決起各州に次々広がる

 全州55郡のすべての学校を閉鎖して2週間に及ぶストライキを貫徹したウェストバージニア州の教員ストは、3月、4月、5月とケンタッキー州、オクラホマ州、アリゾナ州、コロラド州、ノースカロライナ州へと拡大していった。州議会による賃金破壊、医療保険破壊、年金破壊への抗議のストは、「公教育を守れ」「子どもたちに明るい未来を」と、公教育破壊に対する怒りとなって燃え広がった。各州の州議会議事堂前は、赤いバンダナとTシャツ姿の教育労働者たちで真っ赤に埋め尽くされた。
 ストライキに突入したこれらの州の学校教員の賃金水準は、全米50州のうちの最低ラインだ。しかも健康保険や年金制度などが年々大幅に改悪され、また教育現場への資金も大幅に削減され続けて、生徒の教育環境も最悪だ。「教師が生活できなければ生徒に十分な教育ができない」と、生活可能な賃金と劣悪な労働条件の撤回を求めて、教師たちはストライキに立ち上がった。労働者の組合組織化を阻む「働く権利法」が導入されているこれらの州では、団体交渉権もなくストライキも禁止されている中で、ランク&ファイルの労働者が自ら呼びかけ、立ち上がった草の根運動の巨大な広がりだった。

極度の財政削減で校舎もボロボロに

 大企業や高額収入者の大幅な減税でつくり出された超緊縮財政で、公立学校の校舎や設備はボロボロ、教師の数は常に不足状態でクラスの人数は膨れ上がり、10年以上も同じ教科書を使用しているため、内容は「ジョージ・ブッシュ大統領」のままで、破れた個所はテープで補修され汚れがひどい。オクラホマではもう数年前から、資金不足のため週4日しか学校が運営されていない。コロラドの集会では、「学校予算を正常化し、企業や富裕者の減税をやめろ!」と叫ばれた。
 オクラホマの北西部の小学校で教壇に立つシングルマザーのレイ・ラブレイスは、毎週30〜40時間をほかの学校のインターネット・コースを受け持って収入を得ている。「ダブルワークをしなければ、フードスタンプ(低所得者向け食糧支援サービス)を受給することになるわ」。オクラホマ市の教師アンドレア・トーマスは、「週4日の学校勤務で空いた3日間は、教師の夫と共にダブルワーク、トリプルワークまでして働いているけど、娘を大学へ進学させる資金が貯められないのよ」と、苦しい家計事情を語った。
 教師の現状があまりに厳しくて、若い世代の教師は耐えられずに教職を離れていく者が多い。「こんな現状で10年以上も黙々とこの仕事を続けているなんて、私には信じられなかった」と、アリゾナ州ツーソンの中学校教師コリーン・ナカニシ(24歳)も退職を考えている一人だった。学生時代に高額の学費ローンを組まざるをえない今のアメリカの若者は、卒業後にその返済も大変だ。人員不足の学校のハードな仕事に加えて、少ない給与の中からそれを支払っていくのは容易ではないからだ。しかし、ストライキに参加して仲間の教師たちとの団結ができていく中で、「もっと教師を続けたくなった。お互いに支え合うことのすばらしさを知ったから」と語った。

団結と組織を固め闘えば必ず勝てる

 アリゾナの教員ストライキを呼びかけた「アリゾナ・エディケーターズ・ユナイテッド」の教師たちは、闘いを終えて次のように語っている。
 「正義の闘いなら、どの州でもどこの国ででも真の改革は成し遂げられる。団結を固め、しっかり組織をつくり明確な戦略を立てれば必ず勝てる」
 「アリゾナ州での攻撃は、全国の労働者階級に共通のものだ。過重労働に低賃金で、長い間かつかつで生き延びてきた」
 「しかし『我慢の限界だ!』と立ち上がった。労働者階級にとって『もう耐えられない』という瞬間が絶対に訪れる。アリゾナの教育労働者が決起して反撃できたのだから、誰でも同じことができる」
 ノースカロライナ州は全米で2番目に組合組織率が低い。しかし5月16日、ここでも空前のストだ。大卒直後のクリスティナ・レーンも就職予定先の教師とともにデモに参加した。「自分の意見を言えるようにするという私の教育理念にぴったりの場ね。最高!」
(高村涼子)

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