映画「マルクス・エンゲルス」 階級社会の現実との格闘 マルクス主義誕生を描く

週刊『前進』04頁(2943号04面03)(2018/05/28)


映画「マルクス・エンゲルス」
 階級社会の現実との格闘
 マルクス主義誕生を描く


 映画「マルクス・エンゲルス」(ラウル・ペック監督)が東京・神保町の岩波ホールで上映され、大いに話題になっている。順次全国で上映される予定だ。
 1840年代のヨーロッパで若きマルクスとエンゲルスが出会い、階級社会の現実と格闘し、労働者階級と共に闘い、熱く議論を戦わせ、『共産党宣言』に至る過程が描かれる。愛と情熱、思想的葛藤と成長がテンポよく映し出される。
 冒頭は森林で枯れ枝を集める農民を官憲が撲殺する衝撃的な場面だ。マルクスはライン新聞で、共同体の入会地を私有財産とし「木材窃盗取締法」を適用する理不尽を暴露する。
 ライン新聞が発禁になり、マルクスは亡命を余儀なくされる。マルクスはプロイセン貴族出身のイェニーと結婚したばかりだ。イェニーは出身階級を憎悪し、「旧世界の崩壊」を夢み、清貧を潔しとする。
 エンゲルスは、父親が所有し経営するイギリス・マンチェスターの紡績工場で見習い中だ。工場の労働者たちが虐げられる現実に憤り、ジャーナリストをめざし労働者街に入る。父の工場で正義を貫き、抵抗し、解雇されたアイルランド人のメアリー・バーンズと出会い、結婚する。エンゲルスの名著『イギリスにおける労働者階級の状態』はバーンズとの共著だろう。
 マルクスはルーゲら青年ヘーゲル派やフォイエルバッハと決別し、哲学研究から革命運動に転じる。その武器が経済学だ。
 正義者同盟の総会でエンゲルスは演説する。「人類はみな兄弟だろうか。否。資本家と労働者は敵同士だ。階級闘争が要だ。労働者階級の解放は労働者階級自身の事業でなければならない。労働者階級は自らを解放することですべての人間を解放する。そこに共産主義が生まれる」
 正義者同盟は共産主義者同盟と改称、マルクスに綱領の執筆を依頼する。たじろぐマルクスをエンゲルスが叱咤(しった)激励する。1848年、『共産党宣言』が発表された。マルクス主義の誕生を見事に描いた作品だ。
(藤沢明彦)
このエントリーをはてなブックマークに追加